人類保障機関・カルデアのとある一室。
ここで人理焼却に対抗すべくサーヴァントの召喚が行われようとしていた。
「それではサーヴァントを召喚しましょう。先輩」
「う、うん」
先輩と呼ばれた少年が言葉を詰まりながらも返事する。
唯一生き残った人類最後のマスター・
彼は先程教えられた召喚の呪文を必死に唱える。
(僕が…僕がやらなくちゃ…!)
ー人理を救わなければならない。
ーその為にはこの召喚は成功させなければいけない。
その責任感が彼の胸にひしめいていた。
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よー!」
その時。ー彼の全身を激痛が駆け巡る。
痛みに耐えきれず、意識が遠ざかる。
「あ…」
「せ…ぱ…!」
意識が消えてゆく中、彼が見たものはもうこの世に居ないはずのー。
「ん…ここは…?」
リツの目の前に天井が広がる。
意識が朦朧としながらも、辺りを見回す。
ベットの隣には彼の知っている女の子が居た。
「ここは医務室です。先輩」
薄いピンク色の髪をした少女、マシュ・キリエライトが答える。
「ああ…マシュ。僕は確かサーヴァントの召喚をしていて…」
「はい。先輩は詠唱を終えた途端に倒れてしまったんです」
(やっぱり…弱い僕にはサーヴァントを召喚出来なかったんだ…)
「ここまでマシュが連れてきてくれたの…?それともドクター?」
気落ちしながらも自分を医務室へ連れてきてくれた人物について尋ねる。
マシュはデミ・サーヴァントだ。
もしかしたら男1人ぐらいは肩を貸して連れてこれるかもしれない。
ドクターは男性だから自身を運べる位の力は持っているはずだ。
リツは2人のうちどちらかがここまで連れてきてくれたのだろうと推測していた。
「いえ、私やドクターではなく…」
マシュが言い終える前に突然医務室の扉が開いた。
「目が覚めたようだね」
その声の方を向く。
そこには凛々しい女性というべき人が立っていた。
身長はリツより少し高く、赤髪のショートヘア。
何より白を基調とした露出の高い恰好がリツの目に飛び込んでくる。
(こんな人カルデアに居たかな…?)
「えっと…貴女は?」
「こちらの方は先輩が召喚したサーヴァントのブーディカさんです」
「召喚したサーヴァントって…ええ!?僕召喚成功してたの!?」
リツは驚きを隠せない。
「なんでそんなに驚いてるのかな?」
ブーディカはリツに歩み寄り、顔を近づける。
その時、ブーディカの柔らかな胸部がリツの身体に触れる。
柔らかな感触に気づいた彼は焦り出す。
「あ…あの…その…」
「ん?どうしたの?そんなに詰まっちゃって」
「む、胸が…当たって…」
「プ…アッハハハ!キミ、可愛いね!」
「あ…ハイ…」
急に可愛いと言われ、リツは戸惑ってしまう。
「それで、どうして私の召喚に失敗したと思ったのかな?お姉さんに聞かせてくれる?」
「は、はい!召喚する時に急に身体中痛くなっちゃって…僕その痛みに耐えきれずに意識が遠のいて…それで倒れちゃったんです」
リツは召喚した際の事を必死に説明する。
「僕がしっかりしていないから…弱いから…サーヴァント呼べなかったんだって…」
その時思った悔しさに彼の目尻に涙が集まる。
それを見たブーディカはそっと彼に近づき、指で彼の涙を拭った。
そして彼女はリツの頭を軽く撫でた。
「よしよし。頑張ったね」
「えっ…?」
「キミは偉いよ。こんな大変な状況で辛いのに、召喚する為に体を張って私を呼んでくれたんだから。キミは弱くなんてないよ」
「あ…ああ…!」
ブーディカの言葉にリツの緊張が解け、彼の目から涙が止まらなくなる。
涙が彼の衣服を濡らし始めていた。
