※この作品はR-18です。

寄生モンスター図鑑   作:それも私だ

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精液スライム後日談、次話。MC要素薄め・寄生描写多めの説明回。
 ・そのうち書き直すかもしれません。たぶん。


 └依存

 人は強い生き物だ。

 

 鉱石を剣と盾に変え、他の生き物(すべて)を圧倒する力を奮う。

 数多の群集を率い、環境(すべて)を支配し管理する力を奮う。

 

 その一方で、人は弱い生き物でもある。

 何かに縋(すが)らなくては生きていけない生き物だ。

 

 親兄弟から恋人、仲のいい友人といった隣人。

 あるいは国や宗教、職場・組織といった概念的なもの。

 果てはタバコや酒といった物品や娯楽にまで。

 

 特に最後のそれらは、ときに健康被害を引き起こす。

 とても分(・)か(・)り(・)や(・)す(・)い(・)ものだ。

 

 しかし、それでも彼(・)ら(・)は止めることはない。

 

 なかにはそれで死ねるなら本望と云う者もいる。

 どうせ死ぬなら好きにされてくれとも云うだろう。

 

 悪(・)い(・)と思っていて、なお続けるのだ。

 

 

「……うわぁ、パンツがぐしょぐしょ……」

 

 まるでお漏らしをしたように下着を濡らした女──アリサも、その内のひとりである。

 

「でもこれで、あたしが負けた証拠は全部──キャッ!?」

 

 アリサが(に)依存しているもの、それは──

 

「……頭上からは予想外だわ。まだ残ってたとはね」

 

 ──スライムだ。

 

 木の上からアリサの頭の上へと降ってきたスライムは、まるで投げつけられた卵のように滴(したた)る粘液で彼女の髪を汚した。

 

「ひとが悩みに悩んで気分転換に散歩に出てみれば。ザコが何匹も現れたかと思ったら、今度は頭から? ……とことん、コケにしてくれるじゃない」

 

 ふつふつと、しかし落ち着いた様子でスライムの塊を掴むと、そのまま眼前まで持っていき、仇を見る眼でスライムを睨みつける。

 それもそのはず。彼女の言う負(・)け(・)た(・)相(・)手(・)こそが、このスライム種なのだから。

 

 アリサはスライムに依存している。

 ……それも憎悪という形で。

 

「いいわ、あんたは特別に遊んでから始末してやるわ!」

 

 アリサはニヤリとした笑みを浮かべると、片手にスライムを掴んだまま器用にもパンツを下ろした。

 そのまましゃがみ込めば、両膝から伸びる布作り(パンツ)の橋──即席の処刑場の完成だ。

 

 スライムは、橋の中央に位置する二重布(クロッチ)の上に乗らせられる。

 アリサの目論見通り、粘液はパンツをすり抜けて地面へと落ち、そのすべてをぶちまけていく。

 

 飛び散る粘液が靴に掛かるのも無視して、逆にアリサも罵倒を飛ばす。

 

「卵の中身みたいにネバネバした塊のくせに、水みたいに簡単に布を通しちゃうってホント笑えるわね。自慢の粘液を失った気分はどう? 無力よね~。あっははっ!」

 

 二重布(クロッチ)の上には、白い粘液だけが取り残されていた。

 

 無色透明の粘液の躰を操作する、スライムの本(・)体(・)。

 パンツの上に在(あ)っては本物の精液のようにも見えてしまうそ(・)れ(・)。

 色だけでなく、奇しくも量(・)も精液(それ)に近い。

 

 その白い液体も二重布(クロッチ)の中へと吸われて消えた。

 

「そのままパンツの染みになるのが、あんたにはお似合いよ」

 

 そして謎の勝利宣言と共にアリサは立ち上がると、下ろしたパンツを引き上げた。

 

 スライムの粘液がたっぷり染みこんだ、ぐっちょぐちょのパンツを。

 二重布(クロッチ)の中にスライムの本(・)体(・)が留まったパンツを。

 スライムの依代となったパンツを。

 

 アリサは少(・)し(・)も(・)気(・)に(・)せ(・)ず(・)穿きなおした。

 

「ふう……、少しはスッキリしたわね」

 

 そもそもだ、そもそもの話、パンツは初(・)め(・)か(・)ら(・)濡れていた。

 

 当然ではあるが、それは漏らしたわけではない。

 また、愛液で濡らしたのでもない。

 粘液に塗れていたのだ。

 

 割れ目にぴったりとくっついた二重布(クロッチ)の表面に、白い液体がすっと浮き出る。 

 粘液はスライムの身体そのものだ。自由自在に操るなど造作もない。

 

