※この作品はR-18です。

寄生モンスター図鑑   作:それも私だ

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スタンダードな寄生回。閲覧注意。
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寄生蟲《フリーローダー》:閲覧注意

《フリーローダー》

 ・クモ。巣を作ることがなく、ほかのクモの巣を間借りする。

 ・体長は通常5ミリほどと極小だが、生物の体内で育った場合は数十倍に肥大、巨大化する。

 ・自発的に寄生を行なうことはないが、生き物の体内へと入ると、名称が示す通り、直腸内に居候する(排便の際に出ていくこともある)。

 ・卵はイクラのものと、よく似ている(こちらは白色だがプリプリとしている)。卵は宿主の便とともに体外へと排出される。

 ・体内で増えすぎると口や尻から飛び出すことがある(エサの取り合いの末に追い出されたか?)。このクモは雑食だが、宿主の身体を食い破った事例は現在のところ確認されていない。

 ・主な治療方法は、断食(クモを餓死させる、効果はあまり期待できない)、適当な毒を飲む(虫下し、最も効果的)、肛門に腕等を突っ込んで引きずり出す(直接的な除去/摘出作業)など。

 

【被害者NO.██████】

 ・████地方の領主の一人娘(保護済み、現在治療中)。

 ・本人の希望により、断食による治療を行なっている。

 ・メモ:卵の入手経路を探るべく、調達依頼を請け負ったという女傭兵の捜索も同時に行なっている。

 

 

────────────────────────────────

 

 

 とある地方領主の館の一室にて。

 

 豊満な胸の女傭兵が雇い主の貴族令嬢へと、調達を依頼された品を納めていた。

 

「──こちらになります」

 

 女傭兵は、水着のような鎧を身に着けている。

 余程、腕に自信があるのだろう。

 そうでなければ、そんな痴女のような格好はしない。

 

 現に女傭兵は依頼を達成していた。

 

「これが、例の宝珠」

「はい。《森の真珠》です」

 

 小さな器に、白い小粒の真珠が山盛りにされている。

 どうやら、それが依頼の品らしい。

 

「本当は海のルビーが欲しかったのだけれど、まあいいわ。──爺」

「はっ。──こちらが報酬となります。どうぞお納めください」

 

 貴族令嬢パトリシアの命(めい)に、側に控えていた老執事が女傭兵へと、報酬の入った小箱を差し出す。

 

 蓋を開けると、中には高価(たか)そうなネックレスが。

 

「えへへっ……、まいど♪」

 

 充分な報酬に、女傭兵の頬が緩む。

 

「さっ。これでもう、お互いに用はなくなったわね。──爺、彼女を門まで送ってあげなさい」

「はっ」

 

 女傭兵と老執事が退室し、部屋にはパトリシアだけが残った。

 

 取引をする前に人払いを済ませていたようで、普段は壁際で控えているメイドも、誰一人として居ない。

 

「……帰(い)ったわね?」

 

 パトリシアは部屋の中を見渡し、自分一人であることを改めて確認すると、《森の真珠》が山盛り積まれた器を──丼(・)の中へとひっくり返した。

 

「調味料(しょうゆ)をかけて──いただきますっ!!」

 

 ──《森の真珠》の正体は、何かの生き物の卵だった。

 

 

 パトリシアは、イクラ丼が食べたかった。

 

 しかし、領地は海から遠く離れている。

 運搬にはある程度の日数を必要とするため、どうしても途中で腐ってしまう。

 

 かといって、現地へ赴くのもためらわれた。

 食い意地の張った下品な令嬢だとは思われたくなかった。

 

 そこで仕方なく、代用品を用意させることにした。

 

 それが《森の真珠》だ。

 

「ハフッ! ハフッ! ハフッ!」

 

 パトリシアは、タマゴ丼をかきこんで食べる。

 

 ──食べる、食べる、食べるっ!

