わたしが、きみのことを抱きしめている。
きみが、わたしを抱きしめている。
きみの心臓の音が、きみが生きているという実感をわたしにくれる。
そのことがどうしようもなく嬉しくてつい笑顔になってしまうけれど、それもそう悪いものじゃないと思う。
だって、こうして当たり前のように一緒にいられるのが嬉しいんだから。
そのはず、だったのに。
「もう……君ってば、もう……」
「クロ、ごめん……」
心臓の音を聞いてうつらうつらとしてきた頃に、不意に来た思わぬ感触にビクッとなってぴょんと飛び上がってしまった。
彼の……その……あれがお腹のあたりに来ていたことは、元からわたしの方が背が低いこともあって別におかしくはないことではあるし、こんな長時間くっついていることは少なかったから、これまでこのことを意識するようなことはなかった。
このことに関しては興味もそこまでなかったけれど。
それでも、きみにとってわたしはなんなんだろう、とは考えたことはあった。
幼馴染で、ずっと一緒にいたくて。
でも、それはわたしが思っているだけだったから。
ここできみのあれが硬くなったのは、女の子として見られているんだっていう実感が湧いて少しの嬉しさがあって。
でも、とっても恥ずかしい。
「えっと、その……」
慌てているきみの姿も、最近ではほとんど見なかったからどこか懐かしくて。
少しだけ、落ち着いてしまったから。
「わたしは、きみが相手ならいいよ」
そんな言葉が、ぽろっと。
「え」
「あっ……」
きみの呆けたような顔で、ようやく自分が何を言ったのかわかって、自分の心が少しだけ理解できたような気がして、恥ずかしくなった。
見られるのが恥ずかしくて君の胸元にぐりぐりと顔を押し付けて、「ううう……」と呻き声のような何かをあげて。
「く、クロ……」
それでも、きみがどこか困惑したような声をあげていたから。
ここまで言ったのに、という恨めしさがちょっとだけ。
わたし自身、たった今ようやく自覚したこの思いを、きみにわかってもらうにはどうしたらいいんだろう。
あんな言葉がぽろっと漏れちゃうぐらいには、わたしはきみのことが好きなんだ、って。
やっぱり、恥ずかしくてもしっかりと伝えるべきだろうか。
あんな言葉じゃなくて、もう勘違いのしようもないくらいにはっきりと。
「きみならいい」じゃなくて、「きみじゃないとダメなんだ」って。
「わたし、わたしね。君の赤ちゃんが欲しいんだよ」
だからきみの名前を呼んで、言葉を必死に紡いだ。
なんて言えばいいのかわからなくて、口にした言葉はちょっとはしたなかったかもしれない。
でも、なんだかストンと腑に落ちたような感じがする。
そういう行為をすればきみの子供を産むことができるんだ、っていう事実をとても嬉しく思ってしまっている。
……他の女の子たちも、こうなのかな?
好きな人との間に赤ちゃんを作れるっていうのは、こんなに嬉しいことなのかな?
