翌朝。念願の彼女持ちになった俺は、その彼女である麻耶と寮のエントランスで待ち合わせをしていた。
先ほどから通り過ぎる生徒たちが俺を気持ち悪がるような視線を向けてくるが何だろう。
「悠太くん、おはようっ」
「おはよう、麻耶」
5分後。愛しの彼女が満面の笑みでやってきた。
やっぱり俺の彼女は可愛いな。
「待った?」
「いや、俺も今来たところ」
「よかった。それじゃいこっか」
「ああ」
麻耶が右手を差し出してきたので、左手でぎゅっと握る。
女の子の手ってこんな柔らかいのか。
「やっぱ照れるね」
「それじゃやめとく?」
「ううん、やめない!」
自分から差し出しておいて麻耶は顔を紅潮させたままだ。
見た目はギャルなのに、こういう初心なところも可愛い。
「そういえばポイント確認した?」
今日は5月1日。ポイントが振り込まれる日だ。
原作だとクラスポイントが0なので、1ポイントも振り込まれなかったが、この世界線のDクラスは真面目に授業を受けており、早退や遅刻者も少ない。
つまりクラスポイントが大量に残っているということだ。
「ああ。7万3千ポイントが振り込まれてたな」
「思ったより減ってなかったね」
「そうだな」
ほかのクラスが原作通りのポイントなら俺たちはBクラスに昇格できる。
原作と展開が違ってしまうが、そこは綾小路と堀北に任せよう。
俺は麻耶との恋人生活を満喫するのだ。
「中川くん、佐藤さんおはよう」
背後からイケメンボイスが聴こえたので振り返ると平田がいた。
「おはよう平田くん」
「おっす」
「二人とも朝から仲が良いね」
俺と麻耶が繋いでる手を見て平田が言った。
「あー、昨日から俺たち付き合いだしたんだ」
「そ、そうなんだ。おめでとう!」
「ありがとう」
「ありがとう平田くんっ」
ちなみに俺たちが付き合いだしたことは、女子には麻耶がグループライ〇で報告済だ。
「平田は軽井沢と一緒に登校しないのか?」
「……うん、彼女は朝弱いから」
本当かどうかわからないが確かに朝弱そうだ。
俺たちは三人で仲良くお喋りをしながら学校に向かった。
☆☆☆
教室に着くと、予想通り振り込まれたポイントの話題で持ちきりだった。
10万ポイントが支給されず落胆する者、7万ポイントも支給されたのでそこまで気にしていない者、予想が当たっていたようで「やはりか」と呟く者など様々だ。
「クラス全員の支給ポイントが同じ。……もしかしてクラスごとに競争があったりするのか?」
幸村がぶつぶつ言い続けている。
(幸村が原作よりスペック高くなってるっ!?)
俺が展開を変えてしまったせいか、さっそく原作キャラに影響が出始めている。
幸村は学業は優秀だが、運動音痴で頭も切れるタイプではない。
それなのに自力でクラスポイントとSシステムの仕組みに気づくとは……。
「平田くん聞いてよっ!」
クラスメイトは平田が目に入ると一斉に取り囲み質問攻めにする。
俺だって優秀なはずなのに誰も近寄ってこない。
「中川くん、佐藤さんおはよう」
佐藤の友達である松下が声をかけてきた。
俺を頼ってくれるのはお前だけか。
「松下さんおはよう」
「おはようさん」
「二人ともポイントは確認した?」
「もちろん」
「思ったより減ってなかったね~」
5分後。茶柱先生がいつもの谷間アピールのスーツ姿で教室にやってきた。
原作では険しい顔つきで、生徒を愚か者だと罵る展開だが、俺たちDクラスは730クラスポイントもあるため、何を言えばいいのかわからない表情をしている。
案の定、茶柱先生は俺たちを貶すことなくSシステムの仕組みについて説明し、本日からBクラスに昇格になったことを発表した。
茶柱先生曰くDクラスがBクラスに上がったことは史上初とのことだった。
昼休み。平田が主要な生徒を集めAクラスに上がるための作戦会議が行われた。参加者は俺、平田、幸村、櫛田、軽井沢、麻耶の6人だ。ちなみに麻耶は俺についてきただけだ。
とりあえず直近で実施される中間テストでクラスの平均点を上げること、赤点者を出さないことを目標に動くことになった。
勉強会は平田、幸村、櫛田の3グループに分けて行われることとなった。櫛田が堀北に協力するようお願いをすると言っていたが期待はできないだろう。
