※この作品はR-18です。

光源氏シリーズ   作:夢枕 七変化

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ハロウィンイベント(光源氏16)side

 大切に守ってェー……変なのに目を付けられねェよぅに必死で隠してー、事務だけをやって貰っていたってェのに……。ナミが物凄く優秀だった事から、わっしと立場の近いヤツらにその存在に気付かれちまった。

 気付かれたのは、まァ……嫌だけども、仕方ねェよなーと諦めもつく。問題はその後だよねェー。

 内勤の評価だけで地位を上げていくナミにやっかみが起きて、この度の討伐隊に無理矢理押し込まれたのだ。わっしが共に行けないのならば、行かせねェと言って折れなかった為、わっしの補佐官と言う事で送り出されたんだがねェー……。

 …………戦闘を好まないのは知っていたが、全員死なないように最低限の怪我で済ませて捕らえるその手腕に、わかる者は戦慄を覚えた。相当な実力差が無ければ、生かしたままで無力化なんて芸当は出来ねェって事、ナミは知ってるのかねェ?

 そんな事があり、前線でもやって行けるんじゃねェかとの話まで出てきた。だが、わっしがついそれを話す奴らを睨み付ければ静かになる。

 だが……皆なんにも分かってねェなァと溜息が零れる。ナミは部下のいない所に到着すると、自らの体を強く抱き締めて震え始めた。

 敵であれ、人を傷付けた事が怖かったのだろう。恐らくは……傷付けたくは無かったのだろうと分かる。

 その甘さが……堪らなく愛しい。そっと抱き締めれば震えるその体をそのままに縋るように抱きついてきてくれて、それがまた何とも言えない程の愛しさを感じる。

 そんな事を回想していても、目の前の現実は変わらないんだけどねェー……。机に向かい海図を描き続けているナミを見れば切なくなって来る。

 

 「ナミ、構ってくれよォー……」

 

 言いながら無駄に光ってみても無駄なようで、諦めの溜息を落とした時手紙が置かれているのに気付いた。読んでみれば楽しそうな事が書かれていて……これなら仕方ないから、我慢してあげよォかねェー……。

 食べたい物を考えて、同時にナミに着せた時に似合いそうな物を考える。まだ想いも伝わって無いのに、わっしは何を考えているのかと、いくつかの案を自ら却下しつつ帰る為の進路に問題が無いかを確認しに行く。

 それからそれ程経たない内に、船が無事マリンフォードに帰り着いたので、役職の問題でやる事が増えちまう。それが落ち着いた頃には、午前様だった。

 やだねェー……。疲れる仕事ばっかりだよォー……。

 自宅に帰り、ふと部屋に人の気配がない事に気付き、ナミが家に居ないと分かればまさかと思う。他に、考えられねェよなァー……。

 船に光の速度(全速力)で戻れば予想通り海図を描き続けていて、なァにしてんだァーい?と声を掛けようとした時に振り向いたナミ。見れば、随分と弱った顔をしている事に気付いた。

 

 「ボルサリーノ大将……怒ってますか?」

 「徹夜しちゃァーダメだって、何度も言ったでしょーよー……」

 

 そう言葉を向ければ、しょんぼりとした様子を見せるから、叱るに叱れなくなる。これが演技や計算ならば、まだ良いのかも知れねェなァーなんて考えちまうくらい、俺はナミのこの顔に弱い。

 そんな事を思いながら、ナミを抱き締めると甘えるように寄り添って来る。だからそれを言い訳にして、甘やかすようにけれどもしっかりとその体を抱き上げて、帰宅する為に歩き出した。

 海図は描き上がっている様子だから、明日にでも誰かに取りに来させりゃァー問題無さそうだしねェー。能力を使えば即座に帰り着けるものを、光れば近所迷惑だと言い訳して、ゆっくりと帰宅する。

 腕の中で大人しくしているナミに、顔がニヤけそうになるのを抑えつつ、他愛ない会話をポツポツと繰り返す。その中で次第に返事の間が開いてきたから、言葉を向けるのを辞めれば、コクリコクリと船を漕ぎ始めたのが分かった。

 帰り着いた頃には、安心したように眠っているナミが居る。その無防備な信頼を嬉しく思うのと同時に、少し胸が痛むと言ったらナミはどんな反応をするだろうかと考える。

 ……他が優秀だから忘れがちだが、ナミは本当に鈍い子で、かつまだ年齢的には親に守られているのが当然の子供なのだ。そう思えば、溜息の1つも落ちようというものだ。

 体格差を考えても、ナミの負担にしかなり得ねェのはわかってるんだけどねェー。それで諦められるならば、こんなにも想いを拗らせたりはしてねェ訳よォー。

 可愛い眠り姫をベッドに運びながら、眠り姫と言う自分の脳内に現れた単語に従って勝手にドレスに着替えさせ、ベッドの周りを花で覆ってみる。この話もナミが書いたものだったと思い出しながら、童話のお姫様のようだと小さく笑い、目覚めた時の反応が楽しみで隣室で待機しながら様子を伺う。

 花に囲まれて眠るナミは、その容姿もあってか生きてる気がしねェから見ていてつらくなったのもある。それから数時間が経過した頃、気配が覚醒に近付いているのを感じて部屋に入った。

 そのまま様子を見ていれば、今にも目覚めそうだと分かり、折角だからとその唇に自らの唇を重ねていた。いや、人道的にも立場的にも良くないのは、分かってるのよォー?

 それでも、触れずには居られなかった。確かあの童話では、口付けで目覚めたよォー?そんな事を言ってやるつもりで、その唇を貪ればナミは苦しそうな息を吐く。

 唇を離したら、その顔を赤く染めて、瞳を潤ませた美少女が荒い呼吸をしつつわっしを見詰めていて……。声が、出せなくなる。

 

 「ボルサリーノ、さん……。どうして?何が?」

 「……眠り姫を起こすのは、王子様のキスだっただろォー?」

 

 わっしの言葉に反応して自らの状態を認識したらしいナミは、恥ずかしそうに俯いた。それから、わっしの腕を掴むと俯いたままで言葉を口にする。

 

 「……私の、王子様に、なってくれるの?」

 

 それから聞き取れないような小さな声で、それともイベントの間だけの泡沫の夢(うたかたノゆめ)?なんて……。……そんな事言うと、期待しちまうよォー?

 そうなったら、手放せる筈も無く、壊れる程に愛しちまうだろう事は想像に硬くねェってのに……。わっしは花に埋もれるそのベッドに、ナミをもう1度押し倒す形で戻すと、笑いかけていた。

 

 「Trick or Treat……」

 「何も、無いし、ボルサリーノさんが私を押さえてたら用意なんて……」

 「ナミが最高のお菓子だから、他にはいらねェよォー?わっしはね、ナミを愛してるから、このまま本気で食っちまいたいけど……ナミは、食われて問題無いかァーい?」

 

 体格的にも年齢的にも問題しかないのは分かっていて、眠り姫に問い掛ける。眠り姫はそんな歳上すぎる王子に頬を染めながら、小さく頷く。

 

 「はじめて、だから……優しく、してください」

 

 無意識で男の欲を煽るナミに、わっしの無けなしの理性は音を立てて崩れ落ちる。Trick or Treat……楽しい夢は、始まったばかり。

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