《ダブル》
・ダンゴムシ。体色は白く、生理用ナプキンとほぼ同等の大きさ。
・珍しいことに、この蟲は交配することがない。雌雄同体の個体(便宜上『オス』と呼称)が、無性体の同種(便宜上『メス』と呼称)へと幼体を産み付ける形で繁殖する。幼体がある程度成長するまでの間、オスはメスと結合したまま過ごす(握り拳を掴んだような体勢、オスがメスを掴む、基本的に蟲はメスの方が大きいのだがこの蟲の場合はオスの方が大きい)。これらすべて種としての生存率を高めるための進化だと思われる。
・幼体は管のような器官を持ち、それを使い母体に吸いついて栄養等を得る。この器官は成長すると
・メスは糧と安全を提供する保育器に過ぎず、生き物の穴であればオスは何にでも産み付ける。
・人体への寄生被害は、主に女性。生理用ナプキンと誤認した事例が最も多い(就寝中など無抵抗かつ無自覚の間に被害に遭う)。
・生理用品として誤用された場合、不幸なことに輸蟲管の位置と膣口の位置が重なってしまうため、高確率で輸蟲管が膣内へ侵入、子宮へと幼体を産み付けられてしまう。
・幼体はある程度成長すると自発的に胎内から脱出を試みるので、自然除去が可能。なお、極稀に脱出せずに母体の卵管(子宮と卵巣を結ぶ管)と結合しようとする個体が現れることがある。
| 【被害者NO.██████】 ・███地方で活動していた傭兵(消息不明、現在捜索中)。 ・被害者とコンビを組んでいた男性からの通報により発覚。 |
「げっ……」
ミニスカートの下──股から
「おい、どうした? ケガでもしたのか?」
「……ごめん、たぶん生理」
「なんだ生理か。驚かすなよ」
「予定だと明日のはずなのに。──ごめん、ちょっとだけいい?」
「ああ。俺は後ろ向いてるから」
カークは
ラケルも特に気にした様子はなく、その場に座り込み、下着を脱ぎ始める。
ラケルとカークは傭兵だ。自分から孤立する愚は犯さない。
無防備となる排泄や装備変更の時こそ、ひとりになってはいけないのだ。
命を捨てるよりかは恥を捨てた方がはるかにマシだと、よく理解している。
そうだとしても男女で恥を捨て合う仲になるのは珍しい事だ。
よほど性癖が歪んでいない限りは、誰しもそんな
大抵の者は譲歩と妥協をして同性と組むに至る。
では、彼女達は譲歩と妥協をしなかったと言えば、そんなことはない。
(なんで依頼中にきちゃうかな~……、でも妊娠してなくてよかったぁ。まだ引退は早いもんね)
ラケルとカークは恋人同士。恋仲の関係だ。
しかも、すでに肌を見せている。今更恥じることなど、あまりない。
初めこそ距離を取ってはいたが、いまでは
そう思うことが出来るほどの信頼を培ってきた。
それだけの時間を共に過ごしてきた。
……それでもラケルとしては、着替えを眺められるのはさすがに嫌ではあるが。
どうして嫌なのかは解説するまでもないだろう。それこそが彼女の《譲歩と妥協》なのだから。
(えーと、どこやったかなぁ?)
