※この作品はR-18です。

俺のヒロインは佐藤だけかよ!   作:御米粒

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2話 部活

 転生して二日目。今日は授業初日なので、授業の大半は勉強方針の説明だけだった。

 先生たちはフレンドリーだったが、俺の忠告もあり大半の生徒は真面目に授業を受けていた。

 

「中川くん、一緒に食堂に行かないかい?」

 

 昼休みになると平田が誘ってきた。原作ではみんなに声を掛けてたのに俺一人を誘うなんて照れちゃう。

 

「そうだな」

「あ、私もいいかな?」

「もちろんだよ、佐藤さん」

「私も行く~」

「同じく」

 

 佐藤を含めて次々と俺と平田の周りに女子が集まってくる。

 

「中川くん、行こっ」

 

 佐藤が可愛らしく制服の袖を掴む。

 袖掴みってこんなドキドキするものだったのか。

 

「……ちょっと待っててくれ」

「うん」

 

 俺は佐藤に断りを入れて、一人の男子生徒の前に向かった。

 

「綾小路だよな。一緒に行かないか?」

 

 そう。原作の主人公である綾小路清隆だ。

 確かお昼に誘ってもらいたくて、ずっと平田を見つめてた気がする。

 

「……いいのか?」

「もちろん。男子二人だけだと寂しいし」

 

 平田の周りを見ると少なくとも10人以上女子がいた。こんな大勢の女子と男子二人でまともに食事がとれるわけがない。

 

「平田もいいよな?」

「もちろんだよ」

「わかった。よろしく頼む」

 

 この時の綾小路は年頃の男の子って感じだったな。

 

「よかったら堀北もどう?」

「結構よ」

 

 あっさり断られた。わかっていたけど美少女に断られると傷つくな……。

 

「それは残念。綾小路、行くぞ」

「ああ」

 

 食堂は大勢の生徒で賑わっていた。

 俺の予想より設備はしっかりしていて、入口には食品サンプルが陳列されていた。

 

「中川くん、何を頼むの?」

「うーん、生姜焼き定食かな。佐藤は?」

「私はざるそばだよ」

「そば好きなんだ?」

「うん、大好きっ」

 

 意外と和風なところもあるんだな。

 それにしても昨日より佐藤が可愛く見えるんだが気のせいだろうか。

 

「思ったより美味しいっ」

「そうだな」

 

 学食なのであまり期待してなかったが、そこら辺の飲食店より美味しかった。

 ちなみに佐藤はちゃっかり俺の左隣をキープしている。右には綾小路が座っている。

 

「綾小路はかつ丼か」

「ああ、美味しいな」

「見た目でわかるよ。それにしても無料のメニューがあるなんてますます怪しいな」

「怪しいって?」

 

 佐藤が首を傾げながら問う。

 いちいち可愛い仕草するのやめてほしい。

 

「俺が予想したポイント変動の可能性が高くなったってことだよ」

「なんで?」

 

 なんでってここまで言ってもわからないのか。佐藤はやっぱりお馬鹿さんなんだな……。

 

「もし毎月10万ポイントを振り込んでくれるなら無料のメニューなんて提供しないだろ」

「……そっか」

「コンビニも無料の商品が売っていた。つまりポイントがなくなった生徒の救済処置ってことだ」

「なるほどっ」

 

 隣で綾小路がジーっと俺を見つめている。

 きっと彼の中で俺の評価がぐんぐん上がっていることだろう。

 

「それじゃ須藤くんとか真面目に授業を受けていない人たちに注意しないとじゃない?」

 

 テーブルの向こう側に座る松下が言った。

 

「そうだね。教室に戻ったら僕から言っておくよ」

「いや、平田じゃなくて櫛田にお願いしたほうがいいんじゃないか?」

「なんで?」

「男子って単純だからイケメンより美少女にお願いされたほうが嬉しいんだよ」

 

 松下の問いにドヤ顔で回答した。

 

