※この作品はR-18です。

寄生モンスター図鑑   作:それも私だ

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涙なしには語れない感動回。寄生エッチ重視ではなく寄生経緯がメインです。
 ・寄生経緯と寄生描写の更なる肉付けを模索中(2024/9/10)。
 設定をスキップする│街へ出たところから│真夜中の睡姦


寄生蟲《ドリーム・キャッチャー》

《ドリーム・キャッチャー》

 ・巨大なナメクジに類似した蟲、その集合体。女性の二の腕を覆うほどに大きく、長い。個体によっては肩から鎖骨まで覆い尽くす。体色は灰色(白色に近い)が基本だが、寄生する時間に応じてだんだんと黒く染まっていく(最終的には真っ黒に染まる)。また、触角からは5本の黒い筋が伸びる(雑な縞模様がある)。

 ・主な寄生先は人間であり、腕に取り付くことでパワーアシストを請け負い、代償として垢や汗など老廃物を徴収する。宿主に共生関係を持ちかける。腕力の無さや手の大きさから、女性が寄生される事例が多い。

 ・その寄生形態はナメクジ製の手袋をしていると言ってしまってもよく、腕を呑み込む形で寄生する(巻き付くのではなく呑み込む、余談だがナメクジ同士の交尾は捻じり合ってひとつになる)。指は5つある突起部分(目に該当)に通される。また、交接椀にも該当する青白い隠し腕は、宿主の手の平のあたりに収まる。隠し持っている。

 ・外見上はただの手袋と相違なく、寄生蟲との区別は難しい。特に篭手(こて)など防具の下に装着するインナーの類いとして扱われている場合は、被寄生者の判別は困難を極める。

 ・日中は自発的に動くことはほぼなく、最も活発となる活動時間は深夜帯である。宿主が眠りについたあと、その肉体を好きに弄り、極小の卵を大量に植え付ける(口内、女性器、乳管内など)。単体生殖による受精卵。

 ・植え付けられた卵は、口内の場合は気付くことなく宿主の体内から排泄され、特に問題は起きない。体内で孵化しても糞便と共に排泄される。

 ・女性器の場合も口内と同様、大量の卵を産み付けられる。口内との違いは排泄の有無であり、その結果、膣内および子宮内に大量の仔ナメクジを飼わされることになる。幼体を取り除かずに放置していると性器内部で幼体同士が結合し、成体/集合体の出産に至ってしまう。集合体の体長/規模等は母体の影響を受ける(性器内の余裕がそのまま成形に影響する、幼児の膣だと手首程度の長さになるなど)。

 ・乳管の場合は内部に癒着/寄生/同化して母乳体質へと肉体改造を行なう。これは対女性限定の改造であり、以降は主たる栄養源として利用される(このことから孵化した部位によって幼体の役割や機能の仕方が変化することが分かる、孵化後の役割変化は昆虫界において特別珍しいことでもない、女性の乳頭は侵入しやすい? 宿主の性別を理解する?)。部位が部位だけに宿主が身体の変化を察知できる可能性は極めて低い。

 ・日中であれば脱着は容易なので、夜間は金属製またはガラス製の箱の中へ隔離しておけば卵を植え付けられる心配はなくなる。ただし、そうすると寄生蟲は日増しに衰弱していくので、利用を考えるのなら管理/飼育には注意が必要。なお、当組織の立場上、寄生蟲との関係構築は非推奨であると明示する。

 

【特記事項】

 ・████地域を中心に要注意団体████が活動しています。

 ・入手した情報から、この寄生生物を販売しているものと思われます。

 ・各調査員は不審人物を確認次第、確保にあたってください。

 

 

────────────────────────────────

 

 

 ──城郭都市《オルレアン》、剣術女学校にて。

 

「え……今週の《自由の日》もひとりで過ごすの?」

「うん、ごめんね……」

 

 ふたりの少女は憂(うれ)いを帯びた表情を揃って浮かべていた。

 謝った少女の名は《ジル》。ふたりとも女学校の生徒で、よく話す仲だ。

 

 かつては自信家だったジルは、すっかり自信をなくしていた。

 

 ジルは元々は活発な女の子だ(・)っ(・)た(・)。……そう、過去形だ。

 

「ううん、気にしなくていいよ! ジャンヌが強すぎるのがいけないんだから! あの子ってば駆(・)け(・)引(・)き(・)もできないんだから! たまには負けてあげればいいのに!」

「……勝ちを譲ってもらっても嬉しくなんかない」

 

