・そのうち書き直すかもしれません。たぶん。
人は強い生き物だ。
鉱石を剣と盾に変え、
数多の群集を率い、
その一方で、人は弱い生き物でもある。
何かに
親兄弟から恋人、仲のいい友人といった隣人。
あるいは国や宗教、職場・組織といった概念的なもの。
果てはタバコや酒といった物品や娯楽にまで。
特に最後のそれらは、ときに健康被害を引き起こす。
とても
しかし、それでも
なかにはそれで死ねるなら本望と云う者もいる。
どうせ死ぬなら好きにされてくれとも云うだろう。
「……うわぁ、パンツがぐしょぐしょ……」
まるでお漏らしをしたように下着を濡らした女──アリサも、その内のひとりである。
「でもこれで、あたしが負けた証拠は全部──キャッ!?」
アリサ
「……頭上からは予想外だわ。まだ残ってたとはね」
──スライムだ。
木の上からアリサの頭の上へと降ってきたスライムは、まるで投げつけられた卵のように
「ひとが悩みに悩んで気分転換に散歩に出てみれば。ザコが何匹も現れたかと思ったら、今度は頭から? ……とことん、コケにしてくれるじゃない」
ふつふつと、しかし落ち着いた様子でスライムの塊を掴むと、そのまま眼前まで持っていき、仇を見る眼でスライムを睨みつける。
それもそのはず。彼女の言う
アリサはスライムに依存している。
……それも憎悪という形で。
「いいわ、あんたは特別に遊んでから始末してやるわ!」
アリサはニヤリとした笑みを浮かべると、片手にスライムを掴んだまま器用にもパンツを下ろした。
そのまましゃがみ込めば、両膝から伸びる
スライムは、橋の中央に位置する
アリサの目論見通り、粘液はパンツをすり抜けて地面へと落ち、そのすべてをぶちまけていく。
飛び散る粘液が靴に掛かるのも無視して、逆にアリサも罵倒を飛ばす。
「卵の中身みたいにネバネバした塊のくせに、水みたいに簡単に布を通しちゃうってホント笑えるわね。自慢の粘液を失った気分はどう? 無力よね~。あっははっ!」
無色透明の粘液の躰を操作する、スライムの
パンツの上に
色だけでなく、奇しくも
その白い液体も
「そのままパンツの染みになるのが、あんたにはお似合いよ」
そして謎の勝利宣言と共にアリサは立ち上がると、下ろしたパンツを引き上げた。
スライムの粘液がたっぷり染みこんだ、ぐっちょぐちょのパンツを。
スライムの依代となったパンツを。
アリサは
「ふう……、少しはスッキリしたわね」
そもそもだ、そもそもの話、パンツは
当然ではあるが、それは漏らしたわけではない。
また、愛液で濡らしたのでもない。
粘液に塗れていたのだ。
割れ目にぴったりとくっついた
粘液はスライムの身体そのものだ。自由自在に操るなど造作もない。
スライムは
その方が
そう……先に潜入していた仲間達と合流するために、この場で打ち合わせていた。
「当面はここら一帯に潜む残党を狩り続けよう。
パンツの
しかし、仲間が潜入していたのはパンツの
白い液体が──精液が真に辿り着くべき場所はひとつだ。
精液とは、女の
膣内を旅して子宮へたどり着き、最後には卵管に集結する。
つまり、先に集まっていた仲間達の居場所は、アリサの
遅ばせながら参上したこの新参者が目指すべき場所も当然、そこだ。
精液は膣口から
精液とは無数の精子の集合体。そしてこれはスライムの本体である。
無数のスライムの
狭く閉じた
精液自身が膣を湿らせ、
膣口の次は子宮口。膣内を通ってきた精液の
子宮口にへばりつき、無人の
小さな子宮口の
ただの水であったならば表面張力により、つっかえていたかもしれない。
だが、精液は微細な集団客だ。同時に通るのが無理なら列を為せばいい。
無理やりでもなく……しかし余裕を与えるでもなく。
隙間なく絶え間なく、子宮口に精液を
子宮口──子宮
穴であり、また道でもある。ならばまた、
人外の、ましてや精液に遠慮も常識も辞書も何もない。
子宮口を通り抜けた精液の
このまま