「……中川くんって櫛田さんがタイプなの?」

「えっ……!?」

 

 なんでそうなるんだよ。俺の一番好きなヒロインは椎名ひよりだぞ。

 

「……そうなの?」

「うっ……」

 

 佐藤が悲しげな表情で訊ねる。

 そんな涙目で見つめられても困るんですけど……。

 

「……いや、可愛いと思うけどタイプじゃないかな」

「ふぅん、そうなんだ……。それじゃ堀北さんは?」

「なんで堀北の名前が出てくるんだ?」

「さっきお昼に誘ってたじゃん」

「あれは綾小路の隣にいたから、礼儀として誘わないといけないと思ったんだよ」

「……本当に?」

「本当」

「……そっか、わかった」

 

 やっと佐藤の尋問が終わった。

 なんだか浮気を疑われた彼氏の気分だ。知らんけど。

 

 

☆☆☆

 

 

「人が多いなぁ」

 

 放課後、俺は佐藤と体育館に来ていた。目的は部活動説明会に参加するためだ。

 サッカー部に入部することは決定事項なので参加せずに帰ろうとしたところ、佐藤に誘われた。断ろうとしたが腕組みされた際のおっぱいの感触に負けてしまい、のこのこと体育館にやってきたわけだ。

 

「この学校ってどの部活もレベル高いらしいよ」

「国立の学校だからな」

「うん。でもマリ〇スにいた中川くんなら問題ないよね?」

「サッカーなら誰にも負けてないと思う」

 

 サッカー部は都大会の最高成績はベスト16で、リーグは東京都2部に所属しているとパンフレットに記載があった。

 生前はユースのBチームが所属していた神奈川県1部リーグで県内の強豪と何度も対戦したが、自分が劣っていると思うことは一度もなかった。

 

「かっこいい」

「え?」

「ううん、なんでもないよっ」

 

 回想していたので佐藤がなんて言ったのか聴こえなかった。

 

「佐藤は部活に入るのか?」

「私は入らないかな。運動得意じゃないし」

「そっか」

 

 勉強も得意じゃないし、この子はいったい何が得意なんだろう。

 もしかしていかがわしいことが得意なのだろうか。確か綾小路に迫ってた時にブラウスのボタンを開けて谷間アピールしていたような……。

 

「どうしたの?」

「いや、なんでもない!」

 

 君の破廉恥な姿を想像してましたなんて言えるわけがない。

 

「それじゃ入部手続きしてくる」

「うん、入り口で待ってるね」

 

 説明会が終わると、入部の受付が開始した。

 俺は平田と合流してサッカー部に手続きをしに行った。

 入部届の前所属チームにマリ〇スジュニアユースと記入されているのを見た部長さんらしき人がぎょっとした顔をしていたのが印象的だった。

 

 教室には平田と佐藤の三人で戻った。

 

「やっと明日から部活だね」

 

 帰宅する準備をしていると平田が言った。

 

「ああ、部活は初めてだから緊張するな」

 

 小一からクラブのみでサッカーをしていたので部活動をするのは初めてだった。

 

「やっぱりクラブは部活より緩いの?」

「だろうな。年上でも君付けしてたし」

「それって怒られないわけ?」

「全く。もちろん全員じゃないぞ。先輩呼びしてた人もいたし」

「ふぅん」

 

 とりあえず嫌な先輩がいないことを祈ろう。

 南雲先輩は生徒会所属だからたまにしか来ないだろうし問題ないだろう。

 機会があればサッカーでボコボコにしてやりたい。

 女の子をもの扱いする男って大嫌いなんだよね。

 

「それじゃ僕は用事があるから先に帰るよ」

「ああ、またな」

「平田くん、またね」

 

 平田は俺たちに気を遣ったのか先に帰ってしまった。

 もしかしたら軽井沢あたりと予定があるのかもしれないが、確認するほどでもないだろう。

 

「はぁ――」

「ため息なんてついてどうしたんだ?」

 

