ばあちゃるが泣き付かれて寝てしまった後にやはり行われた定例会
しかしどうやら今回は少し様子がおかしいようで…?
「さて、ついでですので定例会の代わりに報告したい事があります」
騒がしい、いつもの雰囲気。各々がそれぞれ会話が盛り上がってる中、あずきが手を上げる。それに気づいた全員の視線があずきに集中した。
「え?何か連絡事項ってあったっけ?」
「事務所からはないです。しかし、あずきからどうしても伝えたいことがありまして」
「あずきちゃんが?珍しいね」
あずきの元に集まるのはいつもの生徒会の三人。あずきはどこからか取り出したノートPCを開く。そして、定例会毎に開く動画再生ソフトを開いた。
「それって私も参加してもいいんですか?」
「…まあ、ばあちゃるさんに関係することなので、問題ない。と思います」
「馬Pに関係すること?」
「はい。少し前に、メンテちゃんさんがばあちゃるさんに監視カメラつけていたのは覚えていますか?」
「覚えてるよ。あの後の焼肉美味しかったね」
「叙〇苑だもんね!」
当時のことを思い出し、笑みを浮かべるもちと双葉。勢いによる行動であったが、それでも楽しい思い出の一つだ。
「あの監視カメラ。メンテちゃんさんが回収忘れてずっと稼働していたんです。それをこの前、あずきが回収しました」
「え”」
「どったの、めめめちゃん?急に汗なんて掻き始めて」
PCを操作するあずきの言葉で、表情を硬くするめめめに首を傾げるいろは。めめめの顔には焦りが浮かび、額には汗が出てきている。
「…はぁい。というわけで公開処刑の時間だ。と思います」
「ちょ!ま!?」
そうして映し出されるのはばあちゃる邸のリビング。ソファの真正面に置かれているテーブルの上には、お酒や飲料水が散乱している。そしてカメラが動き、ソファで毛布に包まり寄り添いながら寝ている、ちえりとばあちゃるの姿を映した。
「ほほう。やりますねぇ」
「あー!!ちえりおねえちゃん!?」
「うまぴーと一緒に寝てるー!?いいなー!!」
「はちゃー!バレちったかー!」
「いやいやいやいや!?プロデューサーちゃんの家だよねこれ!?どういう状況!?」
驚愕のその映像に、視線は一斉にちえりに向けられる。その視線も何のその、ちえりはいつもの様に『やっちまった☆』と可愛らしくポーズを決めた。ちえりちゃんはかわいいなぁ。
「というかこれ、ちえりさんパジャマ着てませんよね!?風紀案件ですよね!?」
「うまぴーの彼シャツ、決めてやったぜ!」
「え、ズルい!私もやりたい!」
「会長!?そういう場合じゃないですよぉ!?」
「なとちゃんは着たくないの?」
「着たい着たくないなら、着たいですけどぉ。ってそういう問題じゃないです!」
わちゃわちゃとしてきた室内など気にせずに、映像は続く。そして『ガチャ』と玄関のカギが開く音が聞こえたのはあずきと、めめめだけだ。その音に、めめめは冷や汗を流すことしかできない。
『おじゃましまーす。プロデューサー、起きて…ちえりちゃん!?何してるの!?』
「めめめさん!?何してるのはこっちのセリフですよ!?」
「これ朝のばあちゃる号の記録だよね!?ちぇりーちゃんもそうだけど、めーめちゃんもなんでおるん!?というか普通にカギを開けてこんかった!?」
「めめめちゃんもちえりちゃんも!説明してー!?」
いろはの叫びと共に、視線はめめめとちえりに注がれる。変わらず勝気な表情を浮かべるちえりと、もう乾いた笑いしか出てこないめめめがそこにいた。
「ちえりはほら、この前にゲリラ的な大雨が降ったでしょ?あの時、うまぴーに保護してもらって、そのままお泊りしたの」
「ズルいですわ!私も呼んでほしかった!」
「ごめんねピノちゃん。あの時、ホントにすっごい雨だったからうまぴーも車出せなかったの。今度一緒にお泊りしよ?」
「絶対ですよ!約束しましたからね!?」
「…それで?めーめちゃんはなんでばあちゃる号の家におるん?そもそも、合鍵を持っている感じやったよね?」
