※この作品はR-18です。

寄生モンスター図鑑   作:それも私だ

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性に開放的な社会に一石を投じる回。中古という表現はあながち間違いでもないんですよね。
やーい、お前のおまんこ遺伝子塗れー! えんがちょー!
 ・各描写を微妙に補強(2024/8/23)。
 設定をスキップする│寄精蟲の水牢から


寄精蟲《クラウディザスト》

《クラウディザスト》

 ・史上最悪の厄災。ありとあらゆる他生物と混ざり合う精液。通常の精子と同じく、肉眼では視ることのできない極小の寄生生物。その集合体(集合体のみ白い濁りとして目視できる)。群体。

 ・その性質上、水路や湖などといった水場に出現する。明確な発生源等は不明だが『肉のダンジョン』を起源とする説が最有力であり、次いで二次被害説(既存モンスター変異説)が有力である。

 ・完全な液体状であり掴むことはできない。水のように布等をすり抜ける(現代の技術や道具ではろ(・)過(・)できない)。外部的要因により凍結または粘度を持った場合はこの限りではない。

 ・寄生対象の種族、性別等は問わないが、女性の方が寄生されやすい。魚群のように群体が水中を動き回り、標的へと近づく。人の水中歩行速度よりも遅いので意識していれば回避は容易。なお、モンスターにも寄生することがあり、結果的に中間宿主のように利用された事例も存在する(最終宿主は言わずもがな人間、人間を犯すモンスターは非常に多い)。

 ・粘膜に触れると融合する(宿主の身体に解け込む、接触部位のみ汚染する)。除去も治療も効果を発揮することはない。

 ・女性の場合、人間同士での性交および妊娠であっても産まれてくる子供は必ず異形となる(良くて██児、最悪はモンスター)。これは少量でも影響する(量は造形等に大きく関わる)。胎児に影響する以外、宿主に特別変化はない(これが発見の遅れに繋がる)。この特徴は子供にも引き継がれる(奇跡的に人の形を保っていたとしても寄生蟲を必ず保有している)。

 ・男性の場合は、精巣を苗床に作り変えられる(被害者の精子の代わりに精液状のモンスターを作る、精液以外の体液は無害なことがほとんど)。さらに睾丸は肥大し、性欲が著しく向上する(性格の変化から比較的発見しやすい)。男性被害者の存在は二次寄生被害の主な拡大原因となりやすい。

 ・傷口に入り込むと血液、唾液、母乳ほか体液のすべてが汚染されてしまう。そのほか妊娠でも、女性も性欲が高まる(胎児を通して血流にモンスターが流れ込む)。

 ・類似するモンスターに『スライム・レギオン』や『██████』などが存在する。被害者が男性だと見分けが付かない。

 ・防護手段としては、冒険者ギルドが販売している前貼り等を使用することがあげられるが、精液を膣内に封入する妊娠促進器具や性玩具の一種だと認識されてしまっており、普及等はまったくといって進んでいない。『新品シール』など悪意ある表現/俗称/蔑称/揶揄(やゆ)等も普及の遅れに影響していると思われる。

 

【実験:卵巣】

 ・卵巣へ直接注入した結果、被験者は寄生蟲の受精卵を排卵し続けた(卵巣の中で精子が生存または分裂している? 卵子の情報を書き換えて受精卵と等しくしている?)。

 ・何らかの手段によって排卵を止めないと生涯に渡って孕み続けることになると思われる。

 ・それ以外は特別な変化は見られなかった。

 ・妊娠中、性欲の増加が見られた。出産後も性欲の高さを維持。これは通常の寄生と同じ。

 

【被害者NO.██████】

 ・█████国の公爵令嬢(対応検討中)。

 ・同国内では女傑として有名であり、最低限の従者を引き連れては冒険行為にふけっている。

 ・相手方は外国の上位貴族であるため、保護は難しいものと思われる。

 ・偶然にも遺跡を探索していた調査員が被害者と遭遇、これを注意をするも頑(がん)として聞き入れなかったとのこと。また、調査員は直接的な表現では伝えなかったと証言している。

 ・時系列等の整合性を鑑みた結果、調査員が遭遇した時にはすでに寄生されていたと思われる。よって調査員に過失はないものとする。

 

 

────────────────────────────────

 

 

「ふぅん……ここが?」

「はい。かの亡国の城への隠し通路となります」

 

 ドーナッツ状の湖に囲まれた廃城……そのドーナッツの外側の草原に巧妙に隠された入(・)口(・)を前にしているのは、ふたりの女性。

 