 下駄箱でローファーに履き替えてると佐藤がため息をついた。

 

「ううん、明日から中川くんと放課後遊べなくなるんだなって……」

 

 まだ一回しか遊んでないだろう。

 佐藤って惚れやすい性格してるんだろうな。

 

「あ、でも月曜はオフなんだよね?」

「……ああ、パンフレットにそう書いてあったな」

「だよね。なら月曜は誘ってもいいのかな……?」

「え……?」

 

 オフはヒロインたちを攻略するのに使いたいんだけど……。

 

「……駄目かな?」

「いいぞ」

 

 俺って女の子の涙目に弱すぎだろ……。

 佐藤相手でこれなら、ヒロインたちにされたらどうなってしまうんだろうか。

 

「ほんと? よかった……」

「それよりそろそろ帰ろう」

「うん。……きゃっ!」

「おいっ」

 

 靴に履き替えていた佐藤がバランスを崩して倒れてしまった。

 

「っ……!?」

「いったぁ……」

 

 咄嗟に両手を突き出したので地面とキスすることは回避した佐藤だったが、四つん這いでお尻を突き出した態勢になっている。

 

「さ、佐藤……」

「なに……?」

「その……パンツが見えてる……」

「…………え?」

 

 佐藤の可愛らしいピンクのショーツが丸見えだった。

 

「ご、ごめんっ……!」

 

 佐藤はすぐに立ち上がり謝りだした。

 ここで男子に暴力を振るわず謝れるなんてなかなかできることじゃないよ。

 

「いや、大丈夫だ……」

 

 生まれて初めて女子のショーツを見てしまった。

 中学時代に前の席の女子の透けブラを見た時より衝撃的だった。

 

「あ、あはは……恥ずかしい……」

 

 苦笑いしながら赤面する佐藤。

 

「ま、まぁ……俺以外の男子がいなくてよかったな」

「え………?」

 

 フォローしようとしたがとんでもないことを言ってしまった気がする。

 

「……うん、中川くんだけでよかった」

「っ……」

 

 昨日から何回佐藤にドキドキさせられているのだろう。

 俺って思ったより女子に対して免疫がないんだなと改めて実感した。

 

 

☆☆☆

 

 

 翌朝。俺は背徳感に苛まれながら登校した。

 

「中川くん、おはよう」

「お、おはよう……」

 

 理由は佐藤で抜いてしまったからだ。

 昨日からずっと佐藤のパンツが頭から離れない。

 

「元気ないけど……どうかした?」

「いや、朝弱いんだ」

 

 そんな純粋無垢そうな顔を向けないでほしい。

 そういえば佐藤って男子と付き合ったことないんだよな。

 見た目遊んでそうなのに意外だ。

 

「それじゃ私と同じだね」

「佐藤も朝弱いんだ」

「うん。中学のときは何回も遅刻しちゃった」

 

 佐藤は中学に入ってから成績が下がったと原作に書いてあった。

 

「でもこれからは気を付けるからね! 遅刻したらポイントが減らされるかもしれないし……」

「そうだな。お互い気を付けような」

「うんっ」

 

 佐藤は休み時間のたびに俺のもとに来るようになった。

 入学早々女子といちゃついてることが気に食わなかったのだろう。俺は知らない間に池と山内に嫌われていた。

 

(まぁ、三馬鹿と仲良くなるつもりはないからいいけど)

 

 俺が話す男子は平田と綾小路くらいだ。ちなみに堀北に話しかけてもいつも冷たくあしらわれる。

 

 放課後。俺は平田と一緒にサッカー部の部室に向かった。

 部室棟は三階建てで、昨年新築されたばかりで非常に綺麗だった。

 部室に入ると部長から練習着を三着渡された。強豪校でもないのに指定の練習着があるなんてさすが国立である。

 またスパイクなど道具一式も申請すれば無料で購入できるとのことだ。

 

