※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(新・本編side)   作:夢枕 七変化

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長毛の猫※

 1度は仕方なく手放したナミの事を調べれば、驚く程に情報が集まりにくい。懸賞金もかけられてはおらず、行動範囲も東の海はほぼ制覇しているのが要因だろう。

 そうなれば探すのは意外と骨だ。それでも世界政府に狙われる可能性のあるナミを野放しには出来ねェし、何よりも俺がナミに会いてェんだよ。

 そんな中で見付けた新聞の端にある記事と、東の海で3千万という奇跡に近い金額の手配書。……だとするならば、偉大なる航路に入ったか。

 少し様子を見るかと、暇でもねェ俺はナミから1度意識を切り離そうとするが、それさえ中々に難しく気が付けばナミの事を考え、思い出している。死を望んでいたナミが、この件で死を望まなくなったりしているのだろうか。

 だとしたら、あの頃のように優しく微笑むようになったのだろうか。……俺はただ、ナミにまた名を呼ばれたいと希望してるだけなんだかなァ?

 小さな願いの筈だ。なのに何故、そんな事さえ叶わねェのか。

 それからそれ程経たねェ内に、奇跡が起きた。まさかのサー・クロコダイルの七武海落ちだ。

 長い事七武海で政府のそれに従うフリをし続けた狡猾な男が、その地位を追われた。やはりDは面白ェなと新聞を眺めて笑う俺に、ファミリーは楽しそうですねと笑う。

 そのDと共に居る筈のナミだからこそ、また会えそうだと思える。この航路は意味が分からねェが、アラバスタを出たのならば、次の島は限られて来るな。

 空島の情報を集めに行くか、空島を経由せずに秋島へ行くかの二択だな。そうなるとナミが昔惚気けていた内容を思えば答えは、自ずと空島だろうと思える。

 その為に寄るだろう島には俺を慕う〝可愛い部下〟がいた事を思い出して向かう事にする。もし遭遇すればベラミーに勝ち目はねェから、制裁を与えるのにも都合が良い。

 こちらでやる事を片付けてから向かえばベラミー達は楽しそうに祝杯をあげていて、まさかベラミーがDに勝てただと?と奇妙に思う。憧れの視線と、熱い眼差しが俺に注がれるが……何故だろうな……苛立つばかりなのは。

 

 「……こ、これから、黄金を奪いに行こうって話してたんです!俺の戦いぶりを見て貰えませんか!?」

 

 ベラミーの言葉に曖昧に頷いたのは、ベラミーが倒したというのが本当にあのDなのかを知りたかったのと、その目的地にナミがいる可能性を考えたからだ。そして、先行したベラミー達を眺めつつその近辺を探れば本当にナミがいた。

 穏やかに微笑み、だが何処か困ったような顔をしているナミが見えた。ナミはベラミー達から離れ船に向かい、そこからベラミー達に攻撃を仕掛け始めるが俺はそれにより1瞬動きを封じられたかのようになる。

 ……なんだ、あの技は。見た事も無い攻撃に、だがゴロゴロの実では無い事は分かっているからこそ、1瞬何事かと考えその姿を食い入るように見る。

 どちらにしても、ナミであれば良い。迎えに来たぜ、俺の花嫁。

 

 「探したぜ?ナミ……いや、俺の花嫁」

 「私は、二度と会いたくなかったわ」

 

 気丈に睨み付けてくる俺の猫。長毛の気の強い猫は元々俺の好みだが、その根底は恐らくナミだったんだろうなと今ならば分かる。

 俺が目の前にいるのに、ナミの視線はベラミーと戦う猿達に向けられていて、俺を見ろと心から思う。それとも全員切り刻むか……?

 

 「そんな冷てェ事言われたら、傷付いちまうぜ?」

 「……心にも無い事を……。それで、何の用?」

 「可愛い部下の様子を見に来たんだ。……それだけさ」

 

 素直にお前に逢いに来たと言えば、怯えるんだろう?

 だから俺は、何も気にしてないふりをして、ナミの言葉に返事をするしか出来ねェ。どうしたら、お前はまた俺に微笑みかけるんだ……?

