※この作品はR-18です。

光源氏シリーズ   作:夢枕 七変化

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この作品は各キャラのラスト固定です。
この作品には、ヒロインの年齢設定がございません。


そっくりさん(子拾/光源氏)side

 2人で旅をするようになって、どれくらいの時が過ぎただろうか。俺1人なら、どこかで野垂れ死んでいた可能性もあるのだろうかと、蜜柑の香りがする小さな生き物を見て考える。

 俺がサカズキに負けて退役すると、迷いも躊躇いも無く当然のように着いてきてくれたナミには感謝している。だからと言って俺が何かしてやれる事は無く、ナミから要望を言ってくる訳でも無い。

 ……何か少しくらい我儘言ってくれても良いのにな。何を見ているのか、時々分からなくなる位にナミは考えが読みにくい時がある。

 時々憂いを帯びた瞳で空を見ているが、それはまァ、あの戦争の事を思えば当然だろう。そんな事を考えていたら、突然ナミが舵をきった。

 

 「どうしたのよ?」

 「見覚えのない島があるの。地図にも無かったわ」

 

 その言葉に俺は海の上に足場を作り、自転車を止める。すると確かに知らない島が見えた。

 行きたいのかと問う迄もなく、ナミはキラキラした眼差しを向けて来ていたから、俺もまた躊躇わずにそちらに向かう事にした。移動は並んで行っているが、基本的に俺は自転車で、ナミは船で行っている。

 荷物を積み、夜陸につけない時共に寝る為には必要だろうと言う事で用意してあるだけなので、船は小振りのものだ。船より小回りの利く自転車に頼るのは、俺の悪い癖だろう。

 島に到着すると、俺が自転車を船に運び込んでいる間にナミが姿を消した。何処へ行こうと言うのかと声を掛けようとして、この島の違和感に気付く。

 前におつるさんから聞いた事があるような……無いような……微妙な所だな。確か、何か聞いた気がするんだが……うーん?

 うんうんと唸っている間に帰って来たナミが、俺を心配そうに見詰めてきて、ハッとする。その腕には何か、子供っぽいのがいて、拾ってきたのかと何故か素直に思えた。

 犬猫じゃあるまいし、人間の子供を拾って来るってどうなんだと思ったが、前に超ペンギンも拾ってたのを思い出せば仕方ないかと思わされる。それにしても、ペンギンの次は人間か。

 

 「クザン、大丈夫?」

 「ん?あァ……この島、おつるさんから聞いた覚えが……忘れた」

 「そっか、忘れちゃったか。でも大丈夫よ、そういう意味では期待してないから。それより、クザンは、その、2年くらい前に女の人と、その……えっと……」

 

 言い淀み、その頬を赤く染めているナミは、けれども抱いている子供を守ろうとするようにしっかりと抱いている。その指先が、微かに白い事で言いたい事がわかった。

 

 「ナミ……俺はずっとナミの傍に居て、他の女に手を出せる環境じゃ無かったと思うんだよ。んで、そう思ったのは、俺からの愛情表現が足りてなかったって訳じゃ無さそうだけど……?」

 「その、あの……」

 

 そう言って抱いている子供のお包みをそっと外して顔を覗かせたナミは、俺とその中身を交互に見ている。それに釣られるように中身を見れば、確かに疑うよなと言いたくなる程に、俺と似た生き物がいた。

 俺からの愛情が足りてないって言うなら、暫く何処かに篭ってやろうと思ったが、これはナミを責められねェな。……小さい自分ってのは、違和感が強いが。

 

 「やっぱり、優作さんから、ゆうちゃんと呼ぶべきかしら?」

 「誰よ、そのユウサクさんって……」

 「クザンのそっくりさん。似てて驚いたから、名前覚えてたの」

 

 …………そうなると、ボルサリーノはクニエってそっくりさんがいて、サカズキにはブンタってそっくりさんがいて、それぞれに会った事があるのかと思う。何故か、ナミはブンちゃんとクニエとユウサクさんって呼ぶが、年齢が違うとかだろうか。

 

 「ねぇクザン……おつるさんから聞いた覚えがって言ってたわよね?」

 「ん?あァ……まァ」

 「……そっか、なら、そっか……」

 

 そう言って納得してから、勝手に顔を赤く染めて頭を振り始め、1人で嘘だー!と叫んでいるのを眺める。んー?

 

 「ナミ?」

 「……この島に、数日滞在させて」

 「理由は?」

 「島から離れると、多分、私死んじゃう」

 「……詳しく、聞かせてもらおうか」

 

 俺の言葉にビクリと体を震わせたナミは、渋々とした様子を隠さずに俺に説明してくれた。それを聞いて、俺は深く溜息を落とすと明らかに何かを誤魔化して話していた1部を突っ込むべきか悩む。

 そして、思い出した。〝最愛の人〟に擬態する植物と言う言葉を。

 

 「……その子供、もう1度見せてくれるか?」

 「えぇ、本当にクザンと瓜二つで可愛いわよね」

 

 とりあえず〝ユウサクさん〟が最愛の相手では無さそうだから良しとするかと、その反応で思う。だから、そっとナミごと抱き寄せて言葉を落とす。

 

 「……ナミ、俺も愛してる」

 「も?」

 「俺が最愛の人だと言われるとは思わなかったけどな」

 「……く、ザン!知らないって!覚えてないって……!」

 「思い出した。そこだけな」

 

 俺の言葉にナミは口をパクパクと動かしてから、小さく狡いなんて言う。それに何も言えずに居たら、潤んだ瞳で俺を睨みつけて言葉を発した。

 

 「なんて、都合のいい……!!」

 「……疑うか?」

 「疑わないわよ!……まぁ、うん、間違ってないし、いいわよもう」

 

 可愛いな。ナミをこのまま、船内に連れ込んで良いよな。

 最近はナミが拾って来た超ペンギンのキャメルが居て、中々手も出せなかったしと思って手を伸ばす。しかしその時、俺の擬態植物がその手に噛み付いてきた。

 俺……ロギアだから痛くはねェけど、なんなのよ?