 スライムはわ(・)ざ(・)と(・)負けたふ(・)り(・)をしていた。

 その方が今(・)は(・)簡単に取り付くことができるから。

 

 そう……先に潜入していた仲間達と合流するために、この場で打ち合わせていた。

 

「当面はここら一帯に潜む残党を狩り続けよう。身(・)体(・)の(・)中(・)か(・)ら(・)追(・)い(・)出(・)す(・)のはその後ね。どうせなら一網打尽にしてしまった方が安心よ」

 

 パンツの二重布(クロッチ)も確かに趣深い(おもむきぶかい)潜入先のひとつである。

 しかし、仲間が潜入していたのはパンツの二重布(なか)ではない。

 

 白い液体が──精液が真に辿り着くべき場所はひとつだ。

 

 精液とは、女の膣内(なか)へと吐き出される液体だ。

 膣内を旅して子宮へたどり着き、最後には卵管に集結する。

 

 つまり、先に集まっていた仲間達の居場所は、アリサの胎内(なか)となる。

 遅ばせながら参上したこの新参者が目指すべき場所も当然、そこだ。

 

 精液は膣口から膣内(なか)へと入り込むと、まるで生きているように膣を昇っていく。

 

 精液とは無数の精子の集合体。そしてこれはスライムの本体である。

 無数のスライムの微細な核(ほんたい)が、アリサの膣内(なか)へと浸入した。

 

 狭く閉じた膣内(みち)など、液体の前には関係ない。

 精液自身が膣を湿らせ、蛇(へび)のようにわずかな隙間をぬるりぬるりと滑(すべ)り駆け上がる。

 

 膣口の次は子宮口。膣内を通ってきた精液の蛇(へび)は子宮口にぶつかり、歩みを止めた。

 子宮口にへばりつき、無人の内部(なか)をうかがう。

 

 小さな子宮口の経(けい)は、わずかパスタ1本分。

 ただの水であったならば表面張力により、つっかえていたかもしれない。

 だが、精液は微細な集団客だ。同時に通るのが無理なら列を為せばいい。

 

 無理やりでもなく……しかし余裕を与えるでもなく。

 隙間なく絶え間なく、子宮口に精液を啜(すす)らせる。

 

 子宮口──子宮頸管(けいかん)は言ってしまえば、第二の膣。産道だ。

 穴であり、また道でもある。ならばまた、蛇(へび)のように潜り込むのみ。

 

 人外の、ましてや精液に遠慮も常識も辞書も何もない。

 最初(はな)から女の体を侵すことしか考えていない。

 

 子宮口を通り抜けた精液の先(・)は、じわりじわりと横に広がりを見せ、まるで子宮の領土権を主張するように侵略していく。 

 このままエ(・)状(・)の状態でいれば、子宮口を支配下に置いて膣と子宮を分断できるが、それはスライムの望むところではない。

 

 外に陣取った精液も余すことなく、予定通り子宮頸管(けいかん)を通らせる。

 とろとろと最後の精液が注ぎ込まれ、蛇(へび)は小さな池に姿を変えた。

 

「お腹の中にあ(・)い(・)つ(・)がいると思うと、ムカムカするけど……どうせあとで追い出せばいいんだし」

 

 あらゆる寄生モンスターが目的地とする、女の子宮(からだ)。

 アリサの中心地ともいえる場所に、ついにスライムのすべてが入り込んだ。

 

 自ら意志を持って行動する精液だ。

 ここまで入り込んでしまっては、取り出すことも困難だろう。

 

 パンツに染み込んだ精液が中出しされるなど、アリサに想定できるわけもないが、そもそも普通の女ならば精液の染み込んだ、モンスターの染み込んだパンツなど穿きもしない。

 

 ──そもそもだ。そもそもの話、前提が違うのだ。

 

 アリサは精液の染み込んだパンツを穿くような変態ではない。

 モンスターに触れたパンツをそのまま穿く無用心さも持ち合わせていない。

 うっぷんを晴らすためとはいえ、憎悪の対象を大事な場所に近づけるなどありえないのだ。

 

 そして『肚の中にあ(・)い(・)つ(・)がいる』と口にした。

 自身の胎内に何かが潜んでいると自覚している。

 

 子宮の中で小(・)さ(・)な(・)池(・)になってみせた、精液のようなスライムの本(・)体(・)。

 何者にも邪魔されることなく、小(・)さ(・)な(・)池(・)になってみせた。

 ……では、あ(・)い(・)つ(・)はどこにいるのか?