 

 「そろそろ、失態を犯したとでも思ったの?」

 「……賢すぎると、長生き出来ねェとナミには教えなかったか?」

 

 危険すぎるレベルの知識。そして、美しいその姿。

 気の強さと、それに見合わぬ甘さ。そんな矛盾だらけの女が俺の事は睨み付けてくる。

 捕らえようと糸を差し向けても簡単に躱す猫のようなその姿に、ありもしない幼い頃の俺とロシーが見えた気がした。こうして守られたのだと……腕に、背に、ナミが未だ俺達を庇っているような気がして、なんとも言い難い気持ちになる。

 だが俺の攻撃をナミが躱した事で、船についた傷を見たナミが怒る。それについては悪かったと思い謝れば、ナミが驚いたような顔をした。

 それが少し昔のナミと重なり、今なら何か聞けば答えてくれる気がして1人で来たのかと聞いてみる。それに対してナミは、小首を傾げてみせる位警戒心が薄れていて、素直に違うと答えてくれた。

 

 「仲間はいねェと言っていたし、あの時確かに他に誰も居なかった。今もな」

 「そこに、いるじゃない。大切な人達なの。これ以上手を出さないで」

 

 その時、脳裏に俺とロシーを庇いながら逃げ回るナミが浮かんだ。当時の声まで、聞こえてくるようだ。

 

 〝私の弟達よ!変な言い掛かりは辞めて!弟達には、手出しさせないわ〟

 〝二人とも、逃げて。私は大丈夫よ〟

 

 ……どこが、大丈夫だったのか。ロシーを連れて逃げるしか出来なかった当時を思い出せば、奥歯が砕けそうな程の悔しさが蘇る。

 今、その守る相手が俺ではなく、あの猿達か。なら、今ならばナミを好きに扱えるか……?

 守る為ならば、なんでも犠牲にするナミならば、きっと俺の言葉に従う。ナミが〝大切〟だと言ったのだからな。

 

 「ならナミは何を差し出せる?対価はなんだ?」

 

 その時ナミの瞳が揺れた。これ迄に無かったその反応に、少し驚かされる。

 簡単に〝命〟を差し出すかと思った。そうすれば、命の代わりにと、その人生を貰うつもりだったが……。

 

 「……ドフラミンゴの求めるものと、それが合致するとは思えないわ。何がお望み?」

 

 妖艶に微笑むナミに、心が干からびたような飢えたような感覚に陥り、喉が自然と鳴る。やはり俺は……お前が欲しい。

 

 「そうだなァ……ナミを持ち帰りたい」

 「私は物じゃないし、メリーから離れるつもりは無いわよ」

 

 不愉快そうにナミは言う。そうだな、お前は物じゃねェ。

 だから、いつも俺の前から姿を消しちまう。同じ物を作る事も出来ねェ。

 

 「……それなら、ナミの体で払ってもらうんでも、構わねェが?」

 

 試すように言葉を口にすれば、青ざめたナミが自らの体を強く抱いて、数歩後ずさった。嫌だと、怯えを宿した瞳が告げる。

 

 「……変わったな。随分と、人間らしくなった」

 

 俺の言葉に怯えを隠してナミは言う。震えも押さえ込み、キッと睨み付けながら。

 

 「余計な、お世話よ……」

 

 あァ……いい女だな。俺をこれ以上本気にさせて、どうするつもりなのか。

 甘やかで優しい歌声で、渇いた俺の心を潤したように……今度はその体で、俺の心を満たしてくれよ。そう思いながら言葉を口にしたからか、微かに俺の声が掠れている。

 

 「益々、欲しくなった」

 

 俺の言葉に反応して逃げようとしたナミは、それでも俺の速度には遠く及ばない。抱き締めて唇を奪えば、音もなくナミは言う。

 

 〝いや、触らないで!〟

 

 触るだけで終わる訳ねェだろうに。ナミは、俺のモノだ。

 守るべき相手がいる限り、いい子にナミが俺に従うのは分かっているから、どうでもいい猿に手を出すなとベラミーに命じる。俺のモノだと自ら言わせようとしたが、ナミはつらそうにその瞳を揺らすばかりだ。

 ……嘘をついて、口先だけでも従えばいいものを……それさえ出来ない高潔な女。だからこそ、俺のモノにしたいと思わされる。

 

 「……強情だな、相変わらず。そんな所も気に入っては居るが……ナミを変えた奴が俺じゃねェ事が、気に食わねェ」

 「ドフラミンゴ、この船にも、クリケットさん達にも、手を出さないなら……相手をするわ。それで、いいでしょう?」

 

 その表情と瞳を見て、ナミが本当に守りたいのはコイツらじゃねェんだなと分かる。いや、コイツら〝も〟守りたいのだろうが、本当に守りたい相手が他にいるのだと分かる。

 恐らくは、そいつらの為ならば……やるつもりもやらせるつもりもねェが、ベラミー達に回されるとしてもナミは受け入れるのだろう。……プライドがこれ程高くなければ、もう少し生きやすいだろうにな。

 ナミを抱いてベラミーのアジトへ戻れば、部屋を借りてナミを運び込む。その時ベラミーが言う。

 

 「確かにその女はいい女だと思いますが、そこまで気に入る理由が分かりません」

 

 そんなもん、ナミだからに決まってるだろうが。そう言いそうになり、辞めて別な言葉を口にする。

 

 「ナミの連れ合いも、見たか?」

 

 俺の問い掛けに嬉しそうに声を弾ませて、ベラミーは言葉を返して来る。どうやらナミは、今共にいる〝仲間〟とやらに随分と大切に守られているらしい。

 適当に返事を返して、ナミを部屋に連れ込めば俺を睨み付けるナミ。それでも、抵抗は出来ねェだろ?

