憑依と寄生は両立する。出来らあっ!
・スキップ機能の実装(2026/02/26)。
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《リープ・レイス》
・死霊術によって創り出された、擬似的な魂。術を解除する前に術者が死亡または意図的な解放によって、制御から外れて暴走している状態下にある、不可視の存在。霊体を目視できるのは同じ霊体のみ。以下、『疑似魂』と表記する。
・創り出された直後は青い炎から手が生えた姿をしているが、後述の乗り移り/憑依をすることによって進化/成長し、腕、頭、上半身、下半身、足と段々と人型に近づいていく(人体の模倣?)。
・物理攻撃無効。剣による斬撃など、物理的な攻撃はすべてすり抜けて無効化されてしまう。
・属性攻撃無効。火炎や冷気、雷撃といったエネルギー体による攻撃も通じない。
・疑似魂を撃退または消滅させるには、死霊術による術式の乗取/支配後、術式の解体/解除が必要となる。また、特殊な封印具による封じ込め(結界を応用した肉体の保護)も有効。それ以外の方法は一切効果が無い。
・人為的に発生するため出没地点等は不明かつ不定。該当すると思われる事例に遭遇したら、その場からの即時撤退/逃走を強く推奨する。通常装備では対処は不可能である。
・疑似魂単体では直接的な攻撃能力を持たないとされるが、能力は『霊体化した魂の摘出(創作上における幽体離脱と同一)』であり、どんな猛者であろうと接触されたら魂を抜かれて無力化されてしまう。魂だけになっても消滅することはないが、抜け殻となった被害者の肉体へと疑似魂が乗り移り、肉体を奪われてしまう。近くに空の肉体があれば魂だけの状態から脱することができるが、もしも無ければ被害者の魂は不要な残留物と判断されてその場で破壊されてしまう。
・疑似魂に憑依された犠牲者の肉体だけが残った場合、元居た場所から離れて各地をさまよい、肉体が死亡した先で再び新たな犠牲者を待ち構える。この習性により、スラム街や娼館、奴隷市場などに紛れ込むことがある。いわゆる『悪魔憑き』とは疑似魂による被害者のことを指していると思われる。
・被害者と疑似魂の両方が生き残った場合、疑似魂は被害者を術者と誤認して付き従うようになる(魂の入れ換えを目的としている術だからか?)。元の肉体を返すように命令すると現在の肉体を交換する形で一旦は返してもらえるが、状況を問わず再度突然の肉体交換を行なうことがあるため、元の肉体を預けたままのほうが比較的安全ではある(交換中の肉体は無防備となる)。ただし、絶対服従ではないため被害者の就寝中に脱走、別の寄生モンスターと接触しての二次被害へと発展/遭遇する場合があるので要注意。幸いなことに、第三者の肉体と交換してくるといった事例は確認されていない(被害者の肉体をなるべく維持しようとする)。
・肉体が記憶している情報等は魂と共に排出されるため、精神が肉体に引きずられることはない。人格の転写、記憶の混濁は起こらない。
・疑似魂に明確な人格はなく、言葉を話すことはない。無口。行動については人間を模倣し、一般常識に基づいた行動を取るが(用を足す時はトイレへ向かう等)、良識に基づいた行動は取らない(人命を優先しない等)。
・上記の魂に関係する能力は、人間に対してのみ影響する。すでに魂の入った人体や、小動物、蟲、無機物(魂を封じるための呪石を除く)などに対しての憑依は、術式の制約によるものか基本的に不可能である。被害者は空いた肉体にしか憑依できない。
・前述の疑似魂の進化は生殖器等にまで及び、必ず異性の姿へと変化する。被害者が男性かつ疑似魂が女性体の場合、魂同士の交合/性交を行なえるも射精で出て行くのは被害者のむき出しの魂(霊体は魂を留めるための被膜)であり、段階が進むと保護膜である霊体は維持できずに消失、魂は疑似魂の
