※この作品はR-18です。

はいはい、お薬出しておきますねー。   作:ぬらぬら棒

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“““““教育”””””

 

 

 ──────母がこの世を去りました。

 

 島全体から迫害を受け、禄に職にも就けず。

 かといって島から出ることすらできず。

 挙げ句の果てにはヤクザが締める裏風俗なるものにまで身を投じ、──────文字通り(・・・・)身を削った結果として、最期は病に伏せました。

 

 幼子で無知であったわたしに、心配をかけないように、まるで近所へ散歩に行くような足取りで仕事に向かう母を止めることなどできませんでした。

 

 想起する度に、胸が張り裂けそうになります。

 けれど、母は誰も恨みませんでした。

 母とわたしを追い込んだドスケベ条例を。

 ……死んでくれて清々した(・・・・・・・・・・)、などと宣う島民をも。

 

 

 故に、わたしも恨みません。

 最期まで笑顔で、気高く行き続けた母のように在りたいと思ったから。

 爾来、わたしは泣くことをやめ──────戦う道を選びました。

 

 

 ひとりで生きる術を身に着けました。

 そして、夜に蔓延る任侠たちや、わたしを血眼になって探すSHOと戦いました。

 今では怒声も匕首も拳銃も、恐怖を感じることはありません。少し、暗がりは怖いですが、慣れてしまえばどうということもありません。

 何もできなかった白痴の頃とは比べ物にもならなくなったほど、強くなれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────宮司さんが、この世を去りました。

 

 偽の戸籍を用意し、身を寄せる場所がなくなったわたしに住処を用意してくるなど、良くしてくれた方がこの世を去りました。

 訃報を聞き、かけつけた遺族によって粛々と葬儀が行われるのを、わたしは物陰から見ることしかできませんでした。

 合間の会話に聞き耳を立ててわかりましたが、宮司さんの遺品や神社は取り壊されずにそのままにして欲しいと遺書があったそうです。

 

 ……嬉しい反面、それよりも悲しかったです。与えられてばかりで、何も恩を返すことができなかったことに、深い後悔が突き刺さります。

 けれど、泣くことは我慢しました。文乃は“強い子”だから。

 

 

 

 強くなりました。

 

 

 強くなった、はずなのに。

 

 

 とうとう、文乃は独りぼっち(・・・・・)になりました。

 

 

 

 この島でもっとも大きな神社───ちんちん大社の裏。

 かつて宮司さまがいた、使われなくなった神社。誰にも見つからない住処、そこで武器であるライフルを抱え、身を縮こませる。

 

 今日も任侠連中と戦いました。

 無事に戻ってこれましたが、慣れない巡回ルートを使ったためか、足首が痛みます。

 無我夢中で走ったときに捻ったのかもしれません。

 だけど、本当に捻ったのは、胸の奥(・・・)かもしれません。

 

 

 今は亡き、母の言葉が想起します。

 “文乃は強い子だから”

 

 

 その言葉を胸に、戦い続けてきました。

 ───違います。違うのです。

 

 

 これからも、強くありましょう。

 ───文乃は、強くありません。

 

 

 目指す理想のためにも、戦い続けましょう。

 ───独りでは、何もできないのです。

 

 

 

 タン、と引き戸が開けられる。

 

 意識の切り替えが一拍遅れた。

 身を隠すことを諦め、銃口を入り口に向けます。

 

 今日戦った任侠か、または何度も交戦したSHOか、SSか。

 つけられていた可能性に焦りながらも、表情に出さず、無機質にスコープを覗き込みます。

 

 

 月明かりの逆光の中。

 そこには──────

 

 

 

「………………」

 

 

 

 

 ──────ニチャア……、と、そんな笑みが溢れていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

 ──────ニチャア……と、目の前の鏡は笑っていた。

 

 退勤間際、白衣を脱ぎ捨てた後に駆け込んだ男子トイレの中で、盛大にため息が溢れる。

 

 何が“種付けおじさん”だ。

 ほんのちょっぴりガタイが良すぎて、ほんのちょっぴり髪の毛がないだけだと言うのに。笑顔が汁っぽいところが好み、と今日の患者が言っていたので確認してみたが……確かに爽やかとは言えないが、汁っぽくはないと思う。多分。