「ほら、お姉さんの胸で泣いてごらん。スッキリするよ」
ブーディカに頭を引き寄せられ、柔らかな乳房へ顔を埋める。
その感触はどんなクッションよりも柔らかく。
そして、温かった。
「うっ…ううっ…!うわぁぁぁぁあ!」
彼の叫びにも似た泣き声が医務室に響き渡った。
リツが泣き止んだ頃にはマシュの姿は居なくなっていた。
マシュはリツが泣いている最中、ロマニに緊急の用件で呼び出され医務室から退室していた。
「ほら、お水だよ。飲んで」
食堂で水を入れてきたコップをリツに渡す。
「ありがとうございます。ブーディカさん。その…恥ずかしい所見せちゃって…」
「いいよ。辛い時は泣いていいんだから」
ブーディカは微笑みながらリツに語る。
リツはブーディカから受け取った水を一気に飲み干す。
「おっと、キミの名前まだ聞いてなかったね」
水を飲み終えたリツにブーディカが尋ねる。
「
「フジノ リツ…うん。いい名前だね」
「あ、ありがとうございます…!」
自分の名前を褒められ、思わず照れてしまう。
リツはふと、ブーディカを召喚した時の事を思い出す。
(やっぱりアレは…幻だったのかな…)
意識が途切れる前に見た、あの人の事をー。
『リツ。ホラ!元気だして!』
『晩ご飯はリツの大好きなハンバーグだよ!』
『リツ!』
あの人は活発で。元気で。
そして、太陽みたいに僕を見守ってくれたー。
『そんな嫌だよ…!◼◼◼…!』
『リ…ツ…』
『嫌だ…!嫌だ…!』
まタだ。
あノ事故ノ光景がまタ脳裏二。
「ちょっと!」
「うわぁ!」
突然の大声でリツは現実へ引き戻される。
目の前にいるブーディカが顔を近づけていた。
「キミ!ボーッとして…病み上がりだからって無理してる?」
「あ…大丈夫です…ちょっと考え事してて…」
リツは笑いながら返す。
何事も無かったかのように。
だがブーディカは気づいていた。
彼の目に
(この子…なんて寂しそうな眼をしてる…きっと過去にも辛い事があったんだ)
「そっか。大丈夫ならお姉さん安心したよ。疲れがまだ残ってるでしょ?もう少し寝といたほうがいいと思うよ」
(けれど、今はそれを聞く時じゃない。リツの心は暗い過去に閉ざされているんだ。いつかはその暗闇から抜け出せるよう私がサポートしなきゃ)
「ね…ブーディカさんがそう言ってくれるなら…もう少し寝る事にします…!」
「うん。分かったよ。マシュには私から言っておくね。おやすみ。リツ」
「おやすみなさい。ブーディカさん」
リツはブーディカにおやすみの挨拶をした後、疲れを癒すかのように眠りの世界へと誘われていった。
「フフ。この子の寝顔…可愛いね。心に暗い何かを抱えているのが嘘のように感じるよ」
そう呟いてブーディカは医務室を後にした。
ー数時間後。
「んんっ…」
リツが目を覚ますと、数時間前と同じように隣にマシュが居た。
「おはようございます、先輩」
「おはよう、マシュ。何とか疲れが取れたよ」
リツは微笑を浮かべ、マシュに挨拶と言葉を返す。
「良かったです。これで先輩完全復活ですね!」
元気そうに笑顔を見せるマシュ。
しかし彼女は気づいていない。
そしてその眼に秘められた暗い過去もー。
「先輩。お目覚めの所申し訳ないのですが、ダ・ヴィンチちゃんとドクターが先輩が起きたらブリーフィングルームに来るようとの伝言をもらっています」
「分かったよ。着替えてからすぐ行くからね」
「はい!先に行ってお待ちしてますね!」
マシュは嬉しそうに返事をすると、医務室から退出した。
「さてと…行こうかな」
カルデアの制服に着替えたリツはブリーフィングルームへ向かって走り出した。
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