「り、りこちゃん落ち着いて!なんか今まで見たことないくらい怒ってない!?」
「もしかして、前の時に馬Pが言ってた毎朝誰か来てるのってもしかしてめめめちゃん?」
「たまちゃんもその顔やめよう!?アイドルの顔じゃないよ!?」
「いいですよ!いいですよ!!もっと盛り上がっていきましょう!」
「そこ!変に盛り上げようとするなよ!?」
りこたまに力強い視線に睨まれるめめめは後ずさる。そんな三人を面白く囃し立てるエイレーン。いい感じにこの場は盛り上げってきた。
「そ、そのぉ。ほら、めめめってさ、遅刻の常習犯じゃん?だからどうやったら遅行しないようになるかな、って考えたの」
「…それで?」
「なとちゃんその稲鞭閉まってぇ!?…そ、それでね、朝プロデューサーの家に行って、一緒に朝ごはん食べる様にすれば、さすがのめめめでも遅刻しなくなるんじゃないかな~って」
「さすがめめめさん。欲望に忠実ですね!」
「悪意しか感じないよすずちゃん!?そ、それにね!プロデューサーって朝ごはんがゼリーばっかだったから、もっとしっかりとした朝ごはんを食べさせるのも理由なの!」
「とってつけたような理由だね!」
「そんなちえりちゃんの『にゃん』みたいな扱い方ないよ!?」
「飛び火した!?」
こうしてめめめへのアイドル部による尋問は、エイレーンがより囃し立てることによって、盛り上がりっていく。焚きつけた本人であるエイレーンは、その光景を一歩後ろで笑いながら見ていた。
「さて、めめめちゃんの罰は今日全員にクレープを奢る刑でいきます!」
「そんなぁ!?」
めめめの悲痛な叫びは、誰にも誰にも取り合ってもらえずにこだまする。他のアイドル部の面々は、そんなたまの判決に納得して頷いていた。
「ちょっとアイドル部面白すぎません?あずきさん、他にないんですか?」
「言われて出すのは釈然としませんが、あります。あずきたち生徒会が頑張っているお昼に、抜駆犯がいました」
「それはそれは…」
「…許せないなー」
鋭くなる生徒会三人の視線に反応するのは、ばあちゃる一派のなとりとりこ。ばあちゃるの仕事を手伝う様になって、生徒会の業務はなるべく昼に済ませるようになったため、場合によって昼休憩がなくなってしまっている。その恨みは、思いのほか募っていたようだ。
吹けもしない口笛を吹きながら、顔を背ける二人を余所に、動画は無情にも再生された。
『いやー、なとなと。いつもありがとうございます!ホント感謝感激の極みっすよ!』
『そんなに感謝しなくても大丈夫ですよ。私も、こんな美味しいお茶を頂いてますし』
「あのお茶って、前にプロデューサーちゃんが買ってたお茶じゃない?」
「確か、一セット五千円したものでしたよね?」
「なとちゃん一人占めしてるー!」
「いや!そんなつもりはないですよぉ!?」
映される光景は、今自分たちが居る学園長室。そこにはなとりとばあちゃるがテーブルを挟んでソファに座り、お茶を嗜んでいた。食後のティータイムである。
「さっきも言ってたけど、うまぴーってホントにマスクとらないよね?今だってマスクしたままお茶飲んでるもん」
「言われてみればそうですね。あれ、どうやって飲んでるんでしょうか?」
「原理は簡単ですよ。馬の瞬間移動の応用で、口元に来た食べ物をそのまま口内に転移させているんです」
「だから動画のうまぴー、負荷が高くなった時みたいに疲れてるんだね」
イオリの問いにエイレーンが答える。そして、映像に映る、食後なのに疲労した雰囲気を出しているばあちゃるの姿にいろはは納得したように頷いた。そして、映像のばあちゃるはその疲労からから、眠気により舟をこぎだす。
『もう!こんなところで寝ちゃ危ないですよ?ほら、仮眠室に行きましょう?』
『…ああ。いつもすみませんね』
『ふふ。それは言わない約束ですよ』
「うっわぁ。なとちゃんめっちゃ嬉しそう」
「なとりん世話焼きだもんねー。こうゆうの好きそう」
「というか好きだよねこれ。こんな幸せな表情浮かべて好きじゃないなんて言ったら信じないよ私は」
