ゴトゴトと乾燥機のドラムの回る音がする。
外の雨は静かながらも振り続けており、夜が深まるにつれ涼しくなってきた空気に湿気を含ませる。
「………」
「………」
誰も居ないコインランドリーの店内で、和明としほは寄り添いつつ無言で乾燥を待っていた。
和明は雑誌ラックにあった週刊コミック誌、しほは戦車道専門誌を読んでいる。マイナー競技として扱われていた戦車道の雑誌がこうして置かれるようになったのも文科省を上げての復興取り組みの成果だろうか。
「………」
ふと、和明は横目でしほを見た。
Tシャツにトレパンにサンダルという、今まで見てきた中で最もラフな彼女の格好はそれでも似合っており、下着を上下とも着けていないからか、普段よりもより身体のラインがくっきり浮き上がっているように見える。
「(うっ……)」
昼下がりに何時間も彼女を抱き、起きてからキッチンでエプロン姿の彼女に二度射精したというのに、またしほを抱きたくなってきた。
「(いやいや……流石にこれ以上はダメだろ、俺)」
明日の朝イチでしほは急いで熊本に戻らなければいけないし、和明は和明で明日はバイトの早番だ。これ以上はしほも受け入れてはくれないだろう。
とはいえ、それだけしほの身体が魅惑的であり、蠱惑的なのは事実だった。全く着飾ったり化粧したりという気配は無いのだが、日々の戦車道家元としての務めと鍛錬によって瑞々しさを保ちつつも成熟した女性の豊満さを併せ持つその肉体は、それだけで強烈な色気を放っている。今も実際、和明の肉棒はその色気だけで疼く程だ。
「(……恵まれているよな、実際)」
戦車道ショップに偶々勤めていて、偶々戦車の公道免許を持っていたことで和明は二人の家元と接点を持ち、こうして関係を持つことができた。二人の美女に加えて千代の娘である13才の島田愛里寿とさえ肉体関係を持てた事も含め、世の男からすれば十二分に果報者と言えるだろう。
しかし──同時に思うこともある。
この関係はどこまで続くのだろう。それこそ出会った時のように、ある日突然に終わってしまうのではないか。そんな形無き不安を覚える事がある。
もう一つは、自分は彼女らにとってどう思われているのだろうという疑問だ。都合の良いセックスの相手とだけ思われているのだろうか。
そしてそれは和明自身にも言える。果たして自分にとって、今の二人の家元は単に性欲の矛先でしかないのか。あるいは──
「……篠原くん、乾燥終わっているわよ?」
「え!?」
その時、横からのしほの声で和明は我に返った。見てみれば洗濯物を入れたドラムは停止しアラームを鳴らしている。どうやら思った以上に考えに没頭してしまっていたようだ。
「す、すみません! よっ……と」
慌てて和明はトートバッグを取り、洗濯物を移した。乾燥直後の温もりと独特の香りを感じる。
一方、しほは和明の読んでいたものを含めてラックに戻してからこちらに寄ってきた。バッグの中の自身の服や下着を確認する。
「……やっぱり、皺になっているわね。篠原くん、アイロンは持ってる?」
「アイロンが要りそうなのはクリーニングに出すんで……大丈夫ですか?」
「仕方ないわ。これで帰るとしましょう」
そんな事を言いつつ二人はバッグに詰め終え、ランドリーを出た。まだ外は雨模様だ。
「……帰りもお願いできるかしら?」
「え? ええ」
しほの言葉に和明は立てかけていた傘を差すと、彼女を促した。スッと横にしほが来る。
蒸し暑さを残していた夏の空気は随分と涼しくなってきていた。今夜は冷房無しでも眠れそうだ。そんな事を考えつつ、和明はできるだけ傘をしほに寄せて歩く。
やがて二人は和明のアパートに帰り着いた。鍵を開け、部屋に入る。
「……ふぅ」
「ありがとう、助かったわ」
「いえ、そんな……」
傘を玄関に差し、バッグを置いてひと息ついた和明にしほは礼を言った。最初は傘無しで行くつもりだった彼女にとってはおせっかいだったかもしれないが、結果的には良かったようだ。
「んっ……ふぁぁ」
落ち着いたからか、和明は急に眠気を覚えて大きくあくびをした。時計を見れば10時を過ぎたところだ。
「眠いの、篠原くん?」
