※この作品はR-18です。

光源氏シリーズ   作:夢枕 七変化

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イースターイベント(光源氏20)side

 シャボンディ諸島まで後数日かと指折り数えていた時、花見の時に眺めていた島々のそれを描きあげたナミが伸びをした。明らかに花を眺めていただけにしか思えないのに、アレで測量してたとか……恐ろしいとしか思えない。

 世の測量士や航海士を全て敵に回しそうなその能力に小さく笑うと、ナミが突然表に飛び出した。後を追えば妙な霧が発生しており、おや?と思う。

 その霧を振り払おうとするナミの姿に、大凡の検討をつけて倒れる身体を支える。ふむ……この海域か。

 懐かしいとさえ思いつつ、そうそうぶつかる事も無い現象だと思えば楽しくもなる。さて、過去に経験したのは犬だったが今回は何だろうか。

 

 「大丈夫、だから……」

 「強がりも大概にしなさい」

 「私、レイさんに、甘える権利なんて……ない、から」

 

 その言葉が日陰の身にある事を理由にしてるのは分かるので、腕が震えそうになる。だが、私は優しい嘘をナミにつきたくは無い。

 心臓を鷲掴みにでもされたかのような衝撃に、泣きたくなる。だが、それ以上のものを私はナミに強いているのだと自覚してその頬を軽く撫でた。

 

 「この程度、甘えには入らないよ」

 

 そう言って抱き上げると泣きそうな眼差しが私を貫く。これは、私がシャッキーに締め上げられる案件だろうな。

 そう思いながらも、この子は自分の価値を理解してないからねと苦笑してしまう。ナミを船内に運び込むと、シャボンディへの最短ルートに進路を変更する。

 

 「もう、島に着きそうなの?」

 「少し、急ぐつもりだからね。どうかしたのかい?」

 「私、イースターのイベントやりたいの」

 「イースター?」

 

 聞き覚えのないイベントにオウムのように繰り返せば、ナミがクスクスと笑う。成程、ナミが書いてる作品内で使ったイベントか使うイベントなのだろう。

 それならば先に体験と言うか、経験しても良さそうだ。その内この時期になると当然のように行われるようになるのだろうからね。

 

 「兎と卵のイベント。詳しくはWebで!」

 「〝うぇぶ〟とはなんだね?」

 「言い間違えたのよ。机に出版したくて書いたの置いてあるから、それを見てくれると助かるわ」

 「……まァナミが何かやりたいと言えば、シャッキーが喜ぶとは思うよ。参加させてやって欲しい」

 

 ほぼ無意識での発言だったが、ナミはそれを受けて儚く笑う。それでもその笑顔に無理は無いのだから、不思議なものだ。

 

 「シャッキーって、心広いわよね」

 「おや、薮蛇だったか」

 

 何故か仲の良い2人に、いつも私が阻害される。どちらも最後には私を優先してくれるが、ナミはシャッキーに懐いているし、シャッキーはナミを可愛がっている謎だ。

 ナミが誘拐された時の事等、思い出したくもない。誘拐した側が哀れになる程の惨たらしい惨劇があったが、ナミに手を出した己の迂闊さを恨んでもらうしか無いだろう。

 その時の事を思い出してしまい、軽く身震いしてからナミの傍に腰を降ろしてその頭を撫でる。するとへにゃりと笑ったナミに、少し心が癒される。

 元々私に憧れていると言っていたな。本当に可愛い子だと……なんだ?

