※この作品はR-18です。

俺と家元(かのじょ)と巨砲主義   作:ターキーX

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第二話

「ん……」

 

 強い気怠さと共に和明は目を覚ました。体がやけにべたつき、重い。

 

「んっ、んん……?」

 

 寝返りをうち、体が目覚めるのを待つ。次第に手足まで意識が届き始める。

 和明は身を起こし、薄ぼんやりとした視界を頭を振って振り払う。

 

「あ、あれ?」

 

 自分が自室の絨毯の上で、全裸のまま横になっていた事に和明は気づいた。股間を見てみれば乾燥した精液や他の体液によってか、やけにガビガビになっている。

 そこでようやく和明は、自分が何故こんな状態になっているのかを思い出した。自分はしほと何度も交わり──そのまま寝てしまったのだ。

 全国規模の大雨で熊本の自宅に戻れなくなった彼女は突然に和明の自宅を訪れ、シャワーを浴び、ワイシャツ一枚の姿で翌朝までの休息を求めてきた。

 そして──温もりを求めてきたしほと、理性をあっさりと吹き飛ばした和明は獣のように交わった。彼女の豊満な乳房を吸い、秘唇を赤黒く怒張した亀頭でこじ開け、血管の浮かぶ肉棒で膣内を荒々しく抽送した。

 

「えっと……今、何時だ?」

 

 壁の時計を見れば、時刻は7時過ぎを指している。確か昼過ぎにしほが訪れ、その後でボコのアニメを見てから彼女と少なくとも三時間くらいは交わったから──大体、二時間前後は寝ていた事になるだろうか。

 やけに腹が減っている。そういえば昼を取ろうとしてしほの一件で食べるのを忘れ、そのままだ。

 

「しほ……さん?」

 

 そういえば、しほが部屋にいない。横を見てみれば汗をすっかり吸って重くなったワイシャツが脱ぎ捨てられている。確かにこれを着たままではいられないだろう。

 

「トイレかな?」

 

 気怠い体を無理矢理に起こし、和明は立ちあがった。自分も何か着なくては。

 

「……ん?」

 

 ふと足を止め、スンスンと鼻を鳴らす。

 ──味噌汁と、肉の焼ける匂いがする。

 匂いに吸い寄せられるように和明の足はキッチンへ向かう。

 

「……あら」

 

 リビングのドアを開けそちらの方に顔を向けると、フライパンを手にハムステーキを焼いているしほが居た。二つあるコンロの奥側には鍋があり、そちらでは味噌汁が既に作られているようだ。

 しほも和明に気づいたのか、こちらを向いて言った。

 

「起きたのね、和明くん」

「ええ、今さっき。しほさ……」

「悪いけど、冷蔵庫の中身で夕食を作らせて貰っているわ。普段は使用人にお願いしているから、料理なんて久しぶりだけど……」

「………」

「……和明くん?」

 

 言葉を失い硬直した和明に、しほが怪訝な表情を浮かべる。

 決して、しほが勝手に冷蔵庫の中の食材を使った事に対して言葉を失っている訳ではない。彼女の姿が、裸にエプロン一枚を着けただけだったからだ。

 

「し、しほさん……それは?」

「え? ああ、これね」

 

 和明の視線が自分のエプロンに注がれているのに気づいたのか、しほはエプロンの淵を摘まんで言った。布地を膨らませている豊満な横乳が丸見えになる。

 

「申し訳ないとは思ったのだけど油を使うから、貸してもらったわ。和明くん、ぐっすり眠っていたし」

「いや、その、そうじゃなくて……!」

 

 しほは本当に意識せずにその恰好を選んだのだろうか? だとしたら、彼女はある意味“天然”であり“本物”だ。

 本来ならば膝上くらいまで届くはずのエプロンは彼女の巨大な乳房によって押し上げられ、太腿の辺りまで露出している。当然ながら背面は丸出しで、長い黒髪から覗くうなじから姿勢のよい背筋、そして引き締まった腰回りを経てむっちりと肉付きよい尻、そこからすらりと伸びる素足まで全て見えている状態だ。

 和明の喉が鳴る。

 

「……!」

 

 しほの頬に朱が差す。裸エプロンのしほの姿を見ただけで股間にぶら下がっていた和明の肉棒はたちまち充血し、体から平行に持ち上がり、そして臍に届かんばかりに屹立したのだ。