「ちょっと……っていうか、しほさんもそろそろ寝る頃ですよね。お客さん用とか無いんで、俺の布団で良ければ使ってください」
「篠原くんはどうするの?」
「冬用の毛布とかがあるんで、それで」
本来ならば洗い立ての布団のひとつでも用意すべきところではあったが、何分いきなりの訪問だったために寝具の用意などはない。一旦畳んでいた布団を広げつつ和明が言うと、しほが首を横に振った。
「今晩はかなり涼しいわ。一緒に寝ましょう」
「え!? いや、それは……!」
「構わないから」
有無を言わさぬ口調でしほが言う。
駄目だ、こうなっては彼女は引き下がらない。おそらく和明が折れるまでしほも眠らないだろう。和明はそう理解し、頷いた。
「……分かりました」
「私はこのまま眠らせてもらうわ。篠原くんは?」
「あ、俺もジーンズだけ脱いで、このままで」
実際女もののパジャマなどは持っていない。しほは和明と共に布団を敷くと、Tシャツとトレパン姿のまま中に潜り込んだ。和明もジーンズだけ脱ぎ、Tシャツとトランクス姿で逆側から入る。
「灯り……消しますね」
「お願い」
電灯の紐を引き、常夜灯だけにする。
ナツメ球の柔らかい光だけが薄暗い部屋を照らす中、和明は掛布団を緩めに被った。しほの側がより覆えるようにだ。
「……お休みなさい」
「お、お休みなさい」
落ち着いたしほの声に、やや動揺を含めて和明が返す。和明は目を閉じ、眠りにつこうとした。
「………」
大きく息を吐き、緊張を解こうとする。
「………」
もぞもぞと身体を動かし、寝心地の良い位置を探る。
「……駄目だ」
小さく和明は呟いた。
傍らのしほの体温や気配、そこから連鎖的に今日の昼からの幾度もの交わりが思い起こされ、寝るどころではない。
「眠れないの?」
「え?」
傍らからしほの声。すぐに眠りに落ちたと思っていた彼女だったが、どうやらまだ起きていたらしい。
「す、すみません……眠かった筈なんですけど、何だか逆に目が冴えてきて」
「……何か、話でもする? その内に眠くなるでしょう」
「そう……ですね」
そうは言うが、何を話したものやら。
「………」
あれこれ考え、ふと思いついた質問をしほに投げた。
「あの……西住さん」
「何かしら?」
「その、今更なんですけど……西住さんや島田さんの言う『欲求不満』って、どんな状態なんですか?」
本当に今更な質問だ。言った後に和明は思った。
しかし、しほはその質問を真面目に受け止めたのか少しの推敲を経て答えた。
「そうね……例えば篠原くんは、スポーツとかはする?」
「……まあ、多少は」
「その中で試合とかもするわよね? 試合の後って、勝ったにせよ負けたにせよ、何か残るものがない?」
しほの言葉に、和明は自分の記憶を思い返した。確かに試合の興奮や緊張、口惜しさや嬉しさ、そういったものが余韻として残る。
そう和明が答えると、しほは言った。
「その状態が、試合を終えて何時間経っても治まらない状態……とでも言えばいいかしら? 熱い滾りが身体の奥で残ったまま、ずっと身体が火照ってしまって……堪らなくなってくる。そんな感じね」
「やっぱり、辛いんですか?」
千代は「薬を使う方法もある」と言っていた。あまりその手には頼りたくないとも言っていたが──
「……そうね。集中力も落ちるし、酷い時には眠れなくなる」
「それは……」
「だから、こうして
「………」
そう言われ、和明の中に別の「今更な質問」が浮かんだ。言おうかどうか迷い、やはりそれを口に出す。
「……あの、
「何?」
「今までも、ずっとその欲求不満はあったんですよね。いつ頃から?」
「18,9の頃ね。ちょうど今のまほと同じくらい」
やはり20年前くらいからか。
それを確認し、本当に聞きたかった事を和明は言った。
「それじゃ……今までも、『そういう相手』は居たんですよね?」
「ええ。居たわ」
「……!」
しほは澱みなく答える。
当然と言えば当然だが、やはり直接言われると堪えるものがある。
「その……何人くらい?」
「分からないわ。最初は数えていたけど、この20年ほどで少なくとも100人以上は居たと思う」
「ひゃっ……!?」