外に陣取った精液も余すことなく、予定通り子宮
とろとろと最後の精液が注ぎ込まれ、
「お腹の中に
あらゆる寄生モンスターが目的地とする、女の
アリサの中心地ともいえる場所に、ついにスライムのすべてが入り込んだ。
自ら意志を持って行動する精液だ。
ここまで入り込んでしまっては、取り出すことも困難だろう。
パンツに染み込んだ精液が中出しされるなど、アリサに想定できるわけもないが、そもそも普通の女ならば精液の染み込んだ、モンスターの染み込んだパンツなど穿きもしない。
──そもそもだ。そもそもの話、前提が違うのだ。
アリサは精液の染み込んだパンツを穿くような変態ではない。
モンスターに触れたパンツをそのまま穿く無用心さも持ち合わせていない。
うっぷんを晴らすためとはいえ、憎悪の対象を大事な場所に近づけるなどありえないのだ。
そして『肚の中に
自身の胎内に何かが潜んでいると自覚している。
子宮の中で
何者にも邪魔されることなく、
……では、
アリサはこうも口にした──『何匹も現れた』、『一網打尽にする』と。
このスライムが初見ではないとも言っている。
何匹も相手取ってきたのに、子宮には他の
膣に残っていたのであれば合流してその堆積を増やしていただろう。
しかし、それもなかった。
膣の先は子宮
繰り返しになるが、このスライムの本体は精子・精液の
通常、精液が卵子と結合──受精する場所は卵管と考えられている。
──小さな池は、卵管を目指して子宮の中を這い回っていた。
子宮口よりもさらに小さい、子宮の広間から伸びる狭い
卵管の入り口を覗き込むと、そこには
小さな池は再び
邪魔者のいない、
これまでと同じ要領で、これまでと同じ用量を通らせる。
最も狭い
そうして膨大部と呼ばれる幅1cmにも拡張された管の終端から、卵巣表面へと投げ出される。
イソギンチャクのような形をした
卵巣は、まるで歓迎するかのように口を開いて待ち構えていた。
しかし、迎えるのは排卵されたばかりの卵子ではない。
卵巣
卵巣の中に
散々探してきた
いまや精液タンクと化した、アリサの
そんな汚れきった穢い卵巣に、新たな精液がぶちまけられた。
アリサの卵巣は、すでにスライムに汚染されていた。
──これではもう二度と人の子を授かることはできない。
アリサの卵巣は、スライムのものにされていた。
──授
アリサの卵巣は、スライムに制御されている。
──卵巣は精液をすべて受け止めると、意志を持ってその口を
アリサの
──だから、アリサは身体を許した。
これがすべての答え合わせだ。
卵巣を埋め尽くすほどのスライムの制御核は、アリサの思考を歪めた。
初めは無意識下から歪めてみせた。警戒心を取り払ったのだ。
無警戒にもスライムの真上に座らせ、寄生を
歪みは広がり、意識的にも作用した。
躊躇もせずに、制御核を潜ませたパンツを
「でも1匹ずつ始末していくのも面倒ね……。何かいい手はないか」
人は強い生き物だ。
人は武具を身に
──ならば、モンスターがその人間を身に
人は数多の群集を率い、
──では、彼らスライムを率いてもらおう。ただし支配する側は彼らであるが。
その一方で、人は何かに
──寄生するモンスターの存在は、おあつらえ向けだろう。
親兄弟から恋人、仲のいい友人といった隣人。
あるいは国や宗教、職場・組織といった概念的なもの。
果てはタバコや酒といった物品にまで、人は何かに依存する。
特に最後のそれらは、ときに健康被害を引き起こす。
とても
犠牲なくして得られるものなど何もない。
代償や対価といったものは、必ず存在する。
しかし、それでも
スライムから屈辱を受けたアリサは止まらない。
スライムでいっぱいのアリサは止められない。
スライムに制御されるアリサに止まることは許されていない。
「まあ、まずは帰って身体を洗うことからか。パンツも穿き替えたいし」
無意識にも下腹をひとなですると、アリサは帰路についた。