 こちらに背を向けた状態のしほに和明は勃起させたまま近づき、その肩に触れた。

 

「しほさん……」

「んっ……だ、駄目よ、和明くん。火を使ってるんだから……」

「そう言われても、しほさんのこの格好、反則ですよ……!」

 

 彼女の耳元に口を寄せ、熱い吐息と共に和明は言った。おそらく、和明が寝ている間にシャワーを浴びなおしたのだろう。汗臭いままの和明とは違う良い香りが鼻をくすぐる。

 腹は減っている、体も怠さが残っている──しかし、今のしほとしたいという性欲は、容易にそれらを抑え込んだ。

 

「あぁ……あ、危ない、わ……ンンッ!」

 

 エプロンの側面から両手を差し込み、しほの乳房を直接揉む。心地よい重みと弾力が掌から伝わってくる。更に揉みしだくと次第に乳房に汗が滲み始め、先端の乳首が固さを増してゆく。

 同時に和明はしほの尻の谷間に自身の肉棒をあてると、腰を動かして擦り始めた。張りのある豊かな尻肉に亀頭を押し当て腰を揺すると、しほの腰も刺激を受けてか小刻みに震える。

 

「はあっ……か、和明くん……わ、分かった、から……」

 

 紅潮した顔でしほはいうと、コンロの火を止めて肩越しにキスを交わした。

 

「んっ……ちゅっ、んんっ……」

「フゥッ……しほさんも、熱く、なってきて……」

「ん、くぅっ!?」

 

 キスを交わしつつ和明は片手を胸から離すと、自身の竿に添え角度を下げてしほの股の間に位置を合わせて腰を突き出した。先走りの滲む亀頭を彼女の秘唇にこすり付ける。しほが腰を浮かせると、エプロン越しにくっきりと形が浮かぶ彼女の乳房が重く揺れる。

 

「しほさん……ここ、濡れてきて、ますよ……!」

「和明くん、のも、こんな、固く、熱くなって……んひぃっ!」

 

 クリトリスを強く擦られ、しほは悲鳴めいた嬌声をあげた。

 もっと彼女の感じている、乱れている姿を見たい。その欲望のまま、和明は再び両手でしほの豊かな乳房を揉むと同時に腰を振り始めた。

 

「しほさん……ううっ! しほさんっ!」

「あ、んっ、んくぅっ!」

 

 エプロンの裾を揺らしつつしほが喘ぐ。次第に滲んできたしほの愛液は和明の肉棒を濡らし、素股をより滑らかにしてゆく。

 腰を震わせつつ、しほが言った。

 

「お、お願い、和明くん、そろそろ……!」

「『そろそろ』何、ですか……くっ!」

「んっ、あぁっ!?」

 

 少し角度を変え、膣孔のあたりを亀頭で穿るように擦る。潤んだ瞳でしほは再び懇願した。

 

「お願い……入り口だけじゃなくて、奥まで、和明くんの太いのを、頂戴っ……!」

「『ダメ』って言っていたのに……んっ! じ、自分からおねだりですか、しほさん?」

「だ、だって……こんな、熱くて固いの、擦られたらっ! お願い、意地悪しないで……!」

 

 艶やかな黒髪を頬に張り付かせつつしほを挿入をねだり、腰をくねらせる。

 

「分かり……ましたっ!」

 

 実際、和明も我慢の限界が近づいていた。胸から手を離し、彼女の尻に手を添え、狙いを定める。

 切なそうに身体を震わせる母親ほどに年の離れたしほを素直に可愛いと思いつつ、和明はそのまま腰を突き出した。

 

「ふぁ、あ、あぁぁっ!」

「ぐ、くぅっ! しほさん、締まる……っ!」

 

 待ち望んでいた極太の肉棒の挿入に、しほの膣内は十分な潤みと強烈な締め付けをもって迎え入れてきた。蕩けるような熱さと快感に、和明も思わず呻きを漏らす。

 そのまま動けば一気に射精してしまいそうな感覚を覚え、和明は一旦腰を止めた。大きく息を吸い、改めてしほの腰を掴む。

 

「しほさん、いき、ますよっ! くっ、うぅっ!」

「ひうっ! 和明、くんっ! んっ、ああんっ!」

 

 何度も身体を重ねてゆく内に分かってきた事がある。しほとの1対1のセックスは──“勝負”に近い。

 例えば島田千代の場合は、自身が快感を覚える以上に和明の反応を見て楽しんでいる節がある。故に彼女が混じるセックスは多少なりとも余裕があり、色々と考えたり、ちょっとした話をする余裕もある。