 ジルは13歳の女の子だが、生まれ故郷を守るためにその道に志願した生粋の女戦士だ。

 当然、才能にも恵まれた。強さは学年内でも上から数えたほうが早かった。

 

 だが、才能に恵まれたのはジルだけではなかった。

 ジルの才能を上回る者が現れた。頭角を現してきたのだ。

 

 それが、ジャンヌ。

 

 初めからジルとジャンヌは釣り合わなかった。

 バカ正直なジャンヌは、ジルのフェイントに簡単に引っかかりあっけなく負けていた。

 

 あるときは誘い騙し討ち、あるときは受け流し、またあるときは防御からの反撃で。

 最初はジルの圧勝だ(・)っ(・)た(・)。……これも過去形だ。

 

 いつの間にか、ジルとジャンヌの立場は逆転していた。

 

 いつからかは(・)か(・)り(・)ご(・)と(・)は潰され、あるときは受け流せずに潰され、またあるときは防御ごと潰された。

 勝利の栄光はジャンヌの圧勝へとすり替わった。

 

 ジルもジャンヌも、2人とも明るい子だった。

 しかし、逆の立場になってもジルの心は明るいままではいられなかった。

 

 初めての挫折に、ジルの心は暗く落ち込んだ。

 守るべき弱者が果たした下克上に、本当は自分が弱者なのだと思い知らされた。

 

 自分がどんなにがんばっても、今も先もジャンヌには勝てない。

 ジャンヌは未だ頂点に至ってこそいないが、それも時間の問題だろう。

 自分(ジル)は彼女(ジャンヌ)の背中を追いかけるのがやっとなのだ。

 

 それは自分が永遠の二番手であると宣言されたにも等しい。

 頂点に立つことのできない負け犬人生。変更できない希望なき進路。

 

 ジルの人生はいつもいつもいつも、誰かに1位を掠(かす)め取られる。

 

 一番にこだわる理由はもちろんある。仮に戦力序列2位を勝ち得たとしよう。

 ……そこで満足してしまっては、二番手に甘んじては成長はなくなる。

 

 いつかは一番手の足を引っ張り、手を煩わせることになるのだと。

 所詮自分の実力はここまでと、自分で自分の頭を抑えつけてしまうことになる。

 いや、現在進行形で抑えつけてしまっている。

 

「ちょっと外の空気、吸ってくるね」

 

 今日は女学校の自由行動日。生徒達が溜め込んだ鬱屈(うっくつ)を、うっぷんを晴らすために割り当てられた休日だ。

 

 ジルは友達の誘いを断ると、街へと繰り出した。

 

 どうせ寮にこもっていても、友達に世話を焼かしてしまうから。

 自分は二番手だから。周りの手を煩わせてしまうから。

 

 だからひとりになりたい。ひとりになるのだ。

 

────────────────

 

 あてもなく街の中をさまよっていたジルは、突然に声をかけられた。

 

「よう、お嬢ちゃん」

「っ!? だ、誰っ……ですか?」

 

 声をかけてきたのは男性だ。それもジルよりもずっと年上の男だ。

 男は黒いローブで身を隠しているが、身長の高さと声の感じから大体の年齢は察せられる。

 

「その制服、少し前に新設された剣術学校のヤツだよな?」

「え……そ、そうですけど……」

 

 男はこんな街中でい(・)か(・)に(・)も(・)な(・)真っ黒な様相……分かりやすく不審だ。不審者だ。

 ジルも挙動不審となり、周囲を探る……いや助けを求める視線をめぐらせてしまうのも無理はない。

 

 ジルは無意識下でも、自分が弱者であるのだと認識してしまっていた。

 男はそんな彼女の様子を知ってか知らずか、話を広げ始める。

 

「いやぁ、俺はこんな格好(ナリ)をしているが商人でな。子供向けのとっておきの装備を卸(おろ)しに来たんだが……わかるだろ?」

「な、なにがですか?」

 

 男はニヤリと笑うと、さらに持論を展開していく。

 

「戦争……戦いはどれだけ準備できたかが物を言う。どんなに腕の立つ戦士でも、錆びたボロボロの剣じゃまともに戦えやしない。しかも女子供だと、まともな武器も持てないときた。普通に重いからな。手にするのは折れやすい細身の武器ばかりだ。どうやってもそのままじゃ男連中には勝てない。筋力差で押し負ける。女は男に劣る、劣化した戦力だ」

「…………」

 

