《リザード・ドッグ》
・爬虫類の犬。骨格や体格は犬のそれだが、毛皮がまるごと爬虫類のものに入れ替わっている。
・両方の特性を有しており、多くの爬虫類同様、高い擬態能力を持ち、寒さに弱い。足先には水かきが付いていて、舌はカメレオンのように長い。生殖器はふたつあり、トゲの生えた█状に近い形をしている。
・大きさは小型犬から大型犬まで、成長するにつれて大型化していく。
・群れ意識も有しており、最も身体の大きな個体を長とする。その習性を利用して爬虫類素材の革鎧に身を包んで使役する者も少なからず存在する。人間の体温を好むことも、その一助となっていると思われる。
・独自の繁殖形態はとても合理的であり、安全と確実性に富んでいる。2本あるうちの一方の男性器を挿入後、すぐに切り離す(トカゲの尻尾?)。分離した男性器は根元部分が球体状に膨らみ、内部には大量の精液が蓄えられている。中身をすべて出し切るまでは、そう簡単に抜け落ちることはない。また、オスは男性器を失ってもその再生を行なえるので交尾は二度きりということはない(この特徴が原因で異常繁殖することもある)。
・通常、人間等と交わることはないが、偽装していた場合は高確率で交尾対象に選ばれてしまう。擬態者が男性ならば特に問題はないが、女性の場合は組み敷かれてしまうことが多い。同種のメスと見做され、男性器をねじ込まれる。被害に遭った場合は、抜け落ちるまでそのまま群れの中で過ごさなくてはならない。このモンスターは近くに最低1匹は完全なオスの個体が存在しないと、男性器から肉体の再構築を始める(分裂する)。また、妊娠しなかった場合はすぐに別の男性器が挿入されてしまうので、対応には迅速さや注意力が求められる(再生した個体または別個体が再挿入を行なう)。
| 【被害者NO.██████】 ・都市国家████を拠点とする女冒険者(保護済み)。 ・同都市での被害発生前に同種の討伐依頼を受けていることから、騒ぎの元凶である疑いが強い。 |
情報とは、武器だ。
あらかじめ知っているか、そうでないかで物事は大きく変わる。
たとえば、何かの作業を行なうとき。
その手順を知っていれば、安全を確保したり効率的に進めることができる。
何も知らなければ、いつか取り返しの付かない事故を招いてしまう。
たとえば、山菜を採りに行ったとき。
どれが毒で、どれが無害か。その知識は生死すらも左右するだろう。
少なくとも、サーナはそう思っている。
だから、情報を売り買いする商売も成り立つのだと。
「やあ、サーナちゃん。今日はどんな情報がほしいんだい?」
「リザード・ドッグの情報をちょうだい」
サーナは耳の上から短く垂らしたお下げを揺らしながら、男へと手短に用件を話した。
サーナはいまだ駆け出しだが、いくつもの困難な案件を解決に導いてきた期待の新人だ。
しかも、そのほとんどを
それゆえに世間の注目度は高く、二つ名が付くのも間近だと噂されるほどだ。
当然、同期の冒険者は羨み訝しんだが、彼女は「才能」の一言でそれらの雑音を一蹴した。
もちろん、彼女が成功した要因は才能などではない。
──情報だ。
人間の武器のひとつである知恵と知識。
サーナは状況に応じた情報を買い取ることで、すべての依頼を成功させてきた。
しかし、今回に限っては情報屋の男はそれを否定した。
「リザード・ドッグ……あぁ、最近になって大量発生したっていうアレか。今度はあれの討伐に行くのかい。おじさんは辞めといたほうがいいと思うけどねぇ」
サーナの身を案じたのだ。
そもそも冒険者──傭兵は男性が担ってきた課業だ。
男性であることを前提とした任務も多い。
男の言葉を受けて、サーナはムッとした表情になる。
女には
「なによ。情報を独占する代わりに大金を支払ってきたじゃない。いいから教えなさいよ」
「そりゃあ俺だって、これまでおいしい思いをさせてもらってきた。でも今回はまずい」
「だから稼ぎになるのよ。この依頼は誰もやりたがらないから報酬金もたんまりよ」
だが、無理だと言われて引き下がるサーナではない。
まずは報酬額の多さ
「またお酒に使い込んだんでしょ。今月の家賃、払えるの?」
「む……」
次に、弱みという名の
効果は抜群だ。あともう一押しといったところだろう。
「またお酒を買ったって大家さんに──」
「わかった、わかった! 教えるから勘弁してくれ!」
最後の一撃は切ない。債権者の影をちらつかされては、ぐうの音も出ない。
男は堪らずといった様相で有益な情報を吐き出した。
この男から情報を買っては報酬金で次の情報を買う。
