ウルスラグナとの戦いで何とか勝利を収め、リリアナとエリカに戦いの事後処理を頼み俺は春休みが明ける学校へ行くために日本へと戻ってきていた。
イタリアに残っても良かったのだが、修理や復元に関する権能を持たない俺が現場に残ってもやれることはなく、獣群師団の構成員にも、リリアナにも学校で学生生活を送る様にと追い出されるように飛行機に乗せられて昨日、日本に帰ってきた。
俺の通っている私立城楠学院はこの辺りではそれなりな進学校だ。中等部から大学部が存在している。其の為、中学からのエスカレーター式に高校に入学する人も多い。俺は別の中学からの入学になる。護堂も俺と同じだ。それ以外にも高校から学院に入学する人も多くいるそうだ。
「将来がカンピオーネ一択なのに学校に真面目に通うってどうなんだろ」
現在、生きているカンピオーネが真面目に仕事をしているという話は聞いたことがない。
前に戦った”サルバトーレ・ドニ”は自由人、山に籠っている”羅濠教主”、研究に明け暮れている”アレクサンドル・ガスコイン”、島から滅多に出てこない”ヴォバン侯爵”、ロサンゼルスを守護していてその地を離れることのない”ジョン・プルートー・スミス”そもそも何処に居るか詳しく知らない”アイーシャ夫人”。働いている奴なんて一人もいない、誰もが好き勝手に生きている。
俺も真面目に将来を考えないとマジでリリアナに養われそうになる。
アイツ、世話を焼くのが結構好きだからな、それに獣群師団の構成員の大半は俺があちこちから拾ってきた奴ばっかりだ、良かれと思ってあちこちから金やら神具やら神の情報やらを集めてくる。マジでニートになりかねないぞこのままじゃ。
「あの、顔色が優れませんが大丈夫ですか?涼さん」
後ろから聞こえた、聞きなれた声に反応して振り返ると立っていたのはリリアナと同じ場所で出会った少女”
彼女はリリアナと同じくヴォバン侯爵の儀式の生贄として参加させられていた。その時に俺は彼女は助け一応は獣群師団の庇護下にあり、獣王の名のもとに守られている。
「祐理か、久しぶり」
「お久しぶりです。聞きました、イタリアでウルスラグナと戦ったそうですね」
「耳が早いこって、正直、死ぬ一歩手前まで行ったよ」
神格を切り裂く黄金の剣。
ウルスラグナの代名詞にして切り札。
二つしかない、しかも攻撃可能な権能が切り裂かれた時は本気で死ぬことを覚悟した。ま、現場には居なかったリリアナのお陰で命拾いしたけど。まさか『愛するものに愛を』が俺からリリアナだけじゃなくて、リリアナから俺にも魔力やらが流れていたなんてな。それともあの瞬間そう変化したのか。
権能は使い手に合った形に効果も条件も変化する。もしかしたらあの瞬間、カンピオーネとしての本能が望み、権能が反応したのかもしれない。
「よくご無事で、まさかただの旅行がまつろわぬ神との戦いになるなんて」
「あ~、その辺は諦めてる、カンピオーネになった時点でな。まあ、悪いことばっかじゃないさ、リリアナにも、祐理にもそれで会えたわけだし」
そう言うと横を並んで歩いている祐理は顔を赤くして俯いてしまった。
祐理はリリアナと同じくらい照れるからやっぱり面白いな。ちょっと世間知らずで天然のところもあるし。
ぽふ、と祐理の頭の上に手を置いて撫でていると一層、顔を赤くする。さらさらとして艶のある髪の感触と祐理の体温が手に帰ってくる、と同時に周りからの刺すような視線も増えた。
「それと涼さん、今日も夕食をご馳走になりに来てくださいね」
「ああ、ご馳走になりに行くよ」
両親が既にいない俺は一戸建ての家で一人暮らししている。
祐理とはヴォバン侯爵の儀式で知り合い、家が近いこともあって度々顔を合わせる機会があった。その時に祐理の家族と面識を持ち、祐理を助けてくれたこと、庇護を与えてくれていることに感謝して料理をふるまってくれた。今でもそれが続いていて偶に夕食をご馳走になりに行っているというわけだ。
朝から祐理と通学中の会話を楽しんでいるとあっというまに学校に到着。
そして、護堂に説明しないといけないかもな。めんどくせ~。
「よぉ~、護堂。おはよ~さん」
「!涼、大丈夫だったのか!?」
教室に入って席に座るなり前に座っている護堂は焦った表情で詰め寄ってきた。
「大丈夫じゃなかったら学校に来ねえよ。カンピオーネは回復力も化物地味てんだ」
「そうか、よかった。そういえばリリアナさんは居ないんだな」
「アイツはイタリアでエリカと一緒に俺とウルスラグナとの戦いの事後処理をしてるよ。正直、残りたかったけどリリアナにも、部下にも学生は勉強が本文だって言われてさ」
