※この作品はR-18です。

寄生モンスター図鑑   作:それも私だ

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新改装して前編みたいになりました(2019/09/29)。
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ホラー系(非エロを含む)
寄生蟲《フェアリー》


《フェアリー》

 ・線虫(類線形動物)。脊椎寄生型の蟲。1本のヒモのように細長く、体色/体毛は白い。サナギにはならず、動物に寄生して成虫(羽を生やす)となる。

 ・寄生されると、宿主は意識が残ったまま肉体の一切の自由を奪われる。この蟲は背中表面に貼り付くようにして寄生するので、除去そのものは比較的容易/可能だが、半身不随から全身麻痺まで、とても無視できない深刻な後遺症が出てしまう(執刀者R氏、医師J氏の両名も匙(さじ)を投げている、投薬による治療研究が行なわれているが進捗は良くない)。

 ・寄生が完了するまでの猶予は██時間。

 ・宿主は異常行動を取らされるため、被寄生者の判別は容易。

 ・寄生後██日で羽化/成虫に至る。ただし宿主の重さから飛ぶことはできない。当モンスターの名称は羽化後の姿から。

 ・ピンク色の産卵管を内部に持ち、羽化後、宿主の腸に卵を産み付ける。卵は腸内で孵化し、便と共に体外へと排出される。

 ・メモ:███各位へ。検体の数はもう充分です。これ以上は必要ありません。処理を優先してください。

 

【被害者No.██████】

 ・███████国███地方████村出身(現在は死亡、駆除済み)。

 ・同村にて行った聞き込み調査により、同村の少年(███)によるイタズラ(服の中に後ろから蟲を入れる)が原因だと推定。

 ・追記:備考:同村の少年(現在は処理済み)のイタズラにより、被害者は██人まで拡大、増加(全て駆除済み)。同村は廃村となった。

 

 

────────────────────────────────

 

 

「ひゃあっ!? ~~~ッ!! コラー! 待ちなさーい!」

「やーだよーだっ!」

 

 某地方某村。そこではいつもの日常が繰り返されていた。

 村に住む少年・オベロが、同じく村の住人であるティータの服に虫を入れたのだ。

 それも不意をついて、背中から。

 

 ティータは負けじと抗議(いかり)の声をあげたが、イタズラ少年に抗議など何のその。

 怒声をあげた時には、オベロはすでに逃げ出していた。じつに手馴れている。

 

「ったく、もう! ……見当たらないけど服の中から出てったわよね?」

 

 風の子ならぬ嵐(・)の(・)子(・)を追い回すだけ疲れるだけだ。

 ティータは嵐を捕まえることは諦めて、服の中に入れられた虫がどうなったのかを確認する。

 

 束縛されることを嫌うティータは、普段着のワンピースを腰で絞っていない。

 平時から虫を入れてくる少年がいるなら尚更だ。

 そうしておけば、虫は服を通り抜けて地面に落ちる。

 

 ティータは足元に視線を当てて調べたが、虫の姿は見当たらなかった。

 

 虫は小さいわりに動きのすばやい生物だ。

 実行犯(オベロ)と同じで、すぐに逃げ出したのだろう。

 

 ティータは特に気にせず、この日もいつもどおり家の手伝いをして眠った。

 

 ……この時、誰かに見てもらってさえいれば。

 ティータは日常の輪に居られただろう。

 

 虫は地面になど落ちていなかった。

 ティータの服の中に潜んでいた。

 

 虫とは、人間や動物の身体にしがみ付くことで、その生息圏を広げる生物だ。

 そうして辿り着いた先の新天地を開拓する。

 

 虫は生まれながらにして開拓者でもあるのだ。

 虫の活動範囲を人は遥(はる)かに超えているから、虫は人に便乗する。

 

 虫にとって、人間は天然の馬車に等しい。

 だが、行き先不明の馬車では心許ない。

 馬車には馭者(ぎょしゃ)が必要だ。

 

 虫は、ティータの背中に寄り添うようにピッタリと貼り付いていた。

 馬車(ティータ)の手綱を握るために。

 

 蟲(・)は細長い身体で、ティータの背骨に沿うようにして貼り付いていた。

 村娘の汗を糊にして。体表の繊(・)毛(・)と産(・)毛(・)を絡めて。

 

 蟲は、ティータとひとつと成るべく貼り付いていた。

 毛穴から侵入させた触手と神経を絡めて──。

 

────────────────

 

 その日の深夜、ティータは自分のベッドの中で目を覚ました。

 しかし、その瞳はどこか虚ろだ。

 

 ()《目を覚ました》と言うよりは《まぶたが開いた》と表したほうが適切か。

 事実、ティータの意識は今(・)は(・)無(・)い(・)。

 

 ティータは窓枠から──無用心にも開けたまま寝ていた──家を抜け出した。

 夢遊病患者のように──否、蟲に操られるままに。

 

 人の尊厳を捨てた家畜(メスイヌ)のように、のろのろとした四つんばいの歩みで、ティータの姿は森の中へと消えていった。

 

────────────────

 

 (ん……あれ……? ここ、どこ……?)

 

 夜の寒さが、ティータの意識を引き上げた。

 

 目の前には、冷たい地面と暗い森が広がっている。

 なぜだか分からないが、自分(ティータ)は四つんばいで夜の森を這っていた。

 

 何か恐ろしい事があって、命からがら逃げてきたのだろうか。

 だから勝(・)手(・)に(・)身体は動くし、記憶が無いのかもしれない。

 

 正気を取り戻したなら、立って走って逃げないと。

 そう思っても、身体は動かない。

 

 ──身体が、動かせない。

 

 (……えっ?)

 

 ティータがどんなに止まろうと思っても、ティータの身体は四つんばいで歩み続ける。

 それしか知らず、それしか出来ない赤子がそうするかのように、四つんばい(ハイハイ)で進む。

 

 ──身体が、勝手に動いている。

 

 (えっ? えっ? だ……誰か助けてっ!?)

 

 しかし、今のティータは声を出すことすら許されていない。

 馬車(ティータ)の御(・)者(・)は、蟲なのだから。

 

 家畜は家畜らしく、飼い主に管理されていればいい。

 それが家畜の幸せであり、存在意義なのだ。

 勝手は蟲が許さない。

 

(あ、あたしの身体……どうなってるのっ!?!?)

 

 ティータの身体は、蟲に支配されていた。

 

 ふと、ティータの身体が虫の死骸の前で止まった。

 バッタだ。バッタが死んでいる。

 

 いくら死んでいるとはいえ、こ(・)の(・)ま(・)ま(・)で(・)は(・)可(・)哀(・)相(・)だと思ったのだろう。

 蟲は、死骸に馬車(あたま)を近づけて、扉(くち)を開放した。

 

 ──さあ、あなたもどうぞ。共にい(・)きましょう。

 

 (っ!? そ、そんなの食べたくないっ!! い……いやだああああああっ!!!)

 

 ティータは、バッタの死骸を咀嚼させられたのだった。

 

 旅は道連れ、世は情け。

 バッタはすでに死んでいるが、中に巣くった別(・)の(・)寄(・)生(・)虫(・)はまだ生きているかもしれない。

 家畜にエサもやれて、一(・)石(・)二(・)鳥(・)だ。

 

 乗客の乗車(しょくじ)が終わると、馬車(ティータ)は再び動き出す。

 

 旅はまだ始まったばかりだ。

 

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