※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(新・本編side)   作:夢枕 七変化

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ドレスローザ国王、裏の顔を〝JOKER〟王下七武海〝天夜叉〟ドンキホーテ・ドフラミンゴ
出逢い


 偉そうに……お前らに、俺を自由に使う権利はねェんだよ。巫山戯るな。

 そう言いそうになり、思い止まる。それにしても、人探しか……。

 いよいよ持って海賊の仕事でも無けりゃ、王の仕事でもねェよな。そう思いながらも拒む事無く、資料に目を通して行く。

 資料は全くもって何も分かっていない事しか書かれておらず、いくら読み直しで何も分からねェ。いっそここまで情報がない事に、怒りを突き抜けて笑えて来るレベルだ。

 

『探し人

名前:宝玉(ペンネーム)

性別:女(ニュースクーが唯一漏らした情報)

年齢:13歳以上(宝玉としての活動が13年)

特徴:動物に好かれる(ニュースクーが庇う程)

特徴:賢い(出版されている物が全て本業に愛される)

特徴:多彩(出版する種類が多い)

よって複数人でペンネームを共有している可能性有り。

地域:東の海

探す理由:嘘つきノーランド~真実と隠された友情物語~について話を聞きたいと某国が騒いでいる。

探す理由:架空偉人伝~ライト兄弟~にて登場する飛行機について世界政府が詳細を知りたいと希望している。

探す理由:酷似した世界政府が隠蔽したい話が幾つも出版されている。

探す理由:音楽関係者がサイン会と演奏会を開けと煩い。

探す理由:料理人達が試食して欲しいと煩い。

etc.』

 

 これをどうやって見付けろって言うんだかなァ?まァ、地域が分かってるだけマシか。

 深い溜息を落としてから俺は立ち上がる。とりあえず13歳だとしたら産まれた瞬間に作家デビューした事になるなァと笑ってやれば、苦虫を噛み潰したような顔になったので多少溜飲が下がった気がした。

 ニュースクーを従える東の海の女で、音楽に強くて知識の豊富な奴か……。絞り込ませるしかねェな。

 溜息を落として俺はドレスローザへと帰り、その事を告げる。調べさせて3日もすると、候補者が10人程に絞られた。

 それを1件ずつ回る面倒さ。しかもその内1件は、所在地不明と来たもんだ。

 山の中に住む老婆は、孤児院をしていて、宝玉の名を出すとお知り合いですか!?と食いついて来て引き剥がすのに苦労した。流石に殺して回る訳にも行かねェからな。

 次は教会のシスターで、生きる為の知識としてある程度知っているだけだと言われてしまう。確かに、本を所持する余裕も無さそうだ。

 宝玉が稼いでいる金額を考えたならば、ある程度裕福な状態にあると考えるのが普通だろう。……もしくは、孤児院等の運営に当てているかだな。

 2件回っただけで、既にダルい。所在地不明の奴は時々ローグタウンで歌うらしいとの情報があるので、俺はその次の所への中継地点にあるからと立ち寄る事にした。

 降り立った所から、とりあえず知識が多い人間は本が好きだからと、書店へ足を向けた時……我が目を疑う光景があった。ニュースクーが人間の女に懐いているのだ。

 

 「クーちゃん!?どうしたの!?」

 

 ニュースクーを心配して、弱っているニュースクーを優しく撫でる女は、顔立ちこそ幼くあどけないが、容姿も声も極上だ。太陽の色をした長い髪と、豊満な胸元、スラリとした肢体、今はまだ多少のあどけなさは残るものの美しい顔立ち。

 ニュースクーを気遣うその声は焦りを含んでいながら、優しく暖かい。……食欲を刺激する女だな。

 その時ニュースクーが女に手紙を差し出した。それを受け取った女は、それに対して対価を支払っていない。

 その手紙を読み始めた直後に、女が1瞬懐かしそうにその瞳を細めて微笑んだ。それが胸に何か衝撃を与え、しかしそれは1瞬で真剣な雰囲気に変わる。

 その雰囲気は触れれば切れる刀のようで、面白いと感じた。恐らくあれが所在地不明の候補者だろう。

 俺は手紙を切り裂いて歩み寄る。俺を見た女がその表情を微かに動かした事で、俺が誰なのかを理解していると判断出来た。

 戯れに糸を向ければそれに対応出来た事から見ても、単なる民間人では無いのかもしれない。だが、海軍ならば探すのに困りはしないだろう。

 動物に好かれて、知識が豊富な女はクリアか。そう思うのと同時に、11年探していた女と瓜2つである事に気付き、逃がすものかと思い笑う。

 俺の存在に対してニュースクーを庇う女は、ただのお人好しか、それともそれ故に動物に愛されるのか。声をかけ、問い掛けても11年前の事にしても宝玉についても知らぬ存ぜぬで、埒が明かない。