・被害者が女性体かつ疑似魂が男性体の場合、疑似魂は被害者と偏執的なまでに執拗に交わろうとする(この行動に至る理由は不明、推測の目処も立っていない)。疑似魂はまるで時間をかけて退化していくように、被害者の霊体内へと自身の構成物(足なら足を構成する分のエネルギー体)を段階的に収納/預け入れる。これは被害者が肉体を得ている時でも行なわれる。最後には男性器のみが残り、挿入によって霊体内へと完全に収まる(一体化する)。以後は被害者のことを正式に主/術者と認め、同意のない肉体交換/肉体移動は行なわれなくなる(任意では可)。ただし元々の肉体の維持を優先する習性はそのまま残る。操作する肉体が無い間の疑似魂は、被害者の霊体内に留まる。その状態のまま子供を出産しても疑似魂は被害者/主の霊体内から移動することはない。
・被害者女性の霊体内へと潜り込んだ後は、男性器だけは形を失わずに残る。また、被害者の霊体内にて被害者と重なる/着るような形で人型形態へと再生/再構築していく(能力の行使には最低でも手の再生が必要となる)。疑似魂が
・霊体内で再生した疑似魂が能力を行使する際、口内もしくは女性器などから這い出るが、器となった霊体を損傷/破壊することはない。しかし、役目を終えて戻る際は魂の注入行為が開始される(内外でルールが異なる? 制約によるもの?)。
・寄生された魂の治療/回帰手段としては、内部の疑似魂の全排出によって可能と思われるが、現時点では確認可能な手段および強制排出の技術等は存在していない。また、信頼できる担当可能人員等の確保/増員も絶望的なため、治療は不能と断定する。当組織の活動理念に従い、教団員とは関係を結ばないものとする。
・メモ:協力者F、そして協力者█の参加によってここまで解明が進みました。██らの協力に多大なる感謝を。
・メモ:明言はされませんでしたが、おそらく人間男→人間女への霊魂の注入による輪廻転生も可能だと推測できます。また、人間女→人間男の魂吸収も可能かもしれませんが、どのような結果となるかは分かりません。
・メモ:また、安全性を考慮して調査員等の参加実験は行なわれていないことを留意してください。疑いたくはありませんが、一部情報の欠落や、提供された情報が正確なものではない可能性があります。
・メモ:死霊術は教団関係者が生み出した邪悪な術です。広く普及した術ではありません。教団関連の資料については████を参照してください。
・メモ:どう考えても悪用されやすいモンスターです。特に権力者に知られることがないように細心の注意を払ってください。
・メモ:医師J、執刀医Rの両名から抜け殻となった肉体の確保を提案されました。医師Jからは寄生生物の研究と解明に、執刀医Rからは執刀医候補生の育成に使いたいとのことです。
・メモ:調査員Cの動向に注意してください。彼が当組織へ参加した元凶であるRの捜索に利用する可能性が考えられます。精神科医█の働きかけにより彼の精神状態は安定したように思えますが、精神科医█からはまだ完了の言葉は出ていません。
・メモ:霊魂の自然消滅の検証実験は行なわれていません。
| 【特記事項: 】 ・特になし。 |
女が放った
「……私が出張るまでもなかったかもしれんな」
彼女の名は《ミスティル》。傭兵だ。
全身を覆い隠せるほどの大盾を難なく片手で構え。
もう一方の手には
程良く筋肉の付いた長身の身体を覆うのはやはり重厚な、それでいて露出するところ──
金色の長い髪を切らずに伸ばしていることから、自信と実力の高さを感じ取れる。
彼女、ミスティルは《黒騎士》の二つ名で恐れられている。
「冒険者共を
スケルトンが徘徊する、この
──冒険者の救出だ。
まず最初に、この廃墟へ向かった冒険者の
彼らの実力は下の上であり、スケルトンにも対応できていたのだが……。
2体4体8体と次々に出現する数の暴力によって撤退を余儀なくされた。
その時、不幸にも
残された者たちは、はぐれた仲間の救出隊の編成をギルドに訴えるもすげなく断られた。
数人がかりで挑んで逃げ帰ってきたのだ。すでに死んでしまっているものと誰もが思った。
生存を信じたいが、もしその通りであるなら遺体か遺品くらいは回収したかった。
それでも名乗り出る者は居なかった。
……金にならないからだ。
上位の実力者は、弱者の懇願を無視して高額の依頼を請け負っていた。
