最後に絶頂シーンがあるのみ。
催眠音波が発せられる数分前、ナンシーは自室をかねている調教部屋にいた。
「今日は魔王様もサーラちゃんもいないわねぇ」
ナンシーは机に伏せてそう呟いた。
「ふ~、暇ねぇ」
そんなことを呟いているナンシーの部屋に催眠音波が響き渡る。
「ぐっ!何かしらぁ。この痛みは。それにこの音」
ナンシーは顔を上げ、こめかみに手を当てながらそう言う。
「声が聞こえるわねぇ。淫・・・忠誠・・・淫・・・誓う・・・魔王・・・淫魔王・・・淫魔王っ!!」
ナンシーは頭に直接響き渡る言葉のなかに淫魔王という単語を聞き、驚きで立ち上がる。
「まさかっ、そんなっ。淫魔王の名がなぜっ!くっ・・・声がだんだん大きくなってきてるわぁ。一体何が起きてるのぉ」
そんなナンシーがいる部屋に強大な気配が近づいてきているのをナンシーは感じ取った。
その気配はナンシーが知るもっとも最悪な気配だった。
そして、その気配は部屋の扉の前で止まり、ノックする。
「どうぞぉ」
ナンシーは入室の許可を出し、その気配主が部屋に入ろうと扉を開けた瞬間、ナンシーは手から魔力で作った光球を出し、投げつけた。
ドォォォォォォンという大きな爆発音とともに部屋の扉が破壊され、粉塵が舞う。
「ふはははははは!!流石に気づくか」
ナンシーは油断なく、粉塵のなかにいる敵に気を配り、段々粉塵が晴れ敵の姿が現になる。
そして、ナンシーはその敵に正体を見て、目を信じられないと表情とともに、大きく見開く。
「魔王様っっ!!でもぉ・・・気配は淫魔王そのもの。・・・まさか、魔王様の体を乗っ取ったのかしらぁ。いつのまに」
「ふっ、久しぶりだな。まぁ、いつも目を会わせていたがな」
「どういう意味かしら」
「つまりだな。私が魔王と任命されるときから私は私だったのだ。こいつの体を乗っ取ったのはこいつが産まれたときだ。つまり・・・」
「・・・つまり、気付かずにあなたを魔王に任命したときから、私達はあなたの掌の上立ったってことかしらぁ。」
「そう言うことだ」
ナンシーは自分の周辺に青色の光球を作りながら、質問する。
「私の体に蓄積されているのは毒よねぇ。私をこの音の虜にするための」
「そうだ。流石だな、数百年も毒を摂取しているというのに催眠にかからないとは」
「ふんっ。声は聞こえているわよぉ。あなたに忠誠を誓いなさいってねぇ」
「ならば、その声に従え」
「断るわぁ。誰があなたに忠誠なんか誓うものですか」
「そうか。なら力付くで従わせるのみ。ちなみに私は全盛期の力を持っているぞ。その魔力で勝ち目はあるのか」
「舐めないでほしいわぁ。はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「むっ」
力を解放したナンシーの魔力は淫魔王に匹敵していた。
「いつの間にそこまでの力を身に付けていた」
「すべては魔族のため。こんな時のために力を付けていたのよぉ。・・・おそらく、他の魔族はあなたの手に堕ちているのねぇ」
「そうだ」
「そう。あなたを倒せばもとに戻るのねぇ」
「それは分からないが、これ以上悪化することはないだろうな」
「ふーん。じゃあ、死になさい」
ナンシーは周辺に作り出していた光球を淫魔王に放ち、すぐさま自身の身長ほどある大きな光球を作り出し、放つ。
「障壁」
しかし、その光球は淫魔王の体に当たることなく、魔法で作り出された障壁に防がれ、無駄に粉塵を撒き散らすだけだった。
「これ以上やると部屋がメチャクチャになるわねぇ。外に移動しない?」
「いいだろう」
二人は転移魔法で本拠地の外に出た。
外には光の膜が本拠地周辺を覆っていた。
「これは結界。・・・そう、わかってはいたけどサーラちゃんは敵なのね」
外には強力な結界が張られていることにナンシーは気が付いた。
これほどの結界を張れるのはサーラぐらいしかいない。
「そうだ。お前を逃がさぬためと、退魔師達に気づかせないためにサーラが張った結界だ。これでこの場所を特定されることはない」
「遠慮なくやれるってことねぇ」
「そういうことだ。いくぞっ!!」
ハザークは猛スピードでナンシーに接近し、アッパーを放つ。
「ふんっ!」
「ほっ」
ナンシーはそれを一歩後ろに引き、のけ反って避ける。
「はぁ!」
「ふっ。はぁぁぁ!!」
ハザークは次の動作で、ストレートパンチをナンシーの顔面めがけて打ち込むが、ナンシーはそれを腕で受け止め、空いた片手に光球を出し、ハザークの土手っ腹に放つ。
それはハザークに直撃し、1メートル程吹き飛ばされる。
「ふぅ。やはり拳では勝てんか」
ハザークは着地した後、そう呟いた。
「来い、我が得物よ」
ハザークが手を前に突きだしそう言うと、手を突きだした所から魔方陣が出現し、魔方陣の中央から一本の剣が出現する。
「魔剣デス」
呼吸を整えていたナンシーは、その剣を見て、そう呟く。
