それは、私が16歳になって間もなくの事だったと思う。お風呂上がりの船内で、突然エースが私を部屋に連れ込み、驚いている間に押し倒してきたのだ。
元々部屋は同室で、そんな事しなくてもちゃんと寝るのに。そう思って押し倒して来るエースを見上げた時言われた言葉は……震えていた。
「ナミ、好きだ。愛してる。……俺のものに、なってくれ」
そう言って服を引裂いたエースは、私の肌に吸い付いてきて……でも、抵抗が出来ないのはきっと、その瞳が泣いていたから。それに、戸惑いは強かったけど、その手の温もりに対して嫌悪感が無かったの。
服を引き裂くような乱暴さと余裕の無さで、泣きそうな顔で襲いかかって来て、それなのに……私に触れるその手が、優しい。ビクリと反応する身体にエースは嬉しそうに笑うと、掠れた声で愛してると繰り返した。
首に吸い付き跡を残しながら胸の突起ばかりを責めるエースに、私の身体は素直に反応して抑えきれない声がもれる。服は脱がされた訳じゃないから、妙に動きが阻害されてその刺激から逃げる事さえ容易ではない。
「んっ……エース!まっ……ぁ……!」
「ちゃんと硬くなってる。少なくとも、身体は嫌がってねェな」
「エース、お願い、まっ……ンンっ!!」
突然どうしたのと問い掛ける隙もない。盛ってるだけなら、急いで船を何処かにつけるからと言おうとして、エースが今にも泣きそう顔をしてる事に気付く。
そんなに泣きそうな顔で私に触れないで。私はエースになら、きっと何をされても抵抗出来ない。
だからお願い、そんなに悲しまないで。1人で勝手に、傷付かないで……!
エースは左胸を弄っていた手を動かして、代わりに唇で左胸に刺激を与え始める。舐められて、吸われて、その度に喘ぐ声が自分の唇からもれるのが情けない。
その間も右胸を揉んだり、尖端を抓ったりする行為はやめては貰えず、それどころか左胸を弄っていたその手が秘部へと向けられてしまう。それによりクチュリと水音が聞こえてくれば、羞恥と情けなさで全身が赤く染まるのを自覚する。
「ナミ……優しくするから、大切にするから……俺のものになってくれ……」
「エース……私も、エースが好きよ」
言葉を口にした時、エースが女芯に触れた。それも私から溢れていた液で濡れている指で。
つまり身体が大きく反応して、悲鳴のような声がもれてしまった。それにエースは笑うと、そっと耳元で問い掛けてくる。
「ナミは、未経験だよな?」
「エースに、関係なっ……!」
羞恥からそう言った瞬間胸を揉んでいた手が離れて、エースが低く言う。それは怒りなのか悲しみなのか、ただその瞳には明らかに劣情が宿っている。
その瞳が、どうしてか怖いと思ってしまう。なのに、逃げたり泣いたりしたらエースが傷付くと言うのもその瞳を見ればわかってしまうから、声を出す事も抵抗する事も出来なくなってしまった。
「関係、ない……か。そうだな、どっちにしろ……今この瞬間から……俺だけのものになるんだ」
「エース!?」
動揺して叫ぶように名を呼んだ私の足を掴み、大きく割開くと女芯に唇を寄せて……吸い付かれる。その刺激に悲鳴のような喘ぎが出れば、なんて情けないのかと思う。
けどいくらその頭を押してみても辞めてくれる所か、舌を使い刺激を強めてくるのだ。そんな状態で、声を必死で抑える他に、私に何が出来ただろうか。
「んっ……ぁ……!ェ……ス……ッ」
目の前が白くなりかけたその時、刺激が止まりエースが辞めてくれたのだとホッと息を吐く。そんな私にエースは納得した様子で頷くと、そっとその身体で足を閉じられないようにしてから腰に手を移動させた。
「ナミは、イクのが怖いんだな」
「エース?」
「ナミ、俺が好きなら……受け入れてくれ」
「エース、待って、落ち着こうよ。私はエースを好きよ。大好き!だか……」
その時自分でもわかる程にひくついてるその場所に宛てがわれたのは、燃えているような熱の塊。それに思わず声を失う。
その行為が痛みと苦痛を与えるのだと、私は知っていたから。エースがそれを望むなら、私は拒めないと理解していて、でも、怖くて……。
この身体で経験なんて無い。それも鑑みればどうしたって震えてしまう。
「エース……」
「ナミ……好きだ、ナミが、欲しい」
「エース……私、こわ、い……」