 そして手を退けた時ピョコンと生えてきた耳を見て、納得いかなくて唸りそうになる。何かが生えるのは、わかっていたがね。

 

 「頭の上にあるものは……目の錯覚か?」

 

 何故、猫耳ではなくうさ耳なのか。確かに性格的には兎もありかもしれないが、私としては猫を推奨したい。

 そのまま視線を動かし、丸い尻尾まで生えてるのを確認すれば、それ以上は言うまいと溜息を落とす。今回はうさ耳なのだろう。

 

 「レイさん、どうしよう!?私、変なの!!」

 「何処も変ではないよ。ナミに似合ってはいるから、自信を持ちなさい」

 「似合うとかそう言う話じゃな「ナミには、猫耳だと思っていたが、うさ耳も似合う。自信を持っていいよ」」

 「そうじゃなぁい!!」

 

 怒るナミに耳は害がない事を伝えて、そのついでにシャッキーに遊ばれるだろう事を教えてやれば半泣きで見詰められる。それが可愛くて、ついそのまま少しナミで遊んでからシャボンディ諸島へと帰った。

 帰り着いたBARではシャッキーが私とナミを見て、私を押し退けてナミに抱き着いた。……シャッキーは〝私の妻〟である、筈だがね?

 その後卵をペイントして、隠したのを探すゲームがあるとの表記を見付けたシャッキーが皆で作って、シャッキーが隠したのを私とナミで探すと言う話をして来た。見聞色の覇気は使用禁止との厳命で、ちまちま探すしか無くなってしまったが、その景品は魅力的だ。

 

 「勝った方の言う事を、私と負けた方がなんでも聞くってのはどう?勿論命に関わるのはダメよー?」

 「なんでも?」

 

 キョトンとした顔でナミが聞き返すとシャッキーは楽しそうに笑う。その様子は明らかに私を揶揄っている。

 

 「そうよ。故郷に帰りたいとか、レイさんと別れたいとか、好きな事言っていいわ」

 「認める筈無いだろう」

 「あら、なんでも言う事を聞くのが決まりよ」

 

 クスクスと笑うシャッキーに、これは負けられないなと溜息を落とす。そんな私にナミは2人の傍に居られたら、充分幸せなんだけどな……と言うから私とシャッキーが持っていた卵を握り潰したが、不可抗力だろう。

 卵は73個用意された。ナミの誕生日から決めたそうだが、誰がそんなに卵ばかり食べると言うのか。

 尊い卵がナミの発言で幾つか犠牲になったが、ナミは自分が何を言ったのかわかっていないらしく楽しそうに笑うばかりだ。これでもう成人しているというのだから恐ろしい。

 どうしたらこれ程無垢なまま生きられるのか。汚い事を知らずに生きて来た、平和ボケした小娘でもないと言うのにね。

 むしろ凄惨な過去だった筈だ。だと言うのにそれを感じさせない穏やかさと温かさに、守ってやりたいと思わされるのだが……手放せるのだろうかと数日後に迫ったその期限を思う。

 シャッキーの合図で探し始めるが、案外簡単に見付かる。だと言うのにナミは何故か上手く見つけられないらしく、苦戦しているのが見えてどうした事かと考えて気付くをシャッキーが私の探す癖を元に隠しているのだと。

 初めから私が勝てるように仕組まれていた訳か。そんな事とは知らずに、兎が耳と尻尾を揺らしながら卵を探す姿は妙に可愛い。

 

 「シャッキー、何が目当てかな?」

 「1日デートしたいだけよ」

 「それは……ナミとだね?」

 「勿論よ。耳がある内に、遊びに行くわ。その後は、旅立つその日まで好きに過ごして」

 

 シャッキーの言葉に成程と頷けば、寂しいでしょうなんて笑う。寂しい……のだろうか。

 とりあえず、離れるのが不安でたまらない。勝利を確信しつつ卵を集める私にナミが勝てないなぁと笑うから、本当の意味で勝てないのは私達の方だよと内心で答えておく。

 Happy Easter……。可愛い兎とのデートを目論む女神には冥王でも勝てはしない。

 その代わり、その後の残された時間は兎を独り占めすると心に誓っていた等、兎は知らずに呑気に笑っていた。結局大量の卵は女神と兎の居ない日に冥王が食べる事となるのだが、それは不可抗力の領域だろう。

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