「 あぁ、結局はあれが原因か」
「そうてす。あの戦いで北欧の連中が貴方を出せと言ってしつこいんですよ。何とかして来いって上から言われて来たんです」
「それにしちゃあ、随分と穏便ですねぇ。貴女方なら無理やりにでも引き渡せた筈ですが?」
「そうしても良いのですが、色々面倒なんですよ」
(クソッ………こいつの目的や行動パターンが全くと言って良いほど読めない!)
突如、やって来た玉藻の前を拠点にしている建物の応接室に招いて会話を弾ませていたが、その内心では互いの心を探り合っていた。
その中で、ロリンチちゃんが作ってくれた布型の眼帯を装備した状態で能力を発動させてみたが彼女の行動パターンがわからなかった。
行動パターン、と言っても囲碁や将棋で言うところの数手先を読む程度ではあるが、それでも指数関数的に増えるパターンのある程度先までは把握できる。
しかし、玉藻の前の場合はその指数関数の増え方が尋常じゃないほどに多く、普通なら2〜4パターンなのだが今回は一手進む毎に数えるのが困難な程に増えていくのだ。
そのため、こちらとしてはかなりギリギリの所で綱渡りをしている状態なのだがそんな様子を見た彼女はこう言って来た。
「………ふっ、そこまで身構えるでない。今回はそちらの目標を聞きに来ただけですよ」
「と言うと?」
「まぁ、単刀直入に聞くならこの地を、日本列島を崩壊させるつもりがあるか、と言う事だ」
「なるほどね。結局はそこに至るのか」
どうやら、疑り過ぎたようだ。
如何せん、あの
しかも、両足も踵部分までは再生できたものの爪先の方はまだ治りきっていないので人外化したとは言え、まともに戦える状態じゃない。
精々、能力を使って逃げ回れる程度であり、反撃手段であるレムもクソジジィの攻撃で大破しているので反撃すらままならない。
そのため、能力を解除しようとした瞬間、玉藻の前が武器を使って攻撃を仕掛けて来たので防御用に能力を使った。
「………そういう攻撃はやめてくれないか? アビー達を止めるのが面倒になる」
「それがそなたの能力か。なるほどのぅ」
彼女は机に乗り、間合いを詰めて短刀を喉元に突き刺そうとしたが対する俺は彼女との距離を大幅に伸ばして、少なくとも近距離からの不意打ちに対抗できるようにした。
しかし、第三者からすると勢いよく突き出た短刀がスローモーションに掛かったかのように動きが鈍くなり、やがて止まる様に見える筈だが当事者として今でも短刀の勢いはそのままだ。
その結果、ここで攻撃するのは得策ではないなと思ったようで彼女が短刀をしまったのでこちらも能力を解除してからこう言った。
「俺としては日本列島を滅茶苦茶にするつもりはない。だがしかし、俺やアビゲイル達、他のみんなに危害を加える輩は全力を持って迎撃する。それが誰であろうとも、な」
「………例え、神であってもか?」
「あぁ。飼い慣らされ、狭い庭を歩く自由よりも荒々しい大自然だがどこまでも進める自由を俺は選ぶ。ただ、それだけさ」
玉藻の前の質問に、俺は本気でそう答えた。
折角の崩壊した世界だ。ならば、自分なりに楽しんでくたばった方が得策だと考えてここまで歩んできた。
そして、意地を張れない繁栄を極めるなんざ、こちらから願い下げだよ。
「………そうか、ならばそう報告しよう。北欧の奴らは任せておけ。その代わり、毎月、その日の生産物を纏めて祭壇において貢ぐように。そうすれば余程の事がない限りは干渉しません」
「了解した。そうするよ」
その想いが伝わったのか、彼女は机を降りて部屋から出て行ったのでロリンチちゃん達に玄関まで同行させると、婆ちゃんがあることを聞いて来た。
「良かったのかい? アイツら、信用できないよ」
「まー、彼女達に対抗できる力がないのが現状だからねぇ。例え、攻撃を受けるのが先送りになったとしてもそれまでにある程度、力を蓄えて対抗できるようにしたいってのが本音。怪我も治ってないしね」
「ふん! 好きにする事だね」
「あぁ」
婆ちゃんにそう言うと、呆れた様子で応接室から出て行った。
まぁ、そもそもの話で院長のサーヴァントに喧嘩を売るような事をしたのは相手がどのような考えを持って行動しているかを引き出すための行為だったのだがそれてオジマンティアスが負傷する事になったのは俺の予測が甘かったの原因だろう。
まさか、実際にまじモンの神であるあのクソジジィから加護を貰っているとは予想していなかったとは言え、何でもありの崩壊した世界でアビーちゃんの能力を使い始めた時点でそれを視野に入れておくべきだった。
その予想外の出来事によって、オジマンティアスはくたばりはしなかったものの傷付き、俺自身も危うく三途の河を越えそうになったのだから見通しの甘さに怒りを覚えてしまう。
しかも、玉藻の前が去った後に緊張が解けて汗が大量に出たし、婆ちゃんが部屋を出るまで立てなかったので自分はまだまだと実感してしまった。
そう思いながら、近くにあった松葉杖を使って歩き始めたものの爪先が修復していないのでどうも歩きにくい。
ずっと、踵歩きをしているみたいで歩きにくい上に爪先で支える事もできないから踏ん張る事もできない。
普段から、あまり気にしない部分でもある無しの違いによってここまで変わるものなのかと思っていると、何処からともなく現れたランスロットが体を支えてくれた。
「もしかして部屋まで支えてくれるのか?」
「Aaaaaa………」
俺の問いに、彼は静かに頷くと一緒に部屋に向かった。