部下?と頭を傾げている護堂にヴォバン侯爵と儀式の事を上手く隠して説明すると俺に部下がいることに驚いていた。
「おい、護堂、涼、聞いたかよ転校生の話!」
「「転校生?」」
中学からの友人が楽しそうに近くにやってくると転校生が来るという話を楽しそうに話し始めた。
春休み明けに転校生なんて珍しいな。
「イタリア人ですげー美人で噂だと貴族の出とか、しかも二人も」
「……なあ、転校生の外見分かるか」
「え~っと、片方は銀髪で、片方は金髪って話だぞ。それもどこまで信用できるか分からないけど」
そう言って、自分の席へ戻っていってしまった。
「なあ、涼」
「言うな、護堂。俺はイタリアからの転校生って時点で少し予感してた。でもほら、もしかしたら違うかもしれないしさ」
いや、嬉しくないわけじゃないよけどさ、まさかそんな都合のいいことなんてないわけで。
「は~い、皆さん。注目して、転校生を紹介します」
護堂と共に視線を前に向けるともはや見事なフラグ回収と言いたくなる展開だ。
前に学校に制服を着て立っているのはイタリアいるはずの二人。リリアナ・クラニチャールとエリカ・ブランデッリだった。
「エリカ・ブランデッリです」
「リリアナ・クラニチャールです」
「今日から二人は一緒の教室で過ごします。慣れないこともあるでしょうが皆さん助け合っていきましょう」
リリアナが来るのは予想してたけど、エリカまで来るなんてな。何かヤバイことでも起きるかな。
挨拶を済ませた二人は俺と護堂の隣に座っていた女子を魔術を使って暗示を掛けて、外見的には平和的に席を譲ってもらい、何食わぬ顔で隣の席を手に入れた。
「昨日ぶりです、主」
「あちゃ~!」
「「「主!?」」」
リリアナが席に座る前に俺を見て主と言いながら頭を下げたせいで見事に教室中の視線が俺の集まってきた。
「おい、涼!主ってどういうことだよ」
「もしかて、恋人!」
「神無月くんには草薙くんがいるでしょ!」
誰もかれもが言いたい放題。
リリアナは慌てふためき、前に座っているエリカは面白いとばかりに笑っている。それと俺と護堂をカップルとか言った奴誰だ!
「リリアナ、俺の事は普通に名前で呼んでくれ。男子陣、リリアナは俺の物だからな手を出したら承知しないぞ!」
立っていたリリアナを抱き寄せて宣言すると、男子陣からは罵詈雑言。女子はキャー!と楽しそう叫び。リリアナは胸の中で顔を真っ赤にしていた。
昼休みに色々と説明してもらうしかないな。
@ @ @
リリアナとエリカを連れて昼食ついでに人が少ない屋上にやってきた。勿論、人の姿もあるがそこま魔術師。術を使ってご退場願ったわけだ。
「やっと解放された!」
空の元、存分に羽を伸ばす。
「申し訳ありませんでした、主!」
結局、主呼びはいまだ抜けず、度々、ある、涼、と変な呼び方になっている。その度に教室の数名をこっちを見てくる。
「もう、過ぎたことでしょ諦めなさいリリィ」
「だ、だがエリカ。私のせいで主が友人と不仲になったら」
「気にするなよ、その程度で仲が悪くなる友達ならいらねえよ。それよりさ二人はなんでまた日本に」
リリアナが日本に来たのは理解できる。俺の騎士として仕えるとか、リリアナの親が所属する青銅黒十字からの伝達係とかあるんだろうが、エリカは違う。俺との関りも少ないし、赤銅黒十字と青銅黒十字はライバル関係。エリカが日本に来る理由は特に無いきがする。
「私は主の傍に居るために来ましたがエリカは……」
「私は貴方の戦う姿をルクレチア・ゾラの遠視の術で拝見し、貴方様に騎士として仕える為にやってまいりました」
胸に手を置いて、いつもの小悪魔みたいな性格とは違う畏まった言葉と態度。違和感にも感じるがどこか美しくも見える。
「……その辺は勝手にすればいいよ。仕えるも、傍にいるも、どっかに行くもね。でも、俺がお前を気に入ったら手放す気はないよ」
「はい、承知しました。あらリリィ、不満そうね」
「……別にそういうわけではない」
「フフフ、もしかしたら貴方と一緒のベッドに寝ることもあるかもしれないわね」
「っな!?」
不機嫌になったリリアナをエリカがからかい、分かりやすく挑発されるリリアナ。それをまたからかうエリカ。確かに仲のいい友達って感じだ。
祐理とリリアナは顔見知りだけど、エリカまで紹介したら怒られそうだな。
購買で買ってきたパンを齧りながら夕食の席が戦争にならないことを願うばかりだ。
アテナ戦は書いた方がいいですか?
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