答えを待つ時間が、怖いと思ってしまったから。
そんなことを考えて気を紛らわせようとする。
「ぼくも……」
待っている時間はどれくらいだったんだろう。
もしかしたら一分もなかったかもしれないし、もしかしたら一時間以上だったかもしれない。
それでも、きみが呟いた言葉は聞き逃さなかったから。
「ぼくも、クロが欲しい」
真っ赤になったきみの顔を見上げて、思わず飛び込むようにしてキスをしていた。
「んむっ!?」
「あう……」
初めてのキスは感極まったせいで失敗してしまった。
お互いの歯と歯がぶつかり合って、痛かった。
それでも、きみとキスすることができたのがとても嬉しかったから。
……涙が出るほどに嬉しかったから。
だから、痛みは気にならなかった。
でも。
「大丈夫……?」
それはわたしだけだったのかもしれない。
「きみ、泣いてるよ?」
「え……」
だってきみも、泣いていて。
もしかしたら幸せを感じていたのはわたしだけなのかもしれないと怖くなって。
「さっきのキス、痛かった?」
「ううん、違うよ」
いや、痛かったのは間違いないけれど。
そう苦笑して。
「ただ、なんでかな。君とキスしただけのに、それがとっても嬉しくて。どうしても涙が出ちゃうんだ」
ああ、なんだ。
きみも同じ気持ちだったんだとホッとして。
二人で、キスしただけなのに泣いちゃうなんておかしいね、って泣き笑いをしながら言って。
それも、とっても幸せだった。
いつの間にか、ぼくとクロの位置は変わっていた。
ごろりと二人で寝転んで、今度はぼくも君もお互いを押し倒すようなことはしない。
もう一度、今度はちゃんと歯と歯がぶつかったりしないように。
二人で、唇を合わせる。
「……ん」
キスをする。
「あ、う……ん」
ぎこちない、拙いキス。
それを、何度も繰り返す。
思いよ伝われ、と願いながら。
どうかこの瞬間が永遠に続いて欲しいと思いながら。
キスを、繰り返す。
「う、うう……」
何度も何度も繰り返して、息継ぎのために少しだけ顔を離して。
クロは。
君は、顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
「な、なんだかこれ……抱きしめられるよりもずっと……どきどき、する」
「ぼくも、クロとこうしてるのが夢みたいで、どきどきする」
クロは顔を真っ赤にして、ぎゅっと目を閉じてしまったからわからないだろうけれど。
ぼくの顔もきっと、君と同じくらいに真っ赤になってしまっていると思う。
一回目のキスは、失敗したし、それに恥ずかしさよりも嬉しさが先に来たから、そこまで思わなかったけれど。
こうして、ゆっくりと君とキスすると、どうしても恥ずかしくなってしまう。
……やめようとは、思わないけれど。
「大好きだよ」
ちゃんと言葉にしていなかったから、今更ながらも言葉にする。
ぎゅっと抱きしめて。
彼女の背中に回した手に力を込めて。
絶対に離さないと、思いを込めて。
「抱き締めるよりも、キスするよりも、もっと先のことを……君としたいと思ってる」
こんなことを口にして気持ち悪がられないだろうか。
ちょっとの不安を胸に、君の答えを待つ。
「……」
クロは目を開いて。
ぼくには顔を見せないように俯きながら。
それでも逃げるそぶりは見せずに腕の中で悩み……。
悩んで。
「……う、うん」
そして、頷いた。
恥ずかしそうに、頬を赤く染め。
嬉しそうにへにゃりと笑って。
その姿に、思わず君のことを抱きしめる両手に込められた力が強くなった。
……心臓の音がする。
ぼくの両手に包まれた君の心臓の音なのか、それとも君を抱きしめるぼくの心臓の音なのか。
どきどき、どきどき。
どちらであったとしてもいい。
だって。
「……好き」
耳元でするクロの声以上に、今のぼくに大切なものなんてない。
「わたしも、きみのことが大好きだよ」
ぼくの背中に回されたクロの両腕に、少しだけ力が込められた。
ぼくたちの態勢が変わる。
今度は、最初とは逆にぼくがクロのことを押し倒すような姿勢に。
「……う、うう。ねえ」
「うん」
恥ずかしそうなクロ。
その顔を見ていると、ぼくも恥ずかしくなってくる。
でも、君が何かを言おうとしているなら、ぼくも無視するわけにはいかなくて。
