「ふふ、マスター❤︎ これで、私だけを見てくれるでしょう? もう私以外、だれもあなたを満足させてあげることはできないわ。でも大丈夫。心配なんていらないの。いつでも私が、あなたを癒してあげる。私はあなただけのもの。ずっと私だけを見て、私だけを愛してね、マスター。きっとよ❤︎」
目の前が真っ暗だった。
下半身を包むぬめぬめとした感触。性器に絡みついて離さない肉の檻。
うぞうぞと蠢くそれがもたらす快感は果てしなく、魂ごと吸い上げられるような錯覚に、掠れた声が漏れた。
脳が蕩けるような陶酔感に意識が霞み、彼女の肌の白ささえも分からなくなってゆく。
その小さな身体に抱かれ、揺籃の微睡みに身を任せ、静かに瞼を閉じながら、
それでも、どうしてこんなことにという後悔だけが、脳裏にこびりついて離れなかった。
☆
「先輩っ、お疲れ様です」
後ろから、マシュの声がした。
シミュレーションルームを足早に後にした俺を追って駆けてきたのだろう。その声は少しだけ弾んでいる。
足を止めてはいけないと思った。
それでも彼女を無下にして先を急ぐことはできず、ここで振り返るべきか、それとも振り返らざるべきか、そんなことを考えているうちに、いつの間にか足が止まっていたらしい。
とんとんと、軽快な靴音が響く。近づいてきている。
いやだ、離れなきゃ。せっかく、今日は何事もなく乗り切れると思ったのに――
「……先輩?」
傍らを回り込んできた彼女が、俯く俺の顔を覗き込むように身を屈める。
トレーニング用スーツに身を包み、うっすらと額に汗を浮かべる彼女。
女性的な凹凸がスーツによって引き締められ、より一層に強調されたボディライン。白磁のような膨らみが窮屈そうに顔を出し、健康的な美を強く主張する胸の谷間。
腰はこんなに細いのに、腕はこんなに折れそうなのに、それなのに双丘だけはたわわに実って、熟して、あどけない彼女の面立ちと裏腹に、劣情を誘引して止まないでいた。
それが、その柔肌が、腰を折り前屈みになったことで、挑発するようにたわんと揺れる。
におい立つ雌の香り。吸い込まれるように視線が引き寄せられ、ごくりと唾を飲む。
その穏やかな曲線に指を埋め、柔らかな質感を掌で感じたいと、雄の本能が鎌首をもたげる。
ベッドの上で見慣れたはずの光景。それなのに。
いや、それだからこそ、どうしようもなくその姿に、反応してしまう。
ダメだ。そんな目で、彼女を見るつもりなんて無いのに。
――――ぐじゅるっ、ぞわぁっ、にゅる、にゅるっ……
「ひぃう――っ゛っっ! は、あっ……ぅあ……」
「――っ!? せ、先輩……? あの、どうか、されましたか……?」
びくんと身体が跳ね、情けない声が漏れる。
今まで、必死で我慢していたのに。彼女の前で、こんな有様を晒してはならないと、歯を食いしばって耐えていたのに。
他の誰にも、もちろん彼女にも、おくびにも出さずに、隠し通して、いたかったのに。
――股間に触手で編まれた貞操帯を取り付けられ、一時の休みもなく陰部を愛撫され続け、
じくじくと、苛むように送り込まれる快楽に身悶えながら、
それでいて射精まで導いては貰えずに、生殺しのように勃起を弄ばれ続けていた、
と、いうことを。
――――じゅぷっ、ぬらっ、ちゅぽっ、じゅる、じゅる……
「ふぅ――っ……! ふっ――ぅぅう…………!」
ぞわぞわ、もぞもぞと、イソギンチャクのような無数の触手で、固く強張ったペニスを撫でまわされるのを、目覚めたときから今まで、間断なく続けられて。
少しも無視することのできない愛撫を受けてなお、その刺激の中途半端さから絶頂までは至れず、
かといって自ら慰めようにも触手に阻まれて触れられず、欲求不満は高まるばかり。
じれったい、じれったい、じれったい。叶うのなら今すぐ肉棒をしごき上げて、わだかまった精汁をぶち撒けてしまいたいとさえ思うほどで。
そんな、茹で上がった脳みそは、そんなつもりもなくただ俺を案じる彼女にさえ、鋭敏に雌を感じ取ってしまい。
ほのかに鼻腔をくすぐった彼女の香りに、ぴくりと反応してしまった勃起を咎めるよう、触手たちはその勢いを増した。
――――ぬちゃっ、じゅぼっ、ぎゅぽ、じゅりっ、じゅぷぷぷ……
「ぎいいぃぃ……っ! ひっ、ひぃ――っ……! ぁ、あ、あっ! ぅあ、ああっ……」
あたかも、他の雌に反応してしまったことに嫉妬するかのような執拗さで、充血し張り詰めた亀頭を、血管で筋張った竿を、ぬちゃぬちゃとまさぐられる。
固く、がちがちに勃起した亀頭を、にゅるにゅる、さわさわと、舐めるように弄ばれ続け、あまりの快感に膝が笑い、腰が砕ける。
足先まで痺れるほどの悦楽の波に攫われ、立っているのも困難で、快楽に悶える声を抑えることもできずにその場にへたり込み、せめて顔だけは見られたくないと床にうずくまって、表情を隠して。
「は、あ――い、イっ……く、ぅぅぅ……ふうぅ……ひ――ぃいいいいい……!」
こんな快感があるのかと、信じられないほどに気持ちいいのに。
なのに、それなのに、この絶妙な触手の玩弄はどこまでも悪辣で、とてつもなく気持ちいいのに、決して絶頂には達せない。
金玉が持ち上がって、ぎゅるぎゅると射精管を精液が駆け上って、もうあと一息で射精できるという、一番じれったい瞬間を、ずっとずっと維持され、引き伸ばされる。
「はっ――! は――! う、あ゛ああああっ! や、らあ゛ああああぁぁぁ!」
そんな限界ギリギリ、絶頂の瀬戸際で無理矢理踏みとどまされ、もう一歩も前に進めないという状態でもなお、触手の愛撫は止まらない。
まだいける、もっと限界は先だと言わんばかりに、射精直前のペニスはさらに嬲られ続け、それでも絶頂だけは許してもらえなくて、やり場のない疼きに滅茶苦茶に体をよじって悶え続ける。
喉が引きつり、悲鳴が漏れる。激しく燃え盛り総身を焦がすもどかしさに焼かれ、虫のようにのたうつ姿の無様さなんて、もはや気に掛ける余裕もなく。
彼女――マシュの見ている目の前では、どうにか醜態を晒さずに耐えようという、そんな決意さえ、なんてことないものだったように、いともたやすく吹き飛ばされていた。
「がっ、あ゛あああああっ゛っ! 止まって゛っ! とまっ――――ぎ、ひいい゛ぃぃぃぃっ!」
触手に懇願する。どうか止まってくださいと。楽にしてくださいと。
すぐそばでマシュが見ているというのに、必死で、縋り付くように。
股間を服の上から鷲掴みにし、どうにかして動きを止められないか、もしくは触手越しに刺激を行えないかを試みるが、そのどちらの効果もなく。
すぐそこなのに、届かない。触手の向こうの勃起をひとこすりだけでもさせてもらえれば、たちどころに射精できるのに。
尿道を、裏筋を、いちばん敏感なところを、好き勝手に蹂躙されて、それでも絶対に絶頂はさせてもらえなくて。
膨れ上がる飢餓感に狂いそうになりながら、絶叫するように嬌声を漏らし続けた。
「せん――ぱい……? 先輩っ! あ、あぁ……い、医務室……医務室へ、っ……!」
尋常ならざる様相に慌てふためくマシュの言葉も、焦燥感に炙られ煮立った脳を上滑りしてゆく。
だって、無理だ。そんなことを気にしていられないくらいに、死ぬほど切なくて。
射精の予兆に金玉は疼くのに、がんがんと子種を製造して、重くて重くて立ち上がれないくらいに腰が重いのに。
なのに、もうイク――と、そう思った途端、ほんの少しだけ動きが穏やかになって。
一番昂った瞬間、一瞬だけのはずの最ももどかしいその瞬間を保つ至妙さで、少しずつギアが落とされてゆく。
ずっと、ずっと、ずっと。
身体はずっとイク直前で、でもあと一歩というところでイキきれなくて。
叫び出すほどじれったくて、苦しくて、もうなにも考えられない。
「先輩っ! わ、私の肩につかまってください……っ!」
「ぁ、あっ――あ゛あああああああっ! やっ、やめ――――」
――ダメだ、ダメだダメだダメだ。
そんなの、耐えきれない。
狂う。狂い死ぬ。
マシュのことをほんの少し考えただけで、その魅力に俺の雄の部分がぴくりと一瞬震えただけで、こんなにもつらいお仕置きを施されているというのに。
それなのに、その魅力的な雌に、直接触れられたりなんかしたら。
肩を抱かれ、ふよりと歪む胸肉の感触を脇腹に受け、懐の中から至近距離で、汗とフェロモンの混じり合った牝香を、直接肺まで吸い込んでしまったら――
――――ぞわっ、ぞわわわわわわぁぁぁ……!
くちょっ、ぺちゃっ、きゅむっ、かりっ、こりこりぃっ……!
