※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(新・本編side)   作:夢枕 七変化

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鳴け※

 明け方近くまでナミが魘される度に目覚めては、宥めるように大丈夫だと声をかけつつ背中や頭を撫でて居た。だが、それにより睡眠を妨害されたとは思えない程に、ナミがいる事で俺の睡眠の質は向上しているのも自覚している。

 声を掛け、撫でてやれば安心したように綻ぶ表情。そして、甘えたように擦り寄る姿は既に褒美に近い。

 しかし、朝になりモゾモゾと動き出したナミの様子を伺っていれば、悠長な事は言っていられなくなる。短剣を手にしたその流れのまま、首を斬ろうとしているのが明白だったからだ。

 その手首を捕まえてベッドに連れ戻せば散らばる髪に、劣情を自覚させられる。心ここに在らずな様子に、無意識下でさえ死を選ぼうとする程に、赤髪の事が堪えているのかと気付く。

 ……それにしても、これ程弱っていても煽られるとはな。厄介な女だ。

 

 「おはよう、ナミ。死ぬ事は許さぬぞ」

 「ミホーク、おはよう。そんなつもり……「あっただろうが。……主はこれまで通りで構わぬ。ただ、赤髪に傷付けられたそれを癒す為には認めるしか無かろうと思った迄」」

 

 俺の言葉に対して、不思議そうな顔をするナミはあどけない。……これを、ここまで1瞬にして壊れさせるとは、赤髪の存在は厄介だな。

 双剣のシャンクスの名を名乗れなくなったとは知っていても、この状態のナミを見れば斬り捨ててやりたいと願うのも致し方ないだろう。だと言うのに、当人はよく分からないとでも言いた気にしているのだ。

 

 「ミホーク?」

 「俺が望んで気付かせると思うか。いつまでも傷があればそれは、その内腐る。そうなってからでは遅い。特に心はな」

 

 言葉を終えるのと同時に、その手からナミの愛剣を奪い取る。それを慌てた様子で追い掛けるから、結果俺の前を横切ろうとする形になった。

 蜜柑の香りが俺の理性を奪う。今、その短剣を手にして、今度は何をしようと言うのか。

 怒りが内側から溢れそうになる。だがその瞳が剣に縋っているように見えれば、単純に依存してると気付き笑ってしまう。

 そのままナミを抑え込み唇を奪えば、簡単にそれに翻弄される。それなりに男の経験もある筈で、その経験を全て吸収してる筈だ。

 にも関わらずいつまでも何処か初心な反応を見せるナミは、快楽に流されそうになる己に涙を見せた。そう、涙を見せたのだ。

 俺はナミの中で、涙を見せるに値する存在になれているというのだろうか。それともただ、それを超えて弱っているのかと問い掛けそうになり、辞める。

 イヤイヤと抵抗する様は幼く、普段の凛とした姿も賢い頭脳もこの時ばかりは鳴りを潜める。幼い様子に対し身体ばかりが成熟している為に、アンバランスな色香を漂わせるのだ。

 

 「泣く程嫌か。……だが、夜は明けた。約束は守ったのだから、この先は約束とは別だ」

 「そんな!?」

 「……金銭は支払ってやる。だから、ただ啼け」

 

 商売女程の潔さも、楽しむ心も無い。だからといって、素人女のように怯えて泣き叫ぶでもない。

 大半はどちらを見ても意識を失ってしまうのだから、意識を保てるだけでどれ程貴重か分かろうというものだがな。どうやら女達にしてみれば、俺は怖いらしい。

 甘い声を抑えさせるつもりは無く、素肌に吸い付き、撫で回す。馨しい香りと、吸い付くような肌触り。

 迦陵頻伽を思わせる美しくもよく響くその声と、何をしても壊れぬその精神。拒絶していながら、相手を傷付ける事を厭う甘い心が……傷付き弱っている所を見つければ放置する事さえ出来なくなる。

 

 「ついでに、俺も愛してくれて構わぬぞ」

 

 寧ろ、俺だけを愛してくれて構わぬ。そうなれば全力で守り、傍らから1刻も離さぬものを。

 俺を選べ、ナミ。俺を……見てくれ、ナミ。

 俺の想いを知らずナミの身体が熱を持ち、苦しそうな呼吸を繰り返す。それに合わせて蜜柑の香りが強まり、肌を伝う汗が甘やかな蜜のように思えた時ナミは言った。

 

 「ミホーク、お願い……もう……」

 

 潤んだ瞳で、縋るような声で、辞めてと言うつもりだろうそれはわかっている。だが、その先は言わせぬ。

 今こうして腕の中にいる間は、俺のものだ。そう思い細い首と肩の境目に噛み付き跡を残せば、ビクリと反応するものの怯えて気絶したり失禁したりせぬその気丈さ。

 俺ならば、これだけでも人を安易に殺められるのは、間違いようのない現実であり、それをナミがわからぬ筈もない。覇気を知らぬ者達でさえ、俺のそれに気付くのだからな。

 己だけは〝愛されているから殺されぬ〟と考えていると言うのではない。ただ、俺の力ではなく俺自身を見ているが故に、そんなつもりは無いのだと判断し、同時に俺を信頼しているのだ。

