人がどんな想いで、お前を隠して守ってると思ってやがる……!
体への影響を考えて、突っ込まずにいる俺の精神力をなんだと思ってるんだ……!
言葉に出来ないそれらが渦巻くのも、ある意味仕方のない事だろう。人が禁止した島に1人で行き、帰って来てからも反省の色は全く見せねェんだから。
体が出来るまではと耐えている俺の身になれ!そして、悪い事をした自覚を持て!
「ナミ!」
「……私、謝らないわよ。私は悪くないもの」
「船長命令に背いただろうが!」
「違うわ。私はローの禁止した事はしたけど、個人的な所だから船長命令とは認識してないし、今後もしないもの。それとも……ローの言葉には、全て従えと言うなら、今後は1切口答えもせずに従順に従ってあげるけど?」
生意気にもそう言ってニンマリと笑う。何故俺が追い詰められてんだよ……!
「……そうなったら、ナミはなんでも従うのか」
「船長としてしか、ローを見なくていいなら、従うわよ。……即ち、それを逸脱した命令を受けたら、目の前で死んであげる」
「てめェ!」
思わず首を絞めた俺をナミは苦しそうな顔1つ見せずに、笑った。余裕な様子で。
「……ローちゃんは、無闇に人を殺せない。優しいものね、ローちゃんは」
半分は虚勢、残りの半分は信頼とナミが持つ甘さ。分かっていて、俺の手からは力が抜ける。
軽く咳き込んでから、俺を見て優しく笑ったナミは、そっと俺に手を伸ばして頭を撫でる。幼い子にそうするように。
「ローちゃんは、いい子ね」
「……馬鹿ナミ。暫く反省してろ」
そう言って部屋に鍵をかけて出れば、ナミはもう出られない。いや、本気なら短剣で切り裂いて逃げられるのは分かってるが、そこまではしねェだろう。
それから数日間、寝る時だけはコラさんを派遣して引きこもらせたらコラさんから苦情が出た。いや、寧ろ嘆願か?
「頼む。ナミを許してやってくれ。ナミの部屋が、酷い事になってんだよ」
「ナミは綺麗好きだからそれ程汚さねェだろ」
「匂いだよ!頼むから!」
「……キムチか納豆、ブルーチーズでも食ったか?」
「その方がマシだよ!1度部屋に行ってみやがれ!」
言われるままに部屋に向かえば、まさかの匂いが俺の鼻を直撃した。……なんだ、この甘さは……!
「あれ?ロー?」
「何が……あった?」
「部屋でただ寝てるのもアレだから、色々作ってたの。もう、完成したけど……そんなに強いかな、匂い」
そうか、ずっとこの部屋にいるから鼻が麻痺してるのか……!
可愛く首を傾げれば、なんでも許されると思うなよ!?
「ナミ、もう、部屋から出ていい!早く換気しろ!」
そもそもこの部屋にキッチンなんて無かった筈だが、どうやって料理してたんだ。本気で理解不能だ。
そんな俺にナミは、不思議そうな顔をするばかりだ。そもそもなんの匂いだよ!
コラさんの言葉を理解すると同時に換気をさせた俺は、今後はお仕置きに部屋に閉じ込めるのはやめようと心に誓った。そんな慌ただしい時が過ぎて、俺達は力無く座り込んでいる。
「ごめんね、お世話になってる大切な人達だからと思って……。悪気は無かったのよ?」
そう言って全員に匂いの元たるプレゼントを配って回るナミからのそれは明らかにチョコだ。ベポに最初に渡した後は、明らかに同じ物を配り、最後にコラさんに渡してから最後1つだけ残った箱を抱き締め、困ったように俺を見る。
そして、心配そうな顔をされる。今チョコをこのタイミングで渡していいか悩んでるな……?