 ギャル=ビッチ、委員長=アナルが弱い、レベルの偏見ではないか。これには遺憾の“意”を示さざるを得ない。

 

 

 

「あ、ごめんね★ 俺、妹がいたから、つい癖でポルチオポンポンしちゃうんだ」

 

「あんっ、だめぇえ♡♡ にっこり笑いかけてチンポ出し入れされてるだけなのに、んっ♡♡ 感度が上がっちゃう♡♡♡ 都合が良すぎる展開なのに“高”感度急上昇しちゃうのおおおおお♡♡♡」

 

「あれぇ? 俺また何かやっちゃいました?」

 

 

 

 ──────トラックで轢かれて目が覚めたら異世界の病室にいた転生者プレイかな? 

 

 

 悲しいことに、当院では特定の病室や手術室以外でのドスケベは黙認されてしまっている。悲しいことに。

 何やらトイレの個室でふんだんに特典を振りかざして盛り合っているようだが、一瞥もせずに出ていく。

 

 

「お待たせ、文乃。帰ろうか」

 

「はい」

 

 

 出入口のソファに座っていた男子生徒の服を来た少女───琴寄文乃とともに帰路につく。

 

 

 そろそろ陽が落ちそうな夕暮れ時。

 集落地になると街灯すら心もないほどに真っ暗になる。この時間帯になると外出する島民はほとんどいなくなる…………はずだ。

 今日の帰り道はやけに豚骨の香りがするな───と思った矢先、不味いことに全裸の雌豚(・・・・・)がハイハイして通り過ぎようとしていた。

 

 

「ほーら、文乃。今日も星がきれいだぞー」

 

「左様でございます。あと一時間もすれば星座もよく見えるはずです」

 

 

 ……よし、通り過ぎたな。

 後ろ姿を見たらアナルになんか変なもの刺さっていたことを除けば、青藍島によく出没する一般的な豚野郎……いやさすがにこの島でも珍しい。

 暗くて細部までは見えなかったが、土台のようなものが見えたので何かのフィギュアか。

 個人的な嗜好に文句をつけるつもりはないが、医師としては排泄器官である肛門に何でもかんでもモノを入れようとするのは辞めてほしいと切に願う。事故になった際にその惨状を見せつけられる身にもなってほしい。

 

 閑話休題(こうもんであそばないでください)。

 

 

「そういえば、文乃と知り合ってからもう2年くらい経つのか」

 

「具体的には1年と356日……日数でいえば721日になります」

 

「何てタイミングでこの話題を切り出してしまったんだ、私は。そんなこと言わせてしまってすまない」

 

「むべ……?」

 

 

 絶望する私と、理由がわからず首を傾げる文乃。

 

 そう。文乃と会ったのは、この島に来たばかりの頃だった。

 まだ島の地理がわからないからとりあえず高いところから島中を見渡してみよう──────

 そんな軽率な気持ちで山にある観光スポット“ちんちん大社”に向かっていた中、道に迷ってプチ登山をしている途中に見つけた廃れた神社で出会った。

 

 

 いきなりライフルで狙撃してきたことには驚いた。

 しかし、事情を話したら、返ってきたのはきっちりとした謝罪と、なおかつ目的地まで案内してくれる丁寧な対応。

 この島に来てからようやくまともな人間に会えた感動で、年甲斐もなく涙してしまったくらいだ。

 

 嬉しくなってつい、着物の下に隠していた外傷も手当してあげると……明らかに一般人ならつかないような傷がちらほらと。

 詮索しないで欲しそうな様子を感じ取れたため、事情は深く聞いていない。

 ただ、大人として見過ごすことはできないのも確か。少なくとも、まともに病院で治療を受けられない理由があることを察した私は、「こっちで便宜図るから、また怪我したらここにおいで」と病院の場所を教えたのが初対面だった。

 

 

「……いや、最初の頃と比べると随分と様になったと思ってな」

 

「そんな……恐悦至極でございます」

 

 

 

 その後、ちらほらと顔を出しては治療し……を繰り返していくうちに彼女も心を開いてくれた。

 つい最近、自主的に医療を学びたい、とおそるおそるお願いされたため、こうしてお手伝いさんとして当院に来てもらっている。

 