一見どこもおかしくはないのだが、それは建前。
サーナは情報を買うことで男に貢いでいた。
情報とは、売買するに値する商品だ。
本を買って知識を得ることとなんら変わりない。
男は矜持を傷つけられることなく金銭を与えられ、サーナは名声を手にする。
彼女がいなければ、彼は今頃どうなっていたことか。
彼がいなければ、彼女は今頃どうなっていたことか。
好意が先行しているとはいえ、彼女が買い取ってきた情報はどれも有益なものだった。
──この人の言う事なら信用できる。
サーナは確かな情報を得ると、モンスターの討伐へと向かったのだった。
「おっ、いるいる。ひぃふぅみぃ……12頭。こんな大群に襲われたら、確かにひとたまりもないかも……」
目的地へと到着したサーナは、砂丘の中でも特に高所から討伐対象の姿を確認していた。
今回の討伐対象であるリザード・ドッグは、その名が示すとおり
あるべき毛皮は砂色の皮膚に置き換えられ、足先も角ばった水かき状になっている。
大きさは小型犬から大型犬程度と幅広く、肉食で人や家畜を襲う。
大型犬が人を喰い殺すなど、そう珍しいことでもない。
そうとも。犬は人を簡単に食い殺せてしまうのだ。
「でも、同種と見做されれば襲われない、か」
そんな危険な動物にも抜け道はある。
リザード・ドッグは同種の革を被ることで、仲間だと誤解する。
爬虫類の革に身を包んだサーナが襲われることはない。
サーナが近づいて来ても、犬達は敵視も敵対もしない。
サーナが触れてきても、犬達は嫌がりもしない。
「……ふう。ちゃんと長と認めてくれたようね」
このリザード・ドッグ達も犬に分類されるため、≪統率≫という概念を持っている。
犬達にも序列があるのだ。その犬の長になるための条件のひとつが体格である。
立ち上がり二足歩行をする人間の姿は、それが小柄な女性でも犬達には大きく見えていた。
サーナは無事、長と認められたのだ。
野生の軍隊である犬達にとって、長の命令は絶対だ。
戦えと指示されれば戦うし、死ねと言われたら素直に首を差し出す。
この場はすでにサーナの独壇場と化した。
あとは順番に息の根を止めていくだけの簡単なお仕事だ。
「わっ!? きゃっ!」
さあ犬の首に刃を突き立てようと剣を抜き、一歩踏み出たとき。
運悪く、サーナは砂に足を取られて転倒してしまった。
どうせ襲われないのだからと、剣から手を離したのは失敗だった。
砂まみれになることを嫌がり、犬のように四つんばいの体勢を取ったのも失敗だった。
次の瞬間には犬達の中で最も大きい個体がサーナに覆い被さっていた。
「ひぃっ!? えっ、えっ? なんで? 襲われないはずじゃあっ!?」
サーナが長と認められたのは、立っていたからだ。
見上げなければいけないほどに大きいから、習性が働いた。
であれば同じ
そうして長ではなくなったサーナの立場は何になるか。
背中から覆い被さられ、手は水かきで抑え付けられた
「え……? な、なに……?」
犬の股間から突き出た
彼女はここでも失敗をしていた。
排泄のしやすさ、動きやすさなど合理的な観点から多くの女冒険者はミニスカートを好む。
ズボンなり、丈の長いスカートでも穿いてきていれば少しは違っていただろう。
「ま、待って! お尻は絶対だめ! そんなところにそんなもの
彼女の失敗はさらに続く。
自分達の今の体勢と、
尻穴に異物をねじ込まれるなど、たまったものではない。
必死に身じろぎすることで片手だけはなんとか自由を取り戻し、犬ペニスを横に除けた。
……
運が悪いことに犬ペニスが下着に引っかかり、サーナは自ら性器を晒す結果となった。
その隙を見逃すリザード・ドッグではない。
運よく引っかからなかった方のペニスが、処女膜を挟んで再びサーナの膣口をなぞる。
硬く細長いそれを、
異物が沈み込んでくる感覚に、サーナは人生初めての恐怖を感じた。
「ひっ……! お、長の命令は絶対なんでしょ? お願い従って、ねっ?」
無様にも犬に懇願するが、彼女はもう長ではない。ただのメスだ。
13番目の裏切り者の言う事など誰が信じるというのか。
無慈悲にも犬の腰は突き出された。
「あ──」
濡れていない膣だろうが、人外の力を
ズン……と、一瞬にして根元まで犬ペニスが埋め込まれた。
「ひぎっ!? い……痛い……ッ!!」
一呼吸おいてやってくる痛みと、異物による不快な圧迫感。
ただ貫いただけでは飽き足らず、犬はぐりぐりとさらに奥を抉る。
ペニスの先端が子宮口にめり込み尿道と重なると、無機的にも射精した。