泣くのを耐えてたけど、もう無理かも。そう思って言葉を口にしたらエースが天井を見て、呻くように言う。
「ナミ……俺をどうしたいんだよ」
「へ?」
今にも泣きそうな顔で、なけなしの理性が吹き飛びそうとか言ってるそれが、なんか叱られる事を怯える子供みたいに思えた来た。それにより少し身体から力が抜けるけど、やっぱり怖くて……。
だからエースに手を伸ばして、その首に腕を回す。そうして私はそのまま抱き着く。
怖いなら、見なければ良い。そうしたらきっと、そこまで怖くないもの。
エースを傷付ける事も、拒む事も出来ないなら……せめて、縋らせて貰いたい。でも、どうしても苦痛があるのを分かってるから、情けない願いを口にする。
「……エース……お願い、あんまり、痛くしないで……」
「…………っ!!……痛みなんか、与えねェよっ!!」
「え?……っ!?」
疑問を口にするより早く挿入された灼熱が、痛みとは明らかに違う何かを与えてくる。ゆっくりと割開かれていくそれを自覚して、違和感はあるけどそれよりも時に何とも言い難い刺激を与えられて身体が勝手に跳ねる。
それにより縋るようにエースの頭を強く抱き締めたら、中にいるエースが肥大化した。その影響で悲鳴をあげる私に、エースは苦しげな声で言う。
「今のは……!ナミが悪ィからな!」
「エース……!待って、こわ……い、わた、し……おかしくな、る……!」
「ここで煽るとか……俺を本当にどうしたいんだよ……」
煽ってない!そう言おうとして、でも唇から紡がれる音は言葉になってはくれない。痛みなんて、無い。
ただ、身の内から何かが溢れそうな感覚と、未知の世界へ足を踏み入れる恐怖だけがある。エースを泣かせたくないとか、今は……考える余裕がないの。
エースから放たれた熱を奥で感じた時、目の前が弾けるような感覚と共に全身が痙攣して呼吸さえままならなくなる。力の抜けた私の身体をエースは軽々と支えて、熱の篭った声で聞いてくるのだ。
「……痛かったか?」
「……い、たくな、かった……」
「なら、良かった。ハジメテなのに、悪かったな。それでも……欲しかったんだ」
そう言って、私の頭を撫でてくるエースをじっと見詰める。エースの瞳は、もう泣いてない。
でも、何処か不安そうに揺れる瞳。だから、痛みはなかった事を、それでも……怖かったんだと言う事実を伝えたくて唇を動かした。
「でも、ね」
「ん?」
「なんも、考えられなくなって……怖かっ……!?」
話してる途中で中にいるエースが大きく脈動して暴れるから、言葉が続けられなくなる。何すんのよとエースを見たら、何故か目を片手で覆ってまた天井を見ようとしていた。
天井に何かあるのかな。木目しか見えないけど。
「……ナミ、それ、ワザとか?」
「何が?」
「言葉で煽ってから、熱のある潤んだ瞳で見詰めてくるとか……止まれるわけ、ねェだろ!?」
それは明らかにエースの誤解であり勘違いで、だからもう勘弁してください。と……これ以上されたらおかしくなると半泣きで伝えた。
なのに、その夜私は解放される事はなかった。これが、私とエースの初体験である。
ふと……そんな事を思い出したのは、きっと近くエースと白髭が戦う事を知っているから。だからなのか、気の昂ったエースに先程まで貪られていたんだけどね。
貪られたからそんな事を思い出したのかな。あの後、エースに盛ってるなら女の人買いに行ったらとお金渡して、そうしたら部屋に連れ込まれて3日寝かせて貰えなくなった事をふと思い出す。
「体力馬鹿の体力お化けめ……」
悪態付きながら眠るエースの頭を撫でて、変な時間に目覚めた自分に苦笑する。そっとベッドから降りて、甲板に出れば風が妙な気配を運んで来た。
どうやら、海の中で何かが起きているらしい。もう少し寝かせていてあげたかったけど……皆を起こすしか無さそう。
「ナミ、どうした?」
「あ、起こしちゃった?まぁ、起こさなきゃと思ってたんだけど……」
「ん?」
「敵が、来るわ」
私の言葉を受けたエースは引き締まった空気を纏い、船内に向けて叫ぶ。起きろ、と……。
それにより起きて来た皆がしっかりと武器を手にしてるのを見れば、本当に戦闘集団よねと思ってしまう。私だけが戦えないのよね。
「皆みたいに、私も強くならなきゃ……」
