波間の向こうを目指して(新・本編side) 作:夢枕 七変化
正直に言うならば、俺も随分考えた。このまま腰を動かして叩き起してやろうかとか、色々。
それくらい意識が無いのか寝てるのか分からない状態のナミは色っぽいし、俺は元気だ。でもな……ナミの体力考えたら限界なんてとっくに過ぎてるともわかってる。
だからと思って腰を動かすのは辞めたけど、抜いちまうのは勿体ない。それに……ナミの事だから朝になって正気になったら、薬飲んだりして足震わせながら逃げ出しそうだ。
なら、俺から絶対に逃げられないように、楔はそのまま甘い香りのする身体を抱き締めて寝ようと布団を手にする。ナミが冷えちまうと良くないから。
朝になると身じろぐナミが居て、夢現に逃がすものかと強く抱き締めた。とは言え、寝ぼけてたから力は弱かっただろうけど。
「ナミ、起きたのか?」
「ん、ルフィ……。あの、まさか……」
そのまま口篭るナミに、挿ったままなのを気にしてると気付く。耳を真っ赤にしてるから、顔を見なくてもなんかわかる。
あれ。もしかしてナミって、案外分かり易い?
「ん?……あァ、起きたらそのまま逃げられる気がしたから、抜かなかった」
「も、起きたし……抜いて、欲しいな」
甘えたような声で、ナミが言う。まだ、繋がってんのに甘えるとか……続けて欲しいって事だぞ、普通。
そう思いながらも声には出さずに、そっとその項に跡を遺す。それだけでナミがビクッと身体を震わせるから、気分は良くなるし……何より、ナミが可愛くて……。
ここに来て気付く。ナミは、こういう事にだけ幼い。
多分、経験とか知識が不足してるんだ。他の事ばっかり成長して、こう言うの知らないで生きて来たんだと分かっちまう。
だとしたら、昨日の言動も、今の言動もナミに誘ってるつもりは無い。そう分かったらなんか笑えて来て、でも笑ったらナミが怒る気がして耐えてたら身体が震える。
「……ルフィ?」
「ナミから、ちゃんと答えて貰えたら、抜いてやってもいい」
「何を?」
この場合の何を?は、ナミの中では〝何を答えろって言うの?〟だろうが、俺には〝ナニを抜いちゃうの?〟に変換される。まァ……今はそんな事言って虐めたりしないつもりだけど。
きょとんとした顔でこっちを見るナミに、俺はもう背後から抱き締めてるなんて耐えられなくなる。それによりナミをくるりと回転させたら、可愛く鳴きながら俺を締め付けてきた。
「くっ……!ナミ、お前……」
「しっ……仕方ないじゃない!生理現象よ!急に動かすから!」
文句を言って、それからナミは真っ赤になった顔を両手で隠した。その様子をじっと見ていたら、ゆっくりと手を外して、まだ赤いその顔で俺を見てくる。
こんな時、ナミが歳上なのが疑わしくなる。まァ1個の年の差なんて、無いようなものだろうし誕生日の関係でほんの2ヶ月だけだけど、同じ歳になるんだから気にする事は無い。
「うーん……。ナミの中で、俺はまだ、弟か?」
「ルフィ……?」
「ちゃんと、女として俺を見てくれて反応してくれてた気がすんだけどよ。そう思った次の瞬間には、ナミは俺を甘やかすから」
その瞬間、考えた事無かった!!とでも言いたげな顔で俺を見てくるナミに、おい待てと少し思う。なんでこんなにわかり易いんだよ、今日のナミ。
そのまま何か考え出したナミを見て、昔から何か考えてる時とか分かりやすかったなと思い出す。……もしかしてナミって、親しい相手には隠し事とか出来なくなるタイプか?
