「
タマモキャットがいざ、溜め込んだ魔力を解放しようとした際にその後方から雷帝の声と共にその巨大な得物が横になぎ払われて、彼女は盛大に吹っ飛んだ上に壁に衝突して失神したかのように倒れて動かなくなった。
それを見た瞬間、「あっ、暴れすぎたかな?」と思ったら俺達と向こうの頭上に光が集まってビームが降ってきた。
「アバーッ!」
「ぐぁぁあああ!」
俺の場合、降る直前にみんなから集めた魔力を使ってダメージを俺自身に集まるように変更したから問題なかったが向こうは理解が及ばずにそのまま、ダメージをもろに受ける事になった。
その結果、どこぞやの忍殺漫画の叫び声を上げる余裕が生まれたのだが向こうは余裕なしの叫びを上げる事になった。
そして、ビームが収まった後に周りを確かめるとイヴァン雷帝の他にギルガメッシュやオジマンティアス、項羽や虞美人、戦闘には参加しなかったランスロット達もいた。
これが
「何を遊んでいるんだい馬鹿孫が!!」
「いやー、彼らが来たから対応してたんだが………」
「農作業が終わった顔を出せっていつも言ってるだろう!? それなのにいつまで経っても来ないから項羽に聞いてみたら戦っているって言うじゃないか! 何油売ってんだい!?」
「喧嘩を吹っかけられたから対応を………」
あまりの剣幕に、俺は事実を言おうとしたらこう言われた。
「言い訳はいらないよ! そんな奴らなんてとっとと片付けられない様じゃあ、一流の傭兵なんてまだまだだよ!」
「いや、かなり手強かったんですが………」
「大方、甘く見てたんだろう!? なら、婆ちゃんが片付けておくよ」
「えぇー………」
いくらなんでも、高火力鯖を揃えていつでも出せる婆ちゃんと違ってこっちは頭を捻らないと難しい戦いだったんだけどなぁ、と思って彼らを見ていると何故かシトナイが驚きの表情を浮かべていた。
「嘘っ、どうして………?」
「クハハハハハ、何を驚いているのかはわからんが貴様の雑な加護など容易く突破できるわぁ! 甘い、甘すぎるぞ! 雑種幼女!」
「その通りだ。私はサーヴァントにしてサーヴァントにあらず! 王の中の王! 神の中の神なのだからな! 貴様の様なサーヴァントという枠組みの中でしか生きれぬ存在など、歯牙にも掛けぬわ!」
どうやら、シトナイがハリネズミの様にかけた加護の全てがさっきの攻撃でぶっ壊れたらしい。
ここ最近、やたらと婆ちゃんの魔力消費が多いなと思っていたら彼らの言葉でその疑問が解けた。
理由は簡単で、彼らはサーヴァントという狭い枠組みを突破してサーヴァントでありながら、神話級の神やそれに値する存在になったのだ。
これにより、サーヴァントとしての制約はなくなって自由に魔力を扱う事ができ、令呪に対する呪縛ができなくなった。
まったく、
「それで? アンタがうちのバカ孫にちょっかいを掛けたのかい?」
「俺た………」
「私達は被害者よ? 隔意はあったけど手出しするつもりは無かったのに、先に仕掛けられたらやるしか無いじゃない」
え? 俺が聞いた範囲では勝手に荒らそうとしたからじゃねぇの?
そう思いながら、シトナイと院長は話し合っていたので婆ちゃんは俺に聞いてきた。
「で結局、何がどうして喧嘩になったんだい?」
「いや、俺が聞いた範囲ではこの地を荒らそうとしていたってのをアビーちゃん達から聞いたんだが………」
「ふーん?」
その言葉に、彼女は静かに聞いてから院長に尋ねると彼も驚いた様子でシトナイを見た。
すると、彼女は渋々ではあるがこう言ってきた。
「悪い事はしていないわよ。ジグラットとピラミッドが建っているせいでこの周辺の霊脈の流れがおかしくなってたの。暫くは平気だろうけど、放っておいたらどんな悪い事が起きるか分からないから善意で調整しようとしたのだけれどこれじゃあ、やる必要はなくなったわね」
「…だから勝手にやるなって。それだからトラブルの種になるんだろうが」
「ごめんなさい。まさか、この地にも神話級の神霊に変化したサーヴァントがいるなんて想像してなかったから」
まぁ、そうだろうね。普通、ゲームの事を考えるとサーヴァントの枠組みから飛び出すなんて考え付かないだろうし、想像もしてなかっただろうよ。
オジマンティアスはともかく、ギルガメッシュは神様なんて毛嫌いしている部分があるし、あまり周りを気にする事なんてないからねぇ。
それにガチで神霊になるとか、それに伴う魔力消費が途方もない数値になるから思い付いてもやろうとする人なんていないんじゃないかな?