「の、ノーコメントでお願いしますぅ」
顔を真っ赤にして俯くなとりを、もちとたまはにやにやと笑みを浮かべながら弄る。しかし、その弄る気持ちも無理はない。それほどに映像に映されるなとりの表情は、幸せ一色なのだ。現に横に見ているイオリも、その幸せそうな、なとりに釣られてニコニコと嬉しそうに笑っている。
舟をこぐばあちゃるの横に、なとりは嬉しそうに布団を敷く。そして背広とマスクを預かり、ばあちゃるを布団へ寝かした。
「あれ?馬Pマスク取った?ちえりちゃんとめめめちゃん以外じゃ取らないって言ってたのに嘘ついた?」
「違いますよ。あれ、寝ぼけているんですよ。馬は親しい仲であれば起き抜けや、寝る前にリラックスした状態になるとあんな感じでほぼ意識なしで相手に委ねるようになるんです」
「言われてみれば、ちえりもお泊りした時もうまぴーすっごいリラックスしてくれたなぁ」
懐かしそうに思い出すちえり。そんなちえりにピノは妬ましそうな視線を送っていた。そんなさくらんぼアイスの二人を横に、映像は再生を続ける。なとりはばあちゃるの隣で同様に横になり、そしてばあちゃるの頭を抱きしめた。幸せそうな、慈愛に満ちた表情を浮かべながら、ばあちゃるの頭を優しく撫でる。
『おやすみなさい。大好きですよ、私のプロデューサー』
「ああああああああああ!!!!すっとぷ!すとっぷです!!とめてぇぇぇぇ!!」
「かいちょー!!風紀委員長が!風紀を乱しています!!」
「それはいつものことだけど、これはズルいよなとちゃん!私も馬Pと一緒にお昼寝したい!」
「さすがなとりさん。ここ一番で攻めてきますね」
「さすが、って何ですかすずさぁん!?会長もなぁに言ってるんですかぁ!?」
顔を真っ赤にして取り乱すなとりとそれを弄る三人を余所に、他の面々はその幸せそうななとりの表情に見惚れてしまう。それほどに、目の前の少女が幸せで溢れていることが見て取れた。見ているだけで幸せになる。少なくとも、双葉はそう感じた。…嫉妬は勿論するけれど。
「…あずきの憶測ですが、きっとこの仮眠のおかげで最近のばあちゃるさんの作業ペースが上がった、と思います」
「言われてみれば、何時ごろか忘れちゃったけどうまぴーの作業ペース早くなったもんね。そっかぁ、それはなとちゃんが原因だったんだ」
「もうわかりましたからぁ!動画を止めてくださいよぉ!」
涙目のなとりがさすがに気の毒になったのか、あずきは動画の再生を止める。うねり声を上げながら頭を抱えるなとりを、にまにまと弄る気満々のJKに任せて、あずきは次の動画を再生した。
「ここは屋上?」
「そういえばいろは、屋上行ったことないなー」
「イオリも行ったことない!ごんごんちゃん、今度一緒に行こ?」
「いこいこ!屋上で一緒にお昼でも食べよっか」
盛り上がるイオリといろは。そんな二人を横に動画は止まることなく続いていく。屋上にあるベンチに座るばあちゃるの手元にはお弁当が二つ。二つのお弁当に双葉は首を傾げた。
『お待たせ、ばあちゃる号』
『おおう!?りこぴん!後ろからはばあちゃる君もビックリするからダメっすよ?』
『気にしない気にしない!牛巻も気にしないよ!』
『えぐー!?』
「随分と幸せそうな表情浮かべてますね『りこぴん』さん」
「親友!?その弄り方は意地悪すぎひん!?」
「りこちゃんも可愛いところあるね」
動画に移る普段とは違う少女の表情のりこに、あずきは意地の悪い笑みを浮かべる。そんなあずきにりこは、なとりと同様に顔を赤う染め、素で返してしまう。そんなりこが珍しく、あずきの横で双葉もクスクスと笑みを浮かべた。
『はいはいはい。これ、今日の分のお弁当っすよ』
『いつもありがとね、ばあちゃる号。牛巻は嬉しいよ!』
『りこぴんはいっつも美味しそうに食べてくれるっすから、作り甲斐があるっすよ!』
『えへへ。だってばあちゃる号のお弁当、本当に美味しいやもん。ワガママ言うと牛巻、毎日食べたいんよ?』