「――――~~っ゛っ゛っ! ぅあ、あっ! あッ! ゃあ゛っ、あ゛あああああっ゛っっ!!!」
途端、先程までの愛撫がまるで生っちょろいものだったと、一瞬で理解するほどの激感が爆発した。
勃起に纏わりついた触手が激しく蠕動し、根元から先端へとしごき上げるようにうねる。
撫でるとか、こするとか、そういったものとはまるで質が違う、明確に精液を搾り取ることを目的とした責め。
金玉が沸騰する。内側から小さな蟲に掻きむしられるような、堪えがたいむず痒さ。
暴発寸前まで育て上げられたペニスに加えられる、限度を超えた快感。
高まりきった性感は、あっけなくその分水嶺を踏み越えて。
「――ぁ、でっ……は――ゃ、いや……やだ、イっ――――っぐう゛うううぅぅぅぅ!!!」
腰から脳天へと、甘やかな電流が走り。
金玉が収縮し、びくんと脈動する。
精液を輸精管へと送り出し、前立腺の蠕動による堪らない快感と共に、精液が尿道を駆け抜け――
「っひいいいい゛ぃぃぃ……! ひっ、ぎいいぃぃぃ……! イっ……イキ、た……い……のに……っ゛っ!」
――ない。
迸るはずの精液はしかし、解放されることはなく。
下腹部に巻き起こる強烈な疼きに、かくかくと無様に腰を震わせて、膝から床に崩れ落ちた。
尿道をどろっとしたものが通り抜けるのを感じ取れるほどに、強烈な快感が突き抜けたのに。
今にも噴き出しそうなのに。
それでも、出ない。
まるで、射精という扉に、鍵をかけられたように。
「ぁ、がが……っ。か、は……あぅぅ……う、ぅああああぁぁぁ……!」
膨れ上がる欲求不満に、慟哭が漏れる。
イッてるのに、イケてないという不条理な淫悦。
金玉のすぐ裏で精液が踏みとどまり、放出できるはずだったペニスだけがびくびくと虚しく震える。
とてもこらえきれないほどのじれったさ。
くすぶった射精欲求はすこしも晴らすことのできないままで、
嫉妬に狂った触手は、なおもぐねぐねと激しく蠢いて、凝り固まった勃起をしごき上げる。
達せぬ絶頂へと、容赦なく突き上げる。
強烈すぎる疼きをいじくり回されて、精を放てない苦しみを、焼き付けられる。
「――ぁ、っ! あ、あ――っ゛っ! うあああ――っ゛っ! ひ、や――ッ゛ッっ!!! やだ、あ――――ッッ!!! やめ、れ゛ええ――ッ゛ッ!!!」
――何度も、何度も何度も何度も、執拗に。
頭を掻きむしる程の懊悩が、1秒間隔で続く。
ひくつく勃起の先端を、渦巻くようにぞりぞりと嬲られて。
触手オナホがしゃぶりつき、上下に激しく摩擦され。
そのたびにイケそうになって、いや、実際にイクと確信するほどの衝撃が脳裏に光を散らして。
でも、絶対に絶頂はできず、じんじんと痺れるようなもどかしさだけが無限に蓄積していく。
「――――~~ッッ!!! ん゛んん~~っ゛っ! う゛っ! ふ――ぅ゛ぅぅッッ!!!」
いちいち数えるのも馬鹿らしくなるほどの回数を、絶頂の予感に身体を震わせる。
そして、それと同じ回数だけ、目の前で絶頂を奪われる絶望にむせび泣く。
気が遠くなるほど、その工程を繰り返す。
イキかける途中でまたイキかけて、結局ただの一度もイケなくて。
その頂から進むこと戻ることも許されない。
卒倒するほどの快楽を注がれているのに、どうしようもなく物足りない。
死ぬほど気持ちよくて、死ぬほどじれったい、終わらない寸止め地獄。
「――――っっ! ――――――――っ゛っっ! ――ッ゛ッ! ――――――――ん゛ん゛ンッ゛ッ! ――――――――~~~~ッ゛ッ゛ッ! 」
心が焦げ付くほどの、ひりつく射精欲求に、もう、声も出せない。
疼きのピークが過ぎ去ることはなく、絶頂寸前の苦しみを間断なく与えられて、
必死で、意識を手放さないように、しがみつく。
「――先輩っ! 先輩っ! しっかりしてくださいっ! だ、誰かっ! 先輩が……先輩がぁっ……!」
くずおれるようにマシュの腰のあたりに腕を回してしがみついて、涙と涎と鼻水とでべちゃべちゃになった顔を下腹部に埋め、全身をがくがくと震わせて。
あまりの様相、その病的さに、マシュも気が動転したか、あられもない体勢であることも忘れ、上擦った声で叫んだ。
やがて、ととと、とひとつの足音が近づいてくる。
しかし、焦燥と恍惚の狭間で、かすかに響くその音に気付くことなどできるはずもなく。
あるいは、もう少しだけ早くそれに気づいて、マシュから手を離していれば。
これから先に待ち受ける懲罰が、少しだけ、ほんの少しだけ、軽くなったのかも知れない。
「――ま、マスター……なに、を……しているの……?」
幼く、澄んだ、甘い声。
福音のように響いたそれは、しかし驚愕と、悲嘆とに彩られており。
か細く震え、消え入るような疑問符に応えたかったが、しかし快感の極致で悶え苦しんでいては、そんなことができるはずもなく。
「あ――アビゲイルさんっ! 先輩が……先輩が、大変なんですっ……!」
代わりに、マシュが答えた。
ひとりでは身体を起こすこともできない俺にしがみつかれ、半ば抱き合うような形で。
それはあたかも、愛するマスターが、他の雌と抱擁しているさまを、見せつけるようで。
「マスター、どうして……。どうして、そんなことをしているの……? 私だけを見てくれるって、愛してくれるって、言ってくださったのに……。あぁ、いや……マスター、私に、嘘をついたの……?」
そんなつもりなんて、あるはずがない。
この状況は全くの不可抗力。アビーの思うようなことなんてないのに。
それなのに、愛する者の全てを自らの管理下に置きたいという、彼女の独占欲の発露、触手貞操帯が仇となり、
言い訳の一つもできず、というよりも、言い訳をするべきだという思考力そのものを奪われたまま、
まったく実体のない『浮気の証拠』を、晒し続けた。
「か、ひゅ――――あ、アビー……たす、け――――」
それでも俺は、管理者たる彼女にすがることしかできない。
この戒めを解くことのできる唯一の鍵。
快楽と疼きとじれったさとを煮詰めて濃縮したような地獄から、どうか掬い上げてください、と。
そう懇望し、祈るように、彼女を見た。
「いや……いやよ、マスター……。いけないわ……私のそばにいて、他の女なんて見ないで……。私、もうだめなの……いけない子なの……。あなたがいないと、私……不安なの。胸が、張り裂けそうなの……。だから、お願いよ……私を、私だけを、っ――――」
うわごとのように呟くアビー。その双眸にはいつものような快活さはなく、じとりとした濁りを湛えていて、
その代わりとでも言うように、額に開く第三の瞳だけが、爛々として輝いていた。
☆
気が付くと、闇の中にいた。
いつからここにいたのか、今まで眠っていたのか、思い当たるものは何もない。
独特な刺激臭に頭ががんがんする。
心細さに腕を伸ばそうとして、それができないことに気が付いた。
「――――っく! なん、だ……これ?」
手足がまるで動かせない。
唯一動かすことのできる首を動かして目を凝らすと、そこには気味の悪い光景が広がっていた。
まるで生物の体内のような、生々しい肉に囲まれた空間。
粘液でてらてらと表面を濡らす壁面。
ひとりでに蠕動する触手がそこかしこに溢れており、ときおりびくんと脈打つように震える。
壁と床との区別があいまいで、おそらく球体になっているのだろうと思われた。
対面する壁面は手を伸ばせば届きそうなほどに近く、狭苦しさに息が詰まりそうだ。
「っ……! 動け、ない……っ!」
もがいてみても、ぶにぶにとした柔らかいものに遮られるようで、まるで動けそうもない。
壁面から裸の胴体と頭とだけが露出したような状態で、肩から先と太腿から先とがそれぞれ肉壁の中に埋められているらしい。
必死で手足を引き抜こうとするが、その分だけ奥に引き込まれるようで全く進展はなく、徒労感が募るばかりだった。
「――うふふ、ごきげんよう、マスター❤︎」
――不意に、耳元で声がした。
びくりとしてそちらを振り返ると、先程まではそこにいなかったはずのアビーの姿があった。
心許ない布地だけを纏った、ほとんど裸と変わらぬはしたない姿。
驚愕――それと、ある種の荘厳ささえ孕む肌の白さに、息を呑む。
第二次性徴前特有のなだらかさと、そこに陰影を刻む鎖骨、肋骨、臍、鼠径部、内転筋のくぼみがエンボスじみて美しく、
女性的な膨らみよりも原始的な造形美は却って瑕疵のひとつもないように思えて、その流線形に目を奪われた。
「マスター。そ、そんなに見つめられると、少し恥ずかしいわ……❤︎」
「――っ! ご、ごめん、アビー……」
慌てて目を逸らす。
彼女らしからぬ蕩けた声。俺はこれに、一度だけ聞き覚えがあった。
――もじもじと俺に好意を伝えてくるアビー。それを親愛の言葉と勘違いし、何の気なしに俺も同じ気持ちだよと答えてしまった。
その瞬間、彼女の顔がぱあっと輝いて……次に聞いた言葉に、思わず耳を疑ったのを覚えている。
その瞬間から、アビーの暴走は始まった。
浮気を戒めるとの名目で触手の貞操帯を取り付けられ、性欲を抑え込まされて。
そのくせ、常に無視できないくらいの弱い愛撫で肉欲を刺激され続け、
四六時中休みなしで発情させ続けてくる。
今になって思えば、きっと俺が快楽に負けて、自らアビーに性処理をねだるように仕向けられていたのだろう。
その目論見は見事に俺を絡めとったが、そのせいで俺とマシュが抱き合う姿を見る羽目になったのは、アビーにとっても誤算だったのだろう。
そのために、アビーはこのような強硬手段に出た――それが、俺がここに捕らえられた経緯なのだろう、と漠然と思った。
「まぁ❤︎ マスターのここ、すごいことになっているわ❤︎ うふふ、もしかして、私のこの姿を見て、興奮してくださったのかしら❤︎」
いつの間に勃起していたのだろうか。
彼女はそれに気づいたらしく、嬉しそうに、鈴を転がすように笑う。
言葉に詰まる。何とも答えがたかった。
本当に彼女の身体に興奮して勃起したのか、ただの生理現象としての勃起なのか、或いは最初からずっと勃起していたのか、自分でも分からない。
何せ、あれだけの寸止め責めを食らい、限界を超えて性欲をため込まされたのだ。
意識してしまうと、股間にずんとした重さがやってくる。結局射精は一度もできなかったのだから仕方ない。
ふつふつと蘇る射精欲求に頭がくらくらとして、碌な言い訳も思い浮かばない。
「これ、は……その……」
それでも、俺の煮え切らない回答を、恥部を指摘されて恥じ入ったためのものと解釈したのか、アビーは機嫌良さそうに、俺の首へと腕を回した。
「うふふ、いいのよ、マスター❤︎ 私、とっても嬉しいわ❤︎ だって、私をそういう対象と見てくれている、ということでしょう?」
「それ、は――――」
期待に目を輝かせて顔を寄せるアビー。
彼女の視線を真正面から受け止めることができずに、俺は目線を逸らした。
「……ごめん」
「――――――――え、っ……」
ぴしりと、アビーの表情が凍り付く。
「どう、して……? だ、だって、大好きって言った私に、マスターは俺も大好きだよって言ってくれたわ。寂しくしないって、一緒にいてくれるって。それって、わ、私の気持ちに応えてくださったと、そういうこと、よね……マスター?」
崩れそうになる表情を繕うような、痛々しい笑み。
すがるような言葉が、胸を突く。
違うんだ。そういうつもりなんてなかった。
アビーは俺にとって大切な存在だ。
可愛いと思う。守ってあげたいと思う。
サーヴァントとマスターという主従関係なんて抜きにしても、
彼女の人間性は尊敬に値するし、ずっと一緒にいたいと、掛け値なしにそう思えた。
だから、
だから、俺はアビーを、性的な目で見ることができなかった。
共に生きたいとは思っても、添い遂げたいと思うことはなかった。
俺にとってのアビーは子供で、妹のようなもので、雌として見ることができなかった。
俺を雄として見ているということに気づけず、安易に彼女の想いに応えてしまった。
彼女の言葉が性愛の好きであるとは知らずに、親愛の好きで返してしまった。
――そのために、俺とアビーの気持ちは、ボタンを掛け違えたように、ずれてしまっていた。
「――うそ、嘘よね、マスター……? きっと私をからかっているだけだわ。私が、子供だからって、冗談を言ってるのね。子供……だから……」
俺の言ったことを認められずに、アビーはうろたえるように目を泳がせる。
申し訳なくて、居たたまれなくて、俺は俯くしかできない。
たとえその気がなかったとしても、彼女を傷つけてしまったのは事実なのだ。
彼女に誠実に接することが、俺にできる一番の償いになるだろう。
そのためにも、まずはこんな突拍子もないこと、すぐにやめるよう説得しないと。
恋心に目が眩んでしまっているだけで、元来は聡い子なんだ。
しっかり言って聞かせれば、きっと分かってくれるはず。
「ごめん、本当に……アビーがそう思ってくれていることは嬉しいんだ。だけど……すまない、その想いを受け入れることは、できないんだ……だって――」
顔を上げ、アビーと目を合わせる。
ああ、もう、そんなに泣きそうな顔をして。本当に、気が重い。
俺はこれから、残酷なことを言う。
可哀そうだけど、それでも、言わないと先へ進めないんだ。
「――だって、俺には恋人が……マシュが、いるから」
「ぁ……いや、嫌よ、マスター……。どうして、私じゃダメなの? あなたが望むならなんだってするわ。今よりもずっといい子になるわ! きっと力になる、どんな障害だって、きっと取り除いてみせるわ! だから私を選んで! お願いよ、お願い……私にはあなたしかいないの……あなたとのよすがが、私の全てなのよ……」
訴えるように縋り付くアビーに、俺はただまっすぐと見つめて沈黙を返した。
アビーの表情が目まぐるしく変わってゆく。
大粒の涙を浮かべて鼻を啜り、躍起になって自らの有用性を説き、必死で情に訴えようとするさまは、見ていられなかったけれど、
それでも、彼女をそこまで追いつめてしまった情けなさを飲み込むように、じっと静かに見つめ続けた。
「――――――――分かった、わ。マスター……」
そうして、絞り出すように呟き、アビーは項垂れた。
肩を震わせ、両手で顔を覆い、しゃくりあげるように、嗚咽を漏らして、嗤った。
涙混じりの笑い声。
痛ましげな音色を小刻みに響かせて、顔を上げたとき、彼女の目は据わっていた。
「――あ、アビー……?」
「マスター。私、いけない子ね。マスターには好きな人がいて、私はあなたを諦めないといけないのに……どうしてかしら、さっきよりもずっと胸が熱いの。高揚しているの❤︎ あなたの気持ちを今から捻じ曲げるのだと思うと、ふふっ❤︎ どうしてこんなに、ぞくぞくするのかしら❤︎」
腫れたまぶたの向こうで青く輝く瞳が、眼前へと迫る。
気圧されて顔を仰け反らせるが、全身を拘束されていてはそれも詮無きことだ。
のぼせたように紅潮した表情が妙に妖艶で、額と額とが触れるほど、吐息が鼻にかかるほどの距離で放たれた言葉を、俺は理解できずにいた。
「アビー……何を、言って――――っひいいいぃぃっ!?」
不意に、怒張に冷たさを感じ、声が跳ねる。
ほんの一瞬撫でさすられただけで、甘い痺れが沸き上がり、思考にもやがかかる。
ほっそりとしたアビーの手指が敏感な亀頭に絡み、手のひらで包み込まれ、握りしめられる。
快楽が稲光のように暴れ回り、それが束となって肉棒の芯を突き抜け、ぎゅるぎゅると睾丸が疼き始めた。
「いいわ、マスター❤︎ その顔、たまらないわ……❤︎ あはは、他の女を見ないでって言ったのに、それを破ってずっと触手たちに弄ばれ続けたのだもの、射精したいと思うのも仕方のないことだわ❤︎」
ぷにぷにとした手のひらで亀頭の先端をこすられ、雄々しく張り出したカリ首のくびれを指先で爪弾かれると、堪えがたい射精欲求が渦巻いて、押し潰されるような切迫感がこみ上げる。
吐息が熱くなって、頭の芯がきりきりと絞られるようで、意識がかすれてゆく。
睾丸がぎゅううっ❤︎と持ち上がり、腰がそわそわと落ち着きなく震え、足先がじんとしてむず痒くなる。
十数秒とない愛撫ですっかり昂らされて、破裂寸前までに昂らされたペニス。
もう息を吹きかけられただけでも果ててしまいそうなほどに追い詰められ、切羽詰まった声が漏れる。
「あっ、ぐ! ぅあ、あああぁぁぁぁぁ…………っ!」
イキたい、射精、射精したい! もう無理、限界だ!