放課後。平田が中間テストに向けて勉強会を行うことをクラスメイトに説明した。平田を嫌っている三馬鹿など一部の生徒は非協力的な態度を見せたが櫛田の上目遣いで瞬殺した。
「悠太くんも勉強会に参加するよね?」
「そうだな」
過去問があるので参加しなくてもいいのだが、KYになってしまうので大人しく参加することにした。
俺と麻耶が参加するのは幸村のグループだ。
この世界線の幸村は原作より頭が切れており、性格も若干穏やかになっており声を荒げることもない。
唯一の弱点は運動音痴だ。
「安心してくれ。俺が教えるからには平均90点以上は確実だ」
眼鏡をくいっとしながら幸村が決め顔で言った。
「お願いしますゆきむー先生っ!」
「ゆきむー先生っ!」
「先生はやめてくれ!」
俺と麻耶が立て続けにからかうと幸村は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。
「けっこう可愛いところあるじゃん」
「……え? 悠太くんってそっちの気があるの……?」
「いや違うから」
相手が幸村は勘弁。せめて綾小路か平田か神崎のイケメンで想像してくれ。
「よ、よかったぁ……」
「そもそも俺には麻耶がいるし」
「う、うん……」
俺がそう言うと、麻耶は照れたのか俯いてしまった。
「え、えへへ……なんだか恥ずかしいね……」
「そ、そうだな……」
見てるこっちまで照れてしまう。
「お前ら、勉強中はいちゃつくなよ……」
幸村が何か言ってたが俺と麻耶の耳に入ることはなかった。
幸村グループの勉強会は明日から行われることになった。
尚幸村が教える生徒は部活組が多いため、部活が終わる19時から20時に図書室で行われることになった。
「麻耶は勉強会までどうするんだ?」
「えっと、実は私も部活に入ろうと思って」
「そうなの?」
「うん。調理部に入ろうかと思ってるの」
「なんで?」
「料理の腕を磨いて、悠太くんに手料理を振る舞いたくて……いいかな?」
麻耶がいい子すぎてたまらない。
そんなに俺に尽くしたいのか。
「もちろん。でも無理しなくていいんだぞ?」
「ううん。前から暇な時間がもったいないって思ってたから」
「そっか。頑張れよ」
「うんっ」
麻耶はそのまま調理部に入部届けを出しに行き、俺は部活のためいったん別れることになった。
練習中に部長に過去問をおねだりしたらあっさり渡してくれた。
俺は期待のルーキーなので、部活を辞めないよう、けっこう我儘を聞いてくれるようだ。
なお、過去問は平田と相談してテストの三日前にみんなに配布することとなった。
☆☆☆
「お邪魔しますっ」
20時。麻耶が二日連続で俺の部屋にやってきた。
昨日に続いて、今日も緊張した面持ちだ。
「何か飲むか?」
「あ、うん」
冷蔵庫から麦茶を取り出しコップに注ぐ。
麻耶にコップを渡すと「ありがとうと」と可愛くお礼を言いながら両手で受け取った。
「美味しいね」
「無料のやつだけどな」
俺も麻耶も節約のため無料の商品は多めに購入している。
「あはは、そうだね。えっと……」
一口飲むとコップをテーブルに置き、そわそわし出す。
もしかしていちゃつきたいのだろうか。
「麻耶」
名前を呼び、麻耶の隣に移動する。
「っ……」
ビクンと肩を震わせたが嫌がってはいないようだ。
もしこれで嫌がられたらショックで死ぬところだった。
「え、えっと……」
「う、うん……」
隣に座ったはいいけど、どうやってキスに持っていくのさっぱりわからない。
部屋に連れ込むまえにググっておけばよかった。
「悠太くん……」
麻耶は覚悟を決めたのか、恍惚した表情で身を委ねてきた。
「い、いいか……?」
「……うん、いいよ」
彼女の了承を得たので俺は恐る恐る麻耶の華奢な身体を抱きしめた。
「あっ」
「い、痛くないか……?」
「大丈夫。……もっとぎゅっとしてほしいかな」
「わかった……」
言われるがままに強めに抱きしめる。
すると麻耶は甘い嬌声を漏らした。
「どうだ……?」
「うん。なんだか悠太くんを感じる」
「そりゃ俺が抱きしめてるからな」
「そ、そうだよね。……私、何言ってるんだろ……」
俺も麻耶も経験がないのでいちゃつくのもぎこちない。
これじゃ童貞捨てるのも先になりそうだ。
そう思っていた俺だったが、直後に理性を崩壊させて麻耶を押し倒してしまうのであった。
次回やっとエッチシーンです!