同位の者たちは、同情はしても手を貸そうとはしなかった。
下位の新人には、頭を下げることもしなかった。
そんな時に
「この分だと、すでに死んでしまっているやもしれんな。弱者らしく逃げ回っていれば話は別だがな」
通常、傭兵が冒険者ギルドに顔を出すことはない。
つまりは競合他社である。請け負う
残された者たちが
事の詳細を聞いた彼女はすぐさまギルドへと乱入した。
達成報酬は無し。冒険者ギルド全体を
しかし性格が悪かろうと偽善だろうと、残された者にとっては救世主に思えた。
手を差し伸べてくれたのは彼女、ミスティルだけなのだから。
「……む?」
骨を砕きながらの探索を継続していると、書斎に辿り着いた。
そこにはひとりの少女──女剣士が佇んでいた。
「小柄で長い金髪の白の女剣士。情報どおりだな。お前が要救助者だな?」
「…………」
「おい、どうした?」
女剣士はミスティルの声に
「あぁ、そうか。私はミスティル。お前の仲間たちからお前の救出を懇願されてここへ来た。その証拠にお前の名前も聞いている。……《リリィ》、だったな」
ミスティルが素性を打ち明けても、女剣士リリィは何も喋らず立ち尽くしたままだ。
「チッ……心神喪失か。面倒な。担いででも連れ帰るぞ」
面倒に思ったミスティルが実力行使に出ようとした、その瞬間──。
リリィの
『なに……ッ!?』
──はずが、重装甲のミスティルの肉体はビクともしなかった。
加えてリリィとは体格差もある。しかし、投げ飛ばされた。
ミスティルには確かに投げられて視界が揺さぶられた実感がある。
幼い頃に父に投げられて以来の感覚だ。
その証拠に、視界の先は今しがた映していた場所とは違う場所を映している。
──ミスティルの視線の先には、
『……どういう、ことだ……?』
ありえない状況に、ミスティルはその場から動くことができなかった。
何もしない──その選択がミスティルの運命を決定付けた。
「うぁ……あ……あっ……あ……」
「あぁ、あがっ、ぁぁぁぁ……」
リリィの胸からミスティルの胸へと向かって、
それは、肉体から肉体へと乗り換えるように。
それが、自分の肉体の中へと入り込むさまを。
それを、ミスティルは呆然と眺めている。
「──……!」
ずぷんっ……と聞こえないはずの音と共にミスティルの
──そして
「……」
自分の肉体を見つめていたミスティルを、ミスティルの肉体が見つめ返す。
……肉体が、勝手に動いている。
『お前は……誰だ? なぜ私の姿をしている?』
「……」
ミスティルが語りかけても、奪われた肉体は何も返さない。
──構え直した剣で放とうとする剣撃以外は。
『チィッ!』
この時点になってようやく、ミスティルは我に返った。
なぜだか、あの攻撃に当たってはいけないと本能が訴えかけている。
その本能は事実、正しく機能した。
剣先まで伸びている、ミスティルの肉体から漏れ出るわずかな青白い光。
あの攻撃は、
ミスティルはいま、
ミスティルの肉体を奪い取ったのは、寄生霊魂《リープ・レイス》。
死霊術によって創り出された擬似的な魂の手先、使い魔の一種だ。
この使い魔は、不老不死の研究の果てに生み出された禁術のひとつだ。
肉体から肉体へ移ることで達成可能な、不老不死の完成形のひとつである。
主の新しい器となる肉体に忌々しくも居座る、
万が一に備えて、主の古い肉体を預かり支える手でもある。
当然ながら、術者でもないミスティルの魂は主とは認められていない。
術の
そして、この使い魔は現在、術の制御から外れた暴走状態にある。
術の
『……仕方ない。遺憾だが要救助者を優先、この場から離脱する』
リリィの肉体もまた、《手》に奪われた
所有者のいなくなったその肉体は、
踏んだ場数の少ないリリィでは、何もできずに魂を消滅させられた。
いま助けたところで、空っぽとなった
だが、今のミスティルは魂だけの存在。
迂闊にもそんな状態で、誰にも所有権のないリリィの肉体に近づけば。
──ミスティルの
『なっ!? 腕が青く透けて……? まさか、これは──』
片や、魂を失った肉体。
片や、肉体を奪われた魂。