だってあんなに、射精寸前の苦しみをずっと味わい続けて、金玉だって痛いほどに腫れ上がってる。
我慢なんてできるはずがない。すべての思考、理性が、射精したいという欲求で塗りつぶされてゆく――
「マスター❤︎ 射精、したい……?」
「っ、があっ! し、したいっ! 射精っ、させ、て……!」
「うふふ❤︎ それなら、マシュさんを捨てて私を選んでくださるかしら?」
「――――っ!? く……それ、は……っ!」
溺れるほどの息苦しさに喘ぎながら、しかしその提案に踏みとどまる。踏みとどまってしまう。
無意識の言い淀み。しかし、それはまだ俺の心が快楽に傾ききっていないということを雄弁に示しており、
二の句を継ぐ間もなく、アビーは冷酷な笑みを浮かべ、勿体ぶるように手を離した。
もう少しだけ、触ってもらえていれば、絶頂、できたのに――――
「ふぅ、っ……うううううぅぅぅっ! な、なんで、アビー……っ!」
「なんで? うふふ、だってマスターはマシュさんのものだもの❤︎ ひとの恋人を勝手に寝取るなんていけないわ❤︎ あなたが私の恋人だったら、たくさん気持ちよくしてあげられるのに、残念ね❤︎」
「っく……そういう、ことか……っ!」
アビーの思惑を悟り、脊髄に氷柱でも突き刺されたみたいな怖気が走る。底冷えするほどの意地の悪さ。
マシュを裏切らない限り解放されないと思うと、出口のない迷路に閉じ込められたみたいで、息が浅く、速くなる。
本能はもう無理だと叫んでいる。これだけの欲求不満を抱えてなお、意地を張り続けることなんてできるはずもない。
いずれ快楽に屈して膝を折るだろうことは目に見えている。
だけど、それでも、喉元まで出かかった恭順の言葉は、かろうじて飲み込んだ。
命を預けて共に戦い抜いたマシュを裏切る不義理は許されないという、ひとひらの矜持。
それだけで、抗う理由には十分だった。
「やめて、くれ……こんな、非道いこと、アビーにはやってほしくないんだ……」
「あはは、それなら簡単よ、マスター❤︎ あなたのその口で、ただ一言。愛してるって囁いて、口づけてくれるだけでいいの❤︎ それだけで私は満足よ❤︎ 私の全てを捧げて、あなたを天国に連れて行ってさしあげるわ❤︎」
ちらり、と。挑発するように舌を出し、頬を吊り上げるアビー。
説得に応じるような様子はない。もう、心が決まってしまっているのだろう。
反骨心に奥歯を噛み締めると、それを見咎めてか、アビーは目を細める。
「どうあってもマシュさんを裏切る気はないのね。うふふ、その反抗的な目……もう、抑えきれないわ……❤︎ 私のことしか考えられないように、壊れるくらいに苛め抜いて、身も心も屈服させてあげる❤︎ もっともっと楽しませてね、マスター❤︎❤︎❤︎」
背筋が凍るような笑み。熱に浮かされたように蕩ける瞳が毒々しくて、かちかちと歯の根が鳴る。
焦らすように俺の下腹部を這うアビーの指。臍の下をかりかりっ❤︎とくすぐるように撫でられるだけでも、先程の手業をどうしようもなく思い出してしまい、びくりと震えていきり立ってしまう。
腹直筋をなぞるように下へ滑らされた指が陰嚢の付け根で反転し、今度は尿道をなぞるように上がってきて。
その先端の亀頭の裏筋を爪でこりこりっ❤︎と弄ばれ、漏れそうになる嬌声を必死に唇を噛んで耐えた。
「くぅ、っ……ふ、ぐううぅぅぅぅぅっ!」
「敏感なのね、マスター❤︎ 私の指先ひとつでこんなにも悶えて、顔を赤くして……こんなことを言うのはおかしいかも知れないのだけど、ふふ、マスター、とっても可愛いわ❤︎」
ふるふるっ❤︎と開閉する鈴口から零れる我慢汁を指の腹で掬い取り、それをまぶすように亀頭に塗りたくられ、耐えていた声が思わず漏れ出でた。
射精の予兆にペニス全体が震えるが、しかし敏感すぎる先端だけを責められても射精までは至れず、
掻痒感にも似た強い快感から逃れようとのげぞってもがくが、ぎっちりと拘束された手足はびくともせず、もどかしさばかりが際限なく膨れ上がってゆく。
「ねぇ、苦しい? 切ない? 先っぽだけじゃ気持ちいいのに果てられないのでしょう? なんだかとっても不条理ね❤︎ ねぇ、マスター、そう思わない?」
「――――~~っっ! うあっ! あっ……あああああっっ! や、っ! やめへえええぇぇっ!」
五指の指先が亀頭を跳ね回る。時にかりかり❤︎とつつき回すように、時に触れるか触れないかのフェザータッチで。
最も敏感な快楽神経の塊を好き放題に玩弄され、気持ちよすぎて、背筋がよじれるのを止められない。
熱い悦びが下腹部に充満し、ぎゅっ❤︎と引き絞られるように輸精管が縮みあがって、金玉は痛いほどに疼いているのに、
それなのに、きゅうきゅう❤︎と咽ぶように痙攣する鈴口からは、とろとろの我慢汁が涎のようにあふれるだけで、白濁したものは一滴たりとも漏れてくれない。
気持ちいいのがつらすぎて、射精衝動が激しすぎて、嘆願するような情けない悲鳴が抑えきれない。
息が苦しい。心臓がばくばくと激しすぎて、酸素の供給が追い付かない。
あまりの快楽に呼吸が続かなくて、胸が押し潰されるようで、頭がぼうっとして……。
「ああっ、マスターっ❤︎ マスターっ❤︎ そんな蕩けた顔を見せられたら、もう、もうっ❤︎ 私、我慢できないわっ❤︎❤︎❤︎」
薄く、しかし柔らかい唇が、俺の口を食むようにぱくり❤︎と覆った。
慌てふためいて首を振り逃れようとするが、首に腕を回されて、抵抗も許されない。
突然に呼吸を奪われた混乱の中で、溶け落ちるほどに甘いものが舌に絡んで、もう、何も、考えられない。
「――んっ、ちゅ❤︎ んふぅっ❤︎ ちゅ、ぷ……まふ、たぁ❤︎ すき❤︎ しゅきっ❤︎ つぷっ……れろ、っ❤︎ はむっ……❤︎」
接合部の隙間から漏れる熱い息。昂りきった性感はそうでないところまでも性感帯に変えたのか、
アビーのぬるぬるとした薄い舌が口内を蹂躙し、混じり合った唾液がきついアルコールのように喉元を熱く焼く。
それはまるで甘い蜜のようで、お互いに舌を絡め合うだけで気持ちよくて、もっともっと欲しくなってゆく。
ああ、だめだ。理性はまだ拒んでいるのに、身体はどうしようもなくアビーを求めてる。
ダメだって分かっているのに、どうにも抑えが効かなくて、知らずのうちに、溺れそうになり。
「ちゅ、っ……❤︎ うふ、マスター❤︎ こっちも、忘れないでくださいな……❤︎」
「んっ! ううっ……! むぅ、ん――むむううううぅぅぅぅぅっ……!」
おざなりになっていたペニスに、杭を打たれたように太い快感が突き抜けた。
ぱちんっ❤︎と、亀頭の先端を指で弾かれて、根元からペニスがぶるんと跳ねる。
強烈な激感。背筋が弓なりに反って、腰が燃えるように熱く重くなり、ちかちかと視界が弾ける。
恍惚が脳髄に満ち、ぱんぱんに膨らんだ金玉の内側から炙られるような疼きが沸き上がって、
堪えがたいもどかしさが全身を支配し、ぶわりとねばつく汗が噴き出した。
「はっ――あ、アビー! アビー、っ……!」
「うふふ、マスター❤︎ イキたいのでしょう? さぁ、愛してるって言って❤︎ きもちよく、解き放ちましょう……❤︎」
しなやかな指が竿へと滑り、ただ添えるだけのような心もとなさで、しゅりしゅり❤︎と上下する。
先程の亀頭責めと違って、直接的に射精を導く動作。
どろどろのカウパーがちゅくちゅく❤︎と水音を立て、そのたびに血管の隆起した肉茎がみちみちと強張って。
そして、ねじるように根元から先端へとにゅぷぷぅっ❤︎としごき上げられた瞬間、沸き立った精液が急激に昇ってきて、
ぞくぞくと全身が波打つ感覚、頭が真っ白になる壮絶な高揚感に身を任せ、開ききった喉から塊のような空気を吐き出し――
「――もう、マスター❤︎ 言ってくださらないのなら、射精はおあずけよ❤︎」
びくん、びくびくびくん、と射精の脈動を繰り返すペニス。
尿道が波打って、金玉は会陰にめり込むほどに持ち上がって、くぱくぱと吐き出すように鈴口が開閉しているのに。
まごうことなき射精の動作、快楽に打ち震えるペニス特有の痙攣をしているのに、精液が噴き出して然るべきなのに、
それでも、精は一滴たりとも、漏れてこない。
「がっ――――あああああああああぁぁっ! うあああっ! なんでっ! なんでえええぇぇぇぇ!!!」
快感の伴わない虚しい痙攣に、悲嘆の叫びが漏れる。
触手貞操帯に責められた時と同じ、イッているはずなのにイケていないという矛盾した感覚。
射精したいという欲求不満だけが限界まで膨らんで、それでいて出口を見失ったように解放だけが訪れない。
すぐにでもイケるくらいに射精直前の限界ギリギリ状態なのに、薄皮一枚で堰を切らせてもらえない。
絶頂手前の究極にもどかしい境界面、すぐそこにある解放はもう目の前に見えているのに、どれほど手を伸ばしても届かなくて、
全身押し潰されるほどの焦燥感、肺腑が破れるほどの肉欲の昂ぶりに、頭が、おかしく、なる――!
「うふふ、マスター❤︎ あなたの快感の出口、射精という門に、錠を付けさせていただいたの❤︎ 我は門を知れり、汝開くこと能わず、なんて、仰々しいかしら❤︎ 少しずるいかも知れないけれど、許してね、マスター❤︎」
視界が遠くなる。あまりの残酷な仕打ち。死刑宣告にも等しい重鈍さを持ったアビーの言葉に、しばし、思考が止まる。
どれだけ強烈に責められても、本来なら射精してしまうほどの快感を注ぎ込まれても、絶対に絶頂はできない。
それは人間が味わうことができる苦痛の限界を超えた責めをも受けかねないということと、
そして、それはマシュを裏切って、捨てて、そうしてアビーに愛を告げるまで、終わらないということを意味していて。
頭の奥で、みしみしと、心が軋む音が、響いていた。
「だからね、いくらでも責めていいのだから、こんなこともできるのよ❤︎」
「ばっ……やめ、ろ……っ! アビーっ、きた、な……いっ!」
ちゅ、と、窄められた唇が鈴口に合わせられる。
ちゅるるるっ❤︎とストローで吸うように我慢汁を吸い出され、
尿道内を擦過される感覚に腰が抜けそうになり、喉を反らして声にならない嬌声をあげた。
「――――~~っっ! く、あ゛ああぁっ! はっ、ううあああ゛ぁぁぁっっっ!」
「何を言うの、マスター❤︎ 大好きなあなたのものなんだもの、汚くなんてないわ❤︎ んっ……れろぉっ……っちゅ❤︎」
ルビーのように鮮やかな紅色をした舌が、裏筋をなぞり上げる。
筋張ったそれをざらりとした味蕾でねぶられ、沸き立つ血潮がどくんどくんと肉茎を上り詰めて、
先程吸い上げられたはずの我慢汁が、再び先端からたぱぱっ❤︎と溢れ出る。
同時に言い尽くせないむず痒さが内側から掻きむしるように湧き上がってくるが、
しかし、その頂に蓋を被せられたように、白濁を迸らせる随喜の一瞬は、いつまで経っても訪れない。
「はっ――! は、あ゛ああっっ、ぁ゛ぁぁぁあああ……っぎ、ぐう゛ぅ……ああぁぁぁ……!」
金玉はぐらぐらに茹りきっているのに、迸らせることは絶対に許してもらえない。
どうしようもないくらいの疼きで、おかしくなりそうなのに、ずっとそこで直立不動のまま耐え続けることを強要されて。
理性が、蒸発する。感情が、本能が、激烈すぎる快楽に塗りつぶされていく。
ダメ、だ――! それでも、流されちゃ、マシュを、裏切っちゃ、いけない――――
「頂くわ……❤︎ マスターの、たくましいもの……はむ、っ……❤︎❤︎❤︎」
「ぅ――――あ、あ゛ッ! ふぁ、あああっっ! ぅひい゛いいいいぃぃぃぃっ゛っ!!!」
ぱくりと、小さな口が亀頭をすっぽり咥えこむ。生暖かな粘膜と、舌の感触。
きゅっ❤︎と吸いつくようで、それでいてざらっとした舌が這い回るように亀頭の表面を動き回り、
えも言えぬ快楽に、もっと気持ちよくしてほしいと訴えるよう、かくかくと無様に腰が跳ねる。
この瞬間にも絶頂痙攣にびくびくと震えているのに、ザーメンは吐き出せなくて。
つらい、つらい、つらい、つらすぎる――――!