 自分でも分かる話であれば、人はそれを聞き逃せないものだ。

 男が並べる言葉に、ジルは耳を傾けた。

 

 ジルが負けた相手は同性の少女だ。

 男(・)に負けたわけではないが、筋力差で押し負ける、という言葉は胸に落ちた。

 

 ハンマーを振りかざされたような、ジャンヌの重い一撃。

 要素だけ見れば同じことだ。大きな力に潰された。押し負けた。

 

 格上の相手には、どうすれば勝つことができるのか。

 自分は弱者ではないと、どうすれば証明できるのか。

 

「じゃあどうしたらいいか、わかるか?」

「わかりません」

 

 男への不信感に満たされていたジルの心は、いまや勝利への渇望で満たされている。

 軽薄そうな男からの問いに、ジルは答えが分からなくとも真摯(しんし)に返した。

 

「戦いはどれだけ準備できたかが物を言う、って言ったばかりだろ。そのために俺は来たんだ」

 

 男は吐いた言葉を繰り返すと、背負っていた箱を地面に下ろした。

 

 箱は80cm程の長さであり、横幅はその半分くらいはある。

 先端には中を隠すように穴が付いており、腕くらいなら通りそうだ。

 

「持てないなら持てるようにすればいい。簡単だろ? 箱の中に手を突っ込んでみな」

「えっと……」

 

 しかし13歳といえど、ジルはそこまで愚かでなければ幼くもない。

 得たいの知れない箱に手を突っ込むなどと。蛮勇は犯さない。

 

 勇気と蛮勇は違う。勝てない戦いを繰り返す知性のない獣とは違うのだ。

 勝てない戦いにおいて、勇気を持って勝ちを拾いに行けるようになりたいのだ。

 

「大丈夫、悪いようにはならねえよ。…………怖いか? 怖いよなぁ。じゃあいいや。他をあたるとするか。俺は商人だからな、本当に必要としている客に売り込みに行くよ」

「あっ! ま……、待って!」

 

 ジルは一瞬躊躇(ちゅうちょ)したものの、勇気を持って勝ちを拾いにいった。

 いや、勝つための勇気を拾いに、その足を踏み出した。

 

 ジルの手が男のローブをつかむ。

 

「おいおい。離してくれよ。お嬢ちゃんには必要ないんだろ?」

「勝ちたいの! あの子にっ、ジャンヌに勝ちたいっ!」

「……へぇ?」

 

 しぼり出すような涙交じりのジルの叫びに、今度は男が耳を傾けた。

 いや、男(・)が(・)ジ(・)ル(・)を(・)傾(・)け(・)さ(・)せ(・)た(・)。

 

 ──推してダメなら引いてみろ。

 

 これがこの男のや(・)り(・)く(・)ち(・)である。人は繋いでいた手を離されると不安になるものだ。

 人はひとりでは生きてはいけない。頼り合り、支え合って生きるのが人なのだから。

 ……そこが付け入る隙となる。忘れてはいけない事だが、この男は商人なのだ。

 

「友達に負けたのか?」

「友達じゃない!」

「じゃあ、ライバルか。ライバルに差をつけたいか?」

「つけたいッ!」

 

 ジルは男の服をつかんだまま、うつむいて叫び返した。

 

 自分は勝者であるべきなのだ。他人に弱みは見せられない。

 相手が何者であろうと泣き顔は見られたくなかった。

 

「いい武器を持つためには、まずはい(・)い(・)も(・)の(・)を身に付けるべきだ。この箱に手を入れると専用の装備を造ってくれるんだ。好きな長さになったら腕を抜きな」

「うん……!」

 

 男に促(うなが)されるまま、ジルは箱に手を、腕(・)を差し込んだ。

 

 ジルの細い腕を、ぬめりとした何かが吸い付くようにして覆っていく。

 男が言ったとおり、この場でジル専用の装備を造っているようだった。

 

 不安はあるが、それ以上に期待のほうが大きい。

 ジルは身動(みじろ)ぎもせずに感(・)触(・)を受け入れ、終わるのを静かに待つことにした。

 

「ちと慣れねえ感覚だろうが、まあそれだけだ」

 

 ジルがこの場で知ることはないが、この箱の中には巨大なナメクジが潜んでいた。

 ナメクジは大きく口を開けると、少女の腕をゆっくりと呑(の)み込んだ。

 ──ジルの細い腕は、ぬめりとしたナメクジに覆われていた。

 

 巨大なナメクジの正体は、寄生蟲《ドリーム・キャッチャー》。

 勝者の夢を掴(つか)み取りたい少女が相棒として掴(つか)み取るには相応しい名だろう。

 