だとしたら、俺への警戒心が皆無になってるって分かる。……にしても、考えてる時間長過ぎだろ。
「ナミ、どうした?」
「分からないのよ。息子とか、弟の立場のルフィなら、私は間違いなく愛してるのに、ならなんで拒めなかったんだろうって……。息子とか弟に抱かれる趣味は無いのよ、私。1夜の過ちとも、なんか違うし……」
「ナミ、今妙な単語聞こえたぞ?」
まだ思考モードらしいナミは、妙な事を口走る。その直後、こちらに意識を戻したナミが俺に困ったような顔を向けて、俺の名を呼ぶ。
縋るような、甘えるような声。それに反応するなって、結構キツい。
「ルフィ……」
「ん?」
「私、ルフィの事、どう想ってるの?」
「俺が聞いたんだよ!」
怒る俺にナミはそっと手を伸ばす。何をしたいのかとそのままにさせたら、頭を撫でてくる。
その手が優しくて、擽ったい。そのままナミの手が移動して、俺の頬に触れる。
そして何故か少し不満そうに唇を尖らせるから、キスするぞと心で思った時、ナミの手が俺の首に移動した。そして、手だった筈のそれが腕になり、俺を引き寄せる。
何がしたいんだろうと思っていたら触れるだけのキスをして、そのまま舌を差し込んで来るから……。なんか確かめてんのは解ったけど、舌を絡められた時俺はもう耐えられなくなった。
攻守交代でナミを貪れば、ナミは待ってと甘えた声で言うけど、先に仕掛けたのはナミだからな。誰が辞めるか。
何年片想いして来たと思ってやがる。俺がとりあえず満足するまでナミを堪能して唇を離せば、二人を銀糸が繋いだ。
「うん、やっぱり嫌じゃないわ。でも……」
この期に及んでナミは、まだ分かってねェらしい。愛しても居ない相手に、ナミが自分から何かなんて出来る筈も無いだろうが。
無自覚だけど、ナミプライド高いからな。本当の意味で自分より優れてる所を持たない相手に、ナミは絶対己を傷付けさせない。
力でも能力でも何でもいい。何かがナミの中で自分以上と認められない相手からの攻撃は全て躱して、触れさせないナミは、それでも強い相手にも挑んでちゃんと身内以外には抵抗できる事を知っている。
「……わかった、取り敢えずナミは鈍いって事は理解した」
不思議そうに首を傾げるナミを見て、良くこのナミをシャンクスは手放せたなと思う。どんな形であれ、愛してる存在には幼いその素顔を見せるナミだからこそ、信頼の証でもあるこれを良く手放せたもんだよ。
俺には出来ない。まァ……ナミは俺を愛してるんじゃなくて、俺の勢いに流された可能性もある……っちゃあるけどよ。
「ナミって、流されやすい方か?」
不安になって問い掛けた俺に、ナミは語る。それは、下手な告白よりもずっと俺の胸を抉った。
だってよ、ナミ、お前、その言葉の意味……!!賢いのに馬鹿なナミは、きっと何にも分かってねェ。
「……どうかしら?これまでは全員殴り飛ばしたり、感電させたりして来たから、力でかなわない相手にしかされてないもの。でも、ルフィには抵抗出来なかったのよね、力的な意味じゃなくて……そう、ルフィになら何されても良いかなって思っちゃって……なんでかしら?」
「……っ!なん、だよ。すっげェ殺し文句」
殺されても良いと思える程に愛してくれてる。その事に顔が熱くなる。
同時に気付く。ナミを襲った奴、ハジメテを奪った奴は、力尽くで犯ったんだって。
なのにナミはそんな重要な事を教えたと言う事に気付かずに、分からない……と呟き続ける。それから俺の顔が熱を押さえ込んだ頃に、俺の名を呼んだ。
「ねぇルフィ」
「ん?」
「取り敢えず、分からないから、抜いて」
「嫌だ」
顔になんで!?と出たけど、こんな甘い所か激し過ぎる告白受けて、平然とできるか馬鹿野郎とばかりに腰を振る。突然の暴挙に、だけどナミは甘く鳴きながら俺を受け入れる。
だから……つい、もうわかってる答えを言葉では言われてないからと、言い訳に使う。その為に少しだけ意地悪に笑って。
「ナミの答えが出るまで、付き合ってやるよ」
中を掻き回しながら言えば、ナミが潤んだ眼差しを俺に向けた。そして、俺のなけなしの理性をハンマーで叩き壊す。
「や……むり、壊れちゃう」
「……それ、煽ってるだけだからな?」
自身が膨張したのを感じる。それにより少し遅れた俺の言葉に、ナミはよく分かりませんって顔をするから……解らせてやろうと腰を動かした。