「りこぴん、デレッデレで草!」
「ううぅううぅぅぅうう!!金剛いろはぁ!後で屋上に集合な!」
「いいの?本当に屋上でいいの?うまぴーとの思い出の屋上でいいの?」
「うがー!!金剛いろはという女ァ!!」
「アッアッアッ」
「久しぶりにごんごんおねえちゃんの全力煽りを見ましたわ」
「最近はどっちかというと可愛いかったからなー」
じゃれ合う二人を横目にピノとちえりは微笑ましそうに笑みを浮かべる。そして動画の方も、気付くとお弁当を食べ終わっていた。
『ごちそうさま!』
『はいはいはい。お粗末様。お弁当箱、預かるっすよ』
『いやー牛巻は幸せだなぁ。今までの地獄の残業が嘘みたいだよ!』
『確かに。りこぴんの職場、ヤバかったすからね。まさか監査が入ったら真っ黒で流石のばあちゃる君もちょっと笑えなかったすよ』
『けど、おかげでお昼をばあちゃる号と一緒に食べれるやもん。それだけで牛巻は報われたよ。あ、けど新しいアルバイトはやりたいな』
『あ、それなら丁度いいところがあるっすよ。知り合いがプログラマーを募集をしてるとこがあったはずっすから、こっちで話を通しておくっすね』
『ばあちゃる号の紹介なら安心だね!よろしく頼むよ?』
「え?りこぴんまたバイト始めたの?」
「うん、そうだよ。ばあちゃる号の紹介で受けたとこだけどいいところさ!定時に帰れる!」
「それは普通のことですよりこさん!?」
「ちえりちゃん?どうしたの目を逸らして?」
「何でもないよ!?」
「…ちえりーランド」
「んー?たまちゃん何か言ったかなー?」
「何でもないよ!」
ちえりから発する圧にたまは首を横に振る。そんな二人のやり取りをイオリは首を傾げた。ふと画面に目を移すと、談笑のひと段落しており、りこが何か恥ずかしがりながらも何か伝えようとしてる。
『…ねぇ、ばあちゃる号。もういい?』
『はいはいはい。りこぴんも仕方ないっすね』
小さく甘えるように零れたりこの言葉に、ばあちゃるは少し意地の悪いことを言う。しかし、言葉からは優しさが溢れており、それを向けられるりこは頬を朱に染めながらもふやけた笑みを浮かべた。そして横に座った状態から、ばあちゃるの膝へ頭を下ろす。膝枕というやつだ。しかしそれだけでは飽き足らず、そのまま腕をばあちゃるの腰へと回した。
「わぁお。随分と大胆ですね牛巻さん」
「さっきちらっと見えたけど、りこちゃんかなりヤバい顔してたよね?もうデレッデレのトロットロの顔してた」
「りこちゃんりこちゃん。ほらチーズ」
「…かんにんやから見んといてぇ…」
画面のりこは、その頭をばあちゃるに優しく撫でられゆっくりと意識を落としていく。その光景を晒されて、本人であるりこは顔だけでなくその耳を首も真っ赤にして頭を抱えた。そんな普段とは見せないりこの姿に、いつも翻弄される生徒会の三人はご満悦の様子だ。たまに至ってはその珍しい表情を記録に残そうと携帯端末のカメラを起動させていた。
「あーもうなとりん可愛すぎ!どう?そっちは終わった?」
「丁度キリがいいところですよ」
動画のりこが眠りについたのを確認後、再生を止める。その時、なとりを弄り倒したもちが合流した。その後ろには燃え尽きたように顔を真っ赤にしたなとりの存在が確認できる。
「確かに出し抜いてイチャイチャしてたのは極刑だけど、これくらいやればいっか」
「そうですね。あずきも大分すっきりしました」
「じゃあ罰はめめめちゃんでけってーい」
「そんなー!?」
おでこにキョンシーの様に『クレープ奢り』と書かれたお札を張られ、ばあちゃるが普段座っている椅子に縛り付けられている状態でめめめは再び絶叫する。その光景がどうにもツボなのか、いろはは後ろでずっと笑っていた。
「そ、それならピノちゃんといろはも抜け駆けしたよ!」
「ちょ!?めめめおねえちゃん!?」
「このマトン、巻き込む気だー!?」
「ふっふっふ!こうなればめめめは何でもするぞぉ!」
意地の悪い笑みを浮かべながら、もうなりふり構わず巻き込もうとするめめめにピノごんは一歩後ずさる。しかし、それは意外な人物からの援護によって遮られた。