 しかし、しほが相手となると話が違う。まるで火打ち石を打ち合うが如くに互いの欲望をぶつけ合い、貪欲に求め合い、少しでも気を抜けば達してしまうような交わり。それが彼女とのセックスだ。実際、初体験の時にペースを持って行かれた和明はしほの肉欲のままに搾り取られるばかりだった。

 

「ハアッ、ハアッ……ぐうっ!」

「あ、ひぃっ! 和明くん、待って! そこっ、弱っ……んくぅっ!」 

 

 しかし、幾つもの鮮烈な経験を経て次第に和明にもしほの弱い所が分かってきた。例えば膣内の、上寄りのあたりの膣壁だ。この辺りを強く擦るようにすると、しほは脚に力が入らなくなる。

 だがそれでも無数の襞は和明の肉棒を逃がすまいと蠢き、締め付けは弱まることはない。日々の戦車道の修練で鍛えられたフィジカルあってのものだ。

 

「く、うあっ! し、しほさんっ! 俺、そろそろっ……!」

「ひっ! い、いいっ、いいっ! 和明、くんっ!  あと、ちょっと、我慢して……!」

 

 ぱんぱんと彼女の豊かな尻に激しく腰を打ち付ける。

 流しに手を起き身体を支えるしほは、足に力が入らなくなってきたのか上体が崩れ、同時に腰をより和明に密着させる姿勢になった。汗を吸ったエプロンは胸の谷間に寄り、両の豊満な乳房が外気に触れる。

 

「あぁ……しほさんの、おっぱい……こんな、揺れて……!」

「は、ああっ! もっと、もっと強く、してっ! あぁっ!」

 

 突く度にゆさゆさと揺れる乳房に堪らなくなり、和明はしほの腰にあてていた手をそのまま上に滑らせ、下から捏ねあげるように揉んだ。指の跡が残りそうな程の和明の胸への責めを、むしろ嬉々としてしほは受け入れる。

 先端の固く尖った乳首を指の谷間で弄りつつ、和明は手に余るしほの乳房の弾力を、重さを、そして揉むごとに喘ぎを漏らすしほの反応を堪能する。

 次第に結合部からこみ上げる射精感が強まってきた。そろそろ限界か。

 和明は歯を食いしばり、しほを先に絶頂に導こうとする。結合部から愛液の飛沫が散るほどに激しく腰を打ち付け、汗ばむ首筋に口を寄せ、更に胸を揉む。

 

「ふぁ、あ、はあっ! 和明くんっ! 私、もうっ!」

「うあっ! しほさんっ! 俺も、で、出るっ……!」

「あ、あ、あぁぁっ!」

 

 しほが激しく身体を震わせ、ひと際強く肉棒を締め付ける。それとほぼ同時に和明は達し、しほの膣内に精液を注ぎこむ。

 

「ぐ、ぐうっ、絞られるっ……!」

「はぁ……凄く、熱い……和明くんの、精液……!」

 

 結合部からボタボタと零れた精液がキッチンの床を汚してゆく。

 がくがくと脚を震わせながらもしほは和明の射精を、最後の一滴まで受け止めてゆく。

 腰の震えが止まり、和明は大きく息をついた。

 

「はぁ、ふぅ……しほ、さん……」

「……夕食の前に、シャワーを浴びましょう」

 

 荒い吐息と共にしほは言った。

 

「……っ!」

「ひうっ!?」

 

 しかし、和明は射精直後の半勃起状態の肉棒を引き抜く手前で止め、再びしほの最奥まで突き入れた。

 絶頂の余韻を味わっていたしほは、戸惑いを浮かべて和明を見る。和明は欲情に溺れた瞳で彼女の視線に返す。もう一度ギリギリまで抜き、一気に奥まで。

 

「んはっ! か、和明くん!?」

「すみません、しほさんっ! 俺、全然……治まりません……あと、一回だけ……!」

「和明くん、ちょっと、待ちなさ……ンンッ! ま、まだ、私、敏感で……んひぃっ!」

「しほさん……あぁ、しほさんっ!」

 

 エプロンを着崩したしほとの、キッチンでのセックス。それは和明の劣情を今までに無い程に高めさせていた。

 彼女が高校生にもなる子供を二人持つ、他人の妻である事は嫌と言うほど知っている。

 だが──自室でのセックスを経て、何も着替えずにエプロンだけを着けて自分のために料理を作ってくれていたしほに、和明はまるで彼女が自分の新妻であるかのような錯覚を覚えていた。