 この寄生蟲は人間の身体に取り付くことで筋力補助を行なう共生型だ。

 手の面積……大きさをも補助することで、重い物も大きい物も楽々つかめるようになる。

 当然、武器を振り抜くちからも上乗せされる。

 

 二の腕まであればいいだろうと引き抜いたジルの腕にはナメクジではなく、真新しい手袋が取り付けられていた。

 白く長い手袋に擬態した、寄生蟲の姿がそこにあった。

 

「見かけは普通の手袋みたいなんだけどよ、こいつは魔法の手袋だ。初めは白いんだが、身に着けているといつの間にか黒く染まっていくんだ。べつに汚れるからじゃない。こいつはこれから先、お嬢ちゃんが流す努力の汗を分かち合う相棒だからだ」

「う゛ん゛……!」

 

 そ(・)う(・)とはわからない、そ(・)う(・)とは知らないジルは、確信を持って自分の片腕を眺めていた。

 これさえあれば自分は勝者側へ返り咲くことができる、と。

 新たなちからを手にしても、ジルの涙は止まらない。

 

 悲しいのではない。嬉しいのだ。

 

 悲しい涙は今ここに捨てた。

 地面にこぼれた悲しい涙を、嬉しい涙で上書きしているのだ。

 

「まだ終わってないぞ。反対の腕も入れろ」

「うんっ!」

 

 だ(・)か(・)ら(・)気(・)付(・)か(・)な(・)い(・)。男の言葉が提案から命令になっていることに。

 ジルはもう立ち止まりはしない。男もジルを立ち止まらせはしない。

 しっかりと両手とも寄生されなくては困るのだから。

 

「……よーしよし。いい子だ」

「えへへっ」

 

 ジルの両腕に寄生蟲製の長手袋がは(・)め(・)ら(・)れ(・)た(・)ことを認めると、男はジルの頭をなでた。

 寄せられた善意の手に、ジルも好意の笑みで返した。まんざらではない様子だ。

 

 事を見届けた男は再び箱を背負うと、ジルに別れを告げた。

 

「がんばれよ、お嬢ちゃん」

「うんっ! ありがとう! おじさん!」

 

 ジルも腕を振って、男の背を笑顔で見送った。

 男の姿が見えなくなるまで、ずっと。

 

 勢いのまま流れで別れてしまったが、無理に引き止めるのも違うと思って留めなかった。

 時間にして、ほんのわずかな間の出会いであったが、貰った物は比にならない。

 彼には彼の事情や都合があるはずだ。恩人の邪魔はしたくなかったのだ。

 

 そのあと、ジルは忘れていた事に気が付いた。

 

 ──恩人の名前を聞き出すことを忘れていた。

 ──自分の名前を伝えることも忘れていた。

 

 ──男が商人であったことを忘れている(・)。

 ──代金の支払いも忘れている(・)。

 ──男がどこで何をしたかったのかも忘れている(・)。

 

 親切な人もいるものだなと、久しぶりに温まった心のまま、何も疑うこともなく。

 ジルは名前を教え合うことができなかったことを少々残念に思いながら帰路についた。

 

────────────────

 

 その日を境に、ジルは積極的に訓練に打ち込むようになった。

 

『やるじゃん』

 

 流石にいきなり勝つことはできなかったが、ライバル(ジャンヌ)を手間取らすことができたのだ。

 勝ちの目が芽生えたのだ。芽は水をやらなくては途絶えてしまう。

 

『次は勝つから』

『ま(・)た(・)それ言うの?』

『その次こそは勝つ!』

『あっそ』

 

 ジルはその花を咲かせたい。ジルの花を咲かせたいのだ。

 

 自分(ジル)はズルをしているのかもしれない。

 だけど、下準備も戦いの内なのだと恩人も言っていた。

 

 確かに自分だけのちからではないだろう。

 だが、この手袋が努力を教えてくれるとも恩人は言っていた。

 

 だから、手袋はずっと外さずにいる。

 正確には風呂の時などは外しているが、それ以外の時間は基本的に身に付けたままだ。

 

 恩人はこうも言っていた。この手袋は魔法の手袋だとも。

 手袋はどんなに汗を吸っても臭くはならず、逆に自分の腕まで清潔(きれい)にする。

 だから付けたままでも何も気にならない。

 

 この手袋は自分(ジル)を応援してくれた恩人との絆(きずな)の証だ。

 その想いは楔(くさび)となり決して外れない。

 