思った以上の数が出てきた。和明の動揺を知ってか知らずか、しほは言葉を続ける。
「一度だけの人も居れば、何度か身体を重ねた人もいた……適当な男性が居なくて、女性が相手の時もあったわ」
「………」
和明の脳裏に、しほと他の男性が交わる様が否応なく浮かぶ。心の中に沸きあがる「苦さ」を吐き出すように和明は尋ねた。
「家の人は……それについては?」
「古くから付き合いのある、使用人頭の菊代というのが家にいるのだけど……彼女は知っているわ。熊本での
「それじゃ、その……旦那さんは?」
「……どうなのかしらね」
そで初めてしほは曖昧な返事をした。
「隠してはいるわ。家でそれについて口に出す事も無い」
「………」
「でも……気づいてはいると思う。察しの良い人だし、口に出していないだけかも」
だとすればそれは酷く歪な関係だ。
だが──その事に和明が何か言う資格は無いだろう。そもそも自分も、しほのそれに乗っかっているのだ。
「しほさんにとって、旦那さんは……えっと、何て方でしたっけ」
「常夫さん」
「その……常夫さんは、それでも大事な方なんですよね」
「勿論よ。大好きだし、大事に思ってる」
「………」
思った以上にはっきりと返事が返ってきた。言葉の出てこない和明を他所に、しほは言葉を続ける。
「でも……あの人を、私の都合だけで四六時中付き合わせる事はできない。お互い多忙だから、家の中で会える事も少ないし」
「それで……現地で?」
「……まともでは、ないでしょうね」
しほは抑揚なく言う。そこに自嘲が混じっているように思えたのは、和明の気のせいだろうか。
「先代の家元……母に言われたわ。『戦車道家元としての務めを、そしてその務めを十全で行う為に必要な事を何を捨ててでも優先せよ』」
「それを……守ってきたんですね」
「……ええ」
苦し気に和明は言った。静かにしほが答える。
傍らに居るしほが先ほどよりも遠くに感じる。一介の学生に過ぎない和明にとって余りに想像の外の世界だ。そしてその世界で、和明はしほの家元としての道程の小石のひとつに過ぎない。
彼女の社会での存在に比べ自分は余りに小さく、弱い。その事実を痛感せざるを得なかった。
しほの側に背を向けたままの和明の背に、しほの声がかけられる。
「………」
「……何故、ここまで話したと思う?」
「え?」
「和明くんの質問の答え。私は適当に誤魔化すことも出来たわ」
「……?」
そう言われ、改めて和明は考えた。
──言われてみれば確かにそうだ。彼女が黙ったままなら、和明は必要以上に聞こうとはしなかったろう。
しかし、しほは和明が思っていた以上の事を口にした。現にそれを聞いた自分はかなり堪えている。彼女の意図を読めないまま、和明は素直に聞いた。
「どうして……ですか?」
「貴方には、全部知って貰いたかったから」
「!?」
予想外の言葉に、和明は寝たまましほの側を向いた。
しほはこちらを見ている。その瞳には、幾らかの戸惑いと、迷いと、寂しさが混じっていた。
和明は、ここまでの話で聞くまいと思った質問を口に出した。
「しほさん」
「……何?」
「俺は……今のしほさんにとって、どんな存在ですか?」
和明の言葉に、しほはじっと視線を変えないまま、口を開いた。
「特別な人に
「なり……かけ?」
「戸惑っているのよ、私も。こう見えてね」
薄暗がりの中、しほが苦笑したのが分かる。
「和明くん、覚えているかしら? あの、最初の夜」
「……はい」
忘れる筈も無い。和明にとっては初めての体験であり、今でもはっきりと思い出せる鮮烈な記憶だ。
「貴方にとってどうだったかは分からないけど……私にとってあの時ほどの昂ぶりは、今まで無かった」
「……!」
「ホテルから出て、帰路についている最中も余韻が残っていたわ。そして、伊勢での演習内容が分かった時に真っ先に浮かんだのが、貴方の顔だった」
布団の中の手が温もりに包まれる。しほが握ってきたのだ。
「こんなことは今まで無かった。だから、私も何が正解なのかは分からない。でも……どこかで折を見て、全部話そうと思っていた」
「……しほさん」
「その上で、私からも和明くんに聞きたかった」