「ナミ……本気で言ってる……のか?」
「うん、航海士でも強さは必要でしょ」
「駄目だ。本気で分かってねェ……ナミの自己評価低が過ぎる……」
エースがそう言って項垂れた直後、現れたのは白髭では無くて王下七武海の1人、海侠のジンベエ。狂犬のようなお前さんを親父さんに近付けさせん……と言って始まったその戦い。
海水と火では火が明らかに不利なのに、対等にやり合うその姿。勿論、私達はエースの指示もない事と、ジンベエが私達に攻撃をして来ないからそれを見ているしか許されてはいないけど。
火柱と水柱が起きて、衝突しては水蒸気爆発を起こす。参戦するか手伝うかすれば確実にエースが勝てると分かってて、でもエースがチラリと向けて来たその視線の中で手を出すなと言う。
視線ひとつで伝えられたそれにより立ち尽くすしか出来ない私に、クルーはやはり同じものを感じ取り悔しげに言う。それはきっと、皆同じ思い。
「何の為に、俺達ここに居るんだろう」
「……エースの覚悟を、見守る為。そして、もしもの時はエースを守る為だと思ってるわ」
そうでも思わなければ、飛び出してしまう。エースと共に戦おうとしてしまうのよ。
エースが白髭と戦い、負ける事が私の知る流れであるけど……ジンベエとの戦いは、そんな事があったかすら私の記憶には無い。私が何かを変えてしまったのか、それとも、そう言う流れなのかが分からないの。
どちらにしても今はただ、エースを見守る事しか許されてはいない。そっと祈るように手を合わせた時、エースとジンベエが同時に吹き飛んだ。
戦いが始まり、3日が経過しようとしている中で、せめて休憩を挟んだらどうだろうかと言う事さえ出来ない。エースもジンベエも、そんな生易しい戦いはしていないから。
けれども身体を起こしながら、ジンベエが仁義がどうとか言ってるのを聞いて私の足が勝手に動き出す。エースは私が前に立った事に驚きの視線を向けるけど、それを片手で制してジンベエを睨みつける。
「……自分の弟分さえ管理監督出来ないで、何が仁義よ。白髭は自分で戦えるわ。貴方が守るべき対象ではない」
「女だからとて、わしは手加減せ「攻撃を仕掛けてくるなら、応戦するわよ。魚人全てを恨むつもりは無いし、憎むつもりもないけど……兄貴分である貴方と、アーロン1味は別!」」
言って、クリマタクトを構えれば即座にその戦意がジンベエから失われる。明らかに動揺して、まさか……と呟くそれが、何だか痛々しい。
でもね、ベルメールさんは歩けなくされたし、ゲンさんは1生消えない傷を全身に負ってしまった。本来ならばベルメールさんは殺されて、ノジコは独りになる所だったのよ!
許せる筈も無い。許す気も無い。
……何よりも、勝手に許す権利を私は持たない。だから、真っ直ぐにジンベエを見据えて言葉を音にする。
「戦うなら、相手になるわ……かかって来なさい」
「……そっか、ナミは、村の事があるもんな。悪かった、手を出すなと言って」
エースの言葉に首を横に振れば、ジンベエはその場に座り込み、動かなくなる。その時大きな声が聞こえて視線を向けると、エースが戦う事を望んだ相手が姿を見せた。
その戦いにおいては、エースは手出し無用と言わなかった。だから私は、怨みはないけどと思いながらもエースと共に戦う事を選択する。
エースが望むなら、なんでも叶えると決めているから。勝てないと分かっていても、これが、エースにとって必要な事だと知っているから、共に戦う。
怖いと、思わないと言えば嘘になる。なんと言っても、世界最強の男だもの。
いつの間にか白髭海賊団に保護されたジンベエは、けれども私を見て泣きそうな顔をしている。そんな顔、しないでよ。
恨めなくなる。憎めなくなるわ。
貴方が直接何かした訳じゃない。それをちゃんと分かってるから、余計に。
「……っ!海侠のジンベエ!……その顔は、狡いわ。後で生きてまた話が出来る時が来たなら……その時は、貴方の言い分も聞く!でも今は……貴方に構う暇は無い!」
「嬢ちゃん!だが……お前さんはアーロンに……!」
「五月蝿い!……もし、本当に謝罪の意思があるなら……私じゃなくて墓前に手を合わせなさいよ!!」
「墓前、に……?」
呆然とした様子で呟くように言った言葉から、迫害されていただけだとでも思っていたのだろうと気付く。アーロンがそんな生易しい事をしてくれる筈も無いのに。