 ロウディス国の公爵令嬢クラウディア・リトマスと、従者ソリダリテ・ヴィクトールだ。

 

 この世界で苗字を持つ者は貴族か王族だけ。

 公爵令嬢ともなれば直近の従者にも爵位が求められる。

 

 頂点に立つ者たちに、どこの馬の骨とも知れない有象無象を連れ立つことは許されていない。

 

 そんな貴族令嬢達のスカート丈は、貴族にしては短すぎた。

 膝上──並(・)み(・)の貴族では自他共に羞恥を感じていただろう。

 

 肌を不必要に見せつけるということは、は(・)し(・)た(・)な(・)い(・)行ないだ。

 誰であろうとも受け入れるかのように自分を見せつけてくる女など信用ならない。

 

 しかし、ここは《ロウディス》。法(ロウ)を否定す(ディス)る国だ。

 一定の秩序はあるが、くだらない既成概念といったものは存在しない。

 思うがまま、欲望のままに生ける者達の国。それがロウディス。

 

 ともすれば礼装にも見える戦(・)衣(・)装(・)をふたりが纏っているのも。

 女ふたりが人里離れた廃城近くにいることも。

 ほかに供の姿もないことも。

 

 最低限、純(・)潔(・)を守り通しさえしていれば誰も咎めはしない。

 これは万国共通の意識──常識だ。

 

 婚姻まで処女をつらぬく意味(こと)は、もはや語るのもバカバカしいまでの常識なのだ。

 

「では、入りましょう」

「お足元にお気を付けを」

 

 クラウディアとソリダリテは頼りないカンテラの光を頼りとしているというのに、まるで自分たちが持つ別荘と同じ気軽さで、地下へと続く隠し階段を降りていった。

 

 降りた先には水路が広がっていた。……いや、水の廊下とでもいうべきか。

 水路ならば本来あるはずの脇(・)の(・)歩(・)道(・)がない。

 

「……水没していますわね」

「戻られますか?」

「いいえ。進みましょう」

 

 水没は意図して行なわれたのだろう。おそらくは足(・)留(・)め(・)が狙いか。

 水で沈められた廊下の両端にはうっすらとだが階段が見えている。

 構造的にはプールに入る前に浸かる腰洗い槽が最も近いか。

 

 点線のように緑の誘導灯が埋め込まれた壁は、水面だけでなく向こう岸の階段も薄く照らしている。

 

「これは……光り石ですか。脱出路にこんなものを使うから滅びたのでしょうね」

「脱出を失敗しないように用(もち)いたのかしら。敗者らしい考え方だわ」

「ええ、追手に道を教えているようなものです」

 

 ふたりは壁の仕掛けを酷評しながらも、水路の中へと身体を進めた。

 

 足首から膝が、膝から腰まで水に浸かってしまっても令嬢達は気にも留めない。

 そんなことが気になるのなら、初めからこんな場所に来たりはしていない。

 

「お足元にご注意くださいませ」

「ふふっ、さっきも聞いたわ」

「ハッ……失礼しました」

 

 心配性な従者の様子に、クラウディアは苦笑を返す。

 

 幸いなことに、水の深さが腰から上にいくことはなかった。

 水底はぬ(・)め(・)り(・)を帯びていて少々危険だが注意していればいいだけのこと。

 歩みは遅くはなるが渡れないほどではない。

 

 しかし、もう少し気にするべきだっただろう。

 主無きこの脱出路──……廃屋や廃墟に浮浪者が住み着くのはよくある話(こと)なのだから。

 

 この水路は追手に気取られた際の足止めとするために用意されたものだ。

 この仕掛けは水(・)路(・)の(・)新(・)た(・)な(・)主(・)にとって、渡りに船であった。

 

 水路は清潔ではなかった。

 ……それはそうだ。元より隠し通路とは廃棄されているも同然なのだから。

 

 清潔な水ではない。

 ……循環させねば、水はよ(・)ど(・)む(・)。

 

 水の中には、いくつもの白(・)濁(・)がだ(・)ま(・)になって漂っていた。

 ……まるでと(・)い(・)た(・)精液を撒(ま)いたように。

 

 誘導灯の光りは微弱なものだ。水面を照らしても水中までは届かない。

 だから気にもしなかった。だからこそ気にするべきだった。

 

 寄生生物はいつだって小さい。白濁とした塊は令嬢の下着を──潔白を護るパンツに染みを作ることなく易々と通り抜け、純潔の証である処女膜の隙間から少女の膣内(なか)へと侵入していった。

 

「……?」

「どうかなさいましたか?」

「いえ、水の中は冷たいわね。そう思っただけよ」

 

