オジサマ専科 恋は突然に スパコミで本出します、抜粋 作:木桜 春雨
The Noble Class〜可憐な相続人〜の三人のオジサマ、美濃部綾人がお気に入りですので、書かずにいられませんでした。
あと、まだ気になるオジサマいるので、お付き合い下さい。
園枝厩時は不快さを隠そうともせずに罵った、否、半分罵倒に近いと言ってもよかった。
この屋敷で彼は最年長でもある、その為、共に暮らしている二人の男性、美濃部綾人と真宮寺誠は反論もせずただ、黙って聞いていた。
彼の苛立ちの原因というのは自分たちの将来、そして屋敷の存続と老婦人の遺言だ。
古い屋敷なので年々、補修する箇所が大きくなり、その修繕費も馬鹿にならない、屋敷の管理を仕事兼生きがいとしてきた三人の男達が今まで不安を感じなかったのは屋敷の主である老婦人の巨額の財産があったからだ。
ところが、数年前に老婦人は海外へと出かけ、以後、日本へは戻らないと宣言した。
この決定に婦人の親戚は驚いたが、だが、それだけですんだのは老婦人の性格を熟知していたせいかもしれない、しかし、三人の男達は違った。
後に反対したのは自分たち三人だけということを知ったときの気まずさもあり、だから厩時さんは今、怒っているんだと二人は思っていた。
老婦人は屋敷の著書や芸術品の一部を国の美術館や施設に寄付することを遺書に残していた、それだけではない、屋敷を改装してホテルにして三人の男達で運営することを望んでいるようだった。
「我々にできると思うのか」
「では厩時さん、ここを出て行くつもりですか」
「それはだな」
気弱な男、三人の中でも若い真宮寺誠の言葉に厩時は言いよどんだ、怒ってはいるが、本心はそうではないのだということがわかる。
というのも亡くなって初めて知った真実に三人は驚いていた、孫の存在だ、他の親族よりも親しくしていたし深い付き合いと思っていたのだ。
分配された残りの財産を孫に譲り、屋敷内の敷地の一部の建物に住まわせる様にという遺言を残したていた。
ところが、その人物は老婦人の葬儀にも顔を見せなかった、だから厩時は怒っているのだろう。
「何か理由があるのかもしれませんね」
そう言ったのは美濃部綾人だが、厩時の耳には届いていなかった。
斉藤剛士と松谷雄彦が帰ってきたとき一人ではなかった、招待客が驚いたのも無理はないだろう。
一人の女性と犬が一緒だった、女性は足を怪我しているが、犬もだ、医者を呼ぼうという東郷の言葉に女性は慌てたように首を振った。
「大丈夫です、社長、僕の携帯で彼女の自宅に連絡しました」
東郷は、この当たりはプライベートビーチで普段は観客も来ないんですと説明した。
「そうなんですか、あまり詳しくなくて」
恐縮した様に頭を下げる女性に失礼と声をかけたのは海老原僚だった。
「お見受けしたところ、レディ、あなたは日本の方ではないようですが」
ソファに座っていた女性は、その言葉に一瞬、驚いた顔になった。
「に、日本人です、ただ、海外に」
海老原は慌てたように首を降った」
「いや、僕の悪い癖だ、貴方の話し方、様子から、そう見えたんですよ」
悪気はないといわんばかりに離す海老原に女性は、そうですかと笑いながら、不思議そうな顔をした。
「あの、もしかして、プロフェッサー・海老原」
眼鏡の縁に軽く手をかけ、海老原は女性の顔をじっと見た、数日前にテレビで見ましたと言われて海老原は、ああと頷いた、大学にいた頃よりメディアに出る頻度は少なくなっている、いや、減らしているのだ。
しかし、自分が出たあの番組を見ているとは、目の前の女性は学生には見えない。
「君は」
海老原が声を欠けようとしたが会話が途切れたのは、コンパニオンが迎えが来たと告げてきたからだ。
「足、大丈夫かい」
ソファーから立ち上がろうとする女性の手を斉藤剛士が支える様に取った。
「だ、大丈夫です」
「痛むだろう」
周りの男達の視線が注がれるが、気にする事もなく斉藤は東郷に声をかけた。
「あの、水を飲ませたいんです、アルに」
斉藤は彼女の言葉に、料理の並んで居るテーブルを見た、その時、声を上げたのは松谷雄彦だ。
「スポーツドリンクがいいんじゃないですか、車にあるんで取って来ます」
美濃部綾人は正直驚いた、そして目の前の問題に対してどうすればいいのかと迷ったのも無理はないだろう。
その日、昼食の時間になっても食事の用意がされていない、こんなことは正直珍しかった。
そして、長年勤めている執事の吉岡の態度だ。
何かあったのだと綾人が尋ねた、ところが、これは自分が大奥様に頼まれたことなのでと吉岡は黙りこんでしまった、多分、二人に知られたらまずいと思っているのかもしれないと
大人しい性格の真宮寺君と違って厩時は頑固で怒り出すと厄介なところがある、一週間ほど前、老婦人の葬儀があちらで行われたと舌事を聞かされてからは尚更だ。
最初は頑なに口を開かなかった老執事は奥様の孫が日本に来ているのですと小声で打ち明けた。
「何かあったようなので迎えに行こうて思っておりましたが、今、ここを離れると」
「だったら私が行く、少なくとも、あの二人よりは適任だと思うんだ、吉岡、任せてくれないか」
迷っていた執事だが最終的にはお願いしますと言われて美濃部は、内心、ほっとした。
歳も性別、初対面の相手は、どんな人間、性格なのかわからない、好意的に接すれば相手も自分たちに対して悪い印象は持たないだろう、それに、こういう役回りは、あの二人には少し難しいだろうと思っていた。
屋敷からタクシーで一時間以上もかかる海岸沿い、そこは、ある人物の別荘らしい。
何故、そんな場所にと思ったが、詳しい説明を知らされていないのでわからない。
「吉岡さんではないのですね、あなたは美濃部綾人さんですか」
自分よりは若いだろう、だが、話し方も落ち着いて大人びた感じに見える。
肩口までの伸びた薄い茶色の髪は無造作なばらつきだが、部分的に妙な色合いが混じっているのは染めているだろうか、すらりとして背も高い、それに着ているものはジーンズもだが、薄い茶色のシャツは裾や袖の部分が破れかけている。
「わざわざ、すみません、迎えに来て頂いて」
「あなたが、おばあさまの」
「木桜美夜といいます、彼はアルです」
女がそばにいる犬を見ると美濃部は一瞬、困惑した表情になった。
「実はここまでタクシーで来たんです」
」