波間の向こうを目指して(新・本編side) 作:夢枕 七変化
俺のモノに貫かれているのに、必死で抵抗しようと足掻くナミを力で抑え込む。それだけで気付いちまう。
こんなにも、細かったのか……と。こんなにも、小さく、弱かったのか……と。
この脆弱な身体で、俺達を圧倒して、その上でナミは俺達をその背に庇っていたのか。……どうして、ナミは俺をそんなにまで愛してくれるんだ?
その刹那、ナミが俺の舌を噛んだ。それは炎となり、ナミの口内を焼こうとする。
そういう意味で傷付けるのは本意じゃなくて、慌てて離れたがナミの無事だろうか。ナミは火傷とかしてねェかな。
「っ……!?あ、ぶね!ナミ、火傷してないか」
「……ぬ、いて……!」
この期に及んで何言ってんだ。泣いても辞めねェって言ったろうに。
苦しそうな顔が色っぽい。いつもその腕で抱えて守りながら、胸に抱き締めて見たくないものは見なくていいと言ってくれていた。
それは、こんな顔を見せない為だったのだろうか。でもよ、守られるばかりで満足できるなら、男に生まれた意味なんてねェだろ。
「……大丈夫みたいだな。ナミ、余り無駄な抵抗するなよ。傷付けたく、ねェからさ」
俺の言葉にナミは睨んでくるけど、正直可愛いだけだ。……今ならわかる。
俺はナミに力でなら簡単に勝てる。それなのに俺が勝てないのは……惚れた弱味……じゃねェな。
分からねェ、武器の無いナミはただの村娘と言われても納得出来る。なのに、どうしてだろうな?
僅かでも気を抜けば、ナミに逃げられる気がする。俺の傍から消えちまう気がするんだ。
「エース、いい「子じゃねェから、俺は。ナミも知っての通り、俺は鬼の子だ」」
俺が鬼の子だと知っていて、ナミは当然の事であるように愛してくれる。そんなの、あの日盃を交わした兄弟の他には親父だけだって思ってたのに……。
期待させんなよ。俺をそういう意味で愛せないなら、期待させないでくれ。
その想いを、苛立ちを、哀しみを、全て乗せて腰をふる。力を入れ過ぎれば砕いちまいそうな細い腰を押さえて、ガツガツと攻めれば俺の方が持って行かれそうになって、それを必死で耐えながら腰を動かす。
限界が近いのか、ナミの声が甘さを増して、同時に悲哀を滲ませる。俺ももう耐えられそうに無くて、押し殺した声でナミを呼ぶけど、ナミは無謀にも逃げようとするから俺の上に自ら乗るように仕向けてやった。
その刺激に反応して、ナミの身体は俺を求める。少なくとも身体は、俺を求めていると分かれば笑みが浮かんだのも当然だろう。
その次の瞬間、ナミは懐かしそうに俺を見詰める。優しく、幼子を見守る母親のような顔で俺を見て……。
「ナミは、俺を子供扱いする癖があるよな。思いっきり、甘やかしてくるしよ……」
「私は、エースが可愛いもの。どうしたってエースが大切なのよ……ねぇ、お願い、エース。もう、辞めて」
ああ、駄目だ。俺は、このナミが欲しい。
甘くて、優しくて、穏やかで……それでいて壊れそうな儚さを持つナミ。強がりで、本当は臆病な癖に気位ばっかり高いナミが……欲しいんだ。
与えられる事は有り得ないとわかっていた筈なのに、いつまでも求めていた、母親からの愛情。打算も何も無い、純粋な愛情が俺に向けられている。
俺にはそれを恋愛と区別する能力がないから、悪いな、ナミ。俺はこんな返し方しかできねェ。
泣くのは分かってる。傷付けるのも、苦しめるのもわかっていて、俺は自分の熱をナミにぶちまける。
だけどそれだけなんてできない。ちゃんと、ナミを快楽の果てに連れて行ってやる。
そう思って胸に舌を這わせれば、ナミが限界を超えたのはその直後。愉悦の悲鳴は俺の自尊心を満たして、同時に征服欲をも満たしてくれる。
だから俺は無心でナミに対して腰を使いながら、言葉を紡いで行く。けれども祈りにも近い、俺の言葉を完全否定するナミがいる。
「少なくとも、この身体は俺のものだ」
「ち、がうっ!」
喘ぎの合間にナミは俺を睨み付ける。そんな眼差しに息を飲めば、その時理解しちまう。
そうか、ナミも
「私の、全ては……ルフィだけのものよ!」
「……この状態で……いい度胸してんなァ……」
俺の中でナミへの愛しさが、限界値を超えたのがわかる。そうして重ねた唇は、酷く甘い。
正直楽しい。ナミの反応も、俺には快楽を与えて来る要素にしかならない。
