波間の向こうを目指して(新・本編side) 作:夢枕 七変化
縋るような眼差しで、微かに怯えを見せながら、それでも俺なら辞めると信じてるのか信頼を宿す瞳が俺を見詰める。でも今、俺が欲しいのは弟としての信頼なんかじゃねェんだ。
「ルフィ!私はルフィを弟とし「馬鹿だな、ナミは」」
言葉と同時にナミが大切にしていると知っている武器を、腰から外して腕を縛る。そのまま腕をベッドに固定しちまえば、ナミはこの武器を壊せないから抵抗なんてできる筈もない。
なのに、ナミは無情にも首を横に振って、俺を拒む。せめて俺を蹴るとか、その位はしてくれなけりゃ……煽られるだけだ。
「こんな状態で、中途半端に拒むとか……。煽る事にしかならねェよ。……弟?それでも、大切だから傷付けられねェんだろ。なら、それを利用しない訳あるかよ」
元々身に付けていた衣服は多くない。だからと思って下半身に残っていたそれを剥ぎ取れば、途中で何度も縋るように俺の名を呼ぶナミ。
身体を震わせて、なのに俺を傷付けようとしない。怖い癖に、嫌な癖に、俺を攻撃できない甘さが……苦しいよ。
優しいナミだから、愛していればいつかは折れる形でも俺を見てくれると思っていた。俺を弟として愛しているなら、甘えて縋れば俺のものになる時も来ると思っていたから、待てたんだ。
あの日、ナミが俺の傍を離れるその時までは、ナミは間違いなく男を知らなかった。なのに……今は、その身体は男を知った後だ。
別な男に犯されたナミを責めるつもりも無いし、俺にそんな権利は無い。その程度で諦めたりできる程、生易しい想いは抱いてねェ。
傷物になったとか、そんな事を思う筈も無い。再会した時、まっさらだった事がそもそも可笑しいんだから。
俺達は海賊だ。寧ろ綺麗過ぎるナミがどうやって生きてきたのかと思わされるような世界なのに、恋人でもなけりゃ正式な船長でもなかった俺に何か言う資格はねェよ。
だけどな……。守れなかった自分が憎くて、悔しい。
ちゃんと俺は分かってたんだ。ナミは、誰かの為なら何でも犠牲にする奴だって。
金で解決する為に、必要なら簡単に身体を売るのなんて……分かりきってた。なのに、俺はそれを止められなかったんだ。
嫌うどころか、形は違っても愛している存在である俺に襲われて、それでも震えてたナミが、怖くなかった訳も、辛くなかった訳もない。ナミが自分から望むような性格でもないのはよく分かってる。
つまり、ナミは犯されたんだ。ナミの意思を無視して尊厳を踏み躙って、暴力で奪い取った奴が居るんだってのは嫌でも分かる。
「それでも、待つつもりだった。ナミが男として見てくれるまで。……だけど、ナミは〝誰かの為〟に簡単にその体を許した。そうだろ」
ビクリと震えるそれが、肯定以外のなんだと言うのか。俺は怒りと悲しみで心を乱れさせながら、その足を掴んで割り開く。
何より許せないのは、俺自身だ。ナミを守ると決めてたのに、甘やかされて……ナミの優しい嘘を見落とした。
「い、やぁ!!」
引き攣った悲鳴を聞いて、心が黒く染る。俺に怯えるナミを許せない。
ナミは、俺のものだ。出逢った時からそれは覆らない決まり事。
「誰か来ても辞めねェから、見られたいなら叫べよ」
「る、ふぃ……」
俺を拒絶するナミを認める気は無い。羞恥からだろうが、濡れ始める身体に求められてると錯覚しそうになる。
「誰かの為なら、捨てられるって言うなら、それ……俺にくれよ。捨てないでもいられるように、俺が守るから」
俺が、今度こそ守るから。もう、何もナミに捨てさせたくない。
いつも、諦めて捨ててばかりのナミだから、何も捨てさせたくないんだ。今なら分かる。