 ──そして今日、新たな楔(くさび)が打ち込まれる。

 

 現在の時間帯は深夜。先ほどのや(・)り(・)取(・)り(・)はジルが見ている夢だ。

 ジャンヌは強い……まだ勝てない。夢に見てしまうほど悔しかったのだ。

 

 そんなかわいそうなジルを慰めるべく、意(・)識(・)の(・)な(・)い(・)ジ(・)ル(・)の(・)腕(・)が(・)動(・)い(・)た(・)。

 

 ジルの両腕は緩慢な動きで自分の身体の上を這うようにして動いている。

 それはまるで、何かに操られるように。何かが操るように。

 

 腕はパジャマのすそ、下腹部あたりから服の中に差し込まれ、膨らみ始めた胸の上で止まった。

 

 胸当て……ブラジャーは必要か不必要かで揺れる発育時期にある、ジルの幼い身体。

 小さな胸を推し量る手のブラの中心には、小さな口(くち)が開いている。

 桃色の乳首を収めるために開いた、寄生蟲の口(くち)だ。

 

 ジルの両腕は寄生蟲に覆われている。

 

 ジルの腕がいつも清潔なのは、寄生蟲が垢や汗を舐め取ってくれていたからだ。

 この寄生蟲はジルの老廃物を糧(かて)としている。

 

 初めはそれで足りていたが、やはり成長には充分な栄養が必要だ。

 ジルも寄生蟲も育ち盛りなのだ。ちょっとやそっとの量では物足りない。

 

 だから、寄生蟲はジルの畑を耕(たがや)すことにした。

 まだまだ物足りないジルの小さな胸を豊かにするべく。

 不足分を更にジルの身体で補うべく。

 

 実力では確かにジャンヌに、他の子に劣っている。

 ──ならば女として尖(とが)らせてみようではないか。

 

 試合に負けても勝負に勝てれば、多少なりとも気は晴れる。

 女は度胸。出たとこ勝負だ。腹が減っては戦はできぬ。

 

 寄生蟲はジルの乳首を銜(くわ)えると、乳管内に微細な針を差し込み、米の研ぎ汁のような子種汁をドバドバと放出した。

 幼い少女の肌にべったりと引っ付いたナメクジの躰は白濁を一滴も漏らさず、そのすべてを直(じか)に送り込む。

 

 寄生蟲とジルは、垢と汗を分かち合った仲なのだ。

 ジルも寄生蟲と子種を分かち合うべきだろう。

 

 逃げ場のない中を、小さな胸の中へと白濁とした液体が注がれる。

 寄生蟲の極小の卵が白濁の洪水に乗って小葉内──母乳を作り、貯め置く場所にいくつも流れ着いた。

 

 無数の卵が、ジルの胸の中に溜め置かれた。

 ──これがいずれ、ジルの胸を大きく育たせる。

 

 出ない母乳の代わりに、出された子種汁が蓄えられた。

 ──これはいずれ、ジルの母乳に置き換わる。

 

 大量に注入された異物が、ジルの胸をわずかに膨らませる。

 ──こうも胸に詰め物をされても、ジルが起きる気配(こと)はない。

 

「…………」

 

 寄生蟲は最後に米粒のように大きな卵を乳頭内──乳首に産み付けると、そのまま眠りに付いた。

 手(・)が胸から離された後も、これが蓋の役割となる。

 

 朝になってジルが目を覚ましても、寝相が悪かったのだと勘違いしておしまいだ。

 胸の張りも学校が行なう性教育のおかげで、二次性徴によるものだと勘違いしておしまいだ。

 

 ジルの人間(おんな)としての人生も、これでおしまいとなる。

 

 ジルの手袋(もの)はジルの物。寄生蟲の宿主(もの)は寄生蟲のもの。

 日中はジルに身体の支(・)配(・)権(・)があるが、深夜はこうして寄生蟲に肉体(からだ)を奪われる。

 

 打ち込んだ楔(くさび)は外れない。打ち込まれた楔(くさび)は外せない。

 

 すでに両腕は蟲に占領され、今度は胸の中を精液と蟲卵で征服された。

 ジルの頭のすぐ下で寄生蟲の卵が育つのだ。母(・)になれば乳も出るだろう。

 

 種は蒔(ま)かれた。あとは収(・)穫(・)の時期を待つばかりだ。

 その時は、大いなる実りをみ(・)な(・)と分かち合おう。

 

 我々は相棒なのだから。

 

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