どれ程ナミが拒んでも、ナミは俺のものだ。その証拠に、ナミはキスひとつで俺を求めてくれる。
「あ……んんっ……」
「淫らな体だな。キスひとつで、こんなにもヒクついて俺を求めている」
「いや、違う……!」
「何が違うんだ?欲しいと言ってるのは、ナミの体だぜ」
言葉でいたぶれば、ナミの表情が悲しげに歪んだ。愛せないなら嫌えと願っている癖に、悲しそうにされると胸が痛む。
中を掻き回してやれば、快楽に反応して身体が弓形に仰け反る。それにより目の前に突き出されたたわわな果実が、俺から語彙力を奪って行く。
「そっか、胸を可愛がって欲しかったのか」
そうして華を散らせば、艶めかしい姿へと変わって行く。……これは、俺じゃなくても溺れるだろ。
普段は優しい聖女様がベッドでは淫乱に乱れるとか、悦ばない男は居ない筈だ。その途中、喘ぎながら俺の名を呼ばれれば自身が堅くなったのが分かり、思うままに腰を振る。
それに合わせて喘ぐ声は、本当に愛らしい。偶然でもなんでも、出逢えたのがルフィだったのが、少し悔やまれる。
もしも俺がナミを助けていれば、こんな姿は俺しか知らずに居たのだろうと分かるから余計に。コレでナミは義理堅い上に、お人好しだ。
恩人から愛情を向けられれば間違いなくそれを受け入れ、甘く優しいその思考を元に大切に愛してくれただろう。そうして受け入れた後は、他には目もくれないような1途さがあるのは今のルフィへ向けてるそれからよく分かる。
「あっ……はぁっ……んっ」
「可愛い声だな。……ずっと、欲しかった。聞きたかったんだ……」
激しいばかりではナミが持たないだろう言うのと、俺が先に達するのは嫌だという意地から攻め方を変える。するとあられもなく身悶えるナミがあまりにも妖艶で、生唾を飲み込んじまう。
蜜柑の香りが鼻腔を擽る。体温が上がってるのだとそれにより簡単に伝えて来るのだから、哀れだなと思わなくもないが……食欲が増しちまう。
「はぁっ……!ダメ……!そこは、ダメぇー!」
逃げようとしたのか、力が抜けたのか、倒れようとするナミを支えれば恐ろしく軽くて……心臓が嫌な音を立てるのを誤魔化すようにその腹部に唇を触れさせる。母に甘える少年のように、この場所に触れていれば安心できると本能が告げている気がした。
そんな俺に落ちて来た声。それはあどけない少女のように、純粋な疑問を口にしてるのだと伝わって来る。
「エース……どうして?」
「ん?」
俺がナミを襲ってる理由は、もうわかってる筈だ。何が分からないってんだ?
そう思って視線を向ければ、色気のある顔でナミは俺に心配してますって眼差しを向けて来る。俺にされてる事よりも、その疑問が1大事とでも言いたいかのように。
「どうして、ここにいるの?マルコさんが探してたわよ。だから早く白髭海賊団の所にマルコさんと帰っ「俺に抱かれてるのに、他の男の名前出すなよ……殺しそうになるからよ」」
わざと煽ってるのかと聞きたくなる程に、無防備に告げられる名前。マルコもナミに惚れてるのは知ってるから、俺は余計に苛立ってるのかも知れない。
マルコなら、ナミをこんなにも傷付ける事なく、上手に愛する事ができるんじゃないかと思えるから余計に。だからこそ乱暴になる俺の動きに、ナミはその身体を乱れさせる。
声を必死に抑えて、耐えようとする姿がいじらしい。そして、その行為が、声を出させたいと俺の欲望に火をつけちまうんだ。
逃げられれば追いたくなる。声を我慢されれば、聞きたくなるってもんだろ。
「そうして耐える姿も綺麗だな。これ以上俺を虜にして、ナミはどうしたいんだ?」
俺の問い掛けに答えられるようにとゆっくりと動けば、淫らな水音が室内に響く。それにより泣きそうな顔をするから、つい動きを止めちまうのは俺の弱さだろう。
どうしても俺は、ナミが好きなんだ。本当は、傷つけたくなんかない。
ただ、愛されたいだけ。ただ、手離したくないだけなんだ。
「俺は、ナミしかいらない。他全て捨てたらナミが手に入るなら、捨ててもいい」
「えー……す?」
きょとんとした顔で俺を見て、でも拒絶するなんて考えた事もなさそうな眼差しが俺を貫く。俺を、そんなに愛してるのに、どうしてそれが恋愛じゃねェんだよ。
「俺は、ナミの全てが愛しい。姿も、声も、性格も……。俺を惹き付けて、魅了する」
「エース……」