俺は初め、シャンクスがナミを捨てたんだと思ったけど……違うと気付いた。絶対に、ナミがシャンクスを捨てたんだ。
その理由は〝守る為〟だろう。村人の生命を、シャンクス達の未来を、ナミは自分の夢も人生も生命も顧みないで……いや、全てを諦めて、捨てて、その純潔も売り渡した。
女にとって〝ハジメテ〟がどれだけ大切なのか、俺には想像もつかないけど……その価値が等しく高い事は知ってる。なのに、俺は何も出来ず失わせて……今度は俺がナミから奪おうとしてるんだな。
だけど、止まれない。俺はもう、辞められない。
「だから、貰うぞ。アーロンから、守ったんだから、その資格はあるだろ?」
せめて身体を傷付けない為にと、女なら誰でも弱いその場所に吸い付けばナミの哀願に近い声が震え、止まる。身体を無言で震わせるそれが声を耐えてるのだと気付けば、悦くしてやらなきゃなと思う。
それでも伝えておくべき事があって言葉を発したら、ナミから泣きそうな顔を向けられる。でも、俺が言葉を続けてたらナミも真剣に俺の話に耳を傾けてくれたから、やっぱり真面目で優しいよなと思わされた。
「ナミ、俺は……ナミの全てが俺のモノだと思ってる。ナミはさ、出来ねェ事なんか無くて、1人で生きる気になれば生きられるんだって知ってんだ。でも、ナミは誰よりも弱ェから、俺は初めて会ったあの日から必ず守るって決めてた。まァあの頃はナミのが強かったけどよ」
今でも鮮明に覚えてる。俺なんかじゃ、手も足も出ないくらい強かったエースとサボが、普通の子供以下にしか見えないぐらいの力量差を持っていたナミ。
何でも知ってて、何でも教えてくれた。強くなりたいと言えば、戦ってもくれたけど……本当は戦う事が大嫌いな優しい人なのを俺達はちゃんと知ってたんだ。
なのに、甘えて、縋って、引き留めようと足掻いて……失ってからは無力を痛感させられるばかり。情けねェよな……と、落ち込んじまう。
その時、ナミが静かに言葉を返して来た。それに視線を向ければ、優しく微笑みながら、懐かしそうにその瞳を細めているのが見える。
「そうでも、無いのよ……?」
そう言って微笑むナミは、そのまま消えちまいそうだと思った。なのに、こんな風に襲ってる俺にナミは慈愛を込めた視線を向けて、消えないと教えるように優しさを滲ませて来る。
それは〝愛してる〟と言葉にされなくても、されてるよりも強く伝わって……。なんで、こんなにも俺を愛してくれるのか、分からない。
愛してくれてるなら、どうして俺を拒むんだよ。俺は、ナミにとって、どんな存在なんだ。
「ずっと、あの頃から私は守られていたのよ。だから、ルフィが本気なら……多分私は拒めない」
「ナミの中で、俺は……なんなんだ?」
聞くつもりのなかった問い掛けは、勝手に言葉になる。俺には心ん中だけでグチャグチャ考えるなんて、そんなのあんまり出来ねェから。
「ルフィはルフィって生き物なのよ。どうしても泣き虫で可愛かった頃のイメージが強いから、弟として見て、守ろうとしちゃうけど……あの頃から私の心を支えていたのは、多分ルフィなのよ」
迷う事もなく、当然の事として言葉を紡ぐ。それにより俺は、どうしたらいいのか分からなくなった。
抵抗して、拒んでくれたら、嫌ってくれたら、暴力で抑え込めた。本当は愛してるんだと言われたら、甘やかしてやれるのに……ナミはどちらもせずに、ただ愛しさをその瞳に宿らせる。
舌打ちが自然ともれて、視線を動かせば縛り上げた腕を見て……傷付けたく無いと今更思う。それにより、突然外した拘束に対して、ナミは怒りもしない。
だから胸が苦しくなる。跡の残る腕をそっとさすれば自然と謝罪の言葉も落ちて、そんな俺にナミは姉の顔をした。