「じゅぷっ❤︎ んえろぉっ❤︎ ちゅむっ……❤︎ どう、きもちいい、かしら……❤︎ じゅぞぞぞぞっ❤︎」
熱い唾液をまぶして、カリ首をなぞる様に、鈴口をほじくるように、縦横無尽に這い回る舌。
艶めく唇の端から漏れる水音のひとつひとつが耐えられないくらいの快楽を注ぎ込んできて、
そのたびに、意識が飛びそうなくらいの心地よさと、首根を引っ掴まれたように果てへと至れないじれったさとで、脳裏が白く染まる。
もう、自分がどんな顔をしているかもわからない。きっと締まりなくどろどろに蕩けきって、目も当てられないんだろう。
なんて、そんなことを考えていられる余裕だって残ってはいない。
アビーに触れられるだけで燃え上がる程に熱くて、でもそれを吐き出せなくて、気が狂いそうだ。
さらさらのブロンドが内股を撫でるだけで、それだけでもう達してしまいそうなくらいに、全身が敏感になっているのに。
なのに、射精は、絶対に許されない。頭がどうにかなってしまう。
きりきりと、絹糸の裂けるような嫌な音が、頭の中で響き続ける。
「っぷはあ❤︎ いかがかしら、マスター……❤︎ 浅いのもいいけれど、もっと深いのを味わってみたくなってきたかしら……❤︎ いいわ……苦しいくらいに、呑み込んであげる……❤︎❤︎❤︎」
びくびくと震える臨界ペニスを、アビーの喉奥が迎え入れる。
急に狭苦しくなる締め付けに、我慢汁が容赦なく搾られる。
それなのに、ペニスの根元でぐつぐつに煮立っている精液は少しも吸い上げてもらえなくて。
目も眩むほど暴れ狂っているのに、どうしても出せなくて、
絶頂に対する飢餓感が理性に牙をむく。マシュのことなんて諦めろと、
このまま屈して射精させてもらえと、責め立てる。
「うふふ、射精がすぐそばに見えてるのに、あと少しで届かないなんて……どんな感じなのかしら、マスター❤︎ あは❤︎ またびくっ❤︎って震えて、期待してるのね……❤︎❤︎❤︎」
アビーの口内で、痛いほどに膨れ上がった勃起がぶるりと震える。
見下ろせば、媚びるような上目遣い。
燃え盛る情欲の炎に焦がされているのを見透かされるようで、心臓が早鐘を打つ。
ただ単純に、ぺちゃぺちゃ❤︎と肉茎を舐めしゃぶられているだけなのに、
テクニックなんて微塵もない、じゃれつくような愛撫でしかないのに、
それなのに、それがあまりにも気持ちよすぎて、耐えられない。
射精、射精したい! 気持ちよくなりたい! こんなにキツいの、もう少しも我慢できない!
「マスター、もう限界よね? つらくて仕方がないわよね? うふふ、知っててやっているのよ❤︎ どんなにつらくても、お漏らしは厳禁❤︎ でも、ほんの一言、愛を囁いてくれさえすれば、きもちよ~く射精させてあげるのよ❤︎ さぁ、マシュさんを捨てて、アビーを選んでくださいな❤︎ それだけで、すぐにでも楽になれるわ、マスター❤︎❤︎❤︎」
「はっ――――ぁ、あ……アビー、っぐ……!」
眼前にぶら下げられた飴に、思わず目を奪われたように、口が、喉が、勝手に音を作ろうとする。
それを、本能が敗北宣言を絞り出そうとするのを、奥歯を噛み締めて耐える。
射精させてくださいと言ってしまうのを、寸でのところで踏みとどまって、
高熱に苛まれたようにぼやける頭で、鳴りやまない射精欲求の疼きを押し殺して、
まるで地獄としか思えないフェラチオに、混濁してゆく意識を無我夢中で繋ぎ止めて、
必死の抵抗の言葉を、かろうじて押し出す。
「――たのむ、っ……やめて……やめて、くれ……こんな、っ……!」
「もう、マスター……私が欲しい言葉はそんなのじゃあないのよ❤︎ 分からず屋のマスターには、少しだけつらいお仕置きをしないといけないわね……❤︎」
くぽっ❤︎と水音を立て、ようやくペニスが解放される。
粘っこい唾液でてらてらと光るそれはぎちぎちに勃起しきっていて、
もう何も触れてさえいないのに、ぶるぶると射精の予兆に震え続けていて、
その震えのひとつひとつが脳髄を焼き尽くすかと錯覚するほどに気持ちいいのに、
絶頂は薄皮一枚の壁に阻まれて迎えられずに、じれったさだけが延々と続くだけ。
前立腺の甘い痺れがいつまでも抜けてくれなくて、思考が上滑りする。
気持ちよさしか頭になくて、言葉が、何も出てこない。
「次は、これ……触手でいじめてあげるわ❤︎ 精子を閉じ込められたおちんちん、今から滅茶苦茶にするわね❤︎ うふふ、いつまで射精のおねだり、我慢できるかしら……❤︎❤︎❤︎」
するすると手のひらから這い出る触手に、背筋が凍る。
抵抗さえ許されず、注ぎ込まれ続けた人外の快楽。
その苦痛の記憶が想起され、冷たくねばつく脂汗が額から吹き出した。
耐えきれるか――無理だ。あれをけしかけられれば最後、本当に心が壊される。
不吉な予感はもはや確信に近く、少しずつ伸びる触手はまるで死の宣告のようにも思えて、
粘液を纏い、うぞうぞと蠢くそれを翳されるだけで、詰まった息が笛の音のように、か細く漏れた。
「ひ――! ひっ――! やめ、て……ひぃ、ぃっ……!」
「怖いのね、マスター❤︎ 大丈夫、もう意地を張るのはやめて、気持ちよくなりましょう?」
駄々をこねる幼子のように怯える俺を、優しく諭すように撫でるアビー。
ずっと年下の女の子なのに、なんだか暖かかくて、絆されそうになって、
一瞬だけ、心を渡してしまいそうになるが、すぐそばでねちょねちょと響く水音が、逃避しかけていた正気を現実に引き戻す。
そうだ、この常軌を逸した状況自体、そもそもがアビーの乱心によるものなんだ。
気をしっかり持て。マスターとして、流されるわけにはいかない。
内心の決意が顔に出ていたか、アビーは残念そうに目を伏せ、遂にその触手を、伸ばした。
「マスター、本当に強い人なのね。あぁ、マシュさんが羨ましいわ。だってそうでしょう? 正気では耐えられないくらい、こんなにも苦しんでいるのに、それでも健気に操を立ててくださっているのですもの。こんなの、普通の人にはとてもできることではないわ。本当に……本当に、嫉妬しちゃう……❤︎❤︎❤︎」
彼女の双眸に、獰猛な光が宿る。
猛禽の如くに瞳孔が開き、飲み込まれるほどに深く見据えられ、喉がひりつく。
冷徹、残酷に、狙いを定めるようにその手を伸ばし、
餌を求めるように波打つ灰色の触手が、雄々しくそそり立ち、切なげにひくひくと震える肉棒に、絡みついた。
「――――――――~~~~っ゛っっ! ぅあ! ああ゛っっ! あ゛ああああああぁぁぁぁっ゛っっ!!!」
瞬間、爆発する激感。
嵐のような淫欲が、雪崩を打って陰嚢に殺到する。
弾けんばかりに強張った亀頭に、ぺたぺたと吸盤じみたものが張り付いて、無数のそれがきゅっと張り詰める。
その孔のひとつひとつから精気を根こそぎ吸い上げられるような圧倒的な淫悦。そして、それと機を同じくして、甘い熱が染み入るように、亀頭を占拠し始める。
それはどくんと血流に乗って勃起を巡り、根元まで熱く、火照って、津波のように押し寄せる――
まるで淫毒、媚毒の類。限界を超えて発情したペニスがさらに焼け爛れるような熱感に侵されて、想像を絶するほどの焦燥に、我を忘れて叫びたてた。
「なに゛っ――こ゛れえええぇぇぇっ゛っ! あつ゛、っ゛っっ! こ、れ……あ、あっ――あついっ! あつ゛ううう゛ぅぅぅ――――~~っ゛っっ! しゃ、射精っ! あつ、じゃしゃゃせいしじじじじ――――」
「あはぁ❤︎ やっと、乱れてくれたのね……❤︎ そう、この触手の纏う液は正気を侵す魔女の毒。気持ちよくて、もどかしくて、心が焦げ付くようでしょう……? もっと、もっとよ❤︎ 余計なことは何もかも忘れて、ただ私だけを求めてね……❤︎」
ぬぷり、と接合部から零れる毒液。それが竿を伝い、陰嚢まで届き、表面の皺に染み込んで、睾丸まで伝播して、
瞬間、脳髄をミキサーでかき混ぜられ、理性の全てを吹っ飛ばされるほどの、圧倒的に強烈な射精欲求が、燃え上がった。
今までのそれとはまるでワケが違う。精液がすべて赤く溶けた鉄になったようで、身体の内側からアイロンを押し付けられているみたいに熱くて、
あまりにも壮絶すぎて、叫び声を、身体の跳ねるのを、この激感から逃れたくてなりふり構わず悶絶するのを、少しだって我慢できない。
そんな、そよ風が触れるだけで、たちどころに精液を、何度も何度も噴き上げてしまうほどに、極限まで皮膚感覚を鋭敏化させられた性器を、
その表面にたっぷりと毒液を滲ませた無数の触手たちが、触れて、撫でて、絡みついて、咥えて、擦って、吸いついて。
にゅるにゅると、ちゅぱちゅぱと、くにくに、しゅこしゅこ、きゅうきゅう吸いついて、ずぽずぽとしごき立てられて、
そのひとつひとつがあまりにも気持ちよすぎて、もう獣のような無意味な叫び声しかあげられないくらいに、精神をぶっ壊されてしまっているのに。
なのに、一回だって、絶頂だけは、許してもらえない。
「ひぎゃああ゛ああああぁぁぁぁぁッ゛ッ! っぎいいぃぃっっ! いッギぎいいいぃぃ! ひぁ、ががががががあああぁぁぁぁ!!! あっぐぶううぶぶぶうううう――――ッッッ! ひっ! ぎ、ぎいいぎいぎぎぎ――――――――~~~~ッ゛ッッ!!!」
もはや脳が情報として処理できる量さえも遥かに凌駕した激烈さに、細胞が悲鳴を上げる。
絶え間なく迸り続ける快楽の電流に、ぼろぼろと脳みそが焼け崩れてゆくような錯覚。
これでなぜ死なずにいられるのかと疑問を呈したくなるほどの凄惨な苦痛の中で、
飛びかけの意識を明滅させながら、しかしそれを手放すこともできず、嘆きの狂聲を吐き散らすだけ。
さっきの拙いフェラチオが地獄だなんて、とんでもない思い違い。全くの間違いだった。
あんなのぜんぜん、なんてことなかった。アビーの言葉を借りるのなら、お仕置きでさえない、ただの前戯。
そして、これが『少しだけつらいお仕置き』であるとするのなら、きっとこれだって、まだ本気ですらない。
こんな、理性が挽き潰されるほどの地獄でさえも、まだ通過点で、もっともっと先がある、なんて、信じたくない。
昏い絶望が、心を満たしてゆく。
「さぁ、仕上げに行くわ……❤︎ この触手で、マスターの全身を包み込んであげる……❤︎ うふふ、毒のおかげで、きっと全身どこを触ってもきもちよくなれるようになるわ❤︎ とっても素敵ね……❤︎」
そうして、性器だけを包んでいた触手がするすると伸びて、全身へと広がり始める。
どこにそれだけの量を隠していたのか、無尽蔵に体積を膨らませ、何千何万の細かな触手を四方八方へと伸ばしてゆく。
ある触手は下腹部から太腿へ、またある触手は腹を這い上がるように上へと伸びて、ぺたりぺたりと、毛穴の一つ一つさえも貪るように、食いついてゆく。
じわじわと少しずつ、しかし確実に、火傷しそうなほどの肉欲の熱が広がって、