 ──クラウディアの膣内(なか)に寄生生物(せいえき)が注ぎ込まれた。

 

 人は温度に対して敏感な生き物だ。そ(・)れ(・)が唾液だろうが薬液だろうが、体内に異物が入り込めばすぐに気が付く。

 

 クラウディアも膣内(なか)に注ぎ込まれた存在(なにか)に気が付いたが、これも捨て置いた。

 なぜなら、異常とは一目瞭然であるべきだからだ。

 

 クラウディアは確かに肌(・)で異常を感じ取った。

 しかし、身体に異常は表れてはいないし、異常なものは見当たらない。

 

 ならば気のせいだろう、と──身体の中に感じた冷(・)た(・)さ(・)は、身体が感じ取った静かな異常は、気取(けど)られも常(・)識(・)によって見逃された。

 

 ──精液は膣内(なか)に捨て置かれた。

 ──精液は膣内(なか)へと見逃される。

 

 小汚いゴ(・)ミ(・)のような精液を捨てる先が、精液のゴミ捨て場が今決まった。

 

 どんなに優れた武器や防具を装備していたとしても、それらが意味をなさなければ無価値だ。

 無意味にされたパンツ(クロッチ)を通り抜け、価値ある肉体に、無価値な精子たちが集う。

 

 仮に気のせいで済まさなかったにしても、もはや手遅れであった。

 膣内(なか)に侵入されてしまった時点で令嬢の価値は地に落ちた。もうどうしようもない。

 起こってしまった以上は、何をしても結果は変わらない。

 

 何度でも繰り返そう。彼女の膣内(なか)に侵入(はい)ったものは精液だ。

 婚約者でさえ婚姻するまでは手を出せない令嬢の膣内に、先んじて精液が塗りたくられた。

 それも馬どころではない、精液状の人外の寄生生物が文(・)字(・)通(・)り(・)刷り込まれた。

 

 そうだ、何度でも繰り返そうがこの結果は変えられない。取り消せない。覆せない。

 そう、覆せないのだ。どれだけ鍛えようとも、どれだけ強弱の差があろうとも相性だけは覆せない。

 精液と女……たったふたつの単語を並べただけでその相性の良さがよくわかるというものだ。

 

 貴族が処女にこだわる理由のひとつが《テレゴニー》、そして《マイクロキメリズム》である。

 どちらも《先夫遺伝》と呼ばれる事(・)象(・)に関わってくる。

 

 女にはセックスや妊娠によって、男の遺伝子情報を肉体(からだ)に取り込む性質がある。

 女の肉体(からだ)に男の遺伝子が刻まれるのだ。それは精液に汚染されたといってもいい。

 そういう意味では、男性もある種の寄生生物なのだといえるだろう。

 

 そしてそ(・)れ(・)は種族関係なく発生する事象だ。たとえハエだろうと起こる。そこに貴賎はない。

 どんなに優れた血筋だろうとなかろうと、たやすく寄生してしまうのが彼(・)ら(・)というものだ。

 精液ほど女に寄生しやすいものはない。まさしく身体の内側から白く染め上げるのだ。

 

 ゆえに貴族は処女を貴(とうと)ぶ。正統な血筋を守るため、継がせるためには不純物が混じってしまっては困るのだ。

 

 ──そうとも。クラウディアの肉体は異形の精液で汚染(よご)された。貴(とうと)き肉体に不純物が混じった。もう取り返しは付かない。

 

 不純物の名は《クラウディザスト》。極小の寄生蟲、その集合体。

 その名と姿が示すように、女と入り混じるためだけに存在する厄災。

 

 奇(く)しくも無価値な者の名は価値ある者と似たり寄っていた。

 似た名を持つ者同士、ひとつとなるのは運命だったのだろう。

 

 クラウディアの膣内(なか)に入り込んだ無数の精(・)子(・)のうち数匹が膣壁と同(・)化(・)した。

 肉の中でびちびちと跳ね回る個体がいれば、すでに彼女の中へ融(と)け、ウイルスのように宿主の細胞──遺伝子と結びついた個体もいる。

 

 クラウディアが1歩また1歩と水路を進むたび、いくつものの精液溜まりがクラウディアの肉体へと近づき、膣内(なか)に取り込まれていく。

 それは従者らしく主人の後(・)ろ(・)についたソリダリテも同じことだった。身分の高さなど関係なく、女の肉体に精子は集う。

 

 貴族令嬢達の膣壁に、数え切れないほどの精子たちが頭を突き立てては肉の中に埋もれていく。

 齢(よわい)20にも満たない少女達の肉体に精子が入った。融(と)けた。同化した。混入した。もう戻せない。もう戻れない。

 

