リリアナとエリカは用事があると先に帰り、俺は隣のクラスの祐理と共に祐理の家へと向かって歩いていた。
「隣のクラスに二人も転校生が来たと聞きましたがやっぱり……」
「一人はリリアナ、もう一人は赤銅黒十字のエリカ・ブランデッリだ。騎士として仕えるって言ってる。何もないから大丈夫だよ」
「私が心配しているのは、また涼さんの傍に女性が居るということが気になるんです!」
珍しく強気で大声で訴えてくる祐理。
祐理でもヤキモチやいたりするもんだな。
「貴方はやっぱり女性にモテますね、神無月さん」
「ああ、甘粕さんか」
どこか痩せたサラリーマンのような風貌の彼は”甘粕冬馬”。
日本の魔術結社『正史編纂委員会』の一員で俺とその魔術結社の橋渡し役を担っている。
「甘粕さんからかわないでください!」
「いいだろ、俺が祐理の事を好いているのは事実だろ」
「…それは…その」
こう好きだとストレートに伝えると照れる反応がリリアナそっくりだ。
場所を移動し、祐理の実家でもある神社の階段に座って祐理が巫女服に着替えてくるのを待つ間にウルスラグナとの戦いを甘粕さんに軽く説明していた。
「へぇー、デメテルの権能がですか」
「はい、助けられましたよ。もしかしたら祐理の姫巫女としての技も使えるようになるかもしれません」
「あの、お待たせしました」
祐理の声に反応して後ろを振り返ると制服姿とは違う白と緑の二色と独特な配色の巫女の姿。
「やっぱり似合うな!」
「あ、ありがとうございます」
横で甘粕さんが愛想笑いしているが、これは俺と祐理のイチャイチャっぷりに呆れているのかは知らないし知りたくもない。
「それで甘粕さんはウルスラグナとの戦いについて聞きに来ただけなのか」
「いえ、お伝えしておきたいことがございまして」
「伝えておくこと?」
「プリンセスアリスが新しい予言をしました」
「そりゃー、一大事だ」
プリンセスアリス。
本名は”アリス・ルイーズ・オブ・ナヴァール”。『グリニッジ賢人議会』の元議長を務め、いまでも強力な発言権を持ち、世界最高峰の精神感応者でもある。加えて念力・霊視・予知といった特殊な異能と高い霊力を有しているが反面、体が非常に弱く黒服王子こと”アレクサンドル・ガスコイン”と共闘してあるまつろわぬ神を封印した際に体を壊し、今は寝たきりだと聞いている。
その魔術界に名高いプリンセスアリスの予言だ、どうでもいい予言なわけがない。
「星なき夜…ね」
甘粕さんから説明されたプリンセスアリスの予言について甘粕さんが帰ったあとも考え続けた。それと甘粕さんの話を聞いた後に獣群師団の構成員からメールでプリンセスアリスの予言について詳しい情報が送られてきた。
星がそのまま空に輝く星なのかそれとも地球や月、太陽を指しているのか。そもそもどうやって星を無くす。中国には太陽を撃ち落としたなんて話もあるが、星を破壊するあんて神話を持つ神なんて滅多に居ないそれこそ破壊神くらいだ。それに星なきが必ず星を破壊するってわけじゃない。隠したり、存在を無かったことにしたり、やりようはいくらでもある。
ん~、分からん。
こういうのは頭を悩ませても無駄なのは分かっているがしちゃったからには予想してみたい。
「お~兄ちゃ~ん!」
「うお!」
背中にずっしりと襲い掛かってくる重みの正体…それは祐理の妹の”ひかり”だ。祐理経由と知り合いどういうわけか気に入られ、いまではお兄ちゃんと呼ばれるくらいには仲良くなった。
「また背が伸びたんじゃないのか」
「ええ~、背より胸が欲しいよ、お姉ちゃんみたいにバインバインに私はなるの!」
うむ、確かに祐理の胸は大きい、それこそ触ると指が沈むくらいにな。
背中に当たるのは慎ましやかな成長途中の胸の感触。
「そうですか、頑張って大きくなってくれ」
「そしたら、お兄ちゃんも私のこと愛人にしてくれる?」
「……お前、意味わかって言ってるのか?」
「分かってるよ、ひかりだって中学生だもん。保健体育で子作りも、生理とかも習ったし。それにひかりだってお姉ちゃんに負けないくらいにお兄ちゃんのこと好きだもん」
いつの間にかひかりの顔を横にあり、ほっぺにチュッと軽いキスをされた。
台所では祐理が夕食の準備をしている、魔王と妹が良からぬことをしているとも知らずに。
「そうだな、お前が本気で俺の事を好きだっているのなら、他の奴からも、神からも守って俺だけも物にするさ」
首にくっついていたひかりを前に移動してきた前から抱き着いてきた。
「ひかりの事を好きって言わせるから覚悟していてね!」
「ご飯できましたよ……どうかしましたか?」
「お姉ちゃん、ひかりもお兄ちゃんの愛人になるんだよ」