性感帯でさえない部分であっても、触手の蠢きの一つでたちまち頂まで突き上げられる程に、際限なく昂らされてゆく。
「――――――――~~~~ッッ! っ、か――――――――! っッッ――――――――――――…………! は、が…………―――――――――――――――!!! っンン――――――――ッ゛ッ! ぁ、が、ア゛ァ――――――――――――!!!」
もう、声も出ない。喉が開ききって、肺から空気が抜けてゆくだけ。
鳥肌で埋め尽くされ、隈なく真っ赤に染まっている全身の皮膚を、毒液まみれの触手がのたくって。
それは比喩でもなんでもなく、全身を性器に作り替えられるような、おぞましい感覚。
絶頂に達することを禁じられているのに、全身どこでも絶頂できるように改造されるという拷問。
すでに全体を覆われている下腹部が、発狂しそうな疼きを訴えている。
竿も、陰嚢も、鼠径部も、尻たぶも、肛門も、内股も、腰骨や腹部の皮膚でさえも、どこも等しく、亀頭の先端以上の感度にひりついて、
そして、その、どこを触られても射精しそうなくらいに感じてしまう下腹部の全体を、数えきれないほどの触手が、ぐちゅぐちゅ、ねちゃねちゃと、ねぶり尽くされて、
「はぁぁ……❤︎ そんなに身体をびくびくさせて、おかしくなっちゃう? 我慢しないで、楽になって❤︎ 私を受け入れて……❤︎ そうしたら、私、なんでも言うことを聞くわ……❤︎ あなたの言うことだったら、なんでもしてあげる❤︎ ねぇ、いいでしょう……?」
身体が全く言うことを聞いてくれない。俺の意識の埒外で、不随意的に、痙攣し続けて抑えが効かない。
なかでも、鈴口にこよりのような触手を刺し入れられて、尿道をざらざらとした表皮がのたくるように這い上がり、
前立腺を内側からついばむようにつつき回されて、更にそのいちばん奥でぐつぐつと熱く沸き立つ精液を手招きするようにこそがれると、
本当に死んでしまいそうなくらいに気持ちよすぎて、白目を剥いて、泡を吹いて、魂ごと吐き出してしまいそうなくらいに、壮絶な断末魔を絞り出して、絶頂に至ることを必死で希うのに。
それでも、射精はできない。気持ちよくなれない。狂いそうな射精欲求は晴れることなく溜まり続けるだけ。
「分かるかしら、マスター❤︎ もうほとんど全身が触手に呑まれて……うふふ、後ろの壁とひとつになり始めているわ……❤︎ 手足の先も気持ちいいでしょう? 指先の方が感覚が鋭敏ですものね❤︎ これで手をつないだだけで腰砕け❤︎ 何かに躓いちゃったりしたら、うふふ……それだけで射精しちゃうかもね❤︎」
腰に、脇腹に、乳首に、腋に、肩に、二の腕に、肘に、ぞわぞわと、波打つように触手が這い回って。
鎖骨を、首を、耳を、まるで宝飾品でも包むかのように覆われて、毒液を染み込まされて。
全身が、溶ける。溶け落ちるほどに甘やかな痺れが、身体じゅうの全ての部位から余さず沸き起こって。
何でもないはずの上半身を撫で回されているだけなのに、異常なまでに過敏になった皮膚感覚は貪欲に快楽を求めて痙攣する。
全身全てが亀頭になったようにむず痒くて、そこをしょりしょりと万単位の繊毛でくすぐられれば、火あぶりよりもなお険しい熱情で、意識が吹き飛んでしまいそうになる。
手指もすべてが触手の愛撫と毒液によってすっかり開発されきって、一本一本がペニスそのものとさえ言えるほどの感度に作り替えられていて、
それぞれの指を、糸状触手で絡めるように、舌状触手でねぶるように、巾着状触手で吸いつくように、
鮫肌様の触手でやするように、筆状触手で焦らすように、オナホ状触手で搾り取るように、舌歯状触手でこりこりと、
電極触手でぴりぴりと、シャワー状触手の細やかな水圧で弄ばれて、刺胞状触手で皮膚の内側に直接毒液を注入されて、
ありとあらゆる触手で、ペニス並みに超敏感化した指を完膚なきまでに虐待されつくしても、一切、全く、絶頂に手をかけることはなくて、もどかしさに脳が沸騰してゆくだけ。
身体がちぎれるくらいにもがき回っても、すでに全身を拘束した触手は背後の肉壁と一体化してしまっており、全身を嬲る手は一瞬だって緩むことはない。
今までできていた、身をよじるという最後の抵抗さえも完全に封じられて、気をやることも、気持ちよくなることも、まるでできずに、狂気の縁で焦がされるだけ。
快楽の海で溺れているようで、必死で息継ぎをしようともがいているのに、
上から頭を押さえつけられて、水面に顔を出せないような、窒息するほどの魔悦。
絶対にイケない寸止め状態のままで延々と気持ちよくされて、逃げ場なんてどこにもなくて、ただ、無力に、むせび泣く。
「……が、ぅ…………ィ、イ…………キ……か、せれ………………しゃ…………せ……………………おね…………ぁ……か…………」
もう、目は完全に焦点を失い、声も消え入りそうな呼吸音がか細く漏れるだけ。
白滅した理性では、意味のある言葉を形作ることさえ困難で、うわごとのように願望のかけらが、声になりきらず零れ落ちる。
発狂したも同然の惨状。しかし、意識は以上にはっきりしていて、気絶して逃げることもできずにいた。
絶頂を封じたのと同じように、アビーによって気絶も封じられているのだが、今の俺にとってはそんなことはどうでもよくて。
ただ、イキたくて、射精したくて、気持ちよくなりたくて、本当に、それ以外は何も考えられない。
「つらいわよね? 苦しいわよね? ねぇ、マスター……❤︎ 私も、本当はこんな思い、マスターにしてほしくはないの……❤︎ 考え直して、私を選んで……❤︎」
アビーが諭すように言っている。でも、意味を咀嚼できずに、ただの音として耳朶をすり抜けてゆく。もう何も、頭に入らない。
アビーは無反応の俺に何度か説得を繰り返すが、蕩け切った脳は働くことはなく、上滑りして。
――だけど、その言葉だけは、追い込まれた精神に再び火を入れてくれて。
「……もう、本当に強い人ね、マスター。はぁ……こんなにも我慢強いなんて、信じられないわ❤︎ いいわ、ここまでずっと我慢して、もう限界……いえ、限界を超えてしまっているわよね? 最後に、きもちよ~く、射精させてあげるわ……❤︎❤︎❤︎」
「――――――――~~~~っっっ! しゃ、せい……!? しゃせいっ! しゃせ――っ! 射精! 射精させてえ゛えええええええぇぇぇぇぇ!!!」
その言葉に、白んでいた意識が一気に晴れてゆく。
射精! 射精! 射精! やっと、やっと射精できる!
嬉しくてたまらない。涙が滝のように溢れて止まらない。
ずっと待ち焦がれた射精が、ついに、ついに――――
「……うふ、私を愛してるって、言ってくれたら――だけど❤︎」
「――――――――――――――――ぁ、あ…………」
にたり、と。
アビーの表情が歪む。
こう言えば、俺が元気になると、そう見込んだうえで、わざと、いたぶるように。
ひどい、そんな、あんまりだ。やっと、解放されると、思ったのに……!
「――――なんて、ふふ、本気にしたかしら❤︎ ごめんなさい、私、悪い子ね……。ねぇ、マスター。最後に……最後に、愛してるよ、アビーって、言って欲しいの……。嘘でも、いいから……それで、私、諦めるわ……」
「………………アビー、っ!」
儚んだような、虚ろな笑み。
きっとアビーは、それが嘘であったとしても、愛していると言ってくれれば、それでいいのだろう。
口が開きかけて、空虚な言葉が喉元まで上りかけて、それを寸でのところで飲み込んだ。
それで、アビーは納得するのだろうけど、でも、やっぱり、嘘はつきたくなかった。
「…………アビー、ごめ……ん。それでも、やっぱり、アビーに……嘘は、つけない……」
「………………………………どうして――――」
アビーは悲しそうに顔を伏せ、少しして、俺の前にしゃがみこんだ。
触手が蠢き、ペニスの拘束が解かれ、露出し、空気に触れる。
ぼたぼたと、我慢汁と毒液とが混じり合った汁を滴らせるそれを、
アビーは目を閉じて、すんすんと嗅ぎ分けるようにして探り当て、先端に舌を這わせた。
「が、っ――――あ、アビーっ! も、もう、限界……っ! はやくっ……はやく、出させてっ……!」
柔らかくぬめる舌先が触れただけなのに。
それなのに、もう弾け飛びそうなほどにぎんぎんに膨れ上がった亀頭に、雷に打たれたような衝撃が突き刺さる。
アビーの意味深な表情も、もう頭にない。そこまで考えを巡らせる余裕なんてない。
解放を期待してがくがくと跳ね回るペニス。その、痛いほどに勃起したものに、両手を添え、
ぱくぱくっ❤︎と喘ぐようにひくつく鈴口の延長線上で、口を開き、アビーは、言った。
「――――門を、開くわ」
――かちり、と、音がして。
そうして、今まで、極限さえも遥かに超えて、おかしくなるほどにため込んだ射精欲求が、爆発した。
「――――――――ッッ、ぐ……あ、あ゛あああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」
睾丸の付け根、今までどうしても越えられなかった分水嶺を、精液が通過した。
ぎゅるん❤︎ぎゅるるるっ❤︎と。限度を超えて濃縮され、半固形状になったそれが輸精管を押し広げるのを明確に感じられる。
解放の悦楽。あまりにも甘美なそれに膝が笑って、下半身の痙攣が止まらない。
随喜の涙、歓喜の声、あらゆる悦びを撒き散らして、最高の瞬間の訪れに、身構える。
「あっ――が、あああっっ! ッ゛ッ! ぅあ、はあ゛ああああっっ! うあ゛ああああぁぁ゛ぁ゛ぁ――――――――~~~~ッ゛ッッ!!」
――どくんっ❤︎ どくっ、どくどくどくどくんっ❤︎❤︎❤︎
こぽっ❤︎ どぷ❤︎ ぎゅっ❤︎ぎゅうううぅぅぅ~~っ❤︎ ごぽごぽごぽっ❤︎❤︎❤︎
射精管をこじ開け、前立腺をズリ抜いて、おぞましい音を響かせながら、遂にそれは尿道へ至る。
びくん❤︎びくん❤︎びくん❤︎と。奥から押し出すような心地よい脈動に促され、最後の一本道を煮凝りの如くに凝り固まった粘液が、こすり上げるように駆け抜けて、
ぐぱっ、と鈴口が限界まで開き、ついに、待ち焦がれていた精液が、顔を出す――――
―――――ずびゅるるる、ッッッッッ❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎
「ぐ―――――――――ッッ! ―――――――――――――――~~~~~~ッ゛ッッ! ふぅ、う゛うううううぅぅぅぅ――――~~ッッッ!!!!」
瞬間、意識が爆ぜ、失神するほどの快楽。ゼリーどころか、まるで饂飩のように濃厚に絡み合い、一本の太い帯となって口内へと飛び込んでゆく精液。
迸った白濁液がアビーの舌を打ち据えるのを見ることもできず、眼球がぐりんとまぶたの裏へと回転し、
涎と、鼻水と、今までため込んだ感情の全てを嬌声に乗せて吐き出して――――
びゅるる――――――――ぶち、いいいぃぃぃぃぃっっっ!!!
