歳若く美しい恋人の為に年甲斐も無く大暴れして、その上でその愛しい恋人を任せるならば……とそれ程長い時では無かったが、何処かロジャーと似た空気を纏う少年を鍛えた。他に、託せそうな男が居なかったのもあるが、あの少年を育ててみたかったのも本音だな。
シャンクスが未来を信じた相手だと言うのもある。ナミの弟だと言うのもある。
それらが重なり、会ってみたいとは思っていた。そして、シャンクスから受け取ったと言うあの帽子を被るに相応しく思えたのだから、仕方ないだろう。
私がナミと共に行く事はリスクが高過ぎる。それを思えば、他に任せられる実力のある男達から、ナミを襲うだろう可能性の低い者を選ぶ必要があった。
そういう意味では、シャンクスは論外だ。あの右腕君が守ろうにも、ナミ本人が無防備過ぎる。
修行の為に2年と区切ったその期間で、どれ程成長してくれるか分からなかったが、期間いっぱいにかかると思っていたそれが半年程残った。それも有り、私はナミを抱いてルフィに言葉を向けた。
半年後にシャボンディで会おうと。その時には1度、ナミを手放す事を覚悟して。
ナミには、魚人島へ向かう覚悟を決めさせなければならない。愛しいナミとゆっくり過ごせるのは、残り半年だ。
これ迄何年もナミを隠していた島へとナミを連れ帰り、1年半空けたその島に戻れば動物達がナミを出迎えた。そして、蜜柑の世話をしていた様子にナミは喜びを見せる。
その勢いのままにナミは動物達と戯れ始めたが……さて、途中買物らしい事も出来なかったなと少し困る。実は別れ際にルフィから聞き出せたナミの誕生日が、明日なのだ。
動物達が世話をしてくれていた事で蜜柑が無事である事が、動物達からの贈物となっただろうと思えばこそ、私からは何をするべきかと考えさせられる。どうしてもナミを表に立たせる事は出来ないからこそ、贈れる物には限りが有る。
だがまずは、ナミと共に建物の中を掃除しなければならないだろう。明らかに人のいなかった建物は、埃と虫に塗れ、多少のがたも来ている筈だ。
2人で建物の掃除を終える頃、ナミが夜ご飯何食べたい?なんて笑うから少し考える。戻るついでに海王類は倒したから、肉はある筈だが……。
「簡単に〝皆〟で鍋や鉄板を囲めたらとは思うが、どうだろうか?」
私の提案にナミは分かったわと微笑み、よくあるキャンプの様相で簡易シチューを作りながら動物達に野菜を収穫させて肉に仕込みを始めた。肉や野菜を串に刺しているので、バーベキューにでもするつもりなのだろう。
ひと手間加えられた味噌や塩麹、酒にそれぞれ漬け込んで行くそれは短時間でも肉を柔らかくするのだと前に笑っていたなと思う。本当ならば私が何かした方が良いのだろうが、ナミはこれで案外料理等を楽しんでいる様子なので任せてしまっている。
私のそれは、とりあえず食べられる程度の物が多いというのも理由だろう。だが、どうせならば、美味しい物を食べたいと願うのは、罪ではないだろう。
帰って来た私達と共に動物達ははしゃぎ、宴の時間は楽しく過ぎ行く。日付が変わる頃1度宴をお開きにしたが、動物達は不満そうなので、それには少し笑ってしまう。
誰に似たのか、こいつらは宴が好きな様子だ。少しばかり長旅だったのもあり、うつらうつらとしているナミをそっと抱き上げて建物に連れ帰りベッドに寝かせると気付く。
「随分と成長したものだ」
特に胸が等とは言えないが、そう思いながらその1点をじっと見詰める。これでは確かに、下着なんてサイズすぐ変わるから買えないわと言うのも分かるな。
……寝込みを襲うのはどうかと思うが、襲いたくなるような色香と無防備さだな。体などを洗う時のそれだけが理由では無く、ナミ本人からも蜜柑の香りがする事を恐らく本人は気付いていないだろう。
主食が蜜柑だからこそ起きるのだろうが、なんとも愛らしい。食欲を誘う色の髪をそっと指に絡めてから、軽く口付ける。
……離したくはないが、双方の為に1度はそれが必要だろう。あの戦争さえ無ければ、白髭に預ける事も考えたのだが……こればかりは仕方無い。
非戦闘員の航海士兼作家だと言えば、私の女であるとしても白髭は連れて行くだろう。それも、あの戦争の引き金になった青年の姉だ。