 主人と従者の区別なく、令嬢の内側(からだ)は精液で白く染め上げられる。

 自分達(バケモノ)の遺伝子をすり合わせては、ねじ込み、融(と)けてひとつとなっていく。

 

 膣から始まった書(・)き(・)換(・)え(・)は子宮も例外ではない。

 いや、いずれ卵(・)が着床する子宮こそが本命だ。

 

 精子とは、どれだけ時間がかかろうとも子宮へ辿り着く執念を宿している。

 クラウディアの子宮に精子を宿すのだ。

 

 膣壁への書(・)き(・)込(・)み(・)は、彼女達が寄生生物の持ち物であることを記しただけに過ぎない。

 いずれ夫となる人間(おとこ)に貸してやったとしても、あくまで名(・)義(・)は寄精蟲たちのものだ。

 彼女達の膣が夫のチンポの形を覚えたとしても、先に精液の味を覚えてしまっている。

 

 子宮内へ侵入した精子達も、まるで直接着床するかのように頭をこすり付けていた。

 じわじわと時間をかけてクラウディアの遺伝子と混じり合う精子がいれば、着(・)床(・)待(・)ち(・)の子宮壁の中に潜っては感触を楽しむ精子もいた。

 

 着床待ち──つまり、排卵して捨てられるはずだった卵子の姿もそこにあった。

 しかし卵子の寿命は24時間……受精することなく子宮に辿り着いた頃にはとっくに死んでいた。

 

 だがそれがどうしたものだと1匹の精子が卵子の中に飛び込み、受(・)精(・)した。

 外に出たままの尻(・)尾(・)を懸命に振って、子宮壁へと運んでみせた。

 

 だが、それでも着床には足らない。通常、人同士で受精した卵子でなくては着床できない。

 人同士であったとしても卵子の寿命は尽きている。普通ならもう無理だ。

 

 ──では、普通ではなかったら?

 

 精子の正体は寄精蟲だ。本来ならば保護されて入れなくなる受精卵の中へと近くにいた数匹の精子が飛び込み、精子の尾(・)を糸代わりにして子宮壁に縫い付けていた。無理やり着床させていた。

 

 本(・)来(・)の(・)予(・)定(・)では寄生生物の遺伝子情報を書き足し、書き換えた部分から侵食するはずだった人(・)同(・)士(・)の(・)受精卵を、卵子のまま直接侵食した。

 何の因果か。寄精蟲は半(・)生(・)半(・)死(・)の人ならざる受精卵を、寄精蟲自身をクラウディアに孕ませた。

 

 ──せっかく手に入れた公爵令嬢の肉体(からだ)だ。

 ──そのまま貸し出してやるのは面白くない。

 ──自分が誰のものになったのか、明確にしてやるのも一興だ。

 

 もしも寄精蟲と意思疎通が出来るなら、そう応えたかもしれない。

 いや、すでに行動を以(も)って応えている。

 

「明日にはご結婚なされるのです。どうかお体を大事にしてください」

「そうね……冒険ができるのは今日まで。だから最後まで楽しみましょう?」

 

 初夜を迎えても妊娠することのなかった運命は、寄生生物に書き換えられた。

 クラウディア達(・)が残すはずだった遺伝子は寄精蟲で上書きされた。

 

 クラウディアが人間の子を生めたのは今日まで。

 明日からは、その身の内で、人外の仔を育む日々が始まる。

 

 産まれてくる仔が人外なのは確実だろう。現(・)在(・)の割合で云ってもせいぜいが半々だ。

 半分はクラウディアで、もう半分は寄精蟲。夫となる者の割合はゼロだ。

 

 寄精蟲は、いずれは胎盤を通して(とおって)クラウディアの肉体(からだ)をより一層侵食する。

 精子たちは血流に乗って脳をも受(・)精(・)させるつもりでいる。

 

 胎児の肉体を利用して寄精蟲を培養し、母体へと還元させる。

 そのときの割合がどうなっているかなど、考えるまでもないだろう。

 

 クラウディアは外見だけは何も変わらない。

 クラウディアの内面は寄精蟲の理想に書き換えられる。

 クラウディアが産む子はすべて人外へと置き換わる。

 

 結婚式を控えた彼女は明日、他(・)者(・)の(・)も(・)の(・)となる。

 令嬢が本当は誰のものにされたのか気付くまで──あと10ヶ月。

 

「どこまでもお供します」

 

 密航者を乗せた少女(ふね)は水路を渡る。

 戻ることを考えなかった少女に後戻りは許されない。

 

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