「もしかして、わたし……脱がされちゃうの?」
「……うん」
そういう行為をするのであれば、服を着ているままというのはきっと良くない。
それも、今はクロの服が濡れてしまったから着替えているわけで。
この服を汚してしまったら着替えがないんだ。
「この服を着たままじゃ、ダメ?」
せっかくお姉さんがくれたのに、とどこか不満そうなクロ。
「……まだ、裸を見せるのは恥ずかしいよ」
「でも、さすがにそのままは……。着替えもないし」
やっぱり、脱いでもらった方がいいと思う。
それを伝えて。
そしたら、クロは少し悩んで。
「それなら、汚さなかったらいいの?」
何かを思いついたかのように、そんな言葉を口にした。
「う、うん……それなら、いいと思うけど」
答えると、そっか、と嬉しそうにクロは笑った。
そして、それなら問題ないよ、とも。
「だって、わたしたちは……その……」
もにょもにょと。
口を小さく動かして。
「赤ちゃん、作るんだから」
そんな言葉を。
「あ……ん」
真っ赤にしたままの顔で笑って。
そんなことを口にしたクロを愛おしいと思ったから。
キスをしていた。
「クロ。かわいいよ」
とても、これまで見てきた中でも一番。
クロ以上に可愛い相手なんて見たことがない。
だから、そんな素直な気持ちを言葉にした。
「……っ」
すると、クロはびくっとなって、顔を更に赤くして。
「……うううううう」
うなり声のようなものをあげていた。
クロが……そしてぼくが望んでいるそういう行為を行うためには、どうしても脱がさないといけないものが一つだけ。
彼女のスカートの中に隠された、ショーツだけは取らないとできない。
とはいえ、ぼくもこんなことは初めてで。
更にいえば、クロが服を脱ぎたくないっていうから見えなくて。
クロに触れる手はまごついてしまう。
「どうしよう」
「え?」
それに、もう一つだけ。
気がついたことがあった。
「多分、ぼく緊張してる」
クロ以外とこういう関係を築けるほどに好きになれる女の子なんてできる気がしなくて。
クロも、そういう対象ではなくて何かもっと純粋な気持ちで大事にしていると思っていたから。
だからきっと、ぼくはクロに対してこんな気持ちを抱いている罪悪感のような何かと、君とこんな関係になったことへの喜びと。
あとはなんだか自分でもよくわからない感情で、手が震えてしまっている。
「……うん」
でも、そんなぼくに君は笑いかけてくれるから。
「わたしも。……きみと、同じ」
どきどきも、緊張も。
ぼくらは二人とも同じ気持ちなんだと教えてくれるから。
その嬉しさが、ちょっとだけ手の震えを小さくしてくれる。
「……触っても、いい?」
「う、うん」
いいよ、と君は言ってくれるけれど。
それでもまだ、震えは君には残っているから。
「いっぱい……ぼくにできる限りやさしくするから」
これから先の人生も、ずっと。
君と一緒に過ごして。
一つ一つ美しい思い出を共に刻んで。
そうして、生きていきたいから。
「あ、んっ」
震える手を伸ばして、服越しに君の胸に触れた。
暖かい。
「ん……う……」
クロの胸に触れている手。
刺激としてはくすぐったいと言ったところだろうか。
少なくとも、服越しではちゃんと刺激を与えられているような気がしない。
……許してもらえるだろうか。
「あ……」
白と紫を基調とした、姐さんが言うところの”魔法少女”としての服装。
その前面にある金色のボタンを一つ一つ、丁寧に外していく。
上着をはだけさせ、その真っ白の肌を一部とはいえ外気に晒す。
小さな桃色の突起も色づいて主張していて、そういう行為をするのだという現実味が追いついてきた。
「……ううーー」
恥ずかしそうなクロの胸に触れていた手を、少しずつ下へと移動させ、
「ーーにゃ、うっ」
女の子の、一番大切なところに指先を滑り込ませた。
びくっとするクロ。
そんな彼女の下着を、今度こそちゃんと脱がせた。
そして、もう何もつけていないその部分に指先で触れてみる。
「あ、あ……や、んっ」
クロの口から漏れる声。
羞恥と快楽で漏れている声が一番強くなる場所がどこなのか、それはまだわからないけれど。
クロの一番大切なはずの場所の輪郭をなぞるようにして、少しでも快楽を君が感じることができる場所を探っていく。