「へぇ!?」
エプロン姿の祐理はひかりの発言に驚きながらも何処か、納得した顔している辺り予想してたのか。
@ @ @
祐理の家で夕食をご馳走になって帰ってきて部屋着に着替えてお風呂の準備をしているとリリアナとエリカがやってきた。
「どうした?」
「主に至急お耳に入れたいことが」
リリアナは何処か焦っているような感じだが、エリカは焦っている様子はない。
「プリンセスアリスの予言の事か」
「主!どこでそれを」
「ほら、言ったでしょリリィ。どうせ日本の魔術結社か獣群師団から連絡があるわよって」
ほらね、とリリィの肩を叩いているエリカ。
リリアナとエリカを中に入れて。冷蔵庫で冷えたお茶を渡すと、リリアナは一気で飲み干した。それだけ急いでいたってことか。
「じゃあ、私は帰るわ。家にアリアンナが待ってるし」
「アリアンナ?」
「私の従者よ、リリアナでいうところのカレンかしら」
ああ、そいうことね。
エリカの従者も一緒に日本に来てるのか。そういえばカレンは日本に来たのかな、でもリリアナ料理も出来るし一人でも大丈夫か。
「リリィはどうするの?」
「私は……」
「泊まりたければ泊まればいいさ、服なら俺のを着ればいいし」
「いえ、そいうことではなく…その…えっとですね」
俺と目を合わせないようにあらぬ方向を向きながらモジモジしだすリリアナ。
なんだ、家を買ってないとか、そんなパターンなのか。
「私は騎士として主を守る為に一緒に此処に住みます!」
は?一緒に住む!
……あれ、でもイタリアと対して変わらなくね。朝から晩まで一緒の部屋に居たし、一緒のベッドで寝てたし、お風呂も入ったし、性行為もしたし。何を恥ずかしがる必要があるんだ。
「部屋も空いているし別にいいけど、リリアナ荷物は?」
手ぶらで来たし、着替えを持ってる様子もないし。
「はい、一時的にエリカの家に置かせてもらっています」
「それじゃ今のうちに取りに行って来なよ、部屋の用意をしておくからさ。帰ってくる頃にはお湯も沸いてお風呂に入れるだろ」
どうせ両親が使っていた部屋や物置代わりになっている部屋もあるから一人増えたところで関係ないしな。
「はい!今すぐ取ってきます」
「ちょっと、リリィ!もう、私を置いていくなんて失礼しちゃうわ。にしてもいいのかしらリリィを家に置いて」
一人で先に家を出ていったリリアナを追うのかと思えば、なんだかんだていまだにエリカは立ち上がることもせずにお茶を飲んでいる。
「問題ないさ、どうせこの家に一人だ。偶に祐理も来るけど、あいつは家の事もある」
「なら、私が此処に住みたいって言っても住まわせてくれるのかしら」
四つん這いになりながらジリジリと胸を強調して近寄ってくるエリカ。
「拒否はしないさ、俺は別にお前の事を嫌ってない。好きかって言われるとまだわかんないけどな」
「フフ、そういう素直な所は私、好きよ。だからリリィも、貴方の傍に居たいと思えるのかもしれないわ」
一人で納得した顔をしているエリカだが、一つ勘違いをしている。
そもそもリリアナを騎士として仕えさせるつもりは最初は無かった。
あくまでも魔術について詳しい部下が一人か二人入ればよかったのだ、ヴォバン侯爵の一件でいきなり数十人ほど俺の庇護下に入って。名前だけでも作れば襲われないだろ、と獣群師団が生まれた。そこからは一人歩きならぬ、一結社歩きだ。
いうなれば、獣群師団は元は生贄とされた彼女たちを保護する為だけの名前だけの結社だった。それが構成員があれや、これやと俺の知らないところでやっていくうちに大きく育ったわけだ。
俺が手を出したのなんて数えるほどしかない。恩人である俺に尽くし、俺の為にと気を利かせて色々やってくれてるだけだ。
確かに儀式が原因で魔術を使えなくなった者、元所属していた結社に戻れなかった者もいた、それでも他の結社に行きたければ行けばいいと最初に伝え。束縛はしてこなかった。それはリリアナも、祐理も一緒だ。
彼女たちが自分で俺の元に居ることを選び、俺はそれを受け入れ。今は俺が彼女たちを離さないだけだ。
「そうだな。なら、お前が俺の傍に居たいと思えるように、俺は頑張って神殺しをしようかな」
「そうね、頑張って欲しいわ、私の魔王様」
誰にも知られない二人っきりの会話を俺とエリカはリリアナが帰ってくるまで楽しむこととなった。
次回はリリアナとRの予定です。
それか、アテナ戦まで行っていっちゃった方がいいかな。
アテナ戦はウルスラグナ戦と違ってちゃんと書くつもりです……多分。一応アンケートだしておきますね
アテナ戦は書いた方がいいですか?
-
いる
-
いらない