それは、1000年前からハザークが使っていた剣で、刀身はごく一般的な長さだが、禍々しい紫色で彩られている。
その恐ろしい切れ味と、一度傷付けたら相応の力で治癒しなければ、傷が治らない呪いを与える能力がある剣だ。
「いくぞっ!!」
その掛け声とともにハザークはナンシーに切りかかる。
「魔力刀展開」
その攻撃をナンシーは魔力で作った剣を攻撃の軌道上に作り出し、防ぐ。
「はっ!ふっ!せいっ!」
ハザークは防がれたことに目もくれず、次々と強力な攻撃を繰り出す。
ナンシーはそれを冷静に対処し、隙を見つければ光球で反撃をしている。
「喰らいなさい」
そんな攻防を続けている途中で、ナンシーは魔力で大きな竜のアギトを作り出し、そのアギトがハザークに襲いかかる。
「消えろっ!」
ハザークはそれに対し、横に一閃を放ち、アギトを消し去り、刀身から斬撃を飛ばす。
その斬撃はナンシーに届く前に光線に撃ち抜かれ、消失する。
ナンシーは両手で砲門のような機械を持っていた。
これは魔力を込めることで強力な光線を発射する武器であり、ナンシーの質高く、膨大な魔力で作られる光線は物質を塵一つ残さず全てを消し去る。
ナンシーは光線をいくつも発射し、さらに光球も打ち込み、ハザークは四方八方からくる攻撃に対し、防戦一方だ。
「くっ!ぬっ!ふんっ!」
避け、切ってかき消し、そして避けるの繰り返し動作で避けているハザークだが、不意に動きが止まる。
「何っっ!!」
ハザークの足は光輪に捕まっており、足が捕まると同時に、手首も光輪に捕まった。
「油断したわねぇ、淫魔王。チャージも完了。消えなさい」
そんな無慈悲な言葉とともに、超極太の光線が放たれる。
ハザークを捕まえている光輪は、魔力の動作を遅くする効果もあり、障壁を張るのも間に合わない。
「うぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!・・・」
そんな絶叫が周辺に響き渡り、数秒もすると聞こえなくなったが、光線はまだまだ続き、三十秒ほど経ってようやく消えた。
ハザークが立っていた場所にはなにもなく、ただ光線が通った跡が残るのみだ。
「はぁぁ、もう魔力が空っぽだわぁ。・・・みんなをもとに戻さなくっちゃねぇ」
そうして、戦っていた場所を去り、本拠地へ向かおうとしたナンシーの耳にハザークの声が聞こえた。
「油断したな。眠るがいい、ダークネス」
「なっ!!!キャッァァァァァァァァァァ」
ナンシーの後方500m程の位置にハザークはおり、ハザークの手には使い捨ての転移装置が握られていた。
転移装置は持ち主の魔力を消費しないで
ハザークは光線が放たれ、当たる瞬間転移して危機を脱出していたのだ。
そして、ハザークを消し去ったと思っていたナンシーにハザークは魔法を放つ。
ハザークが放ったダークネスという魔法は、サーラの催眠音波を魔力で何十倍にも強力にしたものだ。
完全に油断していたナンシーはダークネスをまともに受けてしまい、自力で押さえていた脳内に響く忠誠を誓わせる声が、大音量で頭のなかで流れ始めた。
(淫魔王様に忠誠を誓う。誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う)
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
薬を何百年も溜め込み、その魔力で押さえていた効果が魔法で活性化され、ものすごい勢いで全身に快楽が回り出す。
「ぐがあがががああがあ!!誓う、いやっ!誓う誓う誓う!!」
ナンシーは両手で頭を押さえながら、誓うと口にすると、ナンシーが経験したことのない快楽を脳が感じとる。
「いやっ、淫魔王っ!!このっ殺して誓うやる。殺す誓う誓う誓う誓う!!」
「誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う」
そして、ナンシーの目が段々と虚ろになり始める。
「誓う誓う誓う誓う誓う誓う殺す殺す誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う」
時々、正気に戻ることがあるが、それは風前の灯火だった。
「誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う誓う・・・あっ♥」
脳がパンクするほどの快感を感じ取った瞬間、ナンシーはアクメし、立ったまま目を完全に虚ろにし、足をガクガクさせ、ぷしゅぅぅぅぅぅぅと潮を吹いている。
「誓います・・・淫魔王様に・・・忠誠を・・・」
「堕ちたか。・・・いや、催眠だけでは油断ならん。完全に洗脳せねばな。ついてこい」
「・・・はい」
そうしてナンシーは敗北し、ハザークの言いなりになり、後ろについていく。
しかし、ナンシーの受難は始まったばかりだ。