「いやいや、この二人は無罪ですよ。ね、みなさん?」
「え、エイレーンさん?」
「ピノさんが馬に告白して、いろはさんがその後をつづいた。その結果が先程の馬なんですから、二人が居なかったら関係の進展はもっと遅かったと思いますよ」
「おぉう。実際言われると恥ずかしいなぁ…」
「…それに、ピノさんはしっかりアイドル部に告白のことをいいました、と思います」
エイレーンの言葉に続け、あずきが援護する。その二人に他のアイドル部の面々は納得したように頷く。いざ話の中心となったピノごんの二人は羞恥により頬を朱に染めた。それに顔を青くしたのは勿論めめめだった。
「いやいやいや!?まだめめめ以外にも抜け駆けを!」
「…仕方ありません。これはさすがに封印しようと思っていましたが、これほどめめめさんが頑固となれば使わざる負えません。と思います」
諦めたようにため息を吐くあずき。そして、何かを書いた紙切れをそれぞれ右手、左手に握り、めめめの前に突き出した。
「めめめさん。右手か、左手。どちらか選んでください」
「え、えっと。それじゃあ右手!」
急変したあずきに困惑しながらも、めめめは右手を選択。そして開かれた右手に入ってきた紙には、可愛らしい字で『朝』と書かれていた。『ふむ』と小さく呟き、再びPCを操作する。その際、テーブルに置かれた逆の左手に入っていた紙切れに書かれた文字も読み取れた。書かれていたのは『ロッカー』。その二つにめめめは覚えがある。背筋に冷たい汗が伝う。
「待ってぇぇ!!それは不味いッてぇぇ!!」
「…恨むなら、自分を恨んでください。と思います」
めめめの制止の言葉は間に合わず、動画は再生されてしまう。
――R-18――
映し出されるのは先日と同様にばあちゃる邸の寝室。そして、寝室に設置されたベットに眠るばあちゃるの寝顔が表示される。その寝顔はいくら前回に見たとはいえ、すぐに見慣れるものではない。胸の高鳴りを覚える少女たち数名はその寝顔に頬を赤くした。
動画は進み、携帯端末よりアラームが鳴り響く。少々うるさいそれが流れて少し後に扉が開く。入ってきたのは先程もこ田めめめ、その人だ。先にうるさく鳴り響くアラームを止めるため、ばあちゃるの携帯端末に手を伸ばす。軽く操作した後、アラームは鳴りやみ、携帯端末も先程置かれていた場所へと戻した。そしてめめめはベット、というよりばあちゃるの寝顔を覗き込んだ。
『…おぉぅ』
間抜けな声が零れる。画面越しで見るだけで、これだけ胸が高鳴るのだ。これを直接見るとなると、きっと自分もあんな声を出してしまうだろう、とすずは内心思った。呆然とばあちゃるに見惚れるめめめが小さく、何か呟く。そして慌ててその口を塞ぐ動作をした。あそこまでの至近距離だ。ばあちゃるが起きてしまうと焦った故の行動だろう。なとりはそう分析した。しかし、ばあちゃるはそう簡単に起きないこともなとりは知っている。現に画面のばあちゃるは、焦るめめめなど気にもせず、穏やかな寝息を立てていた。その姿に安心しためめめは、部屋を出るために身体を起こす。その時、ある部分に視線を送ってしまった。
『うぇ!?う、うまぴー!?』
(ほほう。これは、面白くなってきましたね)
めめめの声に反応したのか、カメラもばあちゃるの寝顔から全体が見えるように引いた。そして、画面に映るめめめの視線の先。それはばあちゃるの股間だ。布団越しに自己主張するそれに、いろはは一瞬にして顔を赤く染めた。そして、焦るめめめの姿に愉悦な視線を向ける存在がいる。エイレーンだ。見られているとも知らず、辺りを見渡して固唾を飲むめめめにエイレーンは笑みを深める。
『た、確か。この状態だと男の人って、辛いんだよね?…め、めめめが楽にしてあげなきゃ。うん。いつもお世話になってるし、これくらいは、ね』
