「それじゃ……彼女とセックスしたいって、思う?」
その島田千代の言葉の意味が和明には一瞬理解できず、やがて急激に顔を赤くすると操縦席の西住しほに届かない程度の声で返した。
「な……何言ってるんですか島田さん!? からかうのは止めてくださいよ!」
流石に冗談にしても悪趣味に過ぎる。少し怒った風に答えた和明の反応に千代は気を悪くする風でもなく頷いた。
「……うん、合格。真面目さも十分ね」
「だから、そんな……」
「いきなり変な事を言って悪かったわ。でも……これは結構真面目な話なの」
そう言うと千代は懐からメモ帳とペンを出し、さらさらと何かを書くと和明に手渡した。
「詳しい話を聞いてくれる気があるなら、今日のお仕事が終わったらここに電話を頂戴」
そこには携帯番号が書かれていた。どう反応して良いか分からず、とりあえずメモをポケットに入れる。
その時、ティーガーが減速した。千代と話をしている内に二周目の終わりに近づいたようだ。
「このままガレージまで行くわ」
下の操縦席からのしほの声。千代は意味深な視線を投げかけたまま砲手席に戻る。
一方的に言われたままの和明は、そのまま車長席から動けずにいた。
その後はあっさりと試乗は終了した。新商品のオイルの性能は家元二人にとって満足に足るものだったらしく、その後で店長と大口の注文を行っていたようだ。腰をさすりつつも店長のテンションが気持ち高そうだったのがその証明だろう。
二人はそれから店の中を一通り見回り、その場にいた戦車道履修者の少女たちからの黄色い歓声を受け、そして帰っていった。和明に対しても簡単な挨拶をしてきた程度だ。
やがて、次第に西日が店内に差すようになってきた。そろそろ今日のシフトも終わりだ。
「店長、それじゃ上がりますね」
「お疲れ様。今日は家元の試乗の操縦ありがとうね。助かったよ。家元たちも篠原君の事を褒めてた」
「そ、そうなんですか?」
「ああ。『男にしておくのは惜しい』ってね」
「それ、流石に嘘ですよね?」
苦笑いを浮かべる和明に店長は笑い、言った。
「ハハッ、まあね……篠原君こそ、何か言われなかったかい?」
「……いいえ、特に何も」
『セックスしたいか』と聞かれた事は流石に言えなかった。
「ああ、そうそう。明日の急にお願いしていたシフトだけど、パートの西田さんが午前から入れる事になったから。篠原君は予定通り休んでくれていいよ」
「え、いいんですか?」
「ああ、大丈夫。もともと無理言ってお願いしていたしね」
「分かりました。それじゃ明後日、またよろしくお願いします」
タイムカードを押し、エプロンを外す。ロッカーにエプロンを戻すとき、和明はポケットの中のメモに触れた。
「………」
悪趣味なジョークと考えるのが普通だろう。この番号にかけて誰が出るやら。
そんな考えもあったが和明は何となくそれを捨てる事ができず、そのメモをジーンズのポケットへと移した。
「お疲れ様でーす」
「お疲れ様ー」
鞄を手にして事務室を出る。気持ち、鞄が出勤時より重くなった気がした。
店を出て、夕日に照らされたベイサイドを眺める。この町はここからも賑わいが続く。ランドマークタワーに大型ショッピングモールに中華街に赤レンガ、家族で楽しむにも恋人同士で思い出を作るにももってこいの場所ばかりだ。
和明は携帯を取り出し、少し迷い、やはり電話画面にするとメモの番号を打ち込んだ。
「………」
三度の発信音で相手が出た。先ほど聞いたばかりの柔らかい声が和明の耳に届く。
『はい、島田です』
「あ……え、えっと、すいません。さっき戦車道ショップで……」
『ああ、篠原くんね。ありがとう、只の悪戯と思われたんじゃないかと心配だったの』
そう言う千代の声には本当に安心したような響きがあった。
どうやら彼女の行為は本当に悪戯という訳では無いようだ。では一体、どんな考えで千代はあんな事を言ってきたのか。
和明がそう考える内に、千代は言葉を重ねてきた。
『この後の予定は、何かあるかしら?』
「いいえ。特に無いですけど……」
『それじゃ、ちょっとご足労願える? 今から言うホテルに泊まっているから……』
「ええっと、待ってください。メモ取ります」
携帯を肩で挟み、彼女の言うホテルについてメモを取る。さほど離れた場所ではない。歩いて10分ほどだ。
「……分かりました。あと15分くらいで行っても大丈夫ですか?」
『分かったわ。篠原くん、夕食はもう食べた?』
「え? いいえ……」
『それじゃ、ルームサービスを取っておくわね。そのままの格好でいいから来て頂戴。また後で……』
そう言うと千代は電話を切った。
夏の暑さは夕方になっても簡単に下がるものではない。早くも汗ばみ始めた額の汗を拭い、和明は歩き始めた。道中、無意識にカップルの姿を目で追ってしまう。
やがて、和明はホテルに辿り着いた。家族旅行程度でしかホテルを利用した事も無い身だが、立派なホテルである事はその外観からも理解できた。
フロントを抜け、エレベーターへ。家族連れや修学旅行などでも使われているホテルのようで和明のような大学生も普通に見かけるが、どうにも落ち着かない。
エレベーターが止まり、フロントとは打って変わって人気のない廊下に出た。電話で言われた部屋番をゆっくりと探す。