 

 「……本当に、毛を逆立てた猫だな。泥棒猫?」

 

 俺の言葉に、先日と同じ言葉を返して来るナミは、本当に気の強い女王のようで……泣かせたくなる。そんな衝動を抑えずに、衣服を切り裂き操り、まさぐる。

 気高い精神が屈辱に震えているのを伝えて来て、つい言葉で痛振ればナミはそれに対して平然と反撃して来た。言葉から、ナミに〝男〟がいる事が分かる。

 

 「だが、今回は船とあの3匹の為に〝合意〟だ。違うか?」

 

 俺の言葉に何も返せなくなり震える姿に、庇護欲と嗜虐心が刺激される。だからこそ、ナミ本人に選ばせる。

 俺を自ら求めるか、最後まで拒絶してゆっくり俺のモノになる為に調教されるか。笑う俺を見てナミは顔色を無くして、体と声を震わせながら苦しそうに、嫌そうに言う。

 

 「っ……!どふぃ、抱い、て」

 

 前に俺に散々抱かれているからと特に何もせずに己を押し込むが、濡れていないだけでなく体が拒んでいる様子に舌打ちしそうになる。そんなに、俺が嫌か!

 

 「……ナミッ!少しは、力を抜けっ!」

 

 だがナミは悲鳴も、喘ぎも、それどころか呻き声の1つさえも抑え込む。どうして……俺を拒むんだ、ナミ。

 

 「前より狭いなんて事はねェよな……」

 

 そんなにも拒むなら、体だけでも従順にしてやるよ。他の誰かが助けに来ても、ナミが俺を咥え込んで離さなければ、それはナミが望んでる事になるだろう?

 だが、取り出した物を見た瞬間にナミは逃げようと動くから、これは面白いと喉で笑う。理性なんか、失っちまえよ、ナミ。

 生意気な口しかきけないそれに、強制的に薬を流し込む。最大飲ませていいとされる量の倍を飲ませたが、ナミの瞳は俺を貫くような鋭さを失わない。

 薬が効くまで待つなんて事は俺には出来そうもなく、だがナミを壊さねェようにと愛撫をすれば反応だけは次第に良くなる。その中で声を完全に殺すナミに、苛立ちが募っていく。

 

 「この薬を通常の倍の量飲まされて、それでも自我を保つとはな……。お前は何者なんだ、ナミ」

 

 問いかけにもナミは答えようとしない。だから、中に俺の欲望を注ぎ込む。

 俺のモノになれナミ。俺の子を孕めよ。

 中に注ぎ込めば、終わったと思ったらしいナミの体から力が抜ける。甘ェな……ここからだろ。

 声1つ出さねェナミの中に、何度も何度も、狂ったように俺は想いを込めて熱と欲望を注ぎ込む。その為に繰り返す行為に、ナミの体だけが従順に従う。

 その時ナミが1筋の涙を流しながら、焦点の合わない瞳で空を見詰め、声を出した。救いを求めるように、助けを求めるように、たった1音。

 

 「……フィ……」

 

 ドクリ……と、心臓が大きく脈打つ。呼吸さえ、忘れる程の衝撃。

 ……俺を、呼んだのか?

 やっと、俺を……?

 届かない想いがこれ程に苦しいとは思わなかった。ナミがこれ程に拒むとも、プライドが高いとも思っていなかった。

 俺はナミが誰を想っていても、お前を諦めるつもりはねェし、他を想っていても良いなんて言うつもりもねェ。俺を……愛せよ、ナミ。

 ナミの手を握るが、ナミは反応を示さない。俺だけが、想っているのだと痛感させられる。

 

 「ナミ、俺はお前を」

 

 その瞬間、衝撃音が聞こえてナミの迎えだと分かる。その瞬間、俺の望んでいた穏やかで優しい笑みをナミが見せた。

 明らかに、俺ではない誰かに、ナミがその表情を……。……今は、帰してやるよ、ナミ。

 そう思ってナミの中から己を抜けば、俺の放った白濁としたモノがナミの中からドロリと流れ出る。その刺激にナミが震えて、その状態でも仲間に手を出させないと震える体を動かそうとする。

 そうして、護っていたのか、あの頃も。今のお前が、あの頃のナミの過去ならば、俺にこんな扱いをされていながら何故お前は俺達を守ったんだろうな……?