握ってくる手に、少しだけ力が入る。
「今、全部話した通り……私の身体は、自分でも分からない程の人に抱かれてきた」
「………」
「その上で……和明くん、貴方は私をまだ抱いてくれる?」
しほの言葉に和明は無言で彼女の視線を受け止め、その手を握り返す。
そのまま和明は、手を下へと導き──
「しほさん、これが俺の答えです」
「……!」
──熱く反り返る、自身の肉棒に触れさせた。
自分には彼女と肩を並べるに足りる社会的な地位は無い、責任も、立場も、財力も無い。
しかし──
和明にも次第に理解できてきた。しほは自分を「只の欲求不満解消係」から次の段階に踏み込めるかを確かめるために、言いづらかったであろう事まで言ってくれたのだ。
元々がセックスから始まった関係だ。和明自身もしほに向ける自身の感情が性欲なのか、愛おしさなのか分からない。おそらくは二つが入り混じったもので、境界線など無いのだろう。
それでも、今こうして彼女を抱きたいを思う気持ちと滾りは本物だ。それは何より、和明の股間の怒張が証明していた。
「……和明くん」
「しほさん……んっ」
「ンッ、んんっ……」
横になったまましほは和明に身を寄せ、唇を重ねてきた。
「ふぁ……ん、ふぅっ……」
「はぁっ……かずあき、くん……!」
身体を密着させ、唇を強く重ね、舌を激しく絡ませる。
解かれたしほの両手はそのまま和明の肉棒に移り、ずり下がったトランクスから露出した肉棒を両手で擦り始める。彼女のしなやかな指が竿に絡みつき、絶妙な加減で上下に動かされる。
互いの吐息が熱く、荒くなってゆくのが分かる。和明がしほの舌を強く吸うと、お返しとばかりにしほは解放された舌で和明の口腔内を自分のものだとばかりに舐め回す。
「しほさん、しほさんっ……!」
「和明くん、いいわ、もっと……あぁっ!」
キスを繰り返しつつ、しほのノーブラの胸をTシャツ越しに揉む。揉みしだくうちに、シャツの薄い布地を持ち上げるように乳首が固くなってゆくのが分かる。
「ぷはっ……しほさん、脱がしますね」
「え、ええ……」
次第に堪らなくなってきた。和明は一旦口を離し、二人にかかっていた掛布団をどかすとしほのトレパンに手を添えた。そのままずり下げて脱がせる。
下も下でノーパンだったので、それだけでしほの何も着けていない下半身は解放され、彼女から発せられる雌の香りが一層強くなったように感じる。
和明はそのまましほの陰唇に触れた。ショリショリとした陰毛の感触に混じり、愛液が滲み始めているのが分かる。
「くっ……し、しほさん、ちょっと、強い……!」
その間もしほの手は和明の肉棒から離れる事はなかった。和明の亀頭からも先走りが滲み始めており、それがしほの手の動きを更に滑らかにさせてゆく。
和明の声に、しほは潤んだ瞳で言った。
「ごめんなさい、和明くん……つい、嬉しくて……」
「……!」
「ンンッ……!」
和明は再びしほにキスをした。唇を重ねつつ互いの秘所を弄り合う。
「ふぅっ……ちゅ、あふっ……!」
「うっ……んっ、ハアッ……!」
言葉を交わさずしほは和明の肉棒を、和明はしほの乳房と秘所を愛撫する。
次第にしほの奥から溢れる愛液が増してきた。指先を濡らすその感触を確かめつつ、和明は膣孔に一本差し込んだ。きゅうと襞が強く締め付けてくる。傷つけないように注意しながら和明はその指をゆっくり出し入れする。
「あ、あぅっ!」
「しほさん、もう、こんなに……」
とはいえ、和明の方もしほの丹念な愛撫で昂りを増していた。血管を浮き上がらせた肉棒はしほの手の中でビクビクと跳ね、興奮を示している。
和明は乳房を揉んでいた手を離すと、肉棒を擦る彼女の手を柔らかく止めた。
「んっ……しほさん、その、最初は……」
「そ、そうね……和明くんは、そのまま寝ていて。私が……」
このまましほの手で射精するのも嫌ではなかったが、この射精は彼女の
それを察したしほは和明の胸板に手を添えてゆっくりと布団に仰向けにすると、大きく脚を広げてその胴に跨った。
艶やかな長い黒髪を揺らし、汗を吸ったTシャツを肌に貼りつかせ、下半身には何も着けずにその秘所に自ら指を添え、秘唇を押し広げる。