がちん、と。
重い鉄扉の閂が下りる音がして、精液がぶつりと切れる。
一秒にも満たない、ほんのわずかな時間。それだけで、射精は、唐突に終了した。
「――――――――――――――――――――――――は、っ?」
まだ、びくんびくんと、ペニスは精液を吐き出そうと懸命に跳ねているのに。
尿道内で行き場を失った精液が渋滞を起こして、今までに感じたすべての疼きよりもなお強く、うずうずと苦痛を訴えて仕方がないのに。
アビーの舌の上でねとりとたわむ、ほんの指先ほどの量の精液しか、吐き出せなかった、なんて。
「――――ぁ、ああ、あ…………なん、で……なんで、なんで、なんで! 射精っ! しゃせいっ――止まったあ゛ああああああぁぁぁぁ!!! まだっ! ぜ、ぜんぜん、きも゛ちよくなれて゛ないの゛にいい゛いいいぃ゛ぃ゛ぃぃ――――~~っ゛っ!!!」
なまじ、一瞬でも味わってしまったがゆえに、意識が晴れてしまったがゆえに、
先程まで感じていた発狂寸前、限界ギリギリの地獄が、ずっとずっと何倍にも鮮明に感じられて。
中途半端に天国を見せられてしまったから、もう、絶頂を求めるのを、我慢できない。
これが、本当の地獄なんだって、俄かに、理解、させられて。
「んっ……んふ、マスター❤︎ どうかしら❤︎ やっとの思いでつかみ取れたものを、ろくに味わいもできずに奪い取られるって、こういう気持ちなのよ……❤︎ 私のつらさ、分かってくれたかしら……?」
「ア、ビー……どうして、どうして、え゛えぇぇぇぇ…………っ!!!」
んくっ、と喉を鳴らして精液を飲み込み、舌なめずりをしながら瞼を開くアビー。
その瞳は、目の覚めるような紅色で、妖艶に輝くそれにじっとりと見据えられて、怖気が走った。
何かが決定的に変わったようで、アビーの纏う雰囲気に、禍々しいものが混じる。
「あなたが、あなたが悪いのよ、マスター❤︎ 嘘でもいいから、それで妥協しようって、そう思ったのに……なのに、あなたが、どこまでも誠実で……本当に、私のことを大切に思ってくださっているって、分かっちゃうから……❤︎」
触手が、再びペニスに絡み、包んでゆく。
やめて、やめて、やめてください――――もう、嫌だ……おかしくなる…………。
気持ちよくなりたくて、たまらない。これ以上責められたら、俺は、もう――――
「……諦めさせてくれないから、もう、止まれないわ❤︎ あなたの愛が欲しくて、抑えきれないの❤︎ 他の女に取られるのは嫌なの……そんなことになるくらいなら、どんな手を使ってでも、私がマスターを手に入れてみせるわ……❤︎ たとえ、あなたが壊れてしまっても――――❤︎❤︎❤︎」
じゅるり、と、全身を包む触手が一斉に蠢く。
唯一空気に触れている顔面以外の全ての皮膚が同時に、強烈にわなないた。
全身に火をかけられ、身体の中を電気を迸らせる小蟲がゆっくりとのたうつように、えずくほどの性的欲求が膨れ上がる。
名状できない激感、骨の髄まで融かすほどの快感の濁流が、神経節の一つさえ残さずに焼き尽くして。
すべての内臓が限界まで収縮し、息も止まり、どばどばと分泌され続ける脳内麻薬さえも効能を失うほどの焦燥の檻に囚われて。
ほんの一瞬だけ味わってしまったがゆえに、醜く膨れ上がってしまった射精欲求に、満たされぬ欲求不満に、己の存在全てを踏みにじられる。
「はぁ――❤︎ はぁ――❤︎ マスター、こんなお話を知っているかしら? ――ある科学者は言いました。熱く灼けたストーブに一分間手を当ててみると、その苦しい時間はまるで一時間にも感じられるかもしれない。だけど、愛する人と一緒に過ごす一時間は、あたかも吹き抜ける風のように、一瞬で過ぎ去ってゆく――――素敵で、そして寂しいお話だと思わない?」
全身を巡る血液が、一滴残らず毒液に侵されたように、もう、どこを触れられても一瞬で達してしまいそうで。
それどころか、すべての血管に隈なく針を突き立てられたように、心臓がひと跳ねして血液が循環するだけで、
それだけで、発散できない疼きが指数関数的に高まり、総身を余すところなく絶頂感に支配されるのに。
それなのに、先程一瞬だけ味わえたはずの射精は、絶対に訪れてくれなくて、
己の生命活動、生理的な現象さえもが、精神をズタボロに引き裂くよう、じっとりと甚振ってくる過酷に、心が、ほろほろと崩れてゆく。
「だから、私、思ったのよ❤︎ 父なる神の力――この力で、あなたの心を狂わせれば……それと逆のことができるんじゃないかしら、って❤︎ 私と過ごす一瞬を、10倍にも、100倍にも、1000倍にも……私にとっての一秒間を、まるで数日のことのようにさえ、感じてもらえるって……❤︎」
「――――――――は、か……そ、れ…………っ!?」
それは、つまり、一瞬だって我慢できないほどに、壮絶で、精神が煮溶かされるような、この苦しみが。
この、出口のない寸止め地獄を、アビーが望めば望むだけ、無限に引き伸ばされるということで。
それは、ダメだ。間違いなく、人格が破壊される。
今でさえ、もうそよ風が吹き付けるだけでも消えそうな蝋燭の火のごとく、頼りなく揺れるほどに、心は削られてしまっているのに。
それを、この射精禁止の苦しみを、永久に終わることなく噛み締めさせられてしまうなんて――――
「うふふ、これからあなたに暗示をかけるわ❤︎ 時間感覚を狂わせて、体感時間を100万倍に引き伸ばす暗示――それを、一年分❤︎ わたしにとっての30秒で、あなたは一年間、たっぷりと、射精できない苦しみを味わい続けるのよ❤︎ 一秒だって逃れることもできず、休むことも眠ることもなく、指の一本だって動かせずに、ただ襲い来る触手に延々と焦らされ続け、射精したいというその一念のみに、心を砕き続けるの❤︎」
そんなの、
たえられる、はず、ない――
「でもね、怯える必要なんてないわ、マスター❤︎ 私はあなたに愛してほしいだけなの……❤︎ だから、どうか、こう言ってくださいな❤︎ 『マシュなんてどうでもいい、アビーだけを愛している』って❤︎ そうすれば、こんな残酷な仕打ち、やらずに済むのよ……❤︎」
「ぁ…………ま……マシュ、なんて…………どう、でも……………………」
今まで、必死に保ってきた意地が。
マシュへの想い、そして、アビーへの義理が、
あまりに強大すぎる快楽と苦痛の前に、砕けて、溶けて。
「さぁ、マスター❤︎ マシュさんを裏切って❤︎ 大切だった女の子を捨ててくださいな❤︎ 私の味わった絶望を、悲嘆を、マシュさんにも味わってもらうのよ❤︎ そうして――見せつけてあげましょう……❤︎ あなたが誰のものなのか、どうしようもなく、理解させてあげましょう……❤︎❤︎❤︎」
――そうだ。
きっとマシュは悲しむだろう。
ワケも分からずに徴用されて、右も左も分からない俺に優しく接してくれて。
突然の事故――事件で結んでからは、頼りない俺をよく支えてくれて、いつも慕ってくれて。
数多くの修羅場を、手を取り合って踏み越えて行って、ついには大きな目的を成し遂げて。
そして、その戦いの果てに、結ばれた、最愛の彼女を。
ただ、我が身可愛さに、浅ましい欲望を満たすために、裏切る、なんて――――
「………………………………でき、ない…………できな゛いいぃ゛ぃぃ…………っ! やっぱり、俺、は……マシュを…………っ!」
限界をゆうに超えて発情し、瞳孔も毛穴も開ききって、
あらゆる分泌液でどろどろに汚れた顔を、だらしなく歪めても、
それでも、俺は、マシュを裏切ることは、できない。
それはもはや、ただの意地すらも通り越した、馬鹿馬鹿しい抵抗。
この時、多分俺は、狂っていた。
ここでアビーを拒絶しても、苦痛の時間が長引くだけだと、少し考えれば分かるはずなのに。
差し伸べられた救いの手を、無下にして。
一時の感情に任せて、最も愚かな選択を、自ら選んでしまうなんて。
「ぁ、あは、あはは……嘘、でしょう? マスター……そんな、怖く、ないの……? どんなに苦しんでも、泣き叫んでも逃げられない、本当の地獄に飲み込まれるのよ……?」
怖くないわけがない。
もう、身体は絶頂寸前のじれったさによる震えなのか、
それとも恐怖による震えなのか、ぜんぜんわからないくらい、
おかしいぐらいに痙攣して止まらないのに。
本当は、今すぐ言葉を翻したい。
みっともなく許しを請うて、射精を許してもらいたい。
にもかかわらず、それをせずに我慢できているのは、
単に、正常な思考が麻痺しているからというだけで。
「そう――――あはは、あはははは! そんなにつらいのがお望みならば……いいわ❤︎ ねえマスター❤︎ これはきっと、あなたでも耐えられないわ❤︎ 気持ちいい以外の感覚をすべて遮断されて、それでも絶頂は絶対にできないこの世の果てで、一年間、たっぷりと楽しんで❤︎ がんばって一年分、思いっきり我慢できたら、その時は…………また、マシュさんを裏切るチャンスをあげるわ……❤︎ さぁ、私の目を見て、後悔して――――❤︎❤︎❤︎」
全身の触手は、今もまだ、貪るように激しく蠢いている。
どこを構わず、ひと撫でされるだけでたちまちに精液を噴き上げてしまうほど凶悪な全身性器化の懲罰を受け、
息をするだけでも、それどころか、血管が血液でこすれるだけでも、絶頂感に火花が散って、
もうまともな日常生活を送れないほどに、致命的なまでのイキ癖をつけられてしまい、
それでも、そこまでの破滅的な責めを受けてもなお、絶対に絶頂できない戒めをかけられて、
俺は――――これから、一年間の射精管理、寸止め地獄に足を踏み入れる。
絶頂寸前の、最も気持ちよくて、最もじれったく、最高に狂おしい、一秒だって我慢できない射精欲求を、
一切気を紛らわせることもできず、おおよそ31,536,000秒間に渡って、のめり込むように、味わい続けるのだ。
息すら吐けぬ焦燥感と、終わりの見えない昏い未来への絶望とで瞳を曇らせる俺の顔を、彼女は両手で慈しむように支えて。
アビーの額の、第三の目が、妖しく輝いた。途端、視界が遠く、間延びするように眩み――――
「――――――――苦しめ……❤︎❤︎❤︎」
――――そうして、俺は、囚われた。
☆
「――――――――――――ぅ、っ゛っ! ぅぐ、ぎ…………ぶ、ぅぅぅ……………………」
くちゅくちゅと、ねばっこい水音だけが響くこの空間で、いったいどれだけの時間を過ごしたのだろう。
あの瞬間から俺は、ほんの一瞬だって途切れることなく、頭のてっぺんからつま先までの全身の、
たった一片さえも逃がすことのない、凄烈な触手の愛撫を、受け続けていた。
体感時間が100万倍なんて、言葉にしてもイメージなんてできなかったけれど、それを実際に味わってみれば、
ただ長い時間を虐め続けられるだけだと思っていた自分をぐちゃぐちゃに挽き潰してやりたくなるくらいに、どうしようもなく、苛烈すぎた。
「……………………が、はっ、ぁ……っ! ッッっ!! …………っぅぅぅ゛う゛うう!!!」
まず、身体の感覚がまるで違っていた。
まず手のひらに限って話をしてみる。この手のひらだって、そもそも媚毒に芯まで侵されつくして、
亀頭の先端のいちばんひりつく部分と遜色ないくらいに敏感にされてしまい、手をつなぐだけでも、
全身痙攣して射精してしまうほどになっているので、少しイメージしにくいかも知れないけれど。
ともかく、手のひらだ。この手のひらは多種多様な触手に絡みつかれて、発狂してしまうほどの快楽を注ぎ込まれているのだけれど、
じゃあ具体的に、その性器同然の手のひらを、どのように触手に嬲られていると思うだろうか。
「…………ひっ、い、いい゛い゛い゛い゛い!!! ぃいい゛ッッ!! ぎっ゛っ! イギっっ……! イギ…………だ、ぃ……………………っっ」
舐めしゃぶられる? くすぐられる? こね回される? かりかりと爪弾かれる? 甘噛みされる?
焼かれる? 溶かされる? 押し潰される? 折り砕かれる? 食べられる? 削られる?