 苛立ちながら言われた酒場に足を向けて、話を少し聞く。すると店主は明るく笑った。

 

 「ナミか!ああ、18歳になった筈ですよ。あの時ナミ12歳だったのに……。業突くに1/10の価値で換金されそうになって、怒り狂ってたのが出会いで……」

 

 その男が語ったナミとは、金の亡者でありながら弱者を見捨てられない、民間人のそれでしか無かった。お人好しだと語られたナミの話を聞けば聞く程、年齢に少し目を瞑れば宝玉としか思えなくなる。

 歌を歌い、楽器を演奏し、動物に愛され、知識が豊富で、東の海に住む女。問題はそれだとすると5歳でデビューした事になる事くらいだが、ローならば可能だった可能性もあるのだと思い返して見れば、気にならない。

 気が強くて、美しくて……か。問題はそれ程裕福な様子ではない所か。

 それは、ナミが金の亡者だと言う事と関係があるのか……?考えながらもナミを連れて来ると言えば、店主は1瞬驚いたような顔をしてから、頷いた。

 

 「近くにいるなら俺なんかに話を聞きに来ないで、本人から聞けば良かったでしょうに……」

 

 そんな言葉で見送られ、俺の中ではナミが宝玉で決まる。問題は確証の無さと……北の海で出逢った女との関係性だ。

 潮と蜜柑の香りがしたあの時の女と、ナミは容姿だけでは無く、その香りまで同じなのだ。どうやれば聞き出せるか。

 政府にナミは渡さねェ!アレは俺のモノだ。それだけは決意して店を出れば、そこで待っていた。

 カモメは逃がしたのか、既にその場に居ない。凛と立つその姿は、刹那犯し難い聖域に感じる程だと思った自らに苦笑する。

 近付けば逃げるだけ無駄とでも思っているのか、ナミは俺を冷たい視線で見てくる他は、特に変わった事も無く会話を進める。18歳である事が証明されたナミはそれではと言って去ろうとするが、そうは問屋が卸さねェよ。

 酒場に入るとナミの姿を見て、嬉しそうにした店主が臆面も無く近付いてくる。そして、平然とナミが宝玉の関係者だと口を割る店主に、内心だけでなく笑っちまう。

 

 「お連れさんがいるなんて珍しいから、オジサン嬉しくてね。お父さんかい?」

 「残念だが、ビジネスの話をしてるだけで親じゃねェんだ。そうか……宝玉の知り合いか」

 

 俺の言葉にナミは冷たい視線を向けて来るが、それには何の効果もない。あるとするならば、俺を誰だか知っていて睨んでくる物珍しさに俺が興味を強く持つ程度だろう。

 

 「だとしても、口は割らないわよ。たとえ拷問されようと、殺されようとも……ね」

 「え?先生何かしたのかい?困るよー……先生の料理で持ってる店なのに」

 「店主、リクエストしてくれたら、好きなの歌ってあげるから、少し黙ってて」

 

 困ったような、焦ったような顔でナミが言えば、己の発言がナミを追い詰めていると気付かない店主が笑った。そして、気楽な様子でリクエストを口にする。

 

 「なら、新曲頼むよ。いつも悪いね!あ!お連れさんもお代は良いからね!」

 「……お代、貰いなさいよ。そんなんだから上向かないのよ、この店」

 

 立ち去る店主に力無く言葉を落とし、ナミは脱力した様子を見せる。そのやり取りが何とも微笑ましい。

 

 「それで……ナミだったな。お前、この俺から逃げられると思うのか?」

 「思わないわ。でもね、何も話すつもりは無いの」

 

 気の強いナミのその態度に、呆れたように溜息をはけば、それを気にしないと言わんばかりに俺に冷たい視線を向ける。

 