だがこうなっては、白髭に預ける方が危険だ。それを思えば仕方有るまい。
そっとナミを抱き締めて、共にベッドに沈めば甘えるように抱き着いてきた。もしナミが起きていたならそのまま食べてしまうのだが、完全に寝入っていては手も出せない。
愛らしくも愛しい私の歳若い恋人は、全幅の信頼を私に向ける。私程面倒な男もそう居ないだろうにな。
それが何処か物悲しいと思いながら、そっとその頭を撫でて、傍に居られる間は全力で守ろうと決めて抱き締めると蜜柑の香りが鼻腔を擽る。それが眠気を呼び、私も随分深く寝入ってしまった。
目が覚めると良い香りがして、けれどもそれを用意したであろう人物の姿が見えない。野菜スープにパンとジャムが置かれた他、ナミの蜜柑がテーブルに用意されている。
では本人はと思い辺りを見ても、建物の中にいる様子はない。ならば動物達の所かと表に出ると、歌声が聞こえて来た。
その歌は故郷を想い歌っている物のようだ。ずっと手放す事を憂いていたが……帰りたいのか。
残せば同じ事になるからと連れ出したが、考えてみればそれはそうだろう。命も人生も、その身も全てを犠牲にしても犠牲にしていると自覚も無いままに生きてきたナミが、帰りたいと願わない筈は無かったのだ。
それでも、それだけは許してやれない。私はナミに、これ以上傷付いて欲しくないのだ。
あの故郷である島にいれば、ナミは簡単に我が身を捨ててしまう。そして、狙われる度に巻き込む事を嘆き、苦しむと分かるのだから。
……私が共に住めれば良いのだろうがな。そんな事は出来ないのだから、今の内に世界を見せて、それから残された僅かな時間を共に生きるのが建設的だろう。
それならば、世界を知った状態にしておかねば、遺されるナミがその先を生きられない。私の名がナミを守れる内に回って、ナミの名前そのものが牽制になるようにしなければ……旅立つ事さえ出来ないな。
死ぬ時は共にと願われているのは知っているが、連れて行くつもりは無い。その為にも、最期の蜜月の内に命を宿らせてしまおうと考えているのだから。
これをナミが知れば、怒り狂いながら泣くのだろうな。遺される苦しみを回避しようとするそれは、分からなくもないがね。
歌を終えたタイミングでそっと抱き締めると、私の腕にそっと手を添えながら甘えて来る様子に嬉しくならない筈も無い。同時に、欲望が頭を擡げる。
「帰りたくなったか?」
「何処に?」
きょろんとした無防備な顔で私を見てくる瞳は、けれども酷く優しい色をしている。それにふと笑い、唇を落とせば抵抗もせずに受け入れるそれに私の方が甘えてしまう。
これで今日から20歳だと思えば、奇跡のような存在だなと思う。純粋培養で育てられた深窓の令嬢でもあるまいし、何故何度抱いても穢れを知らない様子なのか。
反撃しないと私が溺れるなと思いながら、絡む舌で蜜を舐めとってやる。それに僅かな怯えを見せるのは、快楽に溺れる自分を良しとしない理性からだと分かっていて、戒めを強めてしまう。
掌で後頭部を押さえて、顔を背ける事を許さない。その状態できつく唇を吸えば、ナミの体がぶるりと震えた。
歯列をなぞり、舌の裏から上顎の粘膜までねぶる。更に喉の奥まで深々と舌を突き刺せば、漸く理性が仕事を放棄し始めたと分かる。
「ん……うんっ……」
足元がおぼつかなくなっているのか、取り縋るように服を掴むナミを支える為に腰を掬い上げるように抱き留める。息苦しさからか、快楽からか微かに目尻に涙が溜まったのがわかり唇を離せば、どちらのものとも分からぬ銀糸が細く2人を繋ぐ。
「……ばかね……」
「ん?」
「私の帰る場所は、ここだけよ」
その言葉に力加減を忘れて強く抱き締める。閉じ込めて、全てを奪う私が帰る場所だと言うこの天使のような少女を傷つけたくは無い。
苦しいのか零れ落ちた涙を味わうように、頬から目尻に、そのままこめかみへと唇を移動させながら舐め上げていく。最後に瞼に啄むようにキスを落としてから解放すれば、ナミはその場でヘナヘナとしゃがみこんでしまった。
少し、やりすぎただろうか。そう言えば、よく遊びで共に過ごした女達に、その観察するような瞳が気に入らないと言われて来たが、ナミは言わないなと思う。