ガサゴソと、ラケルは自分のナップサックを漁るが目当ての物はなかなか出てこない。
薄暗い森の中で、暗い布袋の中を
ラケルは諦めてナップサックから中身を取り出して並べることにした。
「──チッ! まずい、敵だ!」
「えっ!? わわっ……ナプキン──あった! ショーツ──よし!」
だが運が悪いことに、これから取り出すという時に敵の襲撃を受けた。
しかし、とっさにナップサックをひっくり返したおかげで──中の物をすべてぶちまけてしまったが──すぐに目当ての物を見つけることができた。
ラケルは生理用ナプキンを股に挟み込むと、天へと両脚を突き出し、一息に新しいパンツを穿いた。
そして、脚を振り下ろす──その勢いのまま跳ね起きる。
ラケルがカークの方に視線を向けると、愛しの
「お待たせ! 援護するね!」
彼女は弓使い──後衛であるので、そのような派手な動きをしてまで急ぐ必要はなかったが、突然の敵襲に焦ったのだろう。
いや、恋人をひとり危険にさらしたままにしておきたくなかったからか。
傭兵はその性質から、死にやすい職業の筆頭だ。
結ばれて早々死に別れるなど冗談ではない。
さあやるぞと、ラケルが愛用の弓を構えたその
「ひゃうっ!?」
──
「ラケル!?」
「ご、ごめん! 上から雫が落ちてきて驚いただけ!」
ラケルはとっさにそう応えたが、実際は大きく異なる。
突如として受けた、目視できない何かによる、攻撃にも満たない謎の接触。
それは小熊以外の何者かがこの場に現れたことを意味する。
そして触れられた箇所が
(なに、新手っ!? どこから? でもそんなのに構ってる暇はない……!)
ラケルは
この
彼の気をこれ以上、散らすわけにはいかなかったのだ。
人として、仲間として、恋人として──。
あらゆる
命あっての物種だ。まずは目の前の脅威を打ち払うべきだと。
……だがこの判断が、
ラケルが放置した
荷物をぶちまけたときに紛れ込んだのだろう。生理用品だと思った
奇妙なことに、蟲は、生理用品ととてもよく似ていた。
色も、形も、大きささえも──。
それはつまり、ラケルは生理用品と寄生蟲を取違えて女性器にあてがったことを意味する。
パンツの中に、女性器の真下に、赤の他人を
この蟲は、雌雄同体である
あくまでもメスは、
「あぅぅ……♡」
ラケルの膣口に押し当てられた蟲の輸蟲管──いや、蟲のチンポは、
それはまるで、
ちょっとした
思わ
「落ち着きなさい、落ち着くのよ、ラケル……。矢を
ぞわりとした感覚を
呼吸を乱されようと意志は、放った矢は正確に小熊の左目を
「ッ! ここだッ!!」
不意の激痛に体勢を大きく崩した小熊を、カークの剣がさらに追い立てる。
無防備となった脳天に加えられた一撃は、小熊を動かなくするには充分な威力だった。
「……、……もう動かないよな?」
小熊の死体からやや引き気味にカークは
そんな彼の安否を確かめに、戦闘終了も早々にラケルも小走りで駆け寄る。
……パンツの中の寄生蟲をそのままに。
この時の彼女は周囲の確認とパンツの外側を軽く払うだけで終わると思っていた。
だから寄生蟲はそのままだ。まさかパンツの中から直接触られたとは思ってもいない。
いまだ続く蟲の
パンツの
小さな何かが触れただけではイタズラが通じるはずもないというのに。
彼女の中の常識が、非常識な事象を認めさせなかった。
それでも実際問題として蟲が
──
「ふう、勝てたな。さすがラケルだ。安心して背中を任せられる」
「んーんっ、カークが食い止めてくれたおかげだよ。……ッ♡」
戦いが終わり、労い合う2人に蟲が水を差す。
小刻みに震えていた蟲のチンポが、ほんの少しだけとはいえ、ついにラケルの膣口を割り開き、その内側へと
ラケルは反射的に内股になり、両手で
──すると、先程までの
人間のペニスに少し似ている、しかし
「あ♡ あぅ……あっ、あっ……♡」
不意の一撃を受けた小熊がそうであったように、ラケルも突然のことに耐え切れず地面にへたり込んでしまう。パンツの
その衝撃で、さらに奥深くへと蟲のチンポが
起点こそ蟲の浅い挿入ではあるが、ラケルが内股になったことによる圧迫──
まるで、先ほどの連携の焼き直しが行なわれているようだった。
ここまでされては流石にラケルも気が付く。
(ショーツ……じゃなくて、ナプキンの間に
「お、おいっ! 調子でも悪いのか……って、生理がきたんだったな。一度、引き上げるか?」
「な、ナプキン持ってるから平気かなっ! そんなことより、荷物ひっくり返しちゃったから、カークは周囲の警戒をしてて! 急いでたから、ショーツもちゃんと穿けてないしっ?」
「あー……、わかった」
急にへたり込んだラケルを見てカークは慌てたが、その原因と思わしきものは、あらかじめ彼女自身の
地面にぶちまけられた荷物に彼は苦笑いを浮かべながらも、先ほどと同じように背を向けて周辺の警戒をすることにした。
自分の指示に素直に従ってくれたことに
穿き替えたばかりのパンツは経血と愛液で
(これ、私の持ってるナプキンじゃ……ない?)