 ……甘えてくれているのなら、その方がありがたいのだがな。ナミのそれは、俺に対する甘えでは無いと分かるからそれだけは少し寂しい。

 

 「拒絶の言葉は聞き入れぬ。今日は主を甘く……可愛がってやろう」

 「や、だ……!」

 「怯えるな。何も考えなければ良い。快楽に身を委ねていろ」

 

 赤髪(あんな男)の事で苦しむ事は無い。全て、忘れさせてやる。

 初花を散らされた時でさえ中々に見せようとしなかったその涙が、ハラハラと落ちる。それだけ、心が弱っているのだな。

 俺の本気を、見せてやろう。ただ、慈しむ為のそれもあるのだ。

 

 「激しいばかりが抱き方では無い」

 

 囁く俺にナミは流される事無く睨み付けて来て、けれどもやはり攻撃できずに苦しそうな顔をする。そして、内に秘めていた想いを漸く吐露し始めた。

 救いを求めるように、名を呼び手を伸ばす。だが、今目の前に居るのは俺だけなのだ。

 

 「嫌ぁ!ルフィ!シャンクス!助けて!」

 「……それで良い。挿れるぞ」

 

 閉じ込めようとするから、壊れそうになる。当人に言っても響かず、耐えるしかない現実を突きつけられたが故に悲鳴をあげる心を解放するには、これが手っ取り早い。

 涙を流さねば、心の傷が癒えぬ事もある。だからこそ、ナミのようなタイプは虐めてでも泣かせる必要があるのだ。

 

 「嫌っ!ミホーク、辞めて!」

 「拒絶は、聞き入れぬと言ったであろう。それに、ここは求めている」

 

 俺の言葉により、自身の状態を把握したらしいナミは真っ赤になって涙ぐむ。愛らしく喘ぎながら、イヤイヤと首を横に振る姿が愛おしい。

 蜜柑の香りが室内に充満していく。身体は性に貪欲で、心は潔癖なこの矛盾が余計に男を煽る事をナミは知らぬのだろうな。

 

 「大切に愛してやろう。……本番は、これからだ……」

 

 俺の言葉を受けて血の気を引かせたナミは、フルフルと震え出した。それから必死の抵抗を見せたが、その腕力で俺に勝てると思う方が可笑しい。

 甘やかな行為を繰り返し、けれどイカせぬ事を続ければ次第に抵抗する力が弱まる。甘い喘ぎは嗚咽にまみれていくが、それさえ俺には甘美なもの。

 ナミから求める迄辞めぬと告げる俺に、絶望をその瞳に宿す。だが、その瞳に、思考に、赤髪が残る内は虐め倒してくれると残酷に思う。

 俺とて妬くのだ。恋人だけならば、致し方無しと思えても……赤髪がそれに含まれるのならば、俺にも少しはその心を傾けろと思った所で可笑しくはなかろう。

 赤髪が幼い頃からナミ知っているからこれ程に頼られ愛されると言うならば、何故俺とは会っていなかったのか。赤髪とはその頃、幾度と無く会っていたというのに。

 考えれば考える程、赤髪が会わせなかったのだと気付かされる。アレはナミを、俺から隠していた。

 ならばそのツケ、今こそナミが俺に返させるべきであろう。他の男に助けを求め、抵抗するそれが心を楽にするのはわかっているが……その後は、俺の名を甘やかなその声で呼んで欲しいと願う。

 

 「小僧でも赤髪でも、好きに呼べ。その分、ナミが俺に抱かれる時間が長くなるだけだ」

 

 どう足掻こうと辞めるつもりは無い。俺が満足し、ナミが何も考えられぬ程になる迄、鳴かせてやろう。

 ポロポロと涙を落とすが、何故かそれを厭う気になれぬ。その時、つい先日会った男を思い出す。

 

 「クリマタクトの子は……元気にしてるか?」

 「何故、そのような事を?」

 「本来なら、鷹の目と彼女が会う事は無いんだ。少なくとも戦争前には……。それでも会ってるから、知ってるかなと思って」

 「そういう意味の問では無い」

 

 呆れを滲ませてやればその男もまた、苦笑した。そして、遠い……もう失われた故郷でも思う可能ですような顔で、静かな声を出す。

 

 「……世界で二番目に、大切な人である可能性があるから……と、言ったら答えてくれるか」

 「意外だな。1番ではないのか」

 「嗚呼、1番大切な人は、俺や彼女が何度死のうと変わらない。どこに居ても見つけ出すし、見付けてくれる。だから彼女達は、永遠の二番手だ」

 「……アレは今、恋人を持ち、仲間と共に海を旅している。……夢があるのだと聞いているが、とりあえず……肉体は元気だ」

 

 俺の言葉にパッとその気配が明るくなる。少年のように嬉しそうに笑って、だがそんな顔は今まで見たことが無い。

 恐らくこの先も、見る事は少ないだろう。それくらいはわかる。

 