 

 パトリシアは、確かに食い意地が張っていた。

 

 これは人払いもしたくなる。

 異性どころか同性にも見せたくはないだろう。

 

「ん~っ! このプチュッとした食感がたまらないわぁ♪」

 

 奥歯で卵を潰すと、中の汁が弾け飛ぶ。

 

 やみつきになりそうだ。

 

「これだから美食(ちんみ)は、やめられない!」

 

────────────────

 

 食事を終えてから、数時間後。

 

 パトリシアは、自室で読書をしていた。

 

 何気ない所作にも気品の高さを感じさせる主人の姿に、レズっ気のあるメイドは思わず身体が震えた。

 

「……? 喉が渇いたわ。お茶を入れなさい」

「は、はいっ! すぐにご用意いたします!」

「読書しているのだから、ゆっくりでいいわよ」

 

 お茶を入れてこい、というのは方便だ。

 遠まわしに『トイレに行ってきてもいい』と言っている。

 

「いいえっ! お嬢様の喉を乾いたままにはできません! いますぐにでもお持ちします!」

「そ、そう……。じゃあ、なるべく早めに持ってきてちょうだい」

「はいっ!」

 

 パトリシアは、メイドがトイレを我慢しているのだと勘違いしていた。

 メイドは、主人の勘違いに気付いていたが、使用人を気遣える主人の器の大きさに、さらに震えた。

 

 ──パトリシアの体内でも、白い小さな卵が震えていた。

 

 丼をかけこんで食べたせいで、いくつかの卵は噛まれずに飲み込まれていた。

 その卵が孵化した。

 

 今日この日、パトリシアの体内にクモが巣くった。

 

────────────────

 

 パトリシアの体内でクモの卵が孵化してから、数週間後──。

 

 ほとんどのクモは、宿主の飲食物と共に直腸に移動していた。

 

「最近、屋敷の周りでクモをよく見かけるようになったな」

「そうだな。お嬢様のために、もっと確り掃除をせねば!」

「……おい、どこに行くつもりだ?」

「お嬢様専用の便器と、その便層の掃除に」

「おい待て変態。俺はお前の趣味を知っているぞ」

「はて、なんのことやら……」

 

 使用人達の会話にあったように、屋敷の便所は汲み取り式だ。

 そして、パトリシア用の便所周りにはクモが多くいた。

 

 パトリシアの体内で孵化した子グモや卵が、便に混じって体外へと排出されていたからだ。

 

 この時、使用人が同僚を止めていなければ……パトリシアの便に白い卵が混じっていることが判明していただろう。

 

────────────────

 

 ある日の食事時。

 

 パトリシアは、奇妙な吐き気を感じていた。

 

 喉の奥から這い上がってくるような、嫌な吐き気だ。

 胃もムカムカして重苦しい。

 

「──うっ!」

 

 パトリシアは口に手を当てて耐えようとしたが間に合わず、吐き出してしまった。

 

 吐瀉物がテーブルと自身の身体を汚していく。

 

「おわああっ!?」

「ひいっ!?」

 

 使用人達が悲鳴をあげた。

 

 手のひらくらいはありそうな、大きなクモがパトリシアの口から飛び出し、皿の上に乗っていたのだ。

 

 パトリシアはその事実を、状況をまだ理解できないでいた。

 

「いっ……いやああああああ──んぐっ!? おえぇぇぇぇっ!!」

 

 何回か瞬きを繰り返して、やっと悲鳴をあげた。

 ビチャビチャと音を立て、パトリシアはさらに嘔吐する。

 

 2回目の吐瀉物の中に、白い粒が混じっているのが見えた。

 

 おそらく、こ(・)れ(・)が原因だろう。

 

 どこかで見たことのあるそ(・)れ(・)に、パトリシアは混乱の中、必死で記憶を探る。

 

 

 ──ああ、イ(・)ク(・)ラ(・)だ。

 

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