目を
それでいて、どこか
(とりあえず、
何はともあれ、まずは剝がさないことには始まらない。
安全を確保する意味でも。調査をする意味でも。
自分は何に何を挿入されているのか……恐る恐るナプキンへと手を伸ばして
「────ッッッ!!! ……!!」
しかし、ラケルが悲鳴をあげることはなかった。
なぜなら、人は本当に恐ろしいものを目にしたとき、本当に恐ろしい目に遭ったとき、悲鳴すら出せないのだから。
それでも、それでも傭兵として培ってきた経験がラケルを最善へと導いた。
ずるりずるずると、しかし音を立てることなく、少しずつ
それはラケルの
ぬるりと。
慎重に、慎重に。
そして──
ラケルは気力を振り絞り、股から蟲を引き剥がすことに成功した。
蟲の幼体を産み付けられるという、最悪の事態は回避できた。
「ハァ、ハァ、……っ!」
そう──この場で回避できたのは《最悪の事態》
あろうことか、ラケルは蟲をナップサックの中に収めていた。
ラケルは蟲を殺すことも逃がすこともせずに捕らえることを選んだ。
あのときは知らなかったとはいえ、いや知ってしまったからこそ、
やすやすと手放すには惜しいと思ったのだ。
だから、ラケルは
彼に気づかれないように、慎重に慎重を重ねて。
(すごく気持ちよかった。
カークとの行為は、いつも
さすがに濡れはするし、多少は感じたりもするが、それは愛しい気持ちから来る割合が多い。
カークは技術だけでラケルを感じさせたことは、一度たりともないのだ。
それどころか、彼は愛情だけで彼女をイかせたことさえない。
気持ち良いのはカークだけだ。
──この蟲なら、きっと私をイかせてくれる。
──この蟲となら、イク演技をしなくてもいい。
──私だって気持ち良くなりたいのにッ!!
カークはラケルに甘えていた。そうとは知らずに。
ラケルはカークを甘やかしていた。愛ゆえに。
ラケルの
蟲が与えた快楽が、ヒビをこじ開け
一見して良好な関係を築き上げ、結ばれたこの
過去見過ごされてきた重大な問題は、今ここで致命的な問題へと変貌していく。
ラケルが思えば思うほど、蟲への恐怖は和らいでいき、代わりにどす黒い何かが膨れ上がる。
蟲は彼女の体に寄生することは出来なかったが、心に寄生することは確かに出来ていた。
「……もう終わったよ」
「おっ、そうか。じゃあ行くか」
「あの人達、幸せそうだったね」
「そのおかげで、花なんかのために俺達が命張ることになったんだけどな。……店屋で買える花なのに」
ラケルとカークは、自分達に花束の調達依頼を出した老夫婦について語っていた。
2人が森を探索していたのは依頼を受けたからだった。
あのあとも大きなケガを負うこともなく、
よほど熊との遭遇が堪えたのだろう。
「あら、いいじゃない。思い出の場所の花を贈るなんてステキよ」
「ははっ、じゃあ次は俺達が出してみるか? 数十年後にさ」
「ふふっ、それもいいかもね。──思い出の熊の毛皮を持ってきてほしいんです!」
「やめろよ死んじまうってーの! わははは!」
しかし、
いや、笑い話へと昇華できたのは2人の信頼によるものか。
「──それじゃあ、先に宿に戻ってるから」
「俺はもう少し町を見て回るかな」
「
「またあとでな」
ひとしきり笑いあうと、ラケルは一足先に宿に戻ることにした。
その足取りは、
生理中だからあまり外を動き回りたくない、ということもあるが、森で得た戦利品を早く使いたかったからだ。