共に育ったなら、分かるでしょ。アーロンがどれだけ人間に怯えて、人間を恨んでいたのかを。
「私は、良いのよ。戦う力があったのに負けたんだから!私も海賊、負けた時点でどんな扱いを受けたとしてもそれを恨む道理はないと理解してるわ」
皆の動きが止まった。白髭も動きを止めて、エースが私を凝視してる。
視線が集まってるのは認識してるのに、言葉を止める術が見つからない。憎しみなんかより、ずっと……ただ、哀しくて、苦しいのよ。
「アーロンが島を攻めてきた日、私は既に海賊だった。だから私に起きた事に関しては、負けた私に全ての責任があると、分かってる!……でもね、私以外は全員……戦う力の無い、最弱の海に生きる民間人だったのよ!?」
「……すまん!」
「言ったでしょ。墓前に手を合わせて。私に謝られても、私は彼等じゃない。私には貴方を許す事も断罪する事も出来ない!」
私の言葉にジンベエは顔を上げて、叫んだ。でもそれは、私の神経を逆撫でするばかり。
「それでもどうか分かってくれ!アーロンも、人間に虐げられ「私達が虐げた訳じゃないわ!!」」
「……それ、は……そうじゃが、同じ、種族で……」
「同じ種族だから、何してもいいなら……私は今すぐ魚人島に乗り込んで、島民を皆殺しにして来るわよ。……同じ魚人と言う種族だもの。仇討ちとしてなら、私にもその権利はあるわ!!」
声を無くしたジンベエは、白髭海賊団の人に肩を叩かれてハッとした顔をする。そう……彼等もまた、私と同じ、人間であり、彼等を苦しめるのと同じ、海賊なのだ。
その矛盾に気付いたのか、ジンベエは身体を震わせる。だから、私は可能な限り静かな声を響かせた。
「貴方がアーロンを泳がせたその数日後から、エースが打倒してくれたその日まで、島民は全員……奴隷だったわ。村が破壊され、何の罪もない人達が殺されて行く。……それに抵抗を見せれば、村単位で殺されるからと、戦えない女子供を思って身動きを封じられていた人達の気持ちが、貴方にわかる?」
風が、吹き抜ける。それにより、髪が乱れる。
「戦うという選択肢すら奪われて、虐げられて……。あの島の人達が、その近辺の人達が何をしたっていうの!?私に力が無かったのは勿論罪よ!でも、私1人で背負える人数じゃ無かった。年齢が理由になるとは思わないけど、それでも……10歳だった私1人にその責任を全て押し付けるつもりなの!?」
「10歳……?」
「そうよ。私の故郷が襲われた時、戦える人間は、10歳の私1人しか居なかった。……元々戦う力を持って産まれた貴方達には分からないでしょうけど、私は……守る為だけに、力を求めたのよ……!!」
「それは……」
「ただの、人間の女の子が、生まれながらに魚人相手に戦える能力なんてある筈無いでしょ。私は、その力を得る為に海賊になったのよ。海軍が腐ってる事は……嫌という程知っていたから。守るには、自分の手で、戦うしか無かった」
「……すまん、すまなかった……!!」
何度、謝られただろう。そして私は、その度にこの言葉を繰り返している。
今でも、覚えてる。優しく撫でてくれてその手を。
今でも耳に残ってる。優しく名を呼んでくれた、その声を。
「……言ったでしょ。謝るなら、墓前にして。隙を見て、全員埋葬はしたから……墓はあるわ。アーロンが根城にしてた所も、王下七武海である貴方なら、分かるでしょ」
その場で大粒の涙を落として、泣き崩れるジンベエから視線を外す。もう、ジンベエに構ってる場合じゃ無いわ。
そうして私は、気を引き締め直す。過去に囚われて、目の前にある戦いを放棄するつもりは無い。
けどエースは、私が共に戦う事を認めないとでも言うように、私を皆の方へと突き飛ばすと炎で壁を作った。そして、言う。
「皆、逃げろ!!」
「巫山戯無いで!私は戦「ナミ!皆を、頼んだ」」
エースは、狡いわ。そんな事を言われたら、参戦出来ない。
私はそうして、皆と共にその場を離脱した。エースは死なない。
その事だけは、知っていたから。泣く暇なんて、私に有りはしないのだ。
今の私には、彼等を守る責任と義務がある。私が守るべきは、エースの大切にしているこの友人達の命だと自分に言い聞かせて、皆を逃がす為に私は戦場へ背を向けた。