 「殺されるとは思わねェのか」

 「宝玉への唯一の手掛かりを?それも、もしかしたら宝玉かも知れないのに?……生け捕りしないといけない相手なのに、殺せる筈ないわよね」

 

 恐らく賢いが故のミス。そうか……宝玉への〝唯一の手掛かり〟なのか、お前は。

 笑いがこみ上げる。賢いとは言っても、やはりまだ幼さは残っていたようだ。

 

 「フッフッフッフッフッ!だが……四肢を切り落とす事は出来る。違うか?」

 

 試すように笑いながら問い掛ければ、ナミは笑みを深めた。それは先程とは打って変わり、それは妖艶な微笑みで……。

 

 「それをした場合、本物の宝玉なら……生け捕りにする意味は、ほぼ皆無になるわ。だから、やるとしたら足だけ。でも、その足さえ失えば口を割らない危険性や協力しない危険性があるのに、危害を加えるなんて……出来ないでしょう」

 

 何故求められているのかを、正確に把握しているかのような言葉に、俺は呆れを隠せなくなる。それを分かっていて、この強気な態度か。

 

 「可愛気の無ェガキだな。だが……まァいい」

 

 そう言って見慣れない名前の、店主が当然の顔で提供して来た料理を無造作に口にして、俺は動きを止めた。それに対して何故か得意気なナミが居るのだが、それどころじゃねェ。

 ドレスローザには、それなり以上に優秀な人間を集めている。だが、これは……。

 

 「これも、宝玉の考えた物なのか……?」

 「そうみたいね」

 「宝玉は何人かのチームだと言う噂もあるが」

 「あら、そうなの?知らなかったわ」

 

 のらりくらりと躱すナミが、今程憎く感じた事は無い。この料理を、もしくはレシピを生み出せる天才なら俺が囲い込みてェと思う。

 

 「……なァ、ナミ。何か欲しい物があるなら言ってみろ。それと引き換えに、情報を少し差し出せば良い」

 

 そんな俺にナミは冷たい視線を向けて、肩を竦める。それから囁くような声で、睦言を紡ぐように言葉を口にする。

 

 「そうね……火鼠の皮衣かしら」

 「……あァ、宝玉の作品に出て来た夢幻の品か」

 

 1瞬何を言われたのか分からなかったが、いつだったかシュガーの為にと用意させた中にあった、児童書を思い出す。シュガーが気に入っていたな、ワノ国と似た雰囲気であるところも共感を呼びやすかったらしい。

 

 「えぇ、あるのならば弟にあげたいわ。きっと喜ぶもの」

 

 そう言って笑うナミに、用意出来る筈ねェだろうがと思う。だが……手に入った時、ナミは本当に俺に情報を渡すか、俺と共に来るのだろうかと、妙な事を考えてしまう。

 その時知っている気配が近付いて来るのがわかった。だがそれと同時に立ち上がったナミが、そいつの名を呼んだ事の方に、ある種の衝撃を受ける。

 

 「ナミ、天夜叉と共にいるとはな」

 「絡まれてたのよ。可愛いって罪よね」

 

 巫山戯た様子で明るく笑うナミに、鷹の目は納得した様子を見せる。まさか……こいつら、デキているのか。

 

 「そうか。だが、俺が先約だ。天夜叉には引き取り願おう」

 「あァ!?鷹の目、お前……」

 「今宵もナミと褥を共にすると、約してある」

 

 俺の言葉を遮るように言われた言葉に、俺は不快感が強まるのを感じた。デキている訳じゃなくても、ナミと関係があるらしいとわかったからかも知れない。

 だがナミはそんな鷹の目を、悪戯する子供を叱るような風情で言葉を発する。それを受けても、鷹の目は怒る事もしないので、どうやら少なくとも鷹の目はナミにご執心の様子だ。

 

 「……そんな話初耳よ。と言うか、誤解を招く言い方しないで!」

 「昨夜のナミは可愛かったが?今朝も、遊ぶなとその事で俺を叱っただろう」

 「……っ!だからっ」

 

 その時グラスの割れる音が聞こえて、見れば店主が倒れそうになってる。その時ナミは肩を落として背を向けると、置かれているピアノに近づいて行く。

 そう言えば先程新曲をとか頼まれていたな。新曲……ねェ。

 俺は斜に構えてナミの行動を眺めていた。それが俺にどれ程の影響を与える事になるのか、この時は欠片も想像出来なかったのだ。

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