誰にしているのか分からない言い訳は、虚空へと消える。そして、決意しためめめはゆっくりと布団を剥がす。映像から流れてくるのは、ばあちゃるの小さな寝息と何故か荒くなっているめめめの吐息。ゆっくりと寝間着に手をかけ、少し固まる。荒い吐息の中、再び固唾を飲む音が小さく聞こえた後、寝間着が下着ごと下ろされた。
『「はぇ?」』
そんな気の抜けた声は室内にいる誰かの声と重なる。ばあちゃるの剛直を真正面に見ている画面のめめめ。そして画面越しに見ている面々はきっと同じことを考えていた。
「うぇ…本で見るよりおっきぃ」
ふと零したのはちえりかなとりか。もしくはそのどちらともか。しかしそれを確認するほど彼女たちに余裕はない。愛する男性の雄の象徴。それが画面越しではあるがそこに存在しているのだ。目を逸らすなんてことは、できなかった。
その集中力は既にめめめが呟く言葉すら認知できない。何か呟いたと思ったらめめめはその剛直へと指を這わせ、握る。そして、拙いながらもその剛直を上下に擦り始めた。その行為は初めてながらも、確実に剛直へと刺激を与え、快楽へと変換される。小さく痙攣するばあちゃるの身体、そしてその剛直に何故か室内の少女たちの吐息も熱を増していく。
亀頭から溢れてくる我慢汁。それが潤滑油の役割となり、めめめの奉仕を過激なものへと変えていく。そしてそれを見詰める少女たちの視線は剛直から離れることが出来ない。溢れ続ける我慢汁に、りこは何故か固唾を飲んでしまう。
『こ…このままじゃ…ンッ!シーツを…はぁはぁ…汚しちゃう…』
そう零すめめめの言葉をイオリは何とか聞き取れた。その通りだとも頷く。けど、その行為を止めるべきではないと雌の本能が伝えてくるのも分かった。ならばどうすればいいか。イオリはそれが分からなかった。だから、めめめがベットに乗り込み、その剛直を口に含んだその行為が正解だと理解する。脳のどこかで『違う』と訴えてくるが、寝ているばあちゃるの反応からそれで間違っていないと、本能の熱い訴えに納得してしまった。
自身を慰めながら、ばあちゃるの剛直への奉仕を怠ることはしない。口づけ、舌を這わせ舐めとる、喉に咥え込む。どこか背徳感を感じるその行為であるが、それは目の前の雄に服従し、奉仕している姿にも見える。そして、少女たちはその光景を『羨ましい』と思ってしまった。しかし、それは仕方のないことだ。愛する男の雄の象徴。その圧倒的な存在へ身を捧げるような画面の少女は、誰が見ても幸せだと感じたのだから。それが自分で合ったなら、そう考えてると身体に熱が籠る。室内の零れる吐息は既に、どこか浮かれた熱に支配されていた。
画面の少女の奉仕は終焉を迎える。寝ているばあちゃるが今まで一番大きく痙攣したと同時に咥えていためめめの驚いたような呻き声が聞こえた。剛直が欲望を吐き出したのだ。画面の少女、めめめは溢れる欲望を零すまいと唇を固く結ぶ。通常より、明らかに多いその量にめめめの頬は膨らんでいく。そしてビュービューと欲望が放たれる音と同時に、ゆっくりとしかし確実にゴクリ、ゴクリという飲み込む音も聞こえてきた。そして放たれる音が止み、残った飲み込む音も次第に消えていく。めめめは欲望を一切口外に出すことなく飲み干し、剛直から口を放した。その視線は焦点が合ってはいなかったが、じっと眠っているばあちゃるへと向けられていた。
…動画は、ここで終了した。
静まり返る室内。エイレーンを除いた全員が頬を赤く染めて俯いている。そして、その視線はゆっくりと、動画の主役であっためめめへと注がれた。
「だ、だから不味いって言ったのにぃ」
赤面しているのは、何もめめめも例外ではない。むしろ、一番真っ赤になっていると言われても仕方がないほどに赤くなっている。それは仕方がないことだろう。親友一同の前であんな羞恥を味わったのだ。赤面しないほうがおかしい。
「いや、あの、その、なんというか、ごめんねめめめちゃん?」
さすがにこの状況は、たまでも処理が出来ていたかった。混乱する頭でとりあえず謝ってしまう。
