※この作品はR-18です。

光源氏シリーズ   作:夢枕 七変化

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バレンタインイベント(光源氏18)side

 最近はナミも、週に2日の休みをちゃんととってくれるようになった。共に暮らすようになって良かったと思えるのは、大概こんな時だ。

 元々ナミが家に帰らなかったのは、トラウマが原因。その為に、俺かおつるさんがいれば眠れるからと本部の執務室で寝ていたのだと知った俺が、独断で共に暮らす事を決定し遂行した。

 ただ……気に入らねェのは、ガープさんとセンゴクさんの傍でも眠れる所だが、まァそこは今置いておく。今は晴れて二人暮しだ。

 18歳になるのを待って居たのもあるが、俺が臆病で漸く自分のモノに出来たナミと、共に暮らし始めた訳だから当然始終共にいる状態だ。それがどうやら、新婚夫婦でももう少しこう節度とかあるんじゃねェの?と問いたくなるような甘さがあるらしい。

 それを俺に進言したのがボルサリーノやサカズキである為に、聞き流す事も出来ないんだが。だがまァ、その位に幸せの絶頂に居た筈だ。

 そして、今日はナミが休暇を利用して家でのんびりしている筈で、俺は今忘れ物を取りに来た所の筈だ。何故〝筈〟だと言うのを繰り返してるのかって?

 何故だろうな、ナミがいねェのよ。ナミの幻が目の前に座っているが、そんな紛い物に興味は……待てよ、この幻どうやってここに出現……。

 そう思ってその元を辿った瞬間、血の気が引く思いがした。ベガパンクに改良して貰ったと喜んで使っている武器は、ナミにしか扱えない魔法使いを思わせる物であり、これが無ければただのか弱い海兵のお姉さんでしかない自覚を持って欲しい。

 クリマタクトを握り締めて、チャリを片手に海へと飛び出した俺に気付いたらしい部下が半泣きで俺を呼んでたが……悪い、後で愚痴聞いてるフリして寝てるからそれで許してよ。そう心で謝りながら、ナミの居場所は分かるからと、1直線にチャリを全速力で漕いで行く己の姿に、ボルサリーノ辺りが見たらニタニタと笑いそうだと少し思った。

 到着した島には多くの食材や宝石が並び、食に関する書物も多く用意されている。瞳を輝かせて本を抱き締めるナミが見えた気がして、少しばかり許してしまいそうになる自分を抑え込む。

 今度の休みは別行動しても良い?なんて珍しい事を聞いてきたから、理由を聞いたら買い物だと言われて、その時に押し問答しつつここに1人で来たいと言われたのは記憶に新しい。この島の治安の悪さには、呆れを超えて感心したくなる程だと言うのに……。

 そんな中で見付けたナミは嬉しそうに荷物を抱えて歩いていて、その無邪気な笑顔に毒気を抜かれる。それと同時にナミを狙っている様子の人攫いを見付けて、俺は無意識でそれを凍らせていた。

 あの程度ならばナミは自力で躱せただろうと分かっていても、庇っちまうのは仕方ねェ事でしょうよ。何年も手を出す事すら出来ないくらいに、愛してやまない恋人なのだから。

 見知らぬ人相手でも即座に打ち解けて楽しそうに買い物をする姿は、善良な1般市民と変わらない。元々性格的に見てもナミはシスターとか孤児院の職員とかが似合いそうなのだから、戦える事を利用しての海軍所属はおかしくは無い。

 ……治安調査してた事にしておくか。まァ、俺の方は認めてもらえないだろうけど。

 これだけ買い物したのだから、恐らく有休使って何か作ろうとするだろうと思えば今日のこれを休日勤務にして、明日はその報告書作りとして自宅勤務にしてやれば喜ぶかもしれねェな。そうなれば明後日を通常の休みにしても、ナミの場合誰もサボってるとは思わないだろう。

 普段働き過ぎであるナミだからこそ、最近ちゃんと休みを取るようになった事は、喜びを持って受け入れられている。……俺の休みも皆がそうしてくれたら嬉しいんだけど、何故かそうはならねェんだよな。

 

 「その小豆、いくらですか?」

 「これかい?こっちの方が味は良いよ?」

 「食べるんじゃないから、そっちの……」

 

 なんの会話だとナミを見れば、多くの豆が陳列された店で店主と何やら話をしつつ何種類かの豆を購入している。その中には珈琲豆も含まれていて、何をするつもりなのかと思ってしまう。

 直後に別な店へと移動したナミは、ラッピング用品を選んでいて、そろそろ連れ帰るかと店前で待機する。いつもとは別人のような姿になっていても、ナミだと認識するのに迷わなかった自分に小さく笑ってから、出て来たナミを捕獲して帰る。

 1応駄目だと言ったのに1人で来た事を叱っては見るが、効果は無さそうで自宅謹慎だと言いながら家に閉じ込めれば少しばかり不満そうにしている。その様子に1応計画していた休みのスケジュールを伝えて、そういう事で暫く休みにするから安心して家から出ないようにと言えばナミが少し膨れた。

 

 「クザンのばーか!」

 「今夜、覚悟しとけ」

 

 俺はそう言って仕事に戻る為に歩き出す。そっと振り向いた時に見えたナミは、真っ赤になって立ち尽くしていた。

 色々やる事を終えて帰宅すると俺の顔を見た瞬間にソワソワするナミに、本当に可愛いなと思い無意識で抱き寄せてその額にキスをしていた。腕の中で熱くなっていく身体に、いつまでも慣れねェもんだなと無垢な様子のそれを少し堪能する。

