・各表現の補足と補強(2022/6/10)。
結婚式から10ヵ月後。クラウディア・リトマスが産んだ子は、人ではなかった。
初夜まで純潔を守り通していたことは確かに見届けられた。認められた。
妊娠した期間を出産日から逆算しても不審な点は何もなかった。
たまたま起きた出来事として、肉塊は奇形児として秘密裏に処分された。
そうしてやり直された2回目の出産。
クラウディアはまたもや肉塊を産み落とした。
二度も続けて起きた異常に対し、リトマス家の者は夫側に問題があると考えた。
それもそのはず。疑いの目は外から来た者に向けられるのが道理というものだ。
まずは
検証のための3回目は、クラウディアを含めた数名の女性が孕ませられた。
……結果は変わらなかった。
ある日、屋敷に訪れる者がいた。
クラウディアは覚えていないが、結婚式の前日にすれ違った人物らしい。
その人物はクラウディアにだけ真実を打ち明けた。
人の形をしたものを絶対に産めないことを告げられた。
初夜の前日にバケモノに侵されていたのでは、と教えられた。
どうして今更になって名乗り出たのか。
どうして産む前に教えてくれなかったのか。
どうして
──あの時教えてくれていたなら、自分は結婚せずに自由気ままに冒険を続けられていたのに。
クラウディアは絶望なんてしていなかった。
貴族としての自覚はある。だからこそ婚姻を結び、子を産もうとした。
その一方で人生を楽しみたいという人並みの、人としての欲求も持ち合わせていた。
貴族の、そして人としての終わりを告げられた彼女の選んだ行動は──
「──さあ、わたくしの中へいらっしゃい」
クラウディアは数年ぶりに、終わりの始まりの地に来ていた。
来訪者に教えられた、自分を
下着を脱ぎ、自らの指で膣口を開いてみせる。
話によれば
彼女は分かっていて、そうしている。
自らの意思で
水路は薄暗く、水は濁っているが、階段あたりの浅い場所なら
石段に腰掛けて
──クラウディアを
途切れ途切れとはいえ、白濁の塊が自分の膣内へと殺到する様にクラウディアは満足げに口元を歪めた。
膣口を広げたときの水の冷たさにはすぐに慣れた。いまは目で楽しんでいる。
「わたくしの
クラウディアは貴族だ。当然、≪
知っているからこそ自分が誰の物になったのか、はっきりと理解していた。
男では撒き散らしてしまうが、女ならば一点に集中する。まさに受け皿と呼ぶにふさわしい。
クラウディアは悲観などしていない。
妊娠と出産はもう何度も経験した。それに子なんて育てようと思えばいつでも育てられる。
産まれたばかりの子を、血縁の者に用意してもらえばいいだけのことだ。
貴族としての義務は、なにも子を
自領の管理から、他の領地との付き合いまで仕事など掃いて捨てるほどある。
貴族とは、
──ならば無数の寄精蟲に集られる存在であってもいいはずだ。
ゴミはゴミ箱へ。かつてゴミ捨て場にされたクラウディアは、ゴミのような精液を回収しにこの場所へ訪れた。
寄精蟲を自分の
取り込んだ寄精蟲の遺伝子が産んだ子に強く現れるのは当然の帰結だ。先夫遺伝とはそういうものなのだから。
初婚の夫が実は
人の形をした夫よりも先に自分と結ばれた、この白い恋人は身だけでなく心も
──子を宿すことは貴族の務め。蟲を宿すことが彼女の務め。
「わたくしを、あなた様で満たして」
義務として、人間の夫と身体を重ねるのは気持ちがいい。
そこに愛が無くとも
義務として、異形の恋人を
そこに愛が無ければ
人間では身体しか満たせない。
異形なら心を満たせられる。
「愛するふたりはいつも一緒……──1匹たりとも、わたくしからは
クラウディアは
本来、この寄精蟲を遠ざける
心配せずとも愛おしい精液が垂れてくることはないが、こうした方が心がもっと満たされる。だからそうした。
続いて穿き直された下着は封印をより強固なものにした。
下着に覆われ、封に封をされた前貼りは簡単には剥がれはしない。
特別な恋人が行き場のない
チンポが
前貼りで
今の自分の状態を客観的に、より
これは自分だけに許された特別。自分だけの特別扱いが人妻をひとりの女に変えた。
「ふっ……ふふっ! ……しあわせ……♥」
さらには逃げ場を塞がれた膣の中で寄精蟲は自分とひとつとなるのだ。
クラウディアは幸せの中にいる。クラウディアの中に蟲はいる。
その証拠に顔はうっとりとし、両手は頬に当てられている。
彼女に与えられた仕事は≪精液封入≫。
正気と狂気の狭間に彼女は漂う。