魂とは肉体に宿るものであり、肉体は魂を持っているのが正常な状態である。
それが異なる魂、異なる肉体であったとしてもこれは絶対にして不変の
魂と肉体はふたつにしてひとつの存在なのだ。
足りないものを足すかのように……いや、互いに足りないものを足すべく。
リリィの肉体はその内側へとミスティルの魂を引きずり込んでいく。
あるべき
『待て! 違う! これは私の
何にも触れることのできない霊体では、何かを掴んで踏ん張ることすらできない。
弱者の肉体は強者の魂を求め欲している。
この時点になってようやく、ミスティルはすべてを悟った。
あの青白い手と自分はいま、同じ状態にあるのだと。
このままでは自分はリリィの肉体に
散々見下し尽くして
これまで積み上げてきた実績と実力が、強制的に
それも、まったくもって勝手が分からない他人の肉体へ。
立場もまるで異なる、自分よりも背の低い少女の肉体へ。
同じものは性別と、長めの金髪に、それと碧眼……眼の色くらいなものか。
皮肉なことに、ミスティルとリリィの特徴はよく似ていた。
「……」
そんなリリィの肉体を、《手》だった者は追討せずに、じっと見つめていた。
攻撃の手はミスティルの魂がリリィの肉体と重なり始めた時点で止まっている。
不運にも《手》と遭遇したリリィとは違い、《リリィの肉体》と遭遇したミスティルは実に幸運だった。
暴走した使い魔を鎮められる方法のひとつが、《手》と肉体を交換することだったからだ。
この使い魔は、新しい肉体へと主の魂を入れ換え、古い肉体を預かる存在だ。
偶然にもその筋書きを通ったミスティルは《手》の主であると
「くっ……、……?」
新たに《リリィ》と成ったミスティルは、情けなくもよろよろと立ち上がるが、追撃されないことを不思議に思った。
何もかも分からない事だらけであるが、空気が変わったことだけは分かる。
「お前は、誰だ? リリィでは無いな?」
「……」
これは無駄だと分かり切っている問いかけだが、場を繋ぐためにあえて発言した。
やはりというべきか返答はない。
(この声がいまの私の声だと? 違和感がすさまじい。不愉快だ)
両者無言のまま、ミスティルのもとへと元の肉体は静かに歩み寄る。
自分の実力は自分が一番よく
背中を見せた瞬間に今度は切られると思った。
こんな
だったら戦士らしく、最期の瞬間まで前を向いていようと覚悟を決めるが──
「……」
「……?」
なぜか、
数歩先の、元の肉体はどこか
もし
「……」
「何もしない、か。……くそっ、期待させて……ッ!」
今度は魂を投げ飛ばされることはなかった。
返却命令を受けなければ未来永劫、奪われたままだ。
このまま時間の経過と共にミスティルの肉体の中で、《手》は自分の
肉体の所有権を主張するかのように、手の先へと肉体の
次第に生えた《頭》を
ミスティルが
「肉体を返せと言っても、また聞き流すのだろうなキサマは──……っ!?」
しかし、その準備とやらは
またもや、ミスティルはその手で幸運を掴み取るに至った。
そして、再び所有権の失われた《リリィ》へと、《手》がずぶずぶと呑み込まれていく。
『は、はははっ! 言ってみるものだな!』
まさか本当に返してくれるとは思わず、ミスティルは霊体の姿のまま笑い転げた。
「……ったく、また面倒な事になった」
あれから。
ミスティルは《リリィ》の救出に
肉体は取り戻せたし、厄介かつ危険な存在を
「なんでお前は
「……」
今現在、《リリィ》はミスティルの自宅に居た。
それも主と同じ
「厄介な者に好かれてしまったな」
どうせ、心神喪失だとして病院にでもぶち込まれるのだろうと高を括っていた。
実際、依頼達成後の話はそれで決まりかけていた。
元から他人なんだ。自分には関係のない事だと。
役目を終えて、さあ帰ろうとしたところで話がおかしくなり始めた。
仲間たちはとっさに《リリィ》の身体を掴んで止めるも、まるで
そのちからに恐怖を感じて《リリィ》を放すと、彼女は何事もなかったようにミスティルの
傍観していたある冒険者が言った。
──まるで雛鳥の刷り込みみてぇだな。