 その錯覚は、どんな媚薬よりも強烈な刺激となって──和明の射精直後の肉棒をあっさりと復活させ、しほの膣内で膨れ上がり、容赦なく彼女への蹂躙を再開させた。

 

「はっ、ひぃっ! んあっ、あ、あぁっ!」

「ううっ、ぐっ、しほっ、しほぉっ!」

 

 もはや普通の言葉すら出てこない。ギシギシとシンク全体を揺らすほどの激しい抽送にしほは叫びに近い嬌声をあげ、和明は彼女の名を呼びつつ夢中で腰を振る。

 しほの胸を無茶苦茶に揉みつつ、肩口に無数のキスをして、休むことなく肉棒を角度を微妙に変えつつ突き込む。そして、しほの肉体は和明の欲望を完全に受け止め、自身も欲望を貪らんとうねうねと膣全体で肉棒を包み、絞り、締め付けてくる。荒々しく揉みしだく手を弾力を増した乳房は押し返し、乱暴な腰使いに自らも腰をくねらせてくる。

 

「ふっ、ふひっ! か、かずあき、さんっ! も、もうっ、もうっ!」

「あうっ! うっ、うおっ、うおぉっ!」

 

 獣めいた喘ぎと共に和明は子宮口にまで亀頭を届かせ、そのまま一気に自分を解放した。先ほどの射精で一杯になっていたしほの膣内に、子宮に、先ほど以上の量の精液が迸る。

 

「あ、あぁぁっ!」

「ぐ、ぐうっ……!」

 

 汗と愛液と精液の匂いがキッチンに広がる。

 視界が霞む程の強烈な絶頂に、和明は後ろから抱き着くようにしほと身体を重ね、しばらく動くことができなかった。

 

 

 

 30分後。

 

「……いただきます」

「いただきます」

 

 卓袱台に置かれた料理を前に和明が手を合わせると、しほも同じく手を合わせて礼をする。

 ハムステーキに冷凍ブロッコリー、味噌汁にご飯。簡素ながら日頃の和明の食生活からすれば十分すぎる程にしっかりとした夕食だ。

 流石に全裸で食事をするのも抵抗があったので、現在は和明はTシャツとジーンズ、しほはTシャツとトレパン(やはりノーパンノーブラ)姿である。

 和明が箸をつける様子を、しほはじっと見ている。どこか落ち着かなさを感じつつも、和明はハムステーキをひと口齧った。

 

「うん、美味しいです」

「……安心したわ。本当に久しぶりだし、すっかり冷めてて途中で焼き直したから」

「いや、そうは言ってもしほさんだって……」

「………」

「……すいませんでした。そ、そういえば、天気はどうなりましたかね?」

 

 自分が欲望に流されてしほを犯した事をチクリと言われ、素直に頭を下げる。流石に二度目はやりすぎだったと自分でも思う。

 誤魔化すように和明はリモコンに手を伸ばすと、テレビを点けた。

 

『……このように日本列島を横断した強い雲はその勢力を弱め、前線は南下する見込みです。ですが交通機関については各社、線路確認のため復旧は翌朝以降になると見られており……』

 

 ニュースキャスターが気象の回復について語っている。言われてみれば、屋根を打つ雨音が随分と弱まってきているようだ。

 

「これなら、明日には帰れそうですね」

「そうね……あとは服と下着をどうするか、かしら」

「うーん。部屋干しだと朝までに乾かないかもですし、コインランドリーに行く方が良さそうですね」

 

 現在、雨を吸っていたしほの着ていた一式は洗濯機にかけられている。とはいえ一般的な大学生である和明にとって乾燥機などは贅沢の極みだ。幸い近所にランドリーはあるので、脱水が終わったらそこに行くことになるだろう。

 味噌汁を啜りつつ、和明はしほの食事する様を伺う。ガツガツと咀嚼する和明と異なり、静かに、しかし決して遅くもなく食事を進めてゆく様は昔からそういったマナーを教えられてきた人間のそれだ。セックス中はともかく、平時の彼女はよくよく自分と住む世界が違うと痛感する。

 