そうして。
「あっ……んんっ」
探り当てた中心に、指を押し付けた。
ぎゅっと、目を力強く閉じ、クロは熱っぽい声を繰り返している。
……ちょっとだけ、不安になった。
「……ごめん。痛かったり、しない?」
「し、しないよ。だい、じょうぶ、だけど」
だけど、という言葉。
不安が消えない。
「でも、なんだか変な感じがして……」
どきどきが、あふれ出て。
自分でもよくわからない感情を持て余してしまっている。
「……」
ぼくにはわからないことが多い。
クロの気持ちだって、言葉にしてもらわないとわからない。
言葉は、魔法だ。
誰かの心を相手に伝えて、その心をちょっとだけ軽く、あるいは重く、もしかしたら闇の中に沈めたり、逆に心の中を暗闇を照らすことだってできるかもしれない。
この魔法がなければ、クロの気持ちを知る機会はきっとなかった。
だから、クロの言葉をぼくは信じることにする。
彼女の大切な部分に触れている指を、少しずつ奥へと進ませていった。
「あ、ああ……んぁ……っ」
暖かさだけではない、しっとりとした湿り気を感じる。
「はぁ……う……んぅ」
……じんわりと。
指先に感じる暖かさが増したような気がする。
「や、やだ……」
「え?」
何か、間違ってしまったのだろうか。
そんな言葉をこぼすクロの姿に、焦りを覚えてしまう。
ふるふると首を横に振るクロの姿に。
でも、君はぼくのことをじっと見上げて。
「わ、わたしが、ね。きみを気持ちよくしてあげたかったの。赤ちゃんが欲しいって言ったのはわたしなんだから」
また、真っ赤になりながら。
「それなのに……こんな……わたし……」
少し、瞳を涙で滲ませながら。
「だから、わたしだけが、……き、気持ちいいのは、違うんだよ」
もそもそと体を起こして、ぼくの胸にそっと手を添えた。
君が起きたから、押し倒すような姿勢から、君が寄りかかっているような姿勢になって。
「二人で気持ちよくなりたいな、って」
ばかだけど、勉強したのだと。
そう、口にして。
ぼくに、ズボン越しに触れて。
「わたしだけじゃなくて、きみだけでもなくて。二人で、一緒に」
真っ赤なまま深呼吸と。
何度かの頷きをして。
落ち着かないまま、そこに触れた手を何度もにぎにぎとしていた。
「……あ、うう」
恥ずかしいような。
期待をしてしまうような。
そんな、触れ方。
「……す、すごい。ちょっと触っただけ、なのに」
かちゃかちゃと。
君がズボンを脱がそうとしている。
ちょっとだけまごついて、ちょっとだけ下手くそな自分に涙ながらに。
それでも、一生懸命に。
「わ」
クロに見られていることに、恥ずかしさが襲ってくる。
「……きみの、これ」
目を丸くしたクロは。
「ちいさい……」
「うう」
そんな、思ってもみないダメージが突き刺さる言葉を。
「……の?」
「え……?」
首をかしげた。
二人揃って。
お互いの反応がちゃんと理解できなくて。
「ちいさい? それとも大きい? 他の人の、見たことないから……わかんなくて」
「ぼ、ぼくもわかんないよ。自分のが大きいのかなんて。……そもそも、こんなになったの、今日が初めてだし」
「そ、そっか」
わかんないんだね、と呟くクロ。
ちょっとだけ、きみがそんなことを気にした理由がわからなくて、興味を抱いて。
「……何か、気になるの?」
「う、うん……。だって、男の子のこれ、大きいと……女の子が痛いこともあるって、そんなことが書いてあったし」
まるで喘ぐように。
そんな言葉を口にした。
「で、でも」
そう言ってクロは微笑んで。
「わたし、きみがしてほしいことなら、なんでもしてあげたいから。だから、そういうことができないと困るなって」
そんな、言葉を。
もう、我慢の限界だった。
「あ……」
もう一度、押し倒す。
こんな関係になる未来なんて、ぼくは想像したことはなかったと思う。
きみがそばにいてくれるだけでよかったと思っていたから。
だけど、もうダメだ。
欲張りなんだってことを自覚してしまったから。
もう、君のことを離せそうにない。
「ぼく、も……。もっと、いろんなことを君としたいって思ってる。告白も、君からで。君の気持ちに応える形だったぼくにできるかは不安だけど……」