 「そうか!……ありがとう。後は勝手に情報を集めるとする。元気ならいい。叶うなら、幸せでいて欲しいと願うがな」

 「……ほぅ」

 「あ!泣かすなよ。我慢強くて、頭に馬鹿がつくようなお人好しなんだからな」

 

 そう言った男……ベガパンクは、その歳に似合わぬ幼い顔をしていた。まるで竹馬の友を語る子供のような雰囲気で、愛しい者を語る瞳で、優しく、それでいて何処か寂しそうに笑ったのだ。

 ……こうして、鳴かせつつ泣かせたと知られたら、五月蝿いだろうな。だが、構う事は無いだろう。

 

 「何故俺が主の言葉に従ってやらねばならぬ。俺は、ナミが欲しい。欲しいものが目の前にあれば、手を出して当然だろう」

 「私は、生きていて意志を持ってるのよ!女を無理矢理なんて……恥ずかしくないの!?」

 

 言われた言葉を元に素直に考えてみる。そして、思いついたままにそれを言葉にしてみた。

 

 「……ナミの他は自ら足を広げてくる故に、ナミにしか適合しない案件だ。故に、恥ずかしくは無いな」

 

 それでいて、俺が多少不機嫌になっただけで意識を失う。失禁する。

 悲鳴をあげて身体を硬くする。……それで、どうやって楽しめと言うのか。

 試行錯誤を若い内は繰り返した為か、技術ばかり上がった。俺だと気付かせぬままに終えられれば発散はできる。

 時に発散する事が可能な女がいても、使えるからと何度か関係を持てば俺の女だと騒ぎ出す。その為始末して回らねばならず、それもまた面倒。

 欲を出せればそれで良い。欲を出しやすくする為それが、女を悦ばせる技術の向上に繋がり、どうでもいい女に群がられる事が増えたのは、厄介でもあった。

 だが今、それはナミを鳴かせるのに役立ってはいる。……前にナミに問い掛けた時、恥ずかしそうに〝上手いと思う、誇っていいんじゃないかと思うくらいには……〟と言ったのだから、偽りでは無かろう。

 

 「……逆に問うが俺はナミが欲しい。だが、ナミは嫌だという。この条件で力づくの他どうすれば手に入る?」

 「そ、れは……」

 「俺は、ナミを待ってやるし、守ってもやるが……求める事を辞めるつもりは無い」

 

 言い淀む辺りが、まだまだ甘い。そんなものは知らぬと言えぬ辺りが甘過ぎるのだ。

 勝手に奪おうとするそれに合わせる義理は無いのだと、そう言って見捨てられぬ所が付け入られる理由だろう。まァ、それを教えてやるつもりは無いが。

 

 「ゆっくりともどかしいような抱き方をされるのと、激しく獣のように抱かれるのと、どちらが好みか」

 

 己をナミの秘部に宛てがい、問い掛ける。それにどっちもと答えたナミへ、その言葉通り2回楽しませてやらねばと腰を使えば悲鳴を上げる。

 

 「ナミが〝両方〟を望んだのだ。たっぷり可愛がってやろう。船が帰り着くまでまだ1日ある。その間愛欲に沈むがいい」

 

 愛らしく鳴きながら、助けを求めるように彷徨う手を掴む。居ない相手に縋るのではなく、俺に縋れと命じるように。

 その時ふとした時に虚ろな瞳をする事に気付けば、しっかりと自覚させるべきだと気付いてしまう。その過程でもし孕んだとしたら、それは事故だ。

 その場合はナミごと貰い受けるつもりであるのだから、遠慮するつもりは無い。俺の問い掛けに戸惑いながらも素直に答えるナミに、偽る事を知らぬその心に、笑いそうになる。

 

 「赤髪ならばこう言うか。……〝ナミ、誰とも付き合ってねェんなら、試してみるだけでも良いんじゃねェのか?俺達は気心も知れてる。それに、ナミは俺の事嫌いじゃねェだろ〟」

 

 それはそうだろう。ナミが、これ程無防備に泣くのは……泣けるのは、限られた相手だけなのだから。

 今はまだ、愛ではない。それでも俺は、ナミの中で大切な人という枠に入っているのであろうな。

 

 「そのまま、心のままに泣いていろ。……ナミの〝泣ける相手〟とやらに加われて、俺としては嬉しい限りだ」

 

 俺はただ、ナミの心が落ち着き、俺が満足するその時まで……ナミを甘やかしつつ貪ろうと決めたのだ。意識を保てなくなるまで責め立て、甘やかし、その意識が戻らなくなるまで貪っておく。

 その後はそっとその身を清めて、瞼が腫れぬよう手当をしてやれば、俺に出来る事はもう無い。ナミならば、後は自力で回復するだろう。

 泣けぬなら、鳴け。その結果、ナミは泣くだろうからな。

 安らかに眠るナミを抱き締め、俺もまた眠りに入る。ナミと共に何もせずに過ごすベッドの中は、それはそれで気に入りの時間なのだ。

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