「そういえば()()()()、学校の方は何時からなの?」

「あと三週間ってトコですね。西()()()()とかは……やっぱり、休みとか無いんですよね」

「一応、『高校戦車道連盟代表』としては今は大会を終えて休みを頂いているのよ。おかげで普段よりは多少の余裕ができているわ。時々スケジュールが空いてくれる」

 

 他愛ない会話を交わしつつ、しほとの食事を続ける。

 考えてみれば、こうやってセックス以外で彼女と時間を共有するのは初めてかもしれない。

 

「ご飯、まだありましたっけ?」

「あるわよ。おかわり?」

「お願いします」

 

 茶碗を差し出すとしほは受け取り、炊飯器の残り少ないご飯をよそう。Tシャツとトレパンという部屋着にも程がある格好だが、それでも様になっているのは流石と言うべきか。

 気が付けば食事も先にしほが終えている。自分よりゆっくり食べているように見えていたが、無駄のない動きによるものだろうか。

 

「……ふぅ、ご馳走様でした」

「お粗末様」

 

 やがて和明も食事を終え、食後の合掌。しほは皿を片付け流しに持ってゆく。

 ピーというアラーム音が耳に届く。洗濯機の脱水が終わった音だ。和明は押入れからランドリー用のトートバッグを探し取り出す。洗濯機まで行き、それをバッグにつめてゆく。

 キッチンからはしほが皿を洗う水音が聞こえてくる。腹が膨らんだ直後でもあり、流石にここで彼女を抱く気持ちは起こらなかった。というか多分、先ほどのような激しいセックスを今すると吐く。

 

「西住さん、洗濯物の用意できました」

「こっちももうすぐ終わるわ。そうしたら行きましょう」

「はい……あ、そういえば」

 

 和明は玄関まで行くと、彼女の靴を確認した。

 

「あー……」

 

 案の定、彼女の靴も水を吸ってグショグショになっていた。朝までに新聞紙を詰め込んでおかないと駄目だろう。

 

「靴も駄目になってますね。俺だけで行きましょうか?」

「いえ、私も一緒に行くわ。サンダルでもいいから、何か履物を借りてもいいかしら?」

「分かりました。それくらいならあったと思います」

 

 履き古しのスニーカーなどは流石に彼女に履かせられない。靴箱から彼女の足でも入りそうなサンダルを探し、玄関に置く。

 ちょうどしほも皿洗いを終えたようだった。手を拭い、玄関に来る。

 

「それじゃ、早めに行くとしましょう」

「そうですね。じゃ、出ましょうか」

 

 傘を取り、和明は玄関のドアを開けた。しほが出たのを確認して鍵をかける。

 雨の熱帯夜は暑く、同時に湿っぽい。じっとりした空気がまとわりつく。それを払うように和明は歩き出し、アパートの階段を降りた。しほも後ろについてきているのが分かる。

 外の雨は確かに小降りになっていたが、それでも傘は必要な感じだ。和明は傘を広げた。

 

「……え!?」

 

 その横を、しほはまるで晴天であるかのように歩き出した。早速雨にTシャツが濡れてゆく。慌てて和明はしほを止めた。

 

「ちょ、ちょっと西住さん、傘は!?」

 

 そう言われ、しほは不思議そうに振り返った。

 

「……? この程度なら、傘は要らないでしょう?」

「いや、要りますよ!」

「戦車道の試合では雨天の中で風雨に晒されつつ指揮を執るのも珍しくはないわ。それに比べれば……」

「風邪ひきますって!」

 

 こういう所でも彼女はどこか浮世離れしている。彼女の分の傘を取りに帰ろうとした時、スッとしほが戻ってくると和明の横に来た。

 

「え? え?」

「部屋に戻るのも手間ですし、このまま行きましょう」

 

 そのまましほは和明が動くのを待つ。

 ──これが狙ったものなのか、果たして天然なのか。和明がもっと経験を積めば分かるようになるのだろうか。

 ともあれ、戻るつもりが無いのであれば仕方ない。和明は傘を差し、しほと並んで歩き出した。

 パラパラと傘に雨粒が当たる。人通りは少なく、周りの家も雨戸をはめて家の灯りも見えない。そんな中を相合傘で和明たちは歩く。

 

「………」

「………」

 

 言葉を交わす事はない。しかし、この静かさを心地よいと和明は感じている。

 身を寄せてくるしほの肩の温もりが伝わってくる。ランドリーまでの時間が少しでも長くなるようにと、和明は少しだけ歩調を緩めた。

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