「––––––さて、刑部姫の情報ではかなり広い事がわかったからな。可能な範囲で探索と制圧なんかが出来ればいいな」
少年を救出した翌日、救出後の調査で引き篭もりの刑部姫に手伝ってもらって内部情報の確認をした。
手伝う、と言っても短時間でダンジョンじみた横穴に単騎突撃させた訳ではなく、眷属である蝙蝠達を使って内部の探索をしてもらったのだ。
魔力はかなり使うがその方が効率的だったし、無駄な戦闘を回避するという点でも彼女には働いてもらった。
だがその代わり、彼女と彼女のマスターである満、そして満のサーヴァントである紫式部とタマモキャットは攻略するグループから外れてもらった。
何故なら、保護した少年は負傷していた上にマシュも疲弊していたので俺達の拠点で休んでもらっているのだ。
何かしらあっても、タマモキャットがいるからなんとかなるだろうし。
そんな訳て満達を残して再度、駅の地下ホームに入って横穴に向かうと昨日とは違い、魔物がうじゃうじゃの10倍はいるであろう数と遭遇して乱戦となった。
「多過ぎるだろっ!ぬお!?」
「ランサーが死んだ!」
「この人でなしぃぃいいい!」
「まだ死んでねぇ!」
とまぁ、こんな事がありつつも順調に歩みを進めていったのだがその道中でとあるトラップが発生した。
「むお!?」
「なっ!?」
「転移罠!?」
「嘘だろ!?」
俺は得物であるショットガンを確認しながら、空になったマガジンを交換しつつも一緒に歩いていると偶然にも踏んだ場所に罠として仕込まれていた魔法陣が起動したのだ。
その結果、航や紅葉はそれぞれのサーヴァントによって迅速に魔法陣の外に出たが、俺のサーヴァントの場合は前衛に出たりして近くにいなかったため、魔法陣の外に出る事ができなかった。
そして、魔法陣の光が消えた瞬間に俺だけが他の場所へと転移された。
「………ここは?」
「ようこそ、最奥の部屋へ。歓迎するわ」
転移後、光が消えたので周囲を確認するために周りを見回すと部屋の中央から声が聞こえてきた。
そのため、ショットガンをそちらに構えると昨日も見かけたマシュ似の少女がそこにいた。
「そう警戒しなくていいじゃない。これからじっくり楽しむんだから」
「楽しむのはテメェの方だろ。このゲス野郎」
「あら、酷い言い様じゃない。けどまぁ、そのぐらいの方が私は好きよ」
ニタニタと気味の悪い笑みを浮かべてそいつは喋るが、俺としてはどうも信用できない上に足が地面に着かない浮遊感と全身でこいつを拒否している感覚が全身を覆っている。
その事から、そいつの一挙手一投足に注目していると彼女は服装を魔法か何かで変えながらこう言ってきた。
「あなた、お連れのサーヴァントがいないようだけど私がそうしたの。だから今から私のサーヴァントになって頂戴?」
「断るんだぜ!」
俺はそう言いながら、引き金を引いて応戦する事にした。
☆☆☆☆☆
「罠を自在に組み替える魔獣!?」
「そう。昨日もそうだったけど、マシュによく似た少女はシールダーではなく、どちらかと言えばクー・フーリン・オルタの様な感じがした。だからそんな事ができてもおかしくはないわ」
「だったら余計、守がヤバいんだぜ!早く助けに行かないと!」
一方、取り残されたメンバーの方では混乱気味な状態で議論していたのだが、その中でも冷静だったのはダヴィンチちゃんで発動した際の魔法陣を見てその様に解釈した。
でなければ、強制転移の様な事は起こっていないと判断したが、だからと言って悠長な事をしているとマスターである守がくたばる可能性が高まる。
そのため、急いで探知で場所を特定しようにも探知スキルは備えているサーヴァントはいないし、広範囲に偵察を行える刑部姫は拠点においてきてしまった。
その結果、立ち往生しても仕方ないので急いで最奥部まで行く事にした。
☆☆☆☆☆
「せい!」
「ぬあ!」
「まだまだ!」
「ふぅん!」
彼女が攻撃して、俺が回避してから攻撃するという一進一退の攻防を繰り広げている様に感じるが、そもそも相手がサーヴァントである以上は手のひらで弄ばれている感じが否めない。
それでも、逃げ出さないのは四方の壁は扉と思われるものは無く、天井を見上げても通気口の様なものもない。
何かの仕掛けや魔法で、隠している可能性が高いがだからと言って悠長にそれを探す余裕もないのから、こうやって戦っているのだが事前に持ってきたショットガンの弾丸は残り少ない。
一応、ある本では銃口から5メートル離れたら直径10センチ程度まで広がると書いてあったが、ショットガンが最も光る有効射程は30〜50メートルぐらいだ。
それより、近ければ纏まったままだし、遠ければ広がりすぎて散らばった鉛玉の間をすり抜けてしまう(もっとも、空気抵抗で威力が先に下がるが)。
そして、今回の戦闘で既にマガジンを3回も変えたので残っている弾丸は60発もない。
自衛用に拳銃も持ってきたが、射程が短くて狙いもつけにくいので余程の腕前じゃないと命中させる事が出来ない。
その上、周囲を見回すと外れた弾丸が当たった箇所が修復していっているため、ショットガン程度だと壁をブチ抜けないだろうと推測してどうするかと考えた瞬間、腹部に衝撃が走った。
「う、ぐぅ………」
「ダメですよぉ、よそ見しちゃあ………私だけを見てくださいな」
「こ、の………ゲス、野郎………」
俺が周囲に目を配らせた瞬間、マシュによく似た少女は一気に近付いて持っていた短剣で俺の腹部を刺したのだ。
その事実を実感すると、焼ける様な痛みが徐々に伝わってきて眉間に皺が寄ったがそれと同時に違和感も感じていた。
それは確かに痛いのだが、短剣で腹部を切り裂かれても問題ないんじゃないか、というものだ。
アビーちゃん達と散々、セックスしてその度に肉体改造も含めた超回復できる謎の液体をゴボゴボと流し込まれたからな。
人間ではあるが、人間ではない感覚が心の隅に湧き出てきた瞬間に壁の一部が崩壊した。
それは、待ち侘びた救援がようやく来た合図だった。