謝罪を受け取ってもらい、この件は終わり。お詫びとしてクレープの奢りはなし。混乱しながらも、頭の中で大まかの流れを作り、行動をしようともちも動こうとした。しかし、それは先に動いた人物によって遮られる。エイレーンだ。
「いやはや、今回はさすがに可哀想すぎましたね。部外者ですけど、私も謝らせてもらいます。すみませんでした」
「い、いやいや!?エイレーンさんが謝ることはないよ!?だって、元を辿ればめめめが抜け駆けして、暴走した結果だもん」
「だとしても、ここまで辱めを受ける理由にはなりませんよ。あずきさんもそう思いますよね?」
「うぇ!?え、ええと。…はぁい。もこ田さん、今回はさすがに遣りすぎました。ごめんなさい」
急に話を振られ、滅多に聞けない焦った声を上げながらも、なんとか持ち直して頭を下げて謝罪をする。あずき自身も、さすがにやりすぎたと罪悪感は確かにあった。なのでこの謝罪は急の対応ではあるが、しっかりとあずきの意思が乗ったものだ。そしてそれは、めめめにもしっかり届いていた。
「ううん!めめめもごめんね?あそこでめめめがごねなきゃ、あずきちゃんもあんなことしなかったはずだし。あずきちゃんは悪くないよ」
「…いえ、やはり今回はあずきが悪い。と思います。あの動画をここで流すのはさすがに配慮が足りてませんでした」
「違うよ!?悪いのは「はいはい。そこまで!」エイレーンさん…?」
「両者が罪悪感を感じるのは結構ですが、このままでは埒があきませんよ。ここは両者悪いってことで手を打ってください」
「けど!」
「ですが」
「はいはいはい。お二人の意見は聞き入れれません!皆さんもそれでいいですか?」
蚊帳の外となっているいた残りの全員にエイレーンは問う。頬の熱は未だに引かず、赤いままであるが全員がエイレーンの意見に賛同するように頷いた。
「はい。満場一致なのでお二人は諦めてくださいね。ですが、さすがにめめめさんにこのまま罰ゲームをさせるのは、皆さんの気も進みませんよね?そちらも、なしでよろしいですか?」
「そこはさすがにあんなことがあった後だもん。それもなしでいいですよ」
全員の代表としてたまが、再びエイレーンの意見に頷く。それに満足したようにエイレーンは笑みを浮かべる。それは、もちが頭にイメージした理想の展開であった。
「…なんかエイレーンさん。プロデューサーちゃんみたい」
「そう言ってもらえると嬉しいですね。実は馬をイメージして動いたのでちょっと優越感を感じました」
「ふふ。素直だぁ」
零れてしまったその言葉をエイレーンは嬉しそうに答える。まさか帰ってくるとは思わなかったその答えにもちは笑みを零した。
「といっても裏がないわけではありませんよ?」
「え?それはどういうことなんですか?」
その言葉になとりはつい聞き返してしまう。
「私は馬とは繋がりがありますが、皆さんとは馬を挟んだ関係でしかありません。ですが同じ男性に恋する女性として、できれば仲良くしていきたいと思いましたのでああいう行動ととりました。引きましたか?」
「いや、引いたというか、なんというか」
「そこぶっちゃけたら意味ないよね!?」
あっけからんと内心をぶちまけるエイレーンに絶句するすずにいろは。そんなエイレーンがどこかおかしくて、たまは笑いを堪えることが出来なかった。
「あ、あははは。あー、おっかしい。正直すぎますよ、エイレーンさん」
「隠したっていいことありませんしね。なにより、同じ男性に恋する女性同士、勝手ながら仲間意識が生まれてしまってますよ。だから、嘘はつきたくなかったんです」
「イオリも!エイレーンさんに嘘はつきたくないです」
「あら、ありがとうございますね」
気まずい雰囲気はどこへやら、エイレーンを中心に朗らかな雰囲気が現れ始める。
壁が完全になくなったわけではない。抵抗も完全になくなったわけでもない。しかしエイレーンとは仲良くやっていけそうだと、ちえりを始めアイドル部の面々はそう思い始めた。
ばあちゃるが目を覚ますまで、アイドル部とエイレーンの女子会は雰囲気をそのままに続いた。