経費節約のために、宿で借りた部屋は1部屋だ。資金は共有しているから勝手に使うことはできないし、勝手に別行動を取るのも問題だ。
だから急がないと、早くしないと
早足で借り部屋へと戻ってきたラケルはベッドに腰掛けると、ナップサックの中から戦利品の入った布袋を取り出した。
「おいで──」
経血の染み込んだナプキンを捨て、森で得た戦利品──寄生蟲と取り替える。
待ちきれなかったのか、パンツは半脱ぎ。
「こ、これぇ……♡ ああっ……ふっ……はぁ……♡」
恋人から隠れて
ラケルは森のときよりも早く、そしてより深く感じていた。
演技をしているわけではないのに、いやらしい息遣いになってしまっている。
ましてや、事を始めたばかりである。
それほどまでに、ラケルにとって蟲との出会いは衝撃的だったといえよう。
それほどまでに、カークの知るセックスは彼の独りよがりだったといえよう。
「き、来てぇっ! ──あああんぅっ♡♡」
そして、ついには体を許してしまう。
自らの手と体で蟲を
ラケルの意思で蟲を求め、受け入れた。
そこに不可抗力や優先順位付けといったものは存在しない。
今この瞬間。カークは人知れず、大切な恋人を寝取られたのだ。
ちっぽけなムシケラごときに、言葉通り命をも預けられる最愛の人を奪われた。
カークは相談すらされなかった。
ラケルは相談すらしなかった。
──これが、この事実が意味するところは計り知れない。
いよいよ、ラケルの子宮口へと蟲のチンポが口付けをする、まさにそのとき──。
「ただいまー」
彼は帰ってきた。
「きゃああああああっ!? ──んんんんんっ♡♡」
ラケルは、やはり反射的に股を閉じて隠していた。
……両手を股に挟んだまま。
それにより圧迫を受けた蟲は、限界までチンポを伸ばしていた。
……子宮口にめり込み、子宮を押しあげるほどに。
よりにもよって、カークの目の前で、ラケルと蟲は深い結合を果たしたのだった。
「の、ノックくらいしてよねっ!?
「ごめん、忘れてた。──ああ、ナプキン替えてたのか。そりゃ驚きもするか」
「そ……そうよ! ナプキン替えてただけだから! これからショーツ穿くんだからねっ!?」
「お、おう。……見たの俺なのに、なにキレてんだ……?」
「いいから、ちょっと出てって!」
カークはラケルの剣幕に気圧され、素直に部屋を出ることにした。
女を怒らせると後が怖いのは、ラケルとの交際で得た確かな経験だ。
……この時ばかりは、それが裏目に働くのだが。
「……そうよね♡ ナプキンの交換が済んだら、次はショーツを穿かないとね……♡」
カークが部屋から出るや否や、ラケルは半脱ぎだったパンツを引き戻した。
それが当然であると言わんばかりに、蟲を股に張り付かせたまま──。
蟲もラケルの思いを受け取ったのか、お返しとばかりに子宮内部へと幼体を送り込む。
幼蟲たちは思い思いの場所に陣取ると──
腹部から管を伸ばして子宮壁に吸い付く姿は、胎児そのものであった。
カークが長い時間をかけて得た
男として、これほどまでに屈辱的なことは、ほかにないだろう。
カークが独りよがりだったこと。
カークより蟲の方が気持ち良くしてくれること。
ラケルが長い間、蟲と深く深く繋がったままでいたこと。
ラケルが蟲の仔を孕んだこと。
ラケルの気持ちが蟲へと傾いたことに。
それらすべてをカークが知ることになるのは、もう少し先の話──。