 ……ちなみに、“琴寄文乃”という名前もそのタイミングで初めて聞いた。

 文乃曰く、これから教えを請う先生に本名を名乗らないのは失礼だから、らしい。

 その言葉の裏からは、本名を隠さないといけない理由があることを意味しているが……私にとって、文乃という名前が嘘か真かなぞ些細なことだ。

 

 

「文乃はまだ未熟な身でございまする。先生のように急患にも冷静沈着に適切な処置ができるほどでは……」

 

「まあ、それを簡単にやられたら、今度はこっちの立つ瀬がないからな」

 

「も、申し訳ございません。差し出がましく、先生のお仕事を奪おうとしたつもりでは……」

 

「わかってる。そんなに謝る必要はないから」

 

「も、申し訳……!」

 

 

 相変わらずの腰の低さ。

 教える立場と教わる立場……伴う礼節はあるだろうが、もう少し気安さが欲しいところだ。どちゃクソ上下関係厳しかった相撲界にいたころを思い出すから。イライラしたからって、私の作ったちゃんこ鍋をぶちまけるような親方にはこりごり───あ、思い出したらあのハゲぶん殴りたくなってきた。

 

 ……文乃がいる手前だ。話題を変えるとする。

 

 

「そういえば、文乃は医者になりたいのか?」

 

「え……?」

 

 

 さりげなく振った話題に、文乃は目を白黒させた。

 

 

「いや、熱心に私の話に耳を傾けてくれるから、てっきりそうなのかと思ったんだけど」

 

「………………」

 

 

 まさか、そんなこと言われるとは思ってもみなかった。

 変化が乏しい文乃の表情から、珍しくそんな心情が読み取れた。

 

 

「なら、質問を変えようか。文乃は何か夢があるのか?」

 

 

 医療を学んでいるからと言って、必ずしも医者になりたいなんて、決めつけはよくなかった。もう少し幅をきかせた質問に変えると、文乃も腑に落ちたように頷く。

 

 

「──────はい。文乃には、理想とする未来がございます」

 

 

 その赤い瞳は真っ直ぐで、吸い込まれそうなほどに強い眼差しだった。

 

 理想とする未来──────

 彼女の瞳が見る先は、一体どんな景色が写っているのだろう。

 

 

「そっか。じゃあ、その未来の中で、文乃はどう生きたいとか、考えたことある?」

 

 

 純粋な疑問を口にすると、また文乃は目を丸くした。

 あ、これは考えたこともなかったんだな、とわかってしまう。

 

 

「生涯を通してお仕えしたいご主人様がいらっしゃるのであれば、その方にお仕えしたく……………………すみません。漠然とした回答しか用意できぬ、至らぬ文乃をお許しください」

 

「いいんだ。その年でそれだけ考えられるのは素晴らしいことだ」

 

 

 もにょもにょ、とした口調の文乃の頭にそっと手を置く。

 ……力加減に全神経を研ぎ澄ましながら。いくら処置はしているとはいえ、どうしようもなく脆くなっているのだ。気高い彼女の頭部(・・)は。

 

 

「人生、苦しくて挫けそうな時は必ずやってくる。───そんな時は、自分の夢とか、目指すべき目標を振り返っておくんだ。その夢の中で、自分がどんな風に生きているのか、とかも考えるとなおのこといい。それがきっと、文乃の力になってくれるはずだから」

 

 

 ちょっと説教過ぎたかな、と思いながらも頭から手を離す。

 自分の腕で隠れていて、顕になった文乃の顔。錯覚かもしれないが、さっきよりもすっきりとした表情のように見えた。

 

 

「先生は、ごさいますでしょうか」

 

「私の、夢?」

 

 

 こくり、と頷く文乃。

 ……まあ、ここまで言っておいて、自分は言わないなんてかっこつかないか。

 

 

「そうだね。私はもう何度か叶えてしまっている身だから、大した望みはないんだけど…………じゃあ、カセイ(・・・)に到達したい、とか?」

 

 

 陽の反対、迫る夜空を見上げながら、そんな絵空事を口にした。

 冗談のように───でも否定されたくない、そんな複雑な思いを乗せた言葉は、文乃に届いただろうか? 