 

 「ちゃんと、明日報告書は作りなさいよ。まァ……上半身起こせる程度には、加減してやるから」

 「クザン!そんなに怒ってるの!?」

 「まァ……言いつけ守らなかったお仕置きだと思って、諦めろ」

 

 もう怒ってなんかいねェけど、欲しいんだから仕方ない。俺の言葉にナミは小さくその身を揺らしてから、潤んだ瞳で俺を見上げると小さく酷くしたら嫌……なんて煽ってくる。

 愛しい温もりは、今日も俺と共にある。そのリスクも、分かっちゃいるんだけどな。

 それから数日後の俺とナミの休みが重なったその日、気怠い様子で身体を起こしたナミが俺の腕から抜け出してシャワーを浴びに向かった。それを確認しつつ、休みだしもう少し寝るかと眼を閉ざす。

 けれども浅い眠りにしかならず、ナミが腕の中にいると深く眠れるんだよなとどうでもいい事を思う。シャワーから出て来たナミは、何故か俺の元に戻らずに朝食の支度を始めてしまう。

 

 「ナミ、折角の休日をもう少しゆっくり寝てようとは思わねェの?」

 「おはよ、クザン。……そのベッドでまた寝るのは嫌よ」

 「……あァ、ドロドロだもんな」

 「……!だ、誰のせいよ!?」

 「ナミでしょうよ」

 

 欠伸をしつつそれなら仕方ないかと起き上がると、ナミは朝食を作りつつ羞恥から怒り狂う。それでも朝食を用意してくれる辺りが優しいなと思いつつも、ベッドを整えてやればナミがシャワーを浴びて来るようにと言うので仕方なくそれに従う。

 先にナミが使ったばかりだからか、ナミの匂いが強く感じられる。……ガキか、俺は。

 たかだかその程度の事で乱される。ナミ相手にする時は、俺に余裕なんか無いのだとこんな時に突き付けられちまう。

 風呂から出るとナミが朝食の支度を終えていて、俺に気付くと笑ってくれた。そして、嫌いな物とか無いといいけどなんて言って笑うから、ナミが作ればゲテモノでも食べるさと笑い返す。

 そんな俺にナミはポンと何かを投げ寄越すから、それを受取ればあの日買っていたラッピング用品だと気付く。少しの重さがある箱を開ければ中から出て来たのは、更に2つの入れ物。

 あの買い物は、俺の為かと、そして、今更今日が何の日かを思い出す。そうだ、バレンタインだと。

 1つは袋で、もう1つは箱で、箱を開ければ中からはチョコが出て来る。早速摘もうとしたら、それは食後にしてよなんて笑いながら椅子に座るのを見て、ハイハイとその箱を横に置いて袋を開ければ、中からはアイマスクが出て来る。

 だが、少し変わった感触のそれに首を傾げれば、ナミが焦ったような声を出した。それに視線を向ければナミが真っ赤な顔で、言い訳よろしく使うなら後にしてとか言っている。

 

 「これ、変わってるけど……」

 「……作ったのよ。どうしても目が痛くなるから寝てるのかなって思ってね。それ、軽く蒸して暖めてから使うと暫く暖かいから、眼を楽にしてくれると思うの」

 「……作ったって」

 「小豆と珈琲豆使ってるの。目に良い効果があって、香りもクザンが好きそうなものだからと思って作ったの。保温効果も小豆は高いから……」

 「なんで、そんな目に拘るのよ」

 

 俺が聞けばナミはサングラスを示して笑った。まるでそれが当然のように。

 

 「クザンは元々目が弱いでしょ。目が光に弱い人は、目が疲れやすいのよ。だから、サングラスが手放せないクザンには、必要だと判断したの」

 「……妙な所、聡いよな。ナミ」

 「なに?」

 「朝食後にしようや」

 「へ?」

 

 首を傾げたナミを抱き締めれば、意味が通じたようで朝なのにとか、ご飯冷めるとか色々言うがそんなの聞いてやれそうもない。どうしてナミはいつもこんなに俺を愛してくれるのか。

 服を脱がせつつ口付ければ、それ迄抵抗していたのが嘘のようにナミは力を抜いた。そして、そっと俺の首に腕を回すと、囁くように言う。

 

 「仕方の無い人ね。……ずっと、そういう欲望を持ち合わせてないのかと思ってたのに」

 「耐えてただけだ。ナミの事はずっと欲しかったのよ?勿論今も……欲しいけどな」

 「あっ……!クザ……んっ」

 

 立ったまま刺激してやれば縋るように俺に抱き着くナミに、このまま崩れ落ちるまで立った状態で可愛がるかとニンマリする俺に対して、切なそうな、けれども熱の篭った瞳で見上げてくるナミ。……その顔、辞めなさいな。

 止まれなくなるなと自嘲しつつ、ナミの肩に噛み付けばそれにビクリと震える身体。それでも、何をしても抵抗しないナミに、俺は随分と甘やかされていると実感する。

 Happy Valentine……これから先何があろうとも、離れるつもりも離すつもりも無いのだと互いに強く抱きしめ合う。きっと2人ならば、どんな事が起きても大丈夫だと信じられるから。

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