突然帰って来たミホークは、ペローナちゃんを見て眉を寄せた後で、私を見て理不尽な言葉を口にした。それに私は内心で舌打ちしつつも甘えるように擦り寄り、招集されている場所へ連れて行く事を願った。
「少しは素直に寂しがれ」
「友達が来てるんだから、寂しい訳無いじゃない無い。……でも、やっぱり寂しかったのかも知れないわね」
「……珍しいな」
私の言葉にミホークは僅かに瞠目して見せたけど、続けた私の言葉にその瞳を眇めると首を横に振る。どうして、最近は私を閉じ込めようとするのかな。
でも、今回ばかりは譲れない。ミホークがなんと言ってもついて行くんだから!
「ミホーク、もう、置いて行かないで。招集あるんでしょ、連れてって」
「駄目だ」
「連れて行ってくれないなら、1人でも行くわ」
「その足切り落としてでも、行かせはせぬ」
「横暴すぎるわ!」
そうして、私とミホークの戦いの火蓋が切って落とされた。城を破壊しない為に、少し離れた所で開始した私とミホークの戦いを見たペローナが静かな古城じゃ無いと熊に対するボヤキを呟いたのは、ヒヒ達にさえ届いては居なかったが。
私だって、ミホークに勝てるなんて本気で思ってる訳じゃない。それでも、連れて行って貰うには実力を示すしか無いし、下手をすればこの男は本気で足を切り落としかねない事を知っている。
私が弱いから置いて行こうとしているなら、考えを改めて貰わないと無理だもの。私は、エースを助けに行く!
ミホークの剣を受け流して私は勝つ為ではなく、負けない為の戦い方をする。躱す、受け流す、避ける。
隙があった時だけ、その剣を動かして舞うように切り付ける。そうしてどれ程の時を戦ったのか、ミホークは微かにその唇を上げて表情を緩めた。
「……やはりナミは美しいな。だが、連れて行けぬ」
「どうして?」
「王下七武海本人のみを招集されている故だ。……ナミこそ、俺に理由を話せ。悪いようにはせぬ」
戦いながら、ミホークは微笑み言葉を向けて来る。余裕がありすぎて、もう、ただひたすらに切ない。
ミホークは確かに話せば何かしてくれるかも知れない。でも……そう思った瞬間、短剣が弾き飛ばされてミホークに抑え込まれてしまった。
そのまま当然のように重ねられる唇を、私には拒むなんて出来なかった。会いたかったと心で想いながら、その首にそっと腕を回せばミホークからの口付けは深くなり、吐息をもらす隙間さえ奪われる。
寂しかったし、不安だったけど、そんな事は口に出せなくて……私からも舌を絡めに行く他、何も出来なかった。そっと唇が離れた時、宥めるようにミホークが私の名を呼ぶから、私は素直に言葉を口にしていた。
「……弟なの」
「ん?」
「処刑される、火拳のエースは、私の弟なのよ!」
「……成程。ならば、可能な範囲でそれとなく助力してやるので良いな」
躊躇いも迷いも無く、エースを助ける為に力を貸してくれるというミホークを信じられない気持ちで見詰める。声が、上手く音にならない。
「ミホーク」
「連れては行けぬ。だが、悪いようもせん。……ナミに泣かれるのは、俺もつらいのだ」
そのままその場の雰囲気に流されて、ミホークと体を繋げてしまって、あんなに外では嫌だと言ったのにと体の動かなくなった私が怒るのを聴きながらミホークは旅立って行った。ミホークは去り際にペローナちゃんに、あまりナミに迷惑をかけるなよと言い捨てて行ったので、どうやらここに居る事を許したらしいと分かる。
それにしても、ミホークにお弁当持たせてあげられなかったなと落ち込んでいたその時、大きな音が聞こえて私はまさかと思う。ミホークが不在の時に落ちて来た2人目の訪問者は、時が確実に進んでいる事を示していた。
ペローナちゃんが即座にそこへ向かうのを私もふらつく足取りで追いかければ、途中で会ったヒヒに私は担いで貰っての移動となる。つまり今の私は、歩いているというのも烏滸がましいような状態にあるのだ。
情けないなと思いながら落下物のあった筈の場所へと向かったけど、既にその落下物は居ないらしい。だとするなら、既にヒヒ達と戦っているのだろうか。
そして案の定戦っている姿を見付けて、同じようにその様子を眺めているペローナちゃんに声を掛ける。すると可愛くなかったと嘆くから、可愛いぬいぐるみ作ってあげるわと頭を撫でつつ訪問者の様子を伺う。
ヒヒ達もまた、随分と生き生きとしてるからどちらかが動けなくなるまでは見守るのが良さそうだと判断した。それから暫くの後、力尽きて倒れた訪問者をヒヒに頼んで運んでもらい、皆もちゃんと手当するのよと声を掛けて城へ戻ればペローナちゃんがボソリと何かを言ったけど、聞き取れなかった。
とりあえず空き部屋の1つに訪問者たるゾロを寝かせて、衣服を剥ぎ取り濡らしたタオルで汚れを落として行く。それをペローナちゃんが手伝ってくれて、2人で治療を終えるとうずうずした様子でゾロを見詰めるペローナちゃんの為に、私は大急ぎでクマシーと良く似た着ぐるみを作って渡してあげる。
それを手に、大喜びでゾロをクマシー擬きにしたペローナちゃんは何とも満足そうだ。それを眺めながら、手で持ち歩けるサイズのクマシーと、抱き枕サイズのクマシーを作ってあげれば嬉しそうにそれらを部屋に持って行ったので、約束は果たしたと思って良いのだろうか。
……それにしても、クマシーって可愛いのかな?
