※この作品はR-18です。

寄生モンスター図鑑   作:それも私だ

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クリペニス(寄生蟲入り)準備回。何この……何?
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寄生蟲《カヒル》

《カヒル》

 ・吸血ヒルの一種。体長2cm、厚さ8~10ミリほど(成体)。体色は黒い。

 ・吸血口の中に針のような器官を持つ(この針は産卵管を兼ねている)。刺されても痛みは感じないが、その代わり蚊の時のように激しい痒みに襲われる(痒みは蚊の比ではない、痒みは█時間ほど持続する)。その特性から拷問や脅迫などの手段に使われることもある。

 ・吸血部位は主に女性の乳首または陰核。蚊と違って吸血を終えても吸い付いたまま、すぐには離れようとはしない(外部寄生する)。また、吸い付いている間は痒みから解放される(針そのものにマヒ効果がある)。

 ・吸血時に卵██個相当の卵胞を産み付ける(痒みの原因、█時間で孵化する、形状は細長い棒状)。幼生の外見は糸ミミズに酷似している(一部地域では蚊と混同されていて『ボウフラ』とも呼称される)。

 ・幼生の誕生を感じ取ると、親ヒルはすべての子ヒルを吸い込んで被害者から離れようとする。孵化後の卵胞は被害者の体内に吸収される(皮膚に近いとホクロのように黒点化する)。

 ・何らかの事態により被害者の体内に子ヒルが取り残されると、寄生部位がヒルを蓄えて膨張/肥大化していく(体内から自力脱出できない)。乳首なら牛と同等に、陰核なら小さなペニスのように腫れ上がる(子ヒルが体内で孫ヒルを産む、徐々に針のマヒも機能しなくなっていき最終的には発狂に至る)。

 ・南方地方(湖や泉など)に多数生息する。当名称は████地方での古くからの名称であり、そのまま『蚊蛭』と呼称する。元は『蚊のような蛭』あるいは『蚊と蛭(痒みをもたらすもの)』などの、このヒルを指す言葉が短縮、変化していったものと思われる。

 

【被害者NO.██████】

 ・███地方を拠点とする武装商人(治療済み)。

 ・保護時の状態は、陰核肥大化のみ(医師Jが対処)。

 ・驚くことに被害者は自我を保っていた。

 

 

────────────────────────────────

 

 

 武装商人であるクリスは独り、南方への道を歩いていた。

 

「……暑い。なんで南方はこんなに暑いのよ~……」

 

 通常、商人は同業者同士で出資しあい、馬車や護衛を揃えてから集団での大移動を行なう。

 野盗対策はもちろん、経費を出来るだけ安く抑えるためだ。

 しかし、《武装商人》──通称《武商》は違う。

 

 武商は、それらすべてを単独(ひとり)でこなす。

 ──馬車? 馬が潰れたらどうする。馬が通れない道はどうする。

 ──集団移動? 歩調を合わせて到着が遅れるくらいなら先回りして顧客を奪ってしまえ。

 ──護衛? 最後に頼れるのは自分自身だろうが。

 

 信用(たにん)を第一(たより)とする商人とは真逆をゆく存在。それが武商である。

 

「──おおっ! 泉発見! 汗が流せる、涼める! 休憩だ!」

 

 クリスは脱いだ服と荷物を草木で隠すと、一直線に泉に駆け出した。

 よほど暑いのか、よほど汗をかいていたのか、水着も下着もつけていない。

 どうやら羞恥心も草木の中に置いてきたようだった。

 

「ああ~……極楽、極楽……」

 

 泉は意外にも浅く、風呂桶(バスタブ)程度の深さしかなかった。

 クリスは泉の中に座り込み──無用心にも目を閉じて──肩に水をかけたりして存分にくつろいだ。

 

 だが、そこは決して極楽などではない。

 知る人ぞ知る地獄であった。

 

 ……うまい話には裏がある。目さえ閉じていなければ、クリスは無事で居られただろう。

 

 小指の先ほどしかない黒く小さいヒルが水中を泳ぎ、クリスに近づいていた。

 しかし、クリスは目を閉じているのでヒルに気付けなかった。

 

「~♪」

 

 2匹のヒルがクリスの乳首に噛み付いた。……いや、吸い付いた。

 しかし、クリスはまったく気づかない。

 痛みはなかった。

 