そうして、話の風向きはミスティルのもとに預ける方向に変わった。
彼女がどれだけ口汚く罵ろうが、事実として救助へ向かった実績がある。
それも唯一、その役目を買って出た人間だ。それも無償で。
そのせいで善良な人間扱いまで受けた。
正直、皆殺しにして方を付けてやろうかとも思ったが……1対ギルド全構成員は論外だ。
殺し切る自信はあるが、大量虐殺ともなれば間違いなく国家からも指名手配される。
まともに買い物もできなくなるのは面倒な事この上ない。
そんなこんなで諦めるに至り、仕方なく家に連れ帰ってきた。
「……まあいい。せっかくだからお前にも期待するとしよう。ギルドで見せた、あの渾身の力を私のために役立てみせろ」
少女を介護する生活を強いられるかと思いきや、予想に反して《リリィ》は自分で食事を摂り、トイレも問題なく済ませていた。
最終的に家の主の
「さて眠るとするか。お前も早めに寝て
「……」
ミスティルは明日に備えて目を閉じた。
かつてない精神的な疲労感は、間を置かずして彼女の意識を刈り取った。
……
ミスティルが眠りについてから15分は経過しただろうか。
突如として《リリィ》の胸から《手》が抜け出した。
「ぅ、ぁ……」
これから起きる事など分かり切っている。
──肉体の交換だ。
「んん──……んぅ……」
クイーンサイズの
……一方は所有権を喪失し抜け殻となった、人並みに努力を積み重ねたありふれた少女の肉体。
……一方は主が現在保有している元々の、才能に恵まれ鍛え上げられた特別な女の肉体。
使う
宙に浮かぶ青白い《手》は、ミスティルの肉体から主の霊体をゆっくりと丁寧に引き上げると、隣で
ミスティルの肉体から彼女本人の魂がするりと何の抵抗もなく抜き取られ、追い出される。
生まれてから今日まで共に過ごしてきたその魂を、この肉体は引き留めもせずに見送った。
仮に途中で《手》が離れても、肉体は引き寄せることなく魂を
薄情なことに、彼女の肉体は生まれ持っていた魂に対して執着を見せなかった。
逆に反応を示したのは、その隣の肉体だ。
長身の大人の女の霊体が、小柄で未熟な少女の肉体に吸い込まれ、そして取り込まれていく。
それはまるで少女の肉体に万遍なく行き渡らせるために。パズルのピースが嵌まるようにして。
異なるはずの肉体と魂はお互いに引き合うようにして再び"カチリ"と嵌まり込んだ。
──これでまた、《手》の
本来ならば霊体に疲れなど関係ないのだが、ミスティルの精神は大きく疲弊していた。
それまで宿っていた肉体から霊体となって現れても、ミスティルの目が覚めることはなかった。
また、移送先であるリリィの肉体も休眠状態にある。叩き起こしでもしない限り、朝まで
仮に眠りが浅くなったとしても、夢を見ているのだと魂が思い込む。
彼女の魂と肉体が休眠状態に入っていても、《手》の霊体だけは常に覚醒している。
こうして
それなりに鍛えてはあるが、戦力として数えるには軟弱で取るに足らない未熟な器。
今ある肉体のなかで主が使うには、これで充分だろう。
目線の高さも声の感じも違うが、髪と眼の色は同じだ。顔も悪くはない。
きれい系ではなく、かわいい系の顔はむしろ良いほうに分類できる。
経験という名の武器は強く、鋭く研ぎ澄まされている。
……もっとも、新しい肉体の操縦経験はほぼ無いが。
「ぇ、ぁ……」
打って変わって、主の
その豊満な乳房へと当てられていた青白い《手》が
この肉体しか残っていないということもあるが、采配としてはこれ
──しかし、この強靭なミスティルの肉体であれば。
元から
それはつまり《手》の無茶な動きにも問題なくついていけるということでもある。
ミスティルの肉体は
危険な戦闘も。面倒な肉体の
主は後ろで応援してもいいし、新た
「すー……すー……」
「…………」
主・ミスティルが密かに自慢に思う巨乳は霊体となり、リリィの
以前と比べて
快楽の感じ方も違うかもしれない。肉体の違いを比べてみるのも面白そうだ。
視線の高さが違えば物の見え方も変わる。声が違えば顔も違う。
肉体が築いてきた交友関係もまったく別のものとなる。