私には、可愛いと思えないけど、ペローナちゃんが満足してるなら良いかなと思考を切り離して食事の支度を始める。消化には優しくないけど、疲労回復効果の高い食材だから玉蜀黍を茹でてすり潰してコーンスープを作り、コーン焼売もついでに作れば多分ペローナちゃんは喜ぶ。
ご飯はと考えて、ひじきと鶏皮の炊き込みご飯を作りながらデザート用に苺大福ならぬ蜜柑大福を作る事にした。それぞれが完成する頃、着ぐるみを着た状態で姿を見せたゾロと、それを満足そうに見ているペローナちゃんに視線を向ける。
「ナミ!今日は何を作ってくれたんだ?」
「疲労回復にと思って、玉蜀黍を使った料理を幾つかね。サラダはただの生野菜よ」
ドレッシングもマヨネーズとサラダ油を混ぜて作った手抜きなので、少し申し訳無い気持ちになる。それでも嬉しそうにしているから、運ぶのは手伝ってねとペローナちゃんに言ってやらせておく。
「おい、この女の家族ならもう少しちゃんと躾を……生意気な事言って、すみませんでした」
言葉の途中でペローナちゃんがネガティブホロウを食らわせたようで、それを見てあらあらと思う。でもまぁ、多分私にはネガティブホロウ効かないし、どうでもいいかとも思ってしまう。
食事を共にしながら、簡単に自己紹介を済ませてこの場所がミホークの住処だと伝えれば、急いで帰らなければとゾロは飛び出して行こうとするから1応伝えておく。無駄にヒヒ達を煩わせたくないから。
「ヒヒ達は、私かミホークが1緒じゃないと無差別に襲いかかってくるわよ。そして……彼等はそれなりに強い。でも、私やミホークの住むこの城には近付かないから、もう戦えないと思ったら帰って来て」
「……お前は、鷹の目の何なんだ?」
「あれ?言ってなかった?」
「私も聞いてないぞ」
ペローナちゃんがそういうので、あれ?と思いながら素直に答える。左手の薬指には、私とミホークのお揃いの指輪があるのにと思えば、伝え忘れてしまっていたのも別段問題には思えない。
そもそもペローナちゃんって私が〝ミホークの女〟だと聞いてたんじゃないの?記憶違い?
「私はミホークの妻よ」
「「犯罪じゃ……?」」
「ミホークは海賊よ?犯罪とか、今更でしょ」
それに、ミホークから見たら私は戦利品からペットで、その後女として見てもらったんだと思ってる。本人に言えば何故か虐められるので言わないけど。
「ミホークは優しいから、帰るまでここでゆっくりしてても大丈夫よ」
「「それは
何故か重なった2人の声に、勘違いされてるのねとミホークを想う。先程別れたばかりなのに、もう逢いたいし……何よりエースが気掛かりで私は少しではなく気落ちしてしまう。
デザートと煎茶を出して2人に勧めつつ、1応お風呂の場所を伝えて好きに使ってと言っておく。私は2人を残して部屋に戻ると、笛で音を確認しながら曲を書いて気持ちを宥める事にした。
それから暫くの間、ヒヒに負ける度に帰ってくる男を治療しつつ、ミホークとエースの無事を祈る日々が続いていた。ペローナちゃんはゾロの後をつけて行き、城まで連れ帰ったりしているのだから何だかんだと面倒みのいい子なのだろう。
そうして時は流れて、ゾロがミホークに持ち帰られた。驚く私に、ゾロを見知っていると言ったミホークはゾロをペローナちゃんへと投げ渡すと治療を命じ、迷い無く私を抱き寄せると唇を合わせてきた。
問い掛けたい事は沢山ある。聞きたい事、知りたい事、やるべき事も沢山あるのに、私もまたミホークと離れていたこの期間が耐えられなくて自らミホークへと腕を伸ばして、その首に腕を回す。
掬い上げるように抱き上げられた体は、そのまま部屋へと運ばれ当然のようにベッドで組み敷かれる。見事な早業で服を脱がせてくるミホークに、私はその前にと必死で言葉を向けた。
「ミホーク、待って!」
「待てぬ」
「や!少しだけ、お願い……!」
私の言葉にミホークは仕方なさそうに動きを止めると、何だと嫌そうな顔を向けて来る。何だってそんな顔をしているのか分からなくて、でも私は、言いたい事から伝える事にした。
「ミホーク、お帰りなさい。逢いたかったわ」