甘く喘ぎながら、俺を拒絶しないナミ。なのに、答えは分からないという、愚かなナミ。
駆け引きとか得意な筈なのに、素のナミはただの無垢な少女でしかない。魔女とか、女神とか、女王とか、そんな仮面や衣を剥ぎ取ってやれば中からは泣く事さえ上手く出来ない不器用な優しいだけの女が出て来た。
「……るふぃ、は、たぶん、とくべつなのよ」
その声に、思考と身体が止まる。愛してると全身で訴えながら、優しい声で俺に伝えるのは少し幼いナミの本音。
それは俺の心を縛る鎖となる。その鎖は、けど、淡く優しい温もりでできてるから、引きちぎろうなんて気にさえなれない。
「……私、これまでにも何度も襲われ掛けたし、キスだけなら結構されてるけど、支払えって言わなかったのはそんなに多く無いのよ。それと……私からキスしたのはルフィだけ」
「そっか。……なら、順番はおかしくなったけど、ちゃんと言わねェとな」
俺はナミに伝えておきたい。こいつホントに鈍いから……失わない為には、伝えないとまずいのもある。
「……ナミ、俺の恋人になれよ。仲間として、航海士としても当然ナミが欲しいけど、やっぱり俺はナミの事がずっと好きで、見れば触りたくなるし、触れば抱きたくもなる。だから、俺の恋人になれ」
恋人じゃなくても、ナミは俺が望めばきっとなんでも叶えてくれる。でもさ、そんな事したらナミが可笑しくなっちまうだろ。
ナミはこう言うの苦手なんだって、わかったから。理性と知力で生きてるから、本能に従う行為が怖いんだって。
それと……多分なんか、トラウマがある。ナミが〝性行為〟に対してなんか変な概念持ってるのは、感じてたから。
……もしいつか元凶を見付けたら、容赦しねェと本気で思う。まァ……ナミは何も教えてくれねェだろうともわかるから、今は静かに告白の返事だけを待つ。
照れたように、恥ずかしそうに、それでも愛しさを振り撒きながらナミは笑う。少しツンとして見せてるそれが演技なのがわかっちまうくらい、拙い誤魔化し。
「……私の体力をもう少し考慮してくれるなら、彼女になるわよ。私……このままだと本当に腹上死しちゃいそうだからそこは譲れないわ」
「……なんだ、その、フクジョウシって」
分からない言葉を聞いたら真っ赤になったナミから、恨みがましい視線を向けられる。答えてくれるまで、とりあえず乳首でも弄ってるかと遊びだしたら、中でキュウキュウと締め付けて来るからナミも気持ちいいとわかる。
教えてくれる迄、ここだけ虐めてやると言えば、喘ぎながら教えてくれたその言葉の意味。なら後はと、胸から手を離して、ナミが俺をどう思ってるのか、分かりやすく言う迄、俺の欲望をぶつけてやろうと心に決めて動き出した。
結局ナミはそれ程時間をかけずに、好き、大好き!と言ってくれたから、体力考慮して辞めてやる。その後風呂に連れて行かれて全身洗われたけど、こういう警戒心のなさは問題だと思う。
……風呂で襲ったら、ナミが持たねェのわかるからしないけどよ。でも、俺の息子はナミに頭や背中を洗われてるだけで、近くに裸のナミが居るだけで元気ハツラツだ。
先に身支度整えるからと出て行ったナミを見送り、俺は頭から水を被る。本当に、ナミって怖ェ。
遅れて出た筈の俺の方が身支度も早く終わって、ナミを見たら髪から雫が落ちてる。……ガキの頃から変わらねェな。
そう思ってタオルを奪って拭いてやる。その瞬間蜜柑の香りがフワフワと漂って、元気になる自分に苛立ちながら声を出した。
「本当に苦手だよな。昔から髪を拭くのさ。今まで俺いない時、どうしてきたんだよ」
「基本的には放置してきたわよ。別に困らないもの。……それと、ベルメールさんやノジコに拭いてもらったり。後は……あぁ、ベックが困った顔で拭いてくれてたわ」
「シャンクスじゃなくてか?」
「うん。ベックだったわね。雫が落ちなくなってからは、やたら触ってきてたけど」
そんな会話の中でナミは笑うけどよ、俺としては……伏兵現るだ。副船長、今にしてみれば、ナミを愛して……いや、溺愛してたよな。
保護者としてならいいけど、あの人〝シャンクスの副船長〟だから、本気で怖い。ナミの中で、多分誰よりも信頼が強いのもその理由だと思う。
それから俺達は宴へと戻った。ナミの悲しみと苦しみを吸ったようなリボンは、ナミが忘れた頃に必要になるような、そんな気がして……まだダメだと返さないままに俺の物にしておいた。