「い、いやあぁぁっ!? 入ってきてるぅ!」
肉の快楽を
あるいは、
ドバドバと無遠慮に精液が子宮へ注がれる中、不思議なことにサーナの身体は排卵していた。
身に危険が迫ったことによる防衛反応とでもいうのだろうか。
精液の海に投げ出された卵子は、無数の精子に取り囲まれ数匹の侵入を許してしまう。
犬の遺伝子が人の器と雑じり合う様は、まさに生命の神秘といえよう。
無数の精子に食い荒らされた受精卵は、そのまま精液の海を漂流する。
生物学的に異種受精はしても着床まで至らないのは少々残念ではあるが、サーナと犬が深い場所でひとつに結びついた事実は消えようもない。
ペニスが引き抜かれ、精液が漏れ出るまでの間、その証拠は彼女の胎内に残り続けるのだから。
──そう、
子宮は大量の精液により
それは形だけでいえば、
更なる圧迫感がサーナを苛み、悲鳴をあげさせる。
「もうやめっ、やめて!」
その言葉に、交尾していた犬が初めて動きを止めた。
「えっ? ……そう、そう、いいこね。そのまま放して?」
サーナの言葉に従い、犬がサーナから離れる。
……サーナの
トカゲの尻尾切りという、ことわざがある。
それは文字通り、自切することで難を逃れるという意味を持つ。
所詮、この世は弱肉強食。生存戦争は日常だ。
殺し犯し奪い喰らい
好きなあの子の側をついてまわったり。
ときには監視したり、行動を制限したり。
果てには
意識してもらえるようにありとあらゆる手を尽くし、我が子・我が血を残さんと奮闘する。
そんな面倒だと思えることすべてを一手にして解消できるとしたら。
リザード・ドッグとは、いわば爬虫類と犬が融合した存在だ。
彼らは生存に特化した進化を遂げてきた。
トカゲは自らの一部を切り離すことで脅威から逃れた。
犬は交尾の際、長い時間繋がり続けるためにペニスを栓に変えた。
トカゲは
すべては
要は、自分の
ならばメスにペニスを埋め込んでしまおう。
抜け落ちないように根元も膨らませてしまえ。
これならば他のオスが付け入る隙もなくなる。
自分の目が届かない場所に
自分が死んでしまったとしても、何も問題はない。
愛し合うふたりは、ずっと一緒でいられる。
いつもずっと愛し合ったままでいられるのだ。
「……初めてはおじさんにあげたかったのに」
サーナの初めてはリザード・ドッグに奪われた。
本当に捧げたかった
だが初体験が
第三者の熱意に負けたすえに受け入れたり、状況を見て渋々選んだり。
結果として、また違う愛を掴み取る。彼女もその内のひとりとなっただけの話だ。
サーナの初体験は人ですらない畜生、動物以下のモンスターによるレイプだ。
愛玩するに値しない、ペットにすらなれない犬なんかに処女を食い散らされた。
結果として、違った愛を掴み取らされた。彼女もその内のひとりとなっただけにすぎない。
レイプされた者の行く末など暗い。失意のどん底に落とされた真っ暗闇の中、男性を意識する度にレイプされた記憶が明滅するだろう。
これまで順調に明るい道を歩んできた彼女が闇の世界に耐えられるものか。
恋は盲目などという言葉もあるが、目が見えなくては掴めるものも掴めない。
初恋が
この世は、ヤった者勝ちだ。
見えない紛い物を掴まされた彼女に、次の相手など必要ないのだ。
「……」
サーナから犬が離れても、また別の犬が近づくことはなかった。
長の所有物となったサーナは、すでに群れの一員なのだから。
今度は邪魔されることもなく、立ち上がれた。
犬のペニスを埋め込まれたことにも気づかず、サーナは下着のずれを直した。
ペニスが外れるなど想定もしていない。膣の違和感は挿入による
根元の
「死ね。死ね。死ね……ッ!」
サーナは剣を拾い、犬の群れを滅多刺しにしてまわった。
決して生まれることのない命を
犬を生かしたまま側においておくことが、唯一の対処法だとも知らずに。
情報屋はリザード・ドッグの生殖については何も教えなかった。
それは女性への配慮からだ。その配慮が裏目に出た。
ギルドの受付嬢もリザード・ドッグの生態について詳しく知らなかった。
それは彼女の上司による配慮からだ。その配慮も裏目に出た。
情報とは武器だ。あらかじめ知っているか、そうでないかで物事の結果は大きく変わる。
知らされていれば、彼女は討伐しに出向かなかったかもしれない。
知っていれば、ペニスを埋め込まれたことにすぐ気付けたかもしれない。
犬の精液が
犬の受精卵が
すべては終わってしまったこと。真相は
サーナが持ち帰ったペニスが町中の女性に埋め込まれる事になるのは、もう少し先のお話。