 

 

「笑いませぬ。文乃は、大変素晴らしい夢だと存じます」

 

「そっか。ありがとう」

 

 

 思わず笑顔になってしまう。

 私──────いや、俺(・)も、彼女の理想が成就するように、力になれることがあるなら力になろう。

 そんな決意を胸に、集落あたりで別れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 笑顔──────あっ。

 

 

「……っと、そうだ。文乃、私の笑顔って、傍から見たら怖いかな?」

 

「いえ、怖くありません。文乃はその笑顔に救われた身でございまする故」

 

「だよね。文乃は良い子だなあ」

 

「ぬっへっへ」

 

 

 決めた。今度、お菓子買ってあげよう。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 一人で住むには広すぎる屋敷。

 襖から僅かに光が漏れる、薄暗い部屋。

 丑三つ時より少し前──────そこで、現役時代から習慣となっている“鍛錬”をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ひううっ♡ もうダっ♡許し゛っ゛んんんんんんんん♡♡ 無理だからぁはああああ♡♡ い、イ゛くっ♡ イっちゃううううううう♡♡♡』

 

「はい勝ちィィィィィィィィィ!!!!」

 

 

 “鍛錬”である。

 

 

「くっ、これでも駄目か…………」

 

 

 ガッツポーズしていた手とは反対側の手。

 ティッシュとともに手を退け、我が“わからせ棒”の様子を見て肩を落とす。

 散々いじめ抜き、鍛えてきたにもかかわらず、返ってくるのは文句を垂れるように出てくる濃い“強靭大人液”だけ。

 今日も一人の生意気なメスガキの“教育(わからせ)”に成功したが、心の中では敗北感のほうが勝っていた。

 

 

「ノーハンドオナニー……まさか本当にできるとは思わなかったが……これでも叶わないのか」

 

 

 ヘッドホンを外しながら起き上がる。

 青藍島の患者たちを相手にしながらも、男の子の日───キンタマがギュルギュルしてちんちんがイライライラビキビキビキグツグツグツする現象にも耐え、貯めに貯めたオナ禁2週間分の強靭大人液。

 まるで全身が勃起でもしているかのような錯覚を覚えながらも、元力士の経験を活かした筋肉操作で尻の筋肉を匠に使った結果、かつてないほど濃いのが出た。

 

 ……はずなのに、我が愚息はずっと“半勃ち”のままであった。

 

 

「そういえば、同じ不能(インポ)気味仲間の@junonanistさんはどうしてるんだろう。あの人作のオナホ使いたいんだけど、3Dプリンターがなぁ……病院にあるやつ使いたいな」

 

 

 後始末を終え、スクリーンの前に座り込む。

 全世界の同志たちが集うSNS“Onatter”の皆に結果報告をする。

 返ってくる励ましの言葉は、仕事と島民で荒んだ心までも癒やしてくれる。

 

 そうだ。失敗なぞ数え切れないほどした。

 医者になったネットワークを使って知り合った数々の権威たちも首を横に振ったから何だという。

 こんなことで諦めきれない。

 夢で、終わってたまるか。

 

 イメージするのは夢の先──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちくしょう……! 完全体に、完全体になりさえすれば……! そしてそれを常に保てれば、せめてカセイ(仮性)には辿り着けるはずなのに……!」

 

 

 つい数時間前に口にした絵空事が虚しく響く。

 目を落とすと、そこには生まれたときから連れ添った憎らしい相棒───そいつは、どうしようもないくらいに“真性(恥ずかしがりやさん)”であった。

 

 

 




 狂いそう。



・先生
 笑顔が絶望的に下手。おかげで変な噂が加速する。似非インポのオナニストで皮かむりさん。訳あって包茎手術ができないため、Onatterの紳士たちに包茎解消の相談中。

・琴寄文乃
 むべむべ。怪我とか疲労が溜まって心が折れそうになった時に手を差し伸べてくれて、その後も世話を焼いてくれる先生に恩を感じているわんわん。本編よりも医者の適切な処置を受ける機会に恵まれているので頭の怪我は比較的良好。

・雌豚
 クソ女を固有名詞にする女。

・@junonanist(橘淳之介)
 原作主人公。誇り高き童貞。催眠音声など日本が誇る“性-Pop”の愛好家で、インポ気味なところにシンパシーを受け、相談役のひとりとして先生と交流している。
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