叩かれたり、撃ち抜かれたり、貫かれたり、かと思えば優しく撫でられたり、しっとりとした肉襞でしごかれたり、
暖かな粘液で洗われたり、揉み解されたり、震わされたり、考えられる手段は、それこそ無限にあるだろう。
それらすべてを、同時に、一つの場所に、受け続けていた。
正確に言えば、まず最初に舐められて絶頂感が沸き上がり、その一瞬の感覚が100万倍に引き伸ばされて、
次にくすぐられて絶頂感が沸き上がり、その一瞬の感覚が100万倍に引き伸ばされて、
次にこね回されて絶頂感が沸き上がり、その一瞬の感覚が100万倍に引き伸ばされて、
次に爪弾かれて絶頂感が沸き上がり、その一瞬の感覚が100万倍に引き伸ばされて、というのを、
手のひらに限らず、全身のあらゆる部位に渡って行われ、それを無限に繰り返している。
結果、手のひらを同時に多種多様なあらゆる手段で虐げられて、十重二十重に空イキし続けている、というのが現状だった。
理不尽な触手は延長された時間感覚とは別の法則に則って動いているのか、あまりに不条理に俺を嬲ってきて、
ただ一年間耐え続けるのとは全く違った、常識の埒外、魔術や魔法の類によって与えられる激感と同等か、それ以上のものを、もたらした。
「――――――――ぃっ゛! ぁ、ばあ゛ああああああぁぁぁ!!! っが、う、ぎいいぎぎぎいぎいい゛い゛いぃぃぃぃ――――~~っ゛っ!!! っひ、ぃぃぃ……………………」
例えるなら、いくつもの肉体があって、それこそ100万人分の身体があって、それを各々、全身を触手で滅茶苦茶に犯し尽くされていて、
その、100万人分の性感、性的飢餓感、満たされぬ絶頂感が、すべて俺の脳みそに注ぎ込まれて、
100万人分の苦しみを、たった一つの脳で処理させられているような、底なしの異常快楽。
「――――――――ッぅぅ!!! ――――――っっ! …………~~~~~~~~ッ゛ッッ!!! ――――――――――――――――…………っふ、う゛う゛ううぅぅっ! ぐっ! ぎ――――――――ぃぃぃぃい゛いい゛いいいいいい!!!」
それを、ずっとずっと、間断なく、それどころか、波さえもなく、ずっと最大出力で味わい続ける、この苦痛。
ふつう――なんて言っても、この状況自体が普通じゃないので、何の意味もないんだけれど、
普通であれば、身体が受け付ける感覚には波があるだろう。
身近な例でたとえて言うと、足の小指を箪笥の角にぶつけたとき。
勢いよくぶつけた瞬間、激痛の波が最大勢力で襲い掛かってきて、
そのあと、転げ回ってもがいているうちに波が少しずつ引いていく、というのはイメージできると思う。
この場合であれば、当然ぶつけたその瞬間のほんの一瞬だけが、痛みの波が一番高い瞬間になるのだけど、
この体感時間100万倍の地獄の窯では、その一番ヤバい一瞬が、100万倍に引き伸ばされて、
ずっとずっと、ずーっと長い時間、火力最大で響き続ける、と言えば、深刻さが伝わるだろうか。
「――――――――――――――――――――ッ゛ッッ!!! ――――――――――――~~~~~~っ゛っ゛っっ!!! っぁ、た……たしゅ――――――――け………………………………!!!」
もう、本当に、ワケが違う。
そんな、たった一種類だけでも、発狂確実な、人間を壊す激感を、
全身あらゆるところから、もう想像しきれないくらいに種々雑多なバリエーションを以って味わわされ続けて、
――それでも、一回も気持ちよく射精させてもらえていないなんて、そんなの、信じられる?
そうです、もう、無理です。我慢できないんです。イキたくてイキたくて、仕方ないんです。
あんな中途半端に、本当にほんの一瞬だけ、射精させてもらって。
よりにもよって、この地獄に叩き落される直前に、お情けのように、気持ちよく、するから。
もう、求める気持ちを止められない。今すぐちんぽしごいて、びゅーびゅー精子噴き出したい!
俺がバカでした! もう、生意気に抵抗なんてしません! マシュのことはもう諦めます!
本当に、泣きそうなくらい、彼女には申し訳ないんだけれど、それでも俺は射精したいんです!
命さえ預け合った大切な彼女の気持ちを踏みにじったとしても、それでも絶頂したいんです!
もう許して! これからの一生、ぜんぶアビーに捧げます! アビーだけを愛します!
うわべだけじゃなく、嘘じゃなく、心から、真実の愛で、きみの想いに報いるから!
だから、どうか、どうかどうかどうかどうかどうかどうかどうかどうかどうかどうか!
どうか、一回だけでいいから、気持ちよくさせてください……。
イカせて……射精させてください…………お願い、します…………!
☆
「――――おはよう、マスター❤︎ よく頑張ったわね……❤︎ 気分は、どうかしら?」
「――――――――――――――――ぁ、び…………ぃ……………………」
散瞳で視界が明るく霞んで見える。
水音と、生体音と、自分の呻き声以外を耳にしたのは、いつぶりだろう。
肉体的には、きっと一分にも満たない時間なんだろうけれど、
だけど、その救いの天使の声は、惨めに疲弊しきった俺の精神には、あまりにも、甘美で。
「……うふふ、マスター、つらかったわね❤︎ 大丈夫よ、あなたが弱いわけじゃないわ❤︎ 普通の精神をした人間には耐えられない地獄を、あなたは乗り越えたのよ❤︎ もう、そんなに泣かないで……❤︎❤︎❤︎」
「ぁ、う……うぅぅ、ぁぁぁ…………ぁ、アビー……アビー、っ…………!」
違う、これは歓喜の涙だ。
アビーに、これまでの過ちを、謝れるということが、あまりにも嬉しくて。
だから、目の前にかかった薄靄が少しずつ晴れて、
彼女の微笑む顔が次第に鮮明になっていくのが嬉しくて、
涙が、止まらない。
「――――ご、ごめ…………おれ、アビー、に……ひどい、こと…………ゆる――――して…………あい、して……る…………から――――」
「あは、は……❤︎ ようやく、受け入れてくれたのね……マスター…………❤︎」
涙に歪む俺の顔を、アビーは両手で抱いて、額を合わせ、鼻頭を交錯させて、そっと、触れるように、キスをした。
一瞬で離れてゆく唇を追う俺の顔は、きっと、情けないくらいに物欲しそうだっただろうと思う。
ああ、よく分かった。ある科学者の話。確かに素敵で、そして、とても寂しいお話だ。
「あ……アビー…………そ、その…………しゃ、しゃ……せ…………」
年下の女の子に性処理を乞う情けなさに言葉を濁す俺に、アビーは額を離さぬままで、嗤った。
「うふ、うふふふふ……❤︎ マスター、何を言っているの? 射精は、まだ、お預けよ❤︎」
「――――――――――――――――――――――――へ、っ…………?」
理解できずに乾いた声を漏らす俺に、アビーは、今までの一番の笑顔で、答えた。
離した額の瞳は、紫光を帯びて、輝いていた。
「マスター、あなたが先程まで耐えたのは、ほんの一か月分だけだったの❤︎ 一か月でいったん中断して、意識を引き上げてみただけ……❤︎ うふふ、私にとってはたったの3秒間だったけれど、それでもマスターにとっては、主義主張を根底から捻じ曲げるには十分な体験だったでしょう?」
「――――ゃ、だ……いや、いやだ…………戻りたくない……あんな、あんな…………っ!」
アビーの口の端が吊り上がる。
風景が、遠ざかるように、延びてゆく。
紫の瞳の中で、憐れな男の顔が、絶望に歪んでゆく。
「だ~め❤︎ マスター、悪い人には、バチがあたるのよ……❤︎ 大丈夫、反省する時間はたっくさん――そう、のこり十一か月もあるもの……❤︎ 懺悔には十分だわ……❤︎」
「――――いやだあ゛あああああぁぁぁぁ!!! やっ――やああ゛ああ゛ぁ゛ぁぁぁ――――~~ッ゛ッッ!!! 許してっ! ゆるして゛え゛ええぇぇ゛ぇ゛ぇ!!!」
意識が、眩む。
こんなにも、激しく、叫び立てているのに。
自分が自分じゃないみたいに、慟哭の声も、遠くなって。
「大丈夫よ❤︎ たとえ神様があなたを許さなかったとしても……マスター、私だけは、あなたを許してあげる……❤︎ だから、ね――――」
「――――いや゛っ! いや! やだ、いやいやいやいや!!! ごめ、アビーっ! アビーッ゛ッっ!!! 許してえ゛えぇぇっ! あそこに帰るのは、もういや゛あ゛あ゛あ゛ああ゛あああ゛あ゛ああぁ゛ぁ゛ぁぁぁ――――――――~~~~ッ゛ッ゛ッ!!!」
そして、唐突に。
ぷつん、と――――――――
「――――またね……愛してるわ、マスター❤︎❤︎❤︎」
☆
「んぁ゛ぁぁあ゛あ゛あぁぁっ゛っ…………! ひぁ、や゛っ、あ゛ぁ゛ぁぁああ゛ああぁぁ!!! ぎっ゛っ……………………ぃづっ゛っ、ぎゅぅぅぅ゛う゛うう゛う゛うう――――~~ッ゛ッ゛っ!」
「――――――――~~~~っ゛っ、ンんぐうう゛ぅ゛ぅぅぅぅ…………!!! む゛ん゛んうぅ゛ぅ、うぎぎぃぃぃい゛いぎぎぎいいいい゛い゛いい――――!!! イ゛ッ――き、ぃぃ゛ぃい゛いいいい゛い゛いッ゛ッっ!!!!」
「ふ、ァ――あ、ア゛ア゛アアあああッッ!!! あっ、ガガガァァァ゛あああ゛あ゛ああああああ――――――――~~~~ッ゛ッっ!!! ひゃ、ふ、っ゛っっぐうう゛う゛ううう゛うう゛ぅ゛ぅぅ…………ッ゛ッ゛っ!!! っっッぎぃや゛ぁ゛ぁ゛ぁああ゛あ゛あああ!!!!!」
「――――っっ゛がはがががあああ゛あ゛ああああ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁっ゛っ!!! あ゛っ、あ゛あ゛ああああぁぁぁ――――――――~~~~ッ゛ッっ!!! イク゛っっ、ぐぅぅぅううう!!! ぐぅぅああ゛あ゛ああっっ、イ……ケ、に゛ゃい゛い゛いいいぃ゛ぃぃ!!! ァア゛っ、ぎ、ぎ、き゛も゛ちいいの゛に゛ぃ゛ぃぃいい゛い゛い――――――――~~~~ッ゛ッっ!!!!!」
「ぅぅぅ゛あ゛ああ゛あ゛あ゛あああ!!!! イッ、き゛……た゛いっ゛っ! イク゛っ、イっ、ひギッッ!! っっっぎイイ゛っ、く゛ぅぅ゛う゛ううう゛っ゛っ!!! ぅ、あぁぁ゛あアア゛アっ゛っ! イキた゛いっ、イキ゛た゛いイキ゛たいイキ゛たい゛っ゛ッッ! イ゛キ゛た゛い゛の゛にい゛い゛いいぃ゛ぃ゛ぃ――――――――~~~~ッッッ!!!!!」
「ぅぅぅ゛う゛う…………っっ、ッ゛ッっ! っっか、ひゅ………………ぉね、ぎゃ…………しゃへ…………っっ! っっ゛ふ、うぅ゛ぅっっ…………ごめ、な…………ひゃ…………………イ…………キ……………………た…………ひっ……………………っっっ!!!」
「……………………っ゛っ………………………………っッッ!? …………っ! ………………………………っっぎ、ぃ゛ぃぃ……………………ッッ! ……………………っぶ、ぐぅぅううう゛う゛う!!! んん゛ん゛ッ゛ッ……………………!!! …………………………………………――――――――~~~~ッッ゛ッ゛ッ!!!!!!」
「……………………ぁっ……………………………………………………………………………あ……………………………ぁ゛っ……………………ぁ゛……………………………………………………あ゛………………………………ぁ……………………び…………………………………………――――――――」
「…………アビー…………………だいすき……………………あいしてる………………………………アビー………………だいすき……………………あいしてる……………………アビー…………………だいすき………………………あいして」
「――――…………あびーだいすきあいしてるあびーだいすきあいしてるあびーだいすきあいしてるあびーだいすきあいしてるあびーだいすきあいしてるあびーだいすきあいしてるあびーだいすきあいしてるあびーだいすきあいしてるあびーだいすきあいしてるあびーだいす――――――――」
「あびーあいしえてえあびーあしいてあびーあいすきあいしてしすすきすきすきすきすきすきあびあいしてるあいあしてるあびーだいずきしてるはやくあいたいあいーしてるあびーすきあいしすきあびーあいしてあびーあいしてあいしてしあびーだいすきあいしてるあいしてあいしてあいしてあいしてあいして――――――――」
☆
――――べちゃり、と。
生ぬるい肉の感触が、背を打った。
いつの間にか、触手の拘束が解かれていたらしい。
体感時間では一年ぶりに四肢を解き放たれて、床へとくずおれてしまっていたようだ。
手足に力を入れようとしてみたが、無駄だった。
まったく感覚がない。より正確に言えば、少し力を込めただけで、
それだけで筋肉や腱がこすれて、おぞましいほどの快感が迸って、
途端に頭が真っ白になり、ちゃんと手足を動かせているかなんて、把握できない。
「……………………ぁっ…………ぅあ、あ………………………………アビー……っ♡」
そんな俺に、溶けあうように寄り添う、少女の姿があった。
あおむけに横わる俺に覆いかぶさるように、胸と胸、頬と頬を、ぴったり合わせ、
汗と毒液とでべちゃべちゃに濡れた俺の髪を撫でて、アビーは微笑んでいた。
嬉しいのか、愛おしいのか、よくわからないくらいに感情はぐちゃぐちゃで、
そのうえ、もう枯れ果ててしまったのか、涙さえも出なかったけれど、
それでも、すっとずっと会いたかった彼女に再会できた興奮は、凄まじくて。
その、甘美な多幸感は、脳漿が蕩けて零れ落ちるほどだった。
「……意識が戻ったかしら、マスター❤︎ 今度こそ、ほんとうに一年間、よく頑張ったわね……❤︎ きちんと反省できたか、なんて――聞くのは野暮かしら……❤︎ うふふ、分かっているわ、あなたの気持ち……❤︎ それでも……えぇ、わがままな子だと思うかも知れないけれど、それでも、あなたの口から聞かせてほしいの……❤︎❤︎❤︎」
とんでもない。早く聞いてほしい。俺の気持ちを伝えて、通じ合って。
そして、射精を許してほしい。絶頂したくて仕方がない。
射精、射精射精しゃせいしゃせいしゃせいしゃせいはやくはやくはやくはやくはやく――――!