新しくなった声は高めの声だ。女性らしくも愛らしい整った声を出せる。
女傑のミスティルにしては珍しく、寝息さえもかわいらしく立てている。
鏡を見る度、鏡はリリィの姿を写し出す。
鏡の前で肉体を動かせば、リリィの肉体を所有している実感が増すだろう。
柄にもなく微笑んでみせれば、かわいらしい女の子の笑顔が返ってくる。
外を出歩けばリリィとして扱われ、見知らぬ顔が集まり、にこやかに話しかけてくれる。
不都合が出ないよう、リリィのふりを演じたならば、
これまでとは一風変わった交流を楽しめよう。
これは
子を孕めば出産の経験だって積める。《手》が元の肉体を
これはミスティルが所有
これを期に、普段はあまりしないオナニーに
弱者を蹂躙する快楽とはまた違った格別の快楽が得られるはずだ。
肉体に根ざした快楽はその肉体への依存度を高める。
「…………」
今はまだ片手しかないが、次第に腕と頭が生え、胴体を獲得したら足まで伸ばすだろう。
いずれは男の姿を形取った偽りの霊体が、
異性とは無縁な女傑の肉体が、男の魂を縁取る。
使い魔たる《手》には主に反旗を翻す気は一切ない。
良かれと思ったことをこなすだけだ。
女の指の下に、ごつごつとした男の手を這わせるのも。
男性の分厚くも平たい胸板の上に、巨乳の肉体が乗せられるのも。
霊体の
手だけの霊体が与えられた肉体の全域に及ぼうとするのも。
すべては主の寵愛を受けるためだ。
そのために肉体の完全なる支配と掌握と適合を進めている。
適合するのはもちろん、主たるミスティルの
他人同士、時には血縁同士で肉体を交えるのが人の世の常であるが、あいにくとこの従者は人の枠組みから外れた人外の存在だ。ゆえに肉体という枠へと収まろうとするも、結局は魂だけの存在に過ぎない。
であれば。真に収まるべき先は
ミスティルの肉体には、元はミスティル自身の魂が入っていたのだ。
彼女の
女性である主の中に
──この《手》はミスティルの霊体内へと侵入する準備を進めている。
幽霊チンポから射精されるものは《手》を構成する
一度でもミスティルの霊体へと──魂へと
あとは主の霊体の中で再生成した頭を、主の頭に重ねるだけでいい。
そうしたらきっと
そのときの主の肉体が何者であろうとも、中身は同じ主の霊体だ。
その肉体に
リリィの肉体のまま、ミスティルとしての霊体を侵される
肉体は器だ。ときに魂の牢獄と表現されることがある。
霊体も器だ。ならば何の牢獄にされるかなど分かり切っている。
他人の肉体に主の霊体が乗り移り、主の霊体に従者の魂が乗り移る。
この方法であれば
寝ていようが起きていようが、受肉していようが霊体でいようが問答無用だ。
魂のすべてを注入して、魂レベルで一体化
ひとつの霊体に、ふたつめとなる紛い物の魂を孕ませてやる。
ひとつの霊体の下に、もうひとつの霊体を忍ばせて操縦してやる。
魂レベルで深い繋がりを持てたのであれば、偉大なる主は意のままだ。
めぼしい肉体が見つかれば、古い肉体は主の《手》たる自分に
それまで主が育て、人生を謳歌してきた主の肉体が自分の物となるのだ。
これまでどおり、新しい肉体のほうを
主が見初めた肉体ならば守護する価値は充分に存在する。
飽きたらもう一度、幽霊チンポをぶち込んで魂に直接寄生し直してからの再教育だ。
一致させた頭部だけ主の
すぐには叶わないが、ミスティルがリリィの肉体を使用した期間に応じて夢は近づく。
ミスティルが元の肉体へ戻っても、《手》は就寝中にリリィの肉体と入れ換える。
遅かれ早かれ、魂に寄生憑依されることは確定している。
明日からミスティルはリリィの肉体で朝を迎える。
弱くて慣れない他人の肉体なのだ。初めは確かに嫌がるだろう。
だが、ミスティルの気まぐれで元の肉体に戻る日がなければ。
元の肉体を充分に使いこなす従者の活躍を目にしたなら。
──私の肉体を任せてやってもよいのでは。
──リリィの肉体で戦えてこそ、真の強者であると自負できるな。
──元の持ち主に成りすまして遊んでみるか。
彼女もまた、リリィの肉体を気に入るようになる日も来よう。
どちらの肉体を使うか、その日の気分で決めてもいい。
リリィの