俺の頭を撫でながら、いい子ねと笑う。それは明らかに弟とか、下手したら息子って感じでしか見てないと伝わるから、それが嫌だなと思った次の瞬間、信じられない事が起きた。
頭を撫でていたナミがその流れで、両手で包むように俺の頬に触れて、そのまま流れるように俺の頭を抱き締める。今俺が何してたか、賢いのに無防備過ぎるナミは忘れてるらしい。
胸に抱き締められて、目の前にあるナミのたわわなそれに思わず跡を残したけど、これはナミが悪い。でも、そうだな……もう、難しい事考えるのは辞めよう。
「言っとくけどな、無防備過ぎるナミが悪ィぞ。それと、色々難しい事考えるの辞めた」
ナミは不思議そうに俺を見るけど、いくら考えても頭の回転でナミに勝てる筈無いんだって思ったらなんか、気持ちが落ち着いた。嬉しいとか、悲しいとか、やりたいとか、嫌だとか、俺は感じるままに伝えて行こうと思う。
だってよ、そうしたら優しいナミが俺を傷つけないように考えて答えを出してくれるって、俺は知ってるから。ナミは結局、どんな時でも俺の味方なんだから……それでいい。
「俺はナミが好きで、ナミを抱きたい。んで、ナミを抱いた奴が合意なら、嫌だけど我慢する。けど……合意じゃねェなら、必ずぶっ飛ばす!」
俺の言葉にナミは面食らった様子を見せるけど、その瞳が微かに揺れた。そして、細く息を吐き出したから、これから言う言葉に嘘が混ざってると気付く。
「……わかりやすいわね。なら、そうね〝合意〟よ。だから気にしないで。それと……ルフィって、経験あるの?」
……そっか〝無理矢理〟だったのか。んでもって、俺に言わないって事は、俺にはまだ勝ち目がないって事なんだろうな。
それが分かるからこそ、今は騙されておく。相手が誰なのかわかった時、倒せるように強くなろうと心に決めて。
もうこんな事が無いように。もし次の時、まだ俺が敵わないってなったとしてもいつかは倒せるようになって、ナミの信頼を勝ち取ってみせる。
「あァ、エースとサボになんか経験はつんどけって連れてかれたから、知ってる」
連れて行かれた先で女の子は何すると濡れて、何すると痛くて、何したら気持ち良いのか教えて貰った。だから、ナミの弱い所も何となく分かってて、そこ舐めたんだし。
「……成程ね。確かに、エースは早熟だったし、分からなくもないわ」
そのナミの言葉に息を飲む。エースは早熟じゃなくて、ナミに惚れてて……まさか、本気で気付いてないのか!?
あァ……でも、そうだよな。サボもよくナミを鈍いって言ってたし、アーロンの事もナミは欠片も気付いてねェ。
なら、誰の想いも知らなければいい。知ったらナミは相手を傷付けない為に自分を傷付ける選択をするだろうから、何も知らないままでいて欲しい。
「ナミって、ホンットにニッブイよなァー」
それでも、つい口からこぼれ落ちる本音。それにナミは小首を傾げるから、俺はつい笑っちまう。
「もう、俺の傍離れんなよ。ナミの事はぜってェ守るから」
「……そうね、もうルフィにかなわなそうだし、守ってもらいたいわ」
実力だけなら多分、俺はまだナミに勝てない。それにナミが気付いていても居なくても、もう構わないんだ。
俺はナミを守りたい。そして、今まではどれ程強くても自分を守ろうとする相手に辞めてと言っていたナミが〝守って貰いたい〟と言ってくれた事に意味がある。
それがどれ程俺を喜ばせるのか、ナミはわかってない。やっと、ナミにその荷物を少しだけ預けて貰えた俺は、再び俺を優しく抱き締めてくる全裸の女に息を飲まされる事となった。
警戒心が薄いんじゃなくて、ナミには警戒心が無いらしい。それともこれは、俺を男として見てないって事なのか?