 

 「……植物なら、海水に落としたらどうなるかな?」

 「……私と1緒に死ぬわね」

 「は?」

 「多分、私とこの子は繋がってる筈よ。その子が怪我したら、私も怪我する筈」

 

 サラリとと言われて、息を呑む。ナミは冗談とか言わねェよな……?

 

 「…………厄介だな。おい。いつまでよ」

 「私が読んだのが正しければ3日前後だったと思うわ」

 

 そう言って擬態植物を愛おしそうに見つめる姿は、既に母親そのものだ。将来、こうして俺の子を抱いてる可能性はあるんだろうか。

 そう思ったら、今の生活は続けさせられねェよなと思う。詳細については何も話してねェのに、どうしてナミは文句も言わねェのか。

 大切な弟が死にかけた原因を作った男と懇意にしているのもあり、本来恨まれてもおかしくねェってのにな。それなのに、まだ足りないとナミを求める自分を自覚しているんだから、厄介なもんだ。

 

 「仕方ねェか。……とりあえず、それは何を食うのよ?」

 

 植物でも虫とか食べるのもあるよな。後は、水か?

 そうして話を聞きながら、ナミが過ごしやすい空間をとりあえず氷で作ってやる。手抜きなそれに対して、嬉しそうに笑うから何だか罪悪感に苛まれちまう。

 夜は比較的大人しく植物も寝ててくれる。ただし、俺がナミに手を出そうとすると、泣いて俺からナミを奪うのは許せねェ気分にさせられるがな。

 つまり俺と植物はこの三日間、素直にナミを取り合っていた。植物は当然のように甘え倒し、俺はナミの膝枕で寝たり、ナミを抱きしめて寝たり、共に食事をしたりをして過ごした。

 そうして過ごす三日間は、確かに互いを邪魔に思ってはいたが、それなりに楽しかったのも事実。……だからこそその頭にある花が咲いたその日、森へ行き別れるしかないとなれば多少の物悲しさを感じていた。

 俺がそう感じてるって事は、ナミは……なんてのは考えるまでもねェよな。……素直に泣いてくれると良いんだが、どうだろうか。

 

 「まー……?」

 

 子供の声でハッとしてナミに視線を向けると、ナミが泣きそうな顔で微笑んでいるのを見ちまう。微かにその身を震わせて、そして言う。

 

 「……1人で、大丈夫?」

 「う!」

 「……ちゃんとお水自分で得るのよ?」

 「あい!」

 「……大きく、育つのよ。パパも大きいんだから、そこは問題無いと思うけど、でも……」

 「まー……。あう!」

 

 子供は何言ってるかわからねェし、ナミはただひたすらに心配してるのが伝わる。……にしても、パパか。

 そうか、パパ……。やっぱり、作るか?

 そんな事を考えていたら、ナミが子供を強く抱きしめて、震えながら元気でねと言う。それを受けて、俺にはそんな顔出来ねェよと言いたくなる程に、無邪気な笑顔で子供が頷いた。

 そっとナミが手放せば、タタタッと駆け出して、日向に座るとナミを見て嬉しそうに手を振った。それから俺に視線を向けて、唇の動きで〝任せた〟と告げるとそのまま光に包まれて行く。

 ……あンのガキ……全部理解してやってやがった……!

 そう理解した直後、子供は明らかに原型を残さない状態となる。立派な植物が1つ、その場に残された。

 座ったまま動かないナミに近付くと、涙を流す事も無くただ植物を凝視して動かずにいる。……泣けなかったかと、そっとその小さな体を抱きしめると、ナミは微かにその身を震わせて泣き出した。

 受け止めてやるよ。ナミの事なら何でも。

 だから、今は心のままに泣いてくれ。感情を見せる事を苦手とするナミを、好きに泣かせてやりたくて俺はその背を撫で続ける。

 

 「ナミ……返事は後で良いから、聞いてくれ」

 

 俺の言葉に泣きながら頷くナミの頭を撫でて、やはり愛しいなと思う。先生の絶望が、今なら痛い程によく分かる。

 

 「俺はまた、息子に会いたい。だから、今度から……その方向でナミを抱きたいんだが……ナミも同じように思ってくれるか?」

 

 先生がなし得なかった家族を守り切ると言う事を、今の俺に出来るのか。そう考えたら未知数過ぎるし、自信なんかねェけど……こんなにも泣いてる愛しい人をそのままには出来そうに無い。

 何より俺も、三人で過ごした日々が楽しかったんだ。俺の問いかけにナミは顔を上げて、微かに微笑むと小さく私も……と答えてくれた。

 それを聞いた俺がナミを船まで即刻連れ帰ったのは、不可抗力だろう。後にこの島は、宝玉の書いた手記によりカップル達で溢れかえる有名な観光地になるのだが、それはまだ、誰も知らない小さなこぼれ話。




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