それでも。
「クロにも、幸せな気持ちになってほしいって思うから」
だから。
君が望むのなら。
「ぼくだって、君のためになんでもしてあげたいって思ってる」
もっとたくさん抱きしめあって。
もっとたくさん、キスをして。
もっともっといろんなことをして、家族からは祝福されて、二人で新しい未来を歩んで。
それができたら、きっととても幸せなんだと思う。
押し倒したクロのスカートをたくし上げて、その小さな入り口に先端をそっとあてがう。
……しっとりとしたものを感じる。
きっと、お互い準備はもう整っていた。
「あ……ん」
ぐっと、腰に力を込めて。
「んん…………っ」
ずずず……と、少しずつ。
君の小さなあそこに、押し込んでいく感覚がある。
「あ、ああ……う、ん……ううっ」
先端の部分がクロの中に入って。
ぼく達の間に、心以外の繋がりができて。
ゆっくり、ゆっくりと奥へと進んでいけば。
そこで何かに阻まれたような感じがして。
その直後に、繋がった場所から赤い液体が。
「……っ」
クロは苦しそうに唇を噛んでいて。
初めてはそういうものなのだという知識だけはあったぼくには。
知識だけしかなかったぼくには。
何をしてあげられるのかわからなくて。
「クロ」
名前を呼ぶことぐらいしかできない。
ここでやめてしまった方がいいのではないか、なんて弱気な考えすら心の奥底から滲み出てきている。
「……だ、だいじょうぶ……だから」
それでも、そんな言葉を口にする前に。
クロは、ぼくの言いたいことなんてわかってるというように。
苦しいだろうに微笑んで、首を横に振った。
「い、痛く、ない……こと、ないけど……でも、平気。大丈夫」
そんな痛みよりも。
「きみと、繋がれたことの方が嬉しい、から」
だから、やめないでほしいと。
そう懇願されてしまっては。
「わかった」
そう、言う他ない。
けれどせめて君の感じる痛みを少しでも和らげてあげたくて。
キスをした。
「あ……」
舌を絡めるような、ちょっとだけ乱暴なキス。
さっきまでの触れ合うだけのものとは違う、他の場所に意識なんてもっていけないくらいに乱暴なキス。
「あん……ちゅ……はぅ……むぅ……」
唇を塞いで、キスをしながら。
「ん、んん……っ」
ぐっと、腰を沈みこませる。
「はっ……あ、ああああ……っ」
もう、これ以上は進まない。
クロの一番奥でぼく達は繋がっている。
そんな感慨と共に唇を離す。
「う……ううう……ん……っ」
苦しそうだった。
もう抜いてしまった方が、ここで終わらせてしまった方がいいんじゃないかって思うくらいに。
でも。
君が望んだことだったから。
そんな言い訳を心の中で唱えて。
実際にはぼくも繋がっていたいからで。
ちょっとだけ自己嫌悪しながら、クロが落ち着くまで待っていた。
「きみと……」
「うん」
クロは苦しそうに。
けれど、それでも笑って。
「きみと、今繋がってる……んだよね」
「……うん」
嬉しそうな表情で、そんなことを呟いた。
それがあまりにも綺麗で。
ちょっとだけ見惚れてしまった。
「いっぱい……ん……う、んんっ……きみが、いっぱい……だよ」
苦しげな呼吸で、喘ぐように君はそう言って。
「……手、握ってほしい」
ぼくに、その小さな手を差し伸べてきた。
痛みで涙をためているクロの瞳に見つめられて、罪悪感がずきりと、胸の奥を突き刺してくる。
ぼくの心が感じる痛みと、君が感じている痛み。
等価だなんて思わないけれど、少しでも和らげばいいなと思って君と指を絡め合うようにして、手を繋ぐ。
「……動いても、いいかな」
「う、うん……」
すぐに頷いて、いいよと微笑んでくれる。
「いいよ。もう、痛いの……ちょっとだけになったから……だから、もっともっと、きみのことを感じさせてほしい」
「……ありがとう」
軽く、触れる程度のキス。
「あ、あ、あ……っ」
そして、ゆっくりと腰を引いて、押し返す。
「……ふっ。ん、んん……や、あ……っ」
その動きを細かく繰り返す。
繋がった部分の熱が、動きを繰り返すたびにどんどん増していくのがわかる。
どうしよう。
気持ちいい、すごく。
クロのかわいい声が耳を擽ぐる度に、今すぐにでも果ててしまいそう。
でも、こういうのは早漏っていうらしいし、少しだけ見栄を張りたい。