「中川くん、絶対やめないでねっ!」

 

 練習着を受け取る際に部長に両手を強く握られた。

 ジュニアユース出身だから相当期待されているようだ。

 

 部活が始まると早速自己紹介をさせられた。俺はもともと中盤の選手だったが、転生特典でシュート精度が10も上がったのでFWを希望した。

 サッカー部は3年が8人、2年が7人と少人数だった。俺たち1年が7人入部したので合計22人と紅白戦ができる人数となった。

 初日は新入部員の実力を見たいということもあり、いきなり紅白戦が行われた。

 俺の予想通り大した選手はいなかったので、20分ハーフで5得点とこれ以上ない結果を残せた。

 

「中川くん、凄かったね。もうレギュラー確定なんじゃないかい?」

「だよな。まさか5点も取られるとは思わなかったなー」

 

 平田と柴田が褒めてくる。

 前世はコーチに怒られてばかりだったので、褒められると新鮮な気持ちになる。

 

「平田もアシスト2つしてたじゃないか。柴田も1点入れてただろ」

「たまたまだよ」

「俺のはゴラッソだったろ!」

 

 コメントからわかる通り、平田と柴田は正反対な性格をしている。

 

「あ、中川くんっ」

「……佐藤?」

 

 寮に帰る途中で佐藤と出くわした。

 

「なんだ? 中川の彼女か?」

 

 柴田が佐藤と俺を交互に見ながら質問した。

 

「ええっ。べ、別に私たち付き合ってないよ!? ね、ねえ中川くんっ」

「そうだな」

 

 そう答えたが、柴田は露骨に怪しむような目を向けてくる。

 

「でも部活が終わるまで中川を待ってたんだろ?」

「そ、それは……」

 

 もじもじと佐藤がしながら、こちらに視線を向けてくる。

 

「二人が否定してるんだから違うんじゃないかな」

「そうだけどよ……」

「僕たちは先に帰るよ。中川くん、佐藤さん、また明日」

「あ、おいっ!」

 

 平田が柴田の腕を掴んで去っていった。

 本当に気が利くやつだな。

 

「……それでどうしたんだ?」

「え、えっと。中川くんがサッカーしてるところ見てて……その……」

 

 そういえば女子が数人練習を見てたような……。

 

「もしかして感想を言うために待っててくれたのか?」

「……うん」

 

 この学校の部活の練習時間は16時半から18時半となっている。つまり佐藤は二時間も俺を待っていたことになる。

 

「連絡先交換したんだからライ〇や電話でよかったのに」

「そ、そうだよね……。でも直接言いたくて……迷惑だったかな?」

「いや、迷惑じゃないっ!」

 

 だから涙目で俺を見ないでくれ!

 なんでも言うことを聞いちゃうそうだからやめて!

 

「ほ、本当に……?」

「ああ。それでどうだった?」

「うん、凄くカッコよかったよ」

「……ありがとう」

 

 もしかしたらプレイを褒められると思ったけど、そんなことはなかった。

 

「やっぱりジュニアユース出身は違うよね。ほかの人たちとレベルが違ったし」

「それは否定できないかも」

 

 少しは東京都トレセンレベルの選手はいるかと思ったけど、せいぜい地区トレセンレベルの選手が数人いた程度だった。

 

(これじゃプリンスリーグ昇格も国立も夢のまた夢だな)

 

 もしかしたらこのチームで活躍すればプロの道が開かれるかもしれないと淡い期待を抱いたが、このチームで上位進出することは難しいだろう。よくて都大会ベスト8、東京都リーグ1部昇格だ。

 

「もうこんな時間だし、飯でも食べてく?」

「うんっ」

 

 佐藤はそう言うと、俺にべったりと並んで歩きだす。

 翌日。柴田が口を滑らせたせいで、俺と佐藤が恋人と勘違いされるようになるのだが、この時の俺は知る由もなかった。




佐藤って付き合ったら尽くしてくれそうですよね!
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