 それどころか感触すら与えていないようだった。

 ヒルが乳首をずっぽりと銜え込んでもクリスは動じない。

 体内に隠し持っている針(・)を深々と刺し込んでもクリスは動じない。動じさせない。

 

 このヒルの名称は《カヒル》。

 『蚊のような蛭』だから《カヒル》と呼ばれている。

 人は蚊に刺されてもそれに気づくことはない。つまりはそういうことだ。

 

 蚊は吸血の際、血液の凝固を抑止するために唾液を注入する。

 吸った血が、蚊の中で固まってしまわないようにそうする。

 また、これが痒みの原因でもある。

 

 このヒルもまた、吸血の際に痒(・)み(・)の(・)原(・)因(・)を注入していた。

 もっとも、食事のためではなく、子孫繁栄のためだったが。

 

 そうとも。カヒルがクリスの乳首に注入したのは、卵(・)だ。

 だが不(・)運(・)にも、吸血口と産卵管を兼ねた針は、乳管に入り込んでいた。

 通常ならば乳首の中(・)に埋め込まれるはずだった卵胞は、乳(・)管(・)に吐き捨てられていた。

 

「……ん? ──イヤァッ!?」

 

 乳首のヒルに、やっと気が付いたクリスは反射的に引き剥がしてしまった。

 それが破滅への引き金になるとは知らずに。

 

「~~っ!! か、かゆいいぃぃぃっ!?!?」

 

 直後、猛烈な痒みが乳首に走る。

 クリスは乳首を摘み、捻り、引っ張り、弾いたが、いくら掻き毟っても痒みはおさまりをみせない。

 

 いや、むしろ逆に事態を悪化させていた。

 それらの悪あがきによって、乳管の奥へと卵胞が押し込まれてしまった。

 乳首だけで済むはずだった痒みは乳房全体に広がった。

 

 あまりの痒みにクリスは揉みしだくように胸を掻き毟ったが、やはり逆効果だった。

 掻けば掻くほど痒くなる。乳房が顫動(せんどう)する度、卵胞は乳房の奥深くへと飲み込まれていく。

 

 卵胞を取り除くことは、もうカヒルにも不可能だろう。

 仔(・)の方から出ていってくれることを期待するよりほかない。

 

 そうこうしているうちに、クリスの陰核に新たにカヒルが吸い付き、覆い被さっていた。

 どれほど敏感なところだろうが、猛烈な痒みの前には些事(さじ)である。

 3匹目のカヒルにクリスが気が付くことはなかった。

 

 陰核は《女性のペニス》と称されることもあるが、陰核に穴は存在しない。

 3つめの卵胞は本(・)来(・)の(・)手(・)順(・)通(・)り(・)、陰核の内部(なか)に確りと埋め込まれた。

 

 不幸にも乳管に入り込んだ卵は、おそらく乳管の途中で孵化し、乳首をこじ開けて体外へと離脱するか、乳葉(ふくろこうじ)に行き着くかのどちらかだろう。

 可能性は低いが、まだ希望は残されている。

 

 しかし、陰核の場合はそうはいかない。やわらかな肉の中で、卵は孵化する。

 そして取り除くことの出来ない卵(カヒル)は肉(・)の中で増え続け、肉(・)を膨張させる。

 

 乳首は牛のそれになることはないが、陰核はやがてクリペニスに変容するだろう。

 その中を大量のカヒルが絶えずうごめき、痒(・)み(・)を生じさせる。

 

 そうならないためにもクリスが次に取るべき行動は、何(・)も(・)し(・)な(・)い(・)こ(・)と(・)だ。

 親ヒルは孵化した子ヒルを宿主の体内から吸い上げてから離れる。

 カヒルを振り払うことは、痒みは、言わば制裁なのだ。

 

 つまり、最も適切な対処法は『無視』と『放置』だということだ。

 なんてことはない、よくある迷惑商法への対処法そのままだった。

 

 この手のやり口は、被害者をいかに焦らせることができるかに集約される。

 クリスは、悪徳商法にまんまと乗せられていたと言えよう。

 

 クリスは卵の押し売りを無視するべきだったのだ。

 苗床の契約書2枚にサインをせずに放置するべきだった。

 

「んぎっ!? く、クリにもおおおっ!!?」

 

 そして今、最後の契約書に手が伸ばされた──。

 

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