「ねぇ、マスター❤︎ 私のこと、愛してるって、言ってくださるかしら?」
「――――ひゃ、い……! すきっ! すき、すきでしゅっ! アビーだいすきっ、あいしてますっ゛っ♡」
「うふふ……❤︎ ねぇ、私、とっても悪い子なのよ……❤︎ マスターが他の女と喋ってるのを見るだけで、嫉妬に胸が押し潰されそうなくらい……❤︎ ねぇ、ずっとずっと、私だけを見て、私だけを愛してくれる……?」
「…………はいっ……はいっ゛っ! アビーっ♡ アビー、アビーすきっ♡ アビーアビーアビーアビーすきっ♡ すき、すきすきすきすきすきですぅぅ゛ぅっ……♡ だいすきぃぃ…………♡♡♡」
「あはっ、あはははは…………❤︎ 嬉しいわ……❤︎ とってもとっても、嬉しいわ……❤︎ 彼女のマシュさんよりも、誰よりも、私を愛してくれるのね、マスター……❤︎ ねぇ、マシュさんのことなんて、もう、どうでもいいでしょう……?」
「――――どうでもいいっ゛っ……♡ マシュなんてっ、もうっ゛っ…………♡ もう――いい゛ッっ♡ どうでも…………っ♡ アビーっ♡ アビーあいして゛る゛っ♡ アビー、アビーっ゛っっ…………♡♡♡」
ごめん、ごめん、ごめん、ごめんなさい…………。
もう、我慢できないんです。情けなくて、合わせる顔もありません。
あなたに落ち度はないんです。悪いのは、全部俺です。
本当に、どうしようもなく身勝手な理由で、
俺は、あなたを、裏切りました――――
「――――ありがとう、マスター……❤ もう、何者だって私たちを分かつことはないわ……❤︎ ︎ これからは、いつだって一緒よ……❤︎ どこまでも、堕ちていきましょう……❤︎」
アビーが唇を寄せる。給餌される雛鳥のようにそれを受け入れて、ぴちゃぴちゃと水音を響かせる。
唇を吸い、歯茎をねぶられ、舌を絡め合い、唾液を混じらせて、お互いを確かめ合う、優しく、深いキス。
ふぅふぅ❤︎と荒ぐ鼻息に、彼女の興奮が窺えて、どうしようもなく、愛おしくなる。気分が高まる。
ずっとずっと最高潮を迎え続けている身体に、恋心に由来した性的高揚感が、共鳴してゆく。
そうして、しばらく唇を合わせて――――或いは、一瞬だったのかもしれないけれど――――唇を離し、
つぅっ――❤︎と唾液の糸が細まり、やがて切れて落ちるのを名残惜しく見送って、アビーは、俺の勃起に、手をかけた。
「あぁ……マスター…………❤︎ 私の純潔、捧げるわ…………❤︎」
小さな割れ目を、つぷり❤︎と押し広げて、アビーはゆっくりと、腰を落とす。
しっとりとしたぬめりに覆われてはいるが、しかしとても受け止めきれるとは思えないほどの狭さ。
それでも少しずつ、痛いほどに締め付けられながら、にゅぷり❤︎にゅぷっ❤︎と深度を進めていき、
やがて、その肉壺の最奥、柔らかな壁に、たどり着く。
「っっっ………………ぁ、あ…………かっ、は………………………………!」
全身に高圧電流を流し込まれているとさえ錯覚するほどの快感に、息も絶え絶えで、
まるで、水飴の海にでも溺れているような、甘い焦燥感に、もう、心が、保たない――――
「…………っふ、ま、マスターっ❤︎ もう、っ……限界よね……っ? ごめん、なさいっ……❤︎ もう少しだけ……がんばって……っ❤︎ わ、わたし……初めてなのに、っ❤︎ き、きもち、いいのっ……❤︎ はしたない子で、っ……ごめんなさいっ❤︎ はずかしいぃぃ……っ❤︎」
アビーの吐息が、嬌声が、淫靡に上擦り、
結合部から滲む赤に、白く濁ったものが混じる。
ちゅぽ❤︎ちゅぽっ❤︎と繰り返されるぎこちない抽送に掻き出されるように、
幼い膣壁から分泌した愛液が、泡立って零れ始めていた。
俺はもう限界で、彼女の言葉を気に掛けることもできなかったけれど、
それでも、彼女が気持ちよくなってくれているのならば、この上ない幸福だ。
「――――は、あ……な、なにか、来る……っ❤︎ これ、っ……が、絶頂、なのね……っ❤︎ あんっ、マスターっ❤︎ わたしがイクのといっしょに、っ……❤︎ 射精禁止、解除、するわっ……❤︎ そして、っ――――」
そして――――
その言葉が、かろうじて、皮一枚でつながっていた俺の精神を、完全に、打ち砕いた。
「――――その瞬間っ❤︎ もう一度、暗示を、あげる……っ❤︎ ここまで我慢してくれたこと……っ、わたしを、愛してくれた、ごほうび……っ❤︎ 射精の瞬間の、天国を……100万倍に……いや、もっと、もっともっとっ❤︎ 濃密に引き伸ばして、あげるわ……っ❤︎❤︎❤︎」
あ――――
ああ、それは、最高だ。
人間の耐えられる限界を容易く凌駕した我慢の極致。
その果てに味わえる、人知を超えた、至福の射精。
――――その瞬間の、究極の気持ちよさを、無限に引き伸ばされる。
そんな天国、禁断の果実の味を、知ってしまったら、
もう、きっと、戻れない。
正気には、帰れない。
「――――んんぁあああっっ❤︎ き、きもちいいっ❤︎ きもちいいわぁぁっ❤︎❤︎❤︎ も、だめっ❤︎ イッちゃう……っ❤︎ さぁ、っ……マスターっ❤︎ 私の『目』を見てっ❤︎ 一緒に、イキましょう……っ❤︎ さぁ、っ――――――――❤︎❤︎❤︎」
――――かちり、と、頭の中で音が響く。
全身を襲い続ける恍惚感が限界を超えて、遂に、その頂を、超えた。
ぎゅるるるっ❤︎と睾丸が胎動し、みりみりぃっ❤︎と尿道を押し広げ、精液が駆け上がる。
夢にまで見た快感を、もう、遮るものはない。目前まで迫った射精を待ち焦がれながら、
アビーの額の、輝く瞳を、見た。
「――――――――注ぎ込んで……っ、マスターっっっ❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎」
――――そうして、俺は、射精して。
射精した瞬間の快楽が永遠に続く天国に溺れて、
その、無限に引き伸ばされた恍惚の一瞬の後に、俺は――――
「――――っひ、ゃ、あ……あ゛あ゛あ゛あ゛あああああ゛ああ゛あああ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁッ゛ッっっ!!! ぅううああ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁぁあああ゛あああ゛あ゛ああ――――――――――――~~~~~~ッ゛ッ゛ッッッ♡♡♡♡♡♡」
――――どぷ、っ❤︎ ぶぴゅるるるるるるるるううううううぅぅぅぅぅぅぅぅっ❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎
ぴゅぴっ❤︎ どくんっ❤︎どくどくどくんっ❤︎ びゅりっ❤︎ぼぴゅるるるるうううぅぅっ❤︎❤︎❤︎
ずぴっ❤︎ ぶりゅっ❤︎どぷどぷぷぅぅぅっ❤︎❤︎❤︎ でゅろろろろろろ~~~~っっ❤︎❤︎❤︎
びゅるるぴっ❤︎びゅっ❤︎びゅぅぅぅうううう――――――~~~~っっ❤︎❤︎❤︎
びゅっ❤︎びゅううう~~っ❤︎ どくんっ❤︎どぷっ❤︎とぽぽぽぽ~~~~っ❤︎
とくんっ❤︎とくとくとくっ❤︎ぷっ、ぴ❤︎ぴゅっ、ぴゅぅぅっ❤︎❤︎❤︎
びくっ❤︎ とくんっ❤︎とぷっ❤︎とぷとぷとぷ…………❤︎❤︎❤︎
とくっ……❤︎ ぴゅっ❤︎ とくん❤︎とくっ❤︎ ぴゅるっ❤︎
とくとくとく……❤︎とぷぅ……❤︎とろっ❤︎とろぉ~~っ❤︎
とろ❤︎とろぉ❤︎たらぁ……❤︎きゅっ❤︎きゅん❤︎
きゅぅぅぅ~~~~んっ❤︎ ひくっ……❤︎
ひく、ひくひくっ……❤︎
「はぁ――❤︎ はぁ――❤︎ なんて、気持ち、いいのかしら……❤︎ マスター❤︎ たっぷり出せたわね……一分くらい、射精してたんじゃないかしら……それなら……ううん、分からないわ……でも、とっても、気持ちよかったでしょう……? これからは、いつでも最高の気持ちよさを味わわせてあげるわ……❤︎ だから、一緒にいてね……大好きよ、マスター……❤︎❤︎❤︎」
☆
「――――ねぇねぇまーちゃん。 あのねぇ、姫、ちょ~っとお願いがあるんだけどぉ~~」
誰かに呼ばれている。
でも、どうでもいい。
「――――マスター、その、ちょっと、相談があるのだけど……って、ち、違うのだわ! べ、別に、最近あんまり話してないから、ちょっと寂しいな~、なんて、思ってないのだわ! って、マスターっ、ちょっとっ!」
誰かに呼ばれている。
でも、どうでもいい。
「――――ねぇ、待ちなさいよっ! アンタ最近おかしいわよっ!? いつもぼーっとして幽霊みたいで、何があったのか、話しなさいよ……! っく、こっちを見ろっ! なんか言いなさいよっ! 殺すわよ!?」
誰かに呼ばれている。
でも、どうでもいい。
「――――先輩っ! どう、しちゃったんですか……? みんな心配してますっ! 私も……先輩のことが心配なんです……っ! 先輩……なんで、何も言ってくれないんですか……お願いです、先輩……わたしのこと、見て、ください…………っ」
誰かに。
誰か。
誰、だっけ。
ああ、でも、やっぱり、どうでもいいや。
「あっ、マスター❤︎ ここにいたのね❤︎ もう、心配しちゃったわ……❤︎」
「――――ぁ、アビゲイル、さん……?」
アビーだ。
彼女はてとてと近づいてきて、手をつなぐ。
それだけじゃ飽き足らないみたいで、腕を絡めて、身体を預けてきた。
アビーとくっついて、しあわせ。
「もう、ちゃんとマスターが見ていてくれないと、私、いけない子になってしまいそう❤︎ あんまり遠くへ行かないでね、マスターっ❤︎」
「――――せん、ぱい……? ぇ、どう、いう…………ぇ、あ……あの、や、やめ、て……先輩は、わたし、の…………」
アビーは背伸びをして、顎を上げて、待ち望むように、目をつむった。
俺は、そんなアビーに応えるように、腰を下ろして、口づけた。
※pixivからの転載。