膨大な魔力を内包している婆ちゃんのサーヴァントだからこそ、できた行為だと思っていると婆ちゃんがこう聞いた。
「ケジメと言うがねボウヤ。あんた達はどの程度を要求するつもりなんだい?」
「………っ」
その言葉で、どの程度で落とし前を付けるのかを考えていなかった事がわかる。
まったく、年上に見える院長であろうともそこまで気が回らなかった様だな。これを言うと面倒になりそうだから言わないが。
「ならシンプルに、アタシの首1つで手を打って貰おうかい」
「ブフォッ!? ちょっ、それは流石に面倒になるからやめて!」
「アンタァだぁとれい!! 元々は手綱をちゃんと握ってなかったあんたが悪いよ!」
「だからってそりゃないぜ!」
彼の言葉を待たずに、婆ちゃんがそう言ったので思いっきり吹き出してから止めに入ったが、彼女はそう言いながらもの凄い気迫を出したがそれは彼らに対する脅しだ。
これでゴネる様であれば、ギルガメッシュとオジマンティアスが黙ってないだろうし、彼のサーヴァントが暴走した場合はそいつが消滅するまで攻撃を続けるだろう。
その事に気が付いたアビーちゃん達も、演技ではあるが必死になって止めに入ろうとしたので止めようと必死になっていると1発の発砲音が聞こえた。
「………どういうつもりだい?」
「元々、俺達はギルガメッシュの裁定を受けに来ただけだ。殺し合いに来た訳じゃない。だから首はいらない」
「それでそっちは納得するのかい?」
「納得させるんだよ。俺は『マスター』で、彼女たちの『夫』だ」
彼はそう言いながら、笑ったものの彼の後ろに控えているサーヴァント達からの殺気がかなり出ていたので強がりだとは思うがその覚悟は確かな様だ。
そのため、婆ちゃんが豪快に笑ってこう言った。
「笑っちまうぐらいの甘ちゃんだね!!だが、そうまで言うなら認めるしかないね。だけどね、何も無しじゃあこちらの面子が立たないんだよ」
彼女は、くっくっと笑いながら俺にこう言ってきた。
「売りに出す野菜を全部持ってきな! ちゃんと持ち運べるようリヤカーに乗せてだよ」
「いいのか? 近くの拠点から苦情が出るぜ?」
「なんだい? 対処できねぇってのかい? いいからさっさと全員で行ってきな!!」
はぁ、まったく。こういう所は豪快って言うか、破天荒って感じなんだよなぁ。
そう思いながら、アビーちゃん達を引き連れて荷物をリヤカーに積みに行った。
「………あ“ー、死ぬかと思ったぞー」
「私ももうクタクタ」
「流石に今回は危なかったでちよ。あの人が止めてくれなかったら今頃、チリになってたでちよ」
「早く寝たーい」
周りに人がいなくなった時に、急に疲れが出てきて各々がそう言いながら荷物をリアカーに積んで戻ると婆ちゃん達は話が終わった様でこう言われた。
「さっさとお渡し」
「はいよ」
婆ちゃんがそう言ったので、彼らの前でリヤカーを止めて帰ろうとすると引き止められてこう言われた。
「待ってくれ」
「あん?」
「さっきは済まなかった」
「はあ?」
そう言って、頭を下げられたので素っ頓狂な声が出てしまった。
「俺は君の事は認められない。だけど、何も知らずに罵った事は俺が悪かった。だからすまなかった」
彼は言いたい事を言い終えると、リアカーを引いて失神していたタマモキャットを叩き起こすと去っていった。
こうして、面倒な戦争が終わったのだが婆ちゃんの手に握られているインゴットに気が付いて聞いてみた。
「で? そのインゴットは?」
「野菜の代金さ。それにあれはいいカモになるかもよ?」
「はぁ〜〜〜………」
こういう所はちゃっかりしてるよなぁ、うちの婆ちゃんは。
「だけどまぁ、止めてくれて助かったよ。あの猫の魔力量が通常の3桁分の数値だったらしいし、そもそもアイツの中にはありえねぇモンも入っていたよ」
「どんなのが入ってたんだい?」
「モノホンの化け物さ。それこそ、覚醒したオジマンティアス以上の化け物がね」
そう。院長と対峙して、タマモキャットが覚醒した際に目があったのだがその内側に巨大な災厄が眠っている事に気が付いたのだ。
それはまるで時折、夢で会話をする外なる神と似た様な感じを見受けられた。
その際、歯牙にも掛けない勢いで殺されそうになったもののこちらも
2度と相対したくない、と言うと婆ちゃんはこう言ってきた。
「はん、だったら手綱をちゃんと持ってな。じゃないと寿命が縮まるよ」
「肝に銘じるよ、婆ちゃん」
どうやら、婆ちゃんも死を強く認識した俺を介して同じ様なものを見たようなので俺はフッと口角を上げると婆ちゃんも笑ってくれたので、ギルガメッシュとオジマンティアスに礼を言ってから本拠地に帰る事にした。
勿論、風呂に入って汗を流した後に爆睡した事は言うまでもない。