ただ……。
気持ちいいのが自分だけだったらどうしよう。
クロに無理をさせてしまっているのではないか、なんてことを考えて。
だから、クロにもしも少しでも痛がるようなそぶりがあれば、すぐにでも動くのをやめようと思っていた。
……そうできるように、自分に言い聞かせていた。
けれど。
「すき……」
痛みとはまるで違う、熱情のこもった吐息と言葉。
大好きだと、そううわ言のように呟いている。
「クロ……っ」
繋いだ両手に力がこもってしまう。
「わたし……い、いま……あ、んっ……すごく……やっ、……す、すごく、幸せ……しあわせ、なんだよ……っ」
ぼくも。
今、こうして心と体の全てで繋がっているということが奇跡のようで。
これ以上ないほどに幸福を感じている。
でも、そんな想いを言葉にして君に伝えたいのに。
それだけの余裕を持つことができなくて、ただ懸命に、ぼくは、君のことを一番近くに感じていた。
耳元で聞こえる、甘く、かわいい君の声。
少しずつ、でも確かに膨れ上がる射精感。
……もう、ダメだ。
限界が近い。
「クロ……っ、ぼくも、君のことが大好きなんだ……クロっ」
大好きだ。
そんな気持ちをただただ、伝われと願いを込めて。
繋ぎ合わせた手に力を込める。
「あっ、ううっ、気持ち、いいよ……っにゃ、あ、んっ、んんん……っ」
ぎゅっと。
強く締め付けられて。
もう、本当に限界だった。
「く、クロ……もうっ……ぼく……っ」
「わ、わたし、もっ……もう……だ、だめ……っあぅ……」
抱きしめるように、強く締め付けられて。
クロは、小さな体をぶるぶると震わせた。
「う、あ……はっ……う、ううう……んん……んんんんっ」
ぎゅっと抱きしめられるような圧迫感と、震えるような感触に。
……ぼくは、クロの中で果ててしまった。
全てを出し切って、中からゆっくりと引き抜いて。
「あっ、んん……」
ぴくっと震えたクロの頬に、何度もキスをした。
感謝の気持ちしかない。
恥ずかしいと言っていたのに。
ぼくのためならなんでもしたいと言ってくれたり。
痛かったはずなのに、そんなそぶりを見せずにいっぱい、いっぱいこの小さな体で頑張ってくれて。
本当にありがとう。
そんな気持ちを込めて。
そうして、そのまま崩れ落ちるように、二人、寝床に沈み込んだ。
「……しあわせ」
意識が消える前、クロの声が聞こえた。
「……たぶんわたし、今、すごくしあわせなんだと思う。きみと心だけじゃなくて、全部一緒になれた」
ぼくと同じ気持ちを抱いた、君の声が。
そっと握った手に、同じ心と、同じ時間を、これからもずっとこうして過ごしていけるようにと込めた願いは独りよがりじゃないんだと、そう教えてくれた。
「わたしね、今すっごく幸せだよ」
「……うん」
それは、ぼくも同じだ。
君と二人でこうして一緒に横になって。
昔のように話して。
それでも、確かにぼくたちは先に進んでいる。
「あとで、姉さん達にも言わないとね」
そんなことを呟けば、クロは思ってもみなかったと言わんばかりにきょとんとして。
目を見開いて。
そっか、と呟いた。
「そう、だよね。お姉さん達にも、言わないとね。わたし達が……その……け、結婚を前提にしたお付き合いを始めたんだって……」
口に出されると、ちょっとだけむずむずと心がざわつく。
ただ、それも、少し恥ずかしいと言った程度のもので。
「……結局、おばさんたちの言った通りになっちゃった」
「……いや、だった?」
「そんなことないよ」
そろそろ、将来の旦那と一緒に暮らしたほうがいい。
なんてことを言っていたんだと、クロから聞いていたけれど。
それはただの戯言なんだろうと思っていたけれど。
でも、それが現実味を帯びてきたことを考えても、おばさんたちに対する呆れとか、そんな感情よりも。
君と一緒にいられることへの嬉しさの方が先に出てきて。
「これからもよろしくね、クロ」
「……うん、こっちこそ」
笑顔で、そんな言葉を交わして。
そうして、ぼくたちはもう一度唇同士を触れ合わせる程度の、軽いキスをするのだった。
クロちゃんの可愛さを皆もっと軽率に書いていけ
なお、すでにお姉ちゃんはわずかに聞こえてきた声で理解して、ちょっとだけ顔を赤くしながら赤飯を炊いています。