 ナミの手元に武器を移動させて掴ませてやれば、ナミが虚ろな瞳で俺を見た。そして、まさかのベラミーを心配し始める。

 甘いにも、程があるだろう。既に馬鹿超えて、愚かだなお前。

 そう思いながらナミに毛布を投げる。見ていたら何度でも犯したくなる体をしている自覚を持て。

 その身を隠せ。そうしなけりゃ何度でも貪るぞ。

 それにな、ナミ。あいつは自分から幸福を捨てたんだ。

 俺やお前、ファミリーの誰もが望み得られなかった幸福を、自ら捨て去った。そんな奴を、どうして大切に思える……?

 

 「……可哀想な、人ね」

 

 言葉にしなかったそれを、全て分かっているかのように突然紡がれたナミからの言葉に視線を向ける。すると慈愛のこもった眼差しで、哀しそうに俺を見ていた。

 俺の事等何も覚えていない筈なのに、まるで俺の全てを知っているかのような顔で。まだナミにとっては、見知らぬ未来である筈なのにな……。

 

 「ナミは、何を知っているンだ?ロー達の事も、本当は知っているんだろう?」

 「ロー?……あぁ、手配書が出てたわね。確か〝死の外科医〟だったかしら?」

 

 ……ナミ、ローの手配書は〝明日〟出るんだぜ。お前、何者だ?

 そうは思うが、拷問してもナミは恐らく何も答えないだろう。そういう瞳をしている。

 思わずナミを抱き締めて、離したくないと願う。この俺が、願っているんだ。

 離れたくない、離したくないと。ナミ……俺の救いであり希望だったお前を、求めているんだ。

 何故皆俺を捨てる。俺を裏切る。

 お前も俺の事を捨てるのか?

 お前まで俺を裏切り、殺そうとするのか……?

 その時、幼い頃と同じようにナミが俺の背に腕を回した。そして、優しく宥めるように背を叩く。

 

 〝ドフィは、偉かったわ。よく我慢したわね。大丈夫、ナミ姉さんは強いのだ!〟

 

 あの時の俺は、泣く事しか出来なかった。逃げて、隠れて、護られていた。

 その頃に帰らされそうになる。ナミに、甘えて……縋りたくなる。

 

 「……仲間に手を出さない他に、ベラミーを殺さないと約してくれるのならば、1つ答えるわ」

 

 甘やかな声が、聞こえる。ナミが望むなら、叶えてやるよ。

 

 「良いだろう。どれに答えてくれるんだ?」

 

 ナミの顔を見れば、強がっているのが分かる。それでも、怖くてもつらくても、優しさを失わないのはそれもまた強さなんだろう。

 ナミ、俺はお前を愛している。伝わらない想いが、苦しくて叫びたくなる程に。

 

 「私が〝宝玉〟で間違いないわよ。国王様」

 「ナミは、甘いナ。だが……約束だ、お前の物に手は出さねェし、ベラミーも生かしといてやる」

 

 知っていた。分かっていた。

 だが……そうだな。ナミは誰にも殺させねェ。

 教えてくれた真実で、お前の命は守ってやる。お前だけは……喪えねェ……。

 手配書が出ようが出まいが、ナミは〝生け捕りのみ〟と定めさせると決めて笑う。その笑みを誤魔化す為に俺は言葉を口にする。

 

 「……それにしても〝仲間〟か」

 「何よ?」

 「仲間なんか居ない。そう言っていたナミが、変われば変わるものだな」

 「……そうかも、知れないわね。……本当に仲間に手を出さないなら、戦闘を避ける為に姿を消して。私は、動けそうもないから迎えを待つわ」

 

 優しくて残酷な、天使の羽根を持つ長毛の猫。俺の全てを形作り、支配し、縛り付ける存在。

 その心を壊さねェ為に、今は……手放してやる。甘やかして、くれたしなァ?

 

 「手強いな……」

 

 そんな女だから、俺はナミを愛したんだろうが、俺は自分で分かっているんだ。……次も会えば犯すだろうと。

 それでも、ナミが拒むならばその身を解放はしてやる。心を破壊しない為に。

 だが……体だけは差し出せよ、ナミ。俺は全てを許せる程、寛大じゃねェ。

 俺は窓を割り表へ飛び出す。屋根の上から様子を伺えばナミが〝泣いている〟事を知り、その涙を見せている相手が誰なのかを知る。

 ライバルが幼いと、やりにくいなと……そんな事を思いながらナミが縋りついた相手が〝フィ〟だったと思い知らされる。叫びそうになるのを抑えて、空を見れば輝く月。

 ……今夜の月は、やけに綺麗だなァ……?

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