それこそ聡いこの子が気付かないとは思えないが、観察される視線は奴隷であった期間を思えばこそ、怯えられる位が丁度いい筈だ。何故それなのに、この子は無邪気に信頼を向けて来るのか。
「ナミは、私の瞳について何も言わないな」
「副船長として海賊王を支えた男が、観察して相手の思考や思惑を知ろうとするのは当然だもの。私でさえも、多少はそういう所があるわ」
「そうか?」
「えぇ、職業病ね。それに私だけじゃなくて、長く接客業をして来た人は客の望む事を知る為に。長く営業をして来た人は相手をどうしたら落とせるかを知る為に。物書きはネタを得る為に、人間観察等を行なうようになるものよ」
そう言って自嘲的に笑うナミをそっと抱き上げれば、静かに視線を合わせる。それだけで瞳が切なく揺れるから、嘆かなくていいと教える為に今日伝えたかった言葉を口にする。
「ナミ、誕生日おめでとう」
「……え?」
「今日で20歳だね。もう、ナミは立派な大人だ」
「……これ迄も大人として扱って貰ってたと思うけど」
「それは、夜だけだろう。今日からは常に襲うよ」
私の言葉に顔をこれでもかと赤くしたナミは、今更逃げようと暴れ出すがまだまだナミが私から逃げる事は出来ない。シャンクスの右手で簡単にいなされたと嘆いていた子供が、良くもまぁここ迄成長したと思わなくはないが。
「ナミ……産まれてきてくれてありがとう。ナミは私の大切な恋人だよ」
「私なんかにそんな事を言うのは、レイリーだけよ」
「〝なんか〟って言うのは許さない。自分を貶める言葉を使う事は、私をも貶めているのだと知りなさい」
「レイリー?」
声を震わせるナミの耳元で囁くように言う。この子は、変なところがいつまでも子供だな。
「ナミが自分を蔑ろにする事は、ナミを大切に想う相手をも蔑ろにしているという事だ。自分を貶めるならば、ナミを想う者をも貶めている事になる。それは……侮辱しているのと何が違う?」
「……ん……。ごめんなさい」
「わかってくれれば良い。さて、プレゼントを渡そうか」
「……いつ、用意したの?そんな物」
「いつもある物だからね」
私の言葉に首を傾げたナミを部屋に連れて行きながら、耳を軽くはめばビクリと揺れる素直な体。それをベッドに下ろして少し待っておいでと言い残しシャワーを浴びてくれば、待っている間暇だったのか執筆をしている様子のナミがいた。
真剣な横顔が美しくて少し見惚れていたが、プレゼントをまだ渡していない。その手を掴み動きを止めると、容赦無く服を剥ぎ取り、困惑するナミに口付けたままベッドに倒れ込む。
キスの息苦しさからか逃げようと身じろぐから、逃がさない為に巻きとった髪をくしけずる。獣地味た舌遣いで、少々乱暴だと理解しながらその唇を貪れば、ナミはその快楽に力が抜けていく様子だ。
その豊満に育った胸についている慎ましやかな飾りを弾いてやれば、甘い喘ぎがナミから聞こえてくる。ツンと尖ったそこを押し潰せば、背をしならせて結果として胸を突き出してくるナミが本当に可愛い。
「や、なんで……急に……」
「当然だろう。これからは大人として付き合う訳だから、子供への手加減として夜だけだったそれは昼間も行われるようになる」
「まだ、朝よ……!それに、プレゼントがどうとか言ってたじゃない」
恥ずかしそうに頬を染めた状態でそう言って牽制してくるナミに、そうか伝えていなかったなと気付く。大切な事だと言うのに。
「ナミへの誕生日プレゼントは、私だよ。存分に味わいなさい」
「や、むり!身に余るからっ!」
叫ぶように言われたそれを聞こえないなと言いながら、耳元で返品は受け付けないよと言う。そんな私にナミは潤んだ瞳を向けて、平然と煽って来るのだから始末に悪い。
Happy Birthday ナミ。伴侶の立場は渡せない分、私に残る他の全てをナミにあげよう。
どこに居ても、ナミの為ならば助けに行く。私が背後に控えている現実が、ナミを守れるように、ナミがそれを自覚するように。
その身と心に深く刻んでおこうと、膝頭にかけた手で大きく足を割り開いく。それにより真っ赤になって、言葉を失った恋人の反応を存分に楽しみ始めた。