 

 アリサはこうも口にした──『何匹も現れた』、『一網打尽にする』と。

 このスライムが初見ではないとも言っている。

 

 何匹も相手取ってきたのに、子宮には他の精液(スライム)の姿がない。

 膣に残っていたのであれば合流してその堆積を増やしていただろう。

 しかし、それもなかった。

 

 膣の先は子宮頸管(けいかん)および子宮内部。子宮の先は卵管。卵管の先は──卵巣。

 

 繰り返しになるが、このスライムの本体は精子・精液の様相(よう)だ。

 通常、精液が卵子と結合──受精する場所は卵管と考えられている。

 

 ──小さな池は、卵管を目指して子宮の中を這い回っていた。

 

 子宮口よりもさらに小さい、子宮の広間から伸びる狭い卵管(つうろ)へと。

 通(・)常(・)で(・)は(・)あ(・)り(・)え(・)な(・)い(・)量(・)の(・)精(・)子(・)が群を為し、卵管の入り口を目指して移動を始めた。

 

 卵管の入り口を覗き込むと、そこには何(・)も(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

 小さな池は再び蛇(へび)へと姿を変える。

 邪魔者のいない、第三(さいご)の産道へと潜り込むために。

 これまでと同じ要領で、これまでと同じ用量を通らせる。

 

 最も狭い間質部(かんしつぶ)から峡部(きょうぶ)を抜けても、仲間の姿はなかった。

 

 そうして膨大部と呼ばれる幅1cmにも拡張された管の終端から、卵巣表面へと投げ出される。

 

 イソギンチャクのような形をした卵管采(らんかんさい)の掴む、ぽ(・)っ(・)か(・)り(・)と(・)小(・)さ(・)く(・)口(・)を(・)開(・)け(・)た(・)卵巣へと、びちゃびちゃと精液の雨を浴びせかけた。

 

 卵巣は、まるで歓迎するかのように口を開いて待ち構えていた。

 しかし、迎えるのは排卵されたばかりの卵子ではない。

 

 卵巣そ(・)の(・)も(・)の(・)だ。

 卵巣の中に貯(・)蔵(・)された精液(なかまたち)が、新たな同志を歓迎する。

 

 散々探してきた仲間達(あいつ)はここにいたのだ。

 いまや精液タンクと化した、アリサの卵巣(なか)の中に。

 

 そんな汚れきった穢い卵巣に、新たな精液がぶちまけられた。

 

 アリサの卵巣は、すでにスライムに汚染されていた。

 ──これではもう二度と人の子を授かることはできない。

 

 アリサの卵巣は、スライムのものにされていた。

 ──授け(・)ることを許されたのは、同種のスライムだけだ。

 

 アリサの卵巣は、スライムに制御されている。

 ──卵巣は精液をすべて受け止めると、意志を持ってその口を自(・)ら(・)閉じた。

 

 アリサの卵巣(からだ)は、スライムの新たな制御核にされていた。

 ──だから、アリサは身体を許した。

 

 これがすべての答え合わせだ。

 

 卵巣を埋め尽くすほどのスライムの制御核は、アリサの思考を歪めた。

 

 初めは無意識下から歪めてみせた。警戒心を取り払ったのだ。

 無警戒にもスライムの真上に座らせ、寄生を促(うな)がした。

 

 歪みは広がり、意識的にも作用した。

 躊躇もせずに、制御核を潜ませたパンツを穿(・)か(・)せ(・)た(・)。

 

「でも1匹ずつ始末していくのも面倒ね……。何かいい手はないか」

 

 人は強い生き物だ。

 

 人は武具を身に纏(まと)うことで、他の生き物(すべて)を圧倒する力を得る。

 ──ならば、モンスターがその人間を身に纏(まと)えば?

 

 人は数多の群集を率い、環境(すべて)を支配し管理する。

 ──では、彼らスライムを率いてもらおう。ただし支配する側は彼らであるが。

 

 その一方で、人は何かに縋(すが)らなくては生きていけない。

 ──寄生するモンスターの存在は、おあつらえ向けだろう。

 

 親兄弟から恋人、仲のいい友人といった隣人。

 あるいは国や宗教、職場・組織といった概念的なもの。

 果てはタバコや酒といった物品にまで、人は何かに依存する。

 

 特に最後のそれらは、ときに健康被害を引き起こす。

 とても分(・)か(・)り(・)や(・)す(・)い(・)ものだ。

 

 犠牲なくして得られるものなど何もない。

 代償や対価といったものは、必ず存在する。

 

 しかし、それでも彼(・)ら(・)は止めることはない。

 

 スライムから屈辱を受けたアリサは止まらない。

 スライムでいっぱいのアリサは止められない。

 スライムに制御されるアリサに止まることは許されていない。

 

 アリサ(スライム)は依存しているのだから。

 

「まあ、まずは帰って身体を洗うことからか。パンツも穿き替えたいし」

 

 無意識にも下腹をひとなですると、アリサは帰路についた。

 

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