「ナミ、どうやってそれを作った。既製品じゃねェだろ」
「ボウルとかは買ってきてたから、湯煎掛けて作ったのよ」
「部屋にはシャワーしかねェだろ」
シャワー程度のそれでは湯煎にならねェ事は分かってるから問いかければ、ナミは小さく頷いた。そして、クリマタクトに視線を向けて小さく笑う。
「クリマタクトで、シャワーテンポ使えるのだからそれの熱量を上げれば良いだけでしょ。そうしたら熱湯になるし、温度調節は簡単だもの、後はどうにでも出来るわ」
「ナミが1人いたら何処ででも生きられるな」
「本当にな……」
クルーのそんな声が聞こえて来て、俺は自然と笑い出す。本当に、こいつらといると落ち込んでさえいられねェ。
アイツを倒す為だけに存在しようと、修羅に堕ちようと決めてもコイツらがいるとそれも出来やしねェ。本当に、困るな……。
「ナミ、早く俺のも寄越せ」
手を出せば顔を赤くして、ナミは数歩下がった。だが俺の能力の前ではそんな行為は無意味でしか無い。
持っていた本とナミを入れ替えればナミは俺の腕の中に収まり、その顔を赤く染める。そんなナミから箱を奪い取れば、中から出てきたのは赤い紐。
お情け程度に入っているチョコよりもほぼ八割を占める赤い紐が気にならねェ筈はなく、取り出して見れば恐ろしく長い。……なんだ、これは。
「……鬼哭を持つ時、ローが時々持ちにくそうにしてたから、紐巻いたら滑り止めになるしとか、ローなら上手くやるかなって……思って……」
モゴモゴと言葉を口にするナミに、俺はどうしてこうコイツは可愛いのかと思わされる。だからこそ目の前で紐を鬼哭に巻き付けてやれば、ナミは何故か懐かしそうに鬼哭を見た。
「鬼哭になった気がするわ」
「鬼哭はずっと鬼哭だ。何言ってやがる」
「いいのよ、わからなくて」
そう言って笑うナミは、本当に可愛いが……この紐、ナミにも似合いそうだなと言ったら怒るだろうか。いや、泣かれるだけか?
そう思いながらもナミをひょいと抱き上げて、甘い匂いの無い自室へと運べば背後からナミに頑張れよと声を掛けるクルーがいる。実際、体の事を考えたらもう少し手を出さずに居てやりたいが、そろそろ若い男の体を持つ身としては、キツイものもある。
「……ナミ、悪いが……優しく出来ないかも知れねェ」
「ローちゃんは優しいと思うけど?」
「……俺も、そうありたいとは思ってる」
純粋な眼差しで俺を見てそんな言葉を口にするから、俺は自分のそれを抑え込もうとしてみるが、もう……どうにもなりそうもねェ。入れないでもやり方はある。
ナミの体型なら出来ない事もねェだろうと、そっと俺の熱く滾る所にナミの手を持って行けば、挙動不審になった。その様子に知識が全くない訳じゃねェと知り、俺はあえて囁くように問い掛けてやる。
「……キツイのは、分かるな?」
「むむむむ、ムリ!そんな凶悪なの入らないから!私、なんにも知らないから!」
「ナミが男を知ってたら、インペルダウンを切り刻んででも魚を細切れにしている。安心しろ」
「安心出来ないわよ!ね、あの、本当に待って!ね?」
「俺との永遠を望んだのはナミだろうが。ずっと傍に居たい、愛してると言ってんだろ」
赤い紐を身に付けてろってのは、そういう意味だろうが。鬼哭は俺の1部として数えられる程の物だと分かっていて贈ったんだろ。
それに巻く為の赤い紐の意味が、わからねェと思うなよ。熱いモノをナミの胸に押し当てて、俺は嗤う。
「今日はまだ入れないでいてやる。ナミが頑張れるんだったらな」
「そんな、私、経験ない……から、その、満足させられない」
「経験があったら、相手を切り刻んでるって言ってんだろ。だからんな事気にしなくていい。……俺が、全て教えてやるよ」
俺の言葉にナミは蚊の鳴くような声で、頑張りますと呟いてから、怖々といった様子で触れてくる。それに小さく笑った俺は、海賊以前に単純に〝悪いお兄さん〟だろうなと少し思う。
もう少しナミの体が成長するまでは、耐えてやるつもりだったんだがなと貰った紐と鬼哭を見て笑う。これ以上俺を縛って、どうするつもりなんだお前はと心で呟きながら、俺は無垢な少女にイケナイ事を教える為の言葉を口にする。
Happy Valentine……無垢な少女が妖艶な美女になる頃、これが自らの首を絞める可能性に思い至らぬ男は、少女に優しく教えて行く。束縛されたのは、さて……どちらなのか。
イベント系は※つきませんので、悪しからずご了承ください。