だとしてもこの状況だ。これは誰がなんと言っても、合意だろ。
「……合意、だよな。裸で男を胸に抱き込んでんだから」
最後の1枚だった胸にあった布を取り除けば、生まれたままの姿になるナミ。それはこれ迄に見た誰よりも美しくて、妖艶で……美味そう。
なのに、反応は初々しくて……本当に男を知ってんのかと、その身体にある跡が嘘なんじゃねェかと疑いそうになる。そんなナミの腰を撫でれば、恥ずかしそうに頬を染めるから……今なら拒まれないと何故か思えた。
「ナミ……足、広げろよ」
「っ!そ、んなの……」
「膝、立てれば良いだけだ……」
真っ赤な顔で……でも、ナミは拒まない。俺の言葉にゆっくりとだけど、従うから……漸くナミと言う生き物を理解出来た気がした。
ナミの弱い所に舌を這わせれば、愛らしく喘ぐ。そうか……ナミは、大切な人に逆らえないんだ。
なら、どうしてもの時は、命じればいい。そうやって、少しずつナミの逃げ場を俺だけにしちまえば良いんだな。
卑怯と言われても構わない。俺は聖人君子なんかやって、欲しいものを奪われたりする方がずっと嫌だから。
そんな事を思いながらナミの秘所を舐めていたら突然声が途切れて、視線だけ向ければ指を噛んでたからそれを辞めさせる為に掴む。例えナミ本人でも、俺はナミを傷付ける事を許さない。
甘く、可愛い声が、艶のある吐息響く。イヤイヤと言葉だけ抵抗しても、行動で抵抗せずに、声も甘えていては辞める筈ねェだろ。
「合意、だろ?ナミ」
俺よりも先にナミを〝犯した〟男達を合意として庇うなら、俺に抵抗するなんて馬鹿な事すんなよ。そんな事を言いながら高めれば、ナミが潤んだ眼差しで、甘えるように俺を呼んだ。
視線が絡まれば、羞恥に悶えながらも熱に浮かされたナミの顔があって、その瞳には俺を求める迷子のような色がある。俺に救いを求めるナミに、逆らえる筈が無かった。
「ナミは、狡ィよな。……ま、今回は許してやるから、次からはもっとちゃんと誘えよ?」
さり気なく〝次〟の約束を取り付けてから、ゆっくりとナミの中に俺を埋め込む。それがもどかしいのか、苦しそうに喘ぐナミは淫靡で……俺の理性を簡単に砕こうとする。
でも……まだ、駄目だ。求めてくれよ、姉としてや母としてでは無く〝女〟として、俺の事を。
「ん?ナミはどうして欲しい?」
問い掛けた俺に泣きそうな瞳で、拗ねたような顔を向けて来る。その顔に、瞳に、俺の理性は砕け散った。
虐めてやろうと思ってたのに、その表情ひとつで俺の完敗。初めから俺がナミに勝てる筈なんて、ある筈が無かったんだと思い知らされるばかり。
「本当に、ナミは狡ィ……」
ナミからのオネダリは、次の時だな。もう、俺が耐えられない。
そう思って、既に半分は挿ってたそれを1気に奥まで貫いた。その衝撃で痙攣するナミをそのままに、腰を動かし続ければ、俺の方もそんなに持ちそうにないと気付く。
嘘だろ……!?信じらんねェくらい、気持ちいい。
意識も何もかも持っていかれそうになる。そんな時にナミが俺を甘やかすように俺を抱き締めた。
ナミはこんな時なのに、俺に攻められ続けてるのに……姉に戻ろうとする。だからと思ってお仕置してやれば、響くナミの嬌声。
「ナミ……好きだ……」
俺の言葉が届いたかは分からないけど、どうしても伝えたかった言葉を、欲望の熱と共にナミに向けて放つ。意識を失う直前、ナミが縋るように俺の腕を掴んでくれた事に再び硬くなった己には、流石に苦笑したけど。