常夜灯の弱い光に浮かび上がるそのしほの姿はとても淫らで、同時に美しいと和明は思った。
片手を自身の秘所に、もう片手は和明の肉棒に添えて位置を定めつつ、しほはそのまま腰を落とした。
「ン……あ、あぁっ!」
「うっ、くぅっ!」
熱い潤みが和明の屹立した肉棒を包んでゆく。肉厚な膣内は太く長い怒張をゆっくりと呑み込み、無数の襞が更に奥に引き込もうとうねうねと蠢く。
今までよりもしほの中が熱く感じる。和明は呻きつつもしほを見上げた。秘所から手を離したしほは再び和明の手に触れた。
「あ、んっ……に、握っていて、和明くん」
「……はい」
「う、動く、わね……んっ、あ、ああんっ!」
その手を握り返す。決して離れないように。
完全に挿入しきったのを確認すると、しほは腰を上下に振り始めた。ノーブラの乳房が重く、しかし激しく揺れる。
「はっ、ひうっ! あんっ! か、和明、くんっ!」
「うぐっ!? し、しほさんっ、締まるっ……!」
踊るようにしほは腰をくねらせつつ、亀頭が抜けるギリギリまで腰を持ち上げ、直後に腰を落とす。彼女の心地よい重みと共に肉棒が根元から絞られるように締め付けられ、和明の射精感を引き出してゆく。
外で静かに降る雨の音はパンパンと互いの肉を打ち付け合う音に上書きされ、更にそれは互いの嬌声で消されてゆく。
「ふっ、あひっ! あぁっ!」
「うっ、く、くうっ!」
乱れるしほの姿に興奮を煽られ、早くも和明の腰の奥から滾りがこみ上げてきた。気を抜くとすぐにでも射精してしまいそうだ。
それを歯の食いしばりで堪え、和明は自分も腰を下から突き上げた。長い黒髪を振り乱し、しほが悶える。
「く、ひぃっ! 和明くんっ、も、もうっ!」
「いっ……いいですよ、しほさんっ! 好きな、時に……!」
「あっ、あ、ひぅっ! そんな、まだ、感じたい、のにっ……!」
和明の手をしほが強く握る。
「そ……それならっ!」
ずん、と和明が腰を突き上げた。
「あひぃっ!」
「何度でも、俺っ、相手しますっ! しほさんが、イきたいだけ、何度、でもっ!」
「ふぁぁっ! あふっ、あ、ああぁっ!」
和明の肉棒が強烈に締め付けられる。しほが絶頂に達したのを確認し、和明は自分の射精感を開放した。
「お、俺も……ぐ、ううっ!」
「あっ熱っ! あひっ! んあぁっ!」
下から上へと熱いものが噴き上がり、しほの膣内へと吐き出されてゆく。
和明の手を握ったまま、しほは和明の胸板に自分の身体を重ねた。豊満な乳房が弾力と共に押し当てられる。
「ハァッ、ハァッ……」
「んっ……」
結合部から溢れた白濁液が垂れてくる。しほの髪を撫でつつ、和明は大きく息を吐いた。
「ふぅ……」
「……ねえ、和明くん」
しほが頬を紅潮させたまま和明を見た。
「何ですか、しほさん?」
「もう一度……いいかしら?」
「……ええ、しほさんが満足するまで」
そう答え、和明はしほの中に挿入されたままの肉棒に再び力を込めた。
──結局、そのまま和明としほは明け方まで交わった。申し訳程度の仮眠は取ったが、今日のバイトは眠気と戦う辛いものになるだろう。
外を見れば夏の朝日が高く昇っていた。ニュースによると既に大半のインフラが復旧したようだ。
「新幹線も出てます。横浜線も復旧してますから行けますね」
「そうね……ありがとう、世話になったわ」
昨晩の睦言が嘘のようにしほは凛とした姿勢で言うと、皺の残ったスーツ姿で玄関のドアを開けた。
「駅まで行きましょうか?」
「ここでいいわ。今日は仕事なのでしょう? それまであと少しは寝ておきなさい」
そう言ってしほは玄関を出た。和明は見送りの言葉を送った。
「西住さん、気をつけて」
「……ええ。またね、
「……!」
ドアが閉まる。
和明は部屋に戻り、窓を開けた。部屋に籠っていた二人の湿気を朝の風が払ってゆく。
「しほさん……」
風が少し涼しくなった気がする。
8月が終わり少しすれば大学も再開する。そうなれば今のようにしほや千代の都合に合わせて自由に動ける事は少なくなるし、彼女らも学業を優先させようとするだろう。それまでに、自分はあとどれだけ二人の家元たちと逢えるのだろう。
この夏も、あと半分である。