「俺のものに、なれよ」
俺の言葉を受けてナミは真っ直ぐに俺を見詰める。そんなナミに、ただ逃げずに応えてくれと無言で訴える事しか俺にはできない。
そんな俺にナミは微かにその瞳を揺らす。熱い吐息を繰り返しながら、けれども決意を込めた眼差しで俺を見据えて開かれた唇。
「……エース、私はエースの事を……弟以上には愛せない。だから、エースのものにはなれないわ」
あァ……これでこそ、ナミだ。真っ直ぐ過ぎて、時に壊したくなる程に憎くなる。
正論は時に人を傷付ける事がある。真実が人を狂わせる時だってあるのだ。
……俺のナミになるように、奪い尽くしてやる。それでも俺のものにならないナミなら、壊れちまえ。
逃げようとするナミを背後から襲う。両足を持ち上げてしまえば俺と繋がっているその場所の他は俺に支えられている所だけが体重を支える事になる。
その状態で繰り返し突き上げるように動き出せば、今までよりもずっと奥まで繋がる事が出来た。先程よりもずっと締め付けと絡みが強くなり、俺は恍惚の声を出す。
「あァ……良いな。良い、締め付けだっ!」
「やァぁー!」
「何が嫌だよ。俺を搾り取ろうとしてるのは、ナミだろうがっ!」
包み込むような優しさと、生存本能から来る感度の良さが原因とわかってる。それでも、こんな快楽を俺は知らない。
本能的な恐怖から震える小さな身体は、俺の腕にすっぽりと収まる。簡単に押さえ付けられる事を、きっと俺はずっと前から知っていて……なのに、ナミとの関係性とか、ナミの身体や心を壊す事が怖くて何も出来ずにいたんだ。
「たす、け……ルフィ……」
その刹那、俺の中で何かが切れた。孕ませてやると決めて腰を使えば、もうどちらが先にイクとかそんなのはどうでも良くなっていく。
ただ、俺の身体が満足するまで、ナミの意識があってもなくても中に注いでやると決めて動けば、シーツに溜まる水溜まり。これは幾度も痙攣し果てるナミのものか、それとも俺の放ったものか。
どちらでも構わない。意識を飛ばしても構わずに腰を動かしていけば、ナミはその刺激で意識を取り戻して苦しげに、けれども妖艶に歌い続ける。
その身体が力を失った隙に身体の向きを変えて今度は正面から、その胸も可愛がれるようにと犯してみればナミが意識を取り戻した。泣いて、嫌いだと言われたならそれでも構わない。
そう言われるのはきっと、ある意味で特別だから。それに多分……ナミは放置すれば俺の為に死ぬ。
俺の女にならないなら、俺の姉としてとか、義務感なんかで死なないで欲しい。俺は、ちゃんとわかってる。
俺が産まれた事を呪う者はいても、祝う者は居ないって事を。俺は、産まれてきてはいけなかったんだって事を、ちゃんとわかってるんだ。
意識を取り戻した筈のナミは、俺に手を伸ばすと優しく微笑んだ。そして、愛しそうに俺の髪に触れる。
その仕草が、表情が、それ迄とは明らかに異なる。女の顔で、恋するような眼差しで、慈愛に満ちた声で……残酷な言葉を紡ぎ出す。
「愛してるわ、ルフィ……」
そんな言葉を紡ぐ声ならばもういらねェ。枯れ果てちまえ!……と、思ったのかは定かでは無い。
ただ、いくら注いでも意識が戻らなくなるその時まで、俺はナミの中に俺の精子を注ぎ続けた。本当に孕めば、きっと俺を忘れずに居てくれる……そんな残酷な事を信じて。
清めるかとか、色々考えたけど……そのままにした方が、きっと助けようなんて考えが浮かばなくなると思った。もし、ナミが心配している未来が真実になるのならば、ナミは俺を助けようと無理をするから。
頼むよ、ナミ。俺を男として見られないなら、どうか俺を助けないでくれ。
俺を男として愛せないのなら、せめて俺を恨んで、ナミの深い所で覚えていてくれ。俺は、それだけで救われるから。
そっとその髪にキスを落として、ドロドロなナミをそのままにして行く。目覚めた時、嫌でも俺にされた事を思い出して、その上で対応しなければならなくすれば追いかけて来る事は不可能だろう。
……マルコに見付かると、連れ戻されるよな。ナミが名前出したし、近くに居るかもしれない。
俺はそう判断して足早にその場を去った。可愛くて、憎い、最愛の女をその場に残して。
俺は独り、夜闇の中へと駆け出して行く。その先で探し求めていたティーチの情報を得られたのは、恐らく運命だったのだろう。