「……ここで煽るとは、余程俺に飢えていたらしいな」
「煽ってないけど!?」
私の言葉を無視して残りの布を剥ぎ取ると、ミホークは視姦するように私を見て満足そうに頷く。それに赤くなる自分のなんと情けない事か。
それに私はまだもう1つの知りたい事を聞けてない。だからと思って、私はミホークが本気で始めてしまう前に問い掛ける。
「ミホーク……あの、エースとルフィは?」
「わからん」
「へ?」
「死んだのを確認してはおらぬ。故に、生きている可能性はある」
私は戦争のシーンを思い出して、どんな別れ方にしても、死ぬ瞬間を見ずに終えたのならばきっと大丈夫と……そう思う事にした。それからそっとミホークに抱き着くと、ありがとうと伝えようと唇を開いたのに、声が音にならず涙が勝手に溢れる。
嗚咽を抑えようとミホークから手を離せば、ミホークが私の頬を伝うそれに唇で触れて、何故か優しく微笑む。それは、幼い子供を見るような慈愛の篭った眼差しで。
「そういう泣き顔も、美しいとはな。俺をこれ以上虜にして、どうするつもりだ」
私が何かを返すより早く私の唇はミホークの唇に塞がれて、当然のように秘部に差し込まれた指が私を翻弄する。どれ程そうしていたのか、体がミホークを求めて熱を持つ頃唇が離れた。
「ナミ、乗れ」
当然のように命じられて、それに私は逆らえなくて、小さく頷くとそっとその熱く滾る場所を自ら咥えこんで行く。その刺激に思わず強くミホークに抱きつけば、ミホークの指先が背を擽るように撫でて来る。
それに体はビクリと反応して、犯人である筈のミホークに縋り着けば何故かミホークは満足そうに笑う。そして、手を払われてしまうと支えが無くなった為に、自らの体重で1気に深くまでそれを入れてしまい悲鳴が迸る。
「ゃ……あああぁぁぁ!!」
「ナミッ!」
後ろへ倒れそうになった私の腰を支えたミホークは、胸の先端に唇を触れさせ不安定な状態にある私の体に更なる刺激を与えて来る。まだ達している途中だからというのもあり、力の入らない体で悲鳴のような声を響かせればミホークは楽しそうに、下から容赦なく突き上げつつ胸の先端を舌で転がし始めた。
「あっ……やァッ!ミホー……ク!いやぁアぁ!」
「よい、締め付けだ。嫌等と偽りを申すな」
「いまは、やめっ!イッて、るからぁ!」
「分かっている。……出すぞっ!」
その言葉と同時に体の中に広がる熱を感じれば、終わったと思いふと体から力を抜いたけど、それは大きな間違いだった。ベッドに背が着いたのと同時に両足の膝がシーツに押し付けられて、待ってと言うより早くピストン運動が始まればどうやら戦いの後で気が昂ってるらしいと気付かされる。
「……逢えぬ間に、また男を引っ掛けたな」
「な……んの……?」
「無自覚故に、恐ろしいな。ヒヒにさえ勝てぬ者が、ナミに懸想する等許せぬ」
何を言われているのか分からなくて、でも考える余裕も無くて、私はただミホークから与えられる熱と快楽に溺れて行く。ミホークが何を勘違いしているのかは分からないけど、会えない間、寂しかったのもあり私は少し乱暴にも思えるミホークに腕を伸ばした。
求めていたのは、私の方なのかもしれない。ミホークが恋しかった。
「ミホーク」
「っ……ナミ」
「ミホークが居るって、もっと感じさせて。私も、逢いたかった」
「愚かな……壊してしまいそうだ」
「……っ!こわ、さない程度に、して欲しい……な」
「善処しよう」
その後、私が2日程寝込んだ事を思えば、善処されたのかは推して知るべしである。まさかその間にミホークがゾロを弟子として迎え入れているなんて思っていなかった私が驚かされたのは、言うまでもない。
ミホークがいる、ナミがいる、それだけが互いの望みだ等と、口に出せる程素直では無く、口に出せる程若くもない。それ故に、壊れる程に愛し合い、時に刃を向け合うのかも知れないが。
波間の向こうを目指し、地図を描くのは、またこれにより数年延期される事となる。そんな事とは知らず、2人は住民の増えた城で互いの温もりを感じながら、今日も……互いを守るように抱きしめ合った状態で眠りについた。