「ええっと……ここか」
部屋番を確認し、ノックする。少しの時間の後、ドアのロックが開けられる音が鳴った。
「……篠原くん?」
「は、はい」
「迷わなかった? そのまま入って」
中からの千代の声。和明は言われるままに部屋に入った。
「………!」
和明は思わず硬直した。千代がナイトガウン一枚の姿だったからだ。
「……? ああ、この格好ね? 今日は結構汗をかいたから、早いけどシャワーを浴びていたの」
まだ火照りを残したままの肌を隠すでもなく、千代はさらりと言った。本当に下着も着けていないのか、緩く絞められたガウンの前から豊かな乳房が形作る谷間が覗いている。
「は……入っていいんですか?」
「ええ、どうぞ。簡単だけど、夕食の用意もできているわよ」
そう言うと千代は室内に視線を移した。大きなダブルベッドにテレビに冷蔵庫、高級そうなソファが幾つか。そのソファの中央のテーブルにはサンドイッチとドリンクが置かれている。
「さ、座って」
千代に促され、和明はソファのひとつに座った。体をふわりと受け止めるソファの柔らかさに驚く。本当に高級なソファとはこういうものか。
和明が座ったのを確認すると千代はその正面のソファに座った。足の位置を整えようと動いた際、ガウンの内側の太ももの辺りまで見えた。つい視線で追ってしまうのは、男の悲しい性だ。
「それじゃあ、食べながら話をしましょうか。学生さんには足りなかったかしら?」
「いえ、そんな事は……いただきます」
頭を下げ、和明は氷が揺れるグラスを取り中のコーラを飲んで喉を潤し、次いでサンドイッチの一つを口に含んだ。何というか、コンビニのサンドイッチとは色々な意味で格が違う味がする。
和明が食べ始めたのに続き、千代は音もたてずにサンドイッチに手を伸ばした。皿に添えられたナプキンで丁寧に指を拭く姿が何とも様になっている。
「……まず最初に言っておくと、あの時に篠原くんに言った言葉はその通りの意味に取ってもらっていいわ」
いきなり話の本質に踏み込んできた。サンドイッチを呑み込み、和明が言った。
「どういう事なんですか?」
「戦車道という競技については、どの程度ご存じ?」
「まあ……ルールとか、どんな競技かとかは、大体」
「戦車免許も持っていたものね……ひょっとすると、彼女さんとかが戦車道を?」
千代の言葉に和明はぴくりと反応を示し、少しの沈黙の後に言った。
「そんなところです。もう、その、振られちゃいましたけど」
「……悪い事を聞いたわね」
千代は頭を下げ、話を続ける。
「戦車道って競技は、草創期に比べて遥かに簡略化、軽量化が進んだとはいえ女性がやるスポーツとしてはハードな部類に入るわ。試合展開によっては何時間も鉄と油の匂いに包まれ、砂漠なら暑さ、雪原なら寒さに耐えて重さ数㎏の砲弾を抱え、撃ち合う」
「………」
実際、映像などで試合を見ている中で和明もそう感じた事もある。
しかし、島田流家元の口から語られる言葉にはそういった感覚に依るものでない重みと説得力があった。「女子供のスポーツ」と揶揄される事もある戦車道だが、その厳しさは男性専門のスポーツに負けるものではないだろう。
「それに耐えうるだけの強さが、戦車道の選手には求められるの。フィジカルな強さだけでなくメンタル面……精神力の強さや、闘争心の激しさ。疲労や焦燥すら忘れさせる程の敵への闘争心が、より強かった方が勝つ。戦車のスペックなんて、そのメンタルを十全に働かせるために必要なツールに過ぎないわ」
「なんか……凄い世界ですね」
「ふふっ、そうね……凄い世界よ。私も家元とか呼ばれてはいるけど、まだまだ極めたとはとても言えない、深い世界」
千代はそう言うと微笑み、和明をまっすぐ見た。
「問題はその闘争心……それが試合だけで発散できたなら良いのだけど、多くの場合、発散できずに強い欲求不満を生むの。優れた選手ほどね」
「欲求不満……ですか?」
「ええ。遠回りな話になってしまったけど、それが貴方にお願いしたいこと。西住しほ、彼女は今、郊外の演習場で試合に近い形の演習を行っているんだけど……帰ってきた彼女の、欲求不満の解消相手になってほしいのよ」
「……!?」
戦車道の話からいきなり自分の話に戻り、和明は咄嗟に言葉が出てこなかった。気持ちを落ち着かせるためにコーラを一口飲み、言葉を返す。
「ちょ、ちょっと待ってください! その、西住さんってお子さんもいて、当然旦那さんも……!」
「ええ、居るわ。だからこれは浮気って事になるわね」
誤魔化す気配もなく、あっさりと千代は言った。どうやらそこは彼女にとって深い問題では無いらしい。
「当然、貴方には迷惑はかけないわ。これは私たちと貴方だけの秘密」
「……他の方法で、どうにかならないんですか?」
「精神安定剤とかで和らげる事は出来るけど……不健康だし、あまり良い方法では無いのよね」
「それなら、そういった事のプロの人に頼めば……」
「そういうのは足が着くわ。今、戦車道はメディアからの注目も高まってきている。『戦車道家元の男漁り』とかで週刊誌の記事にされたら、それこそ一大事」
なるほど。立場的にも世間から気にされず、後腐れも無い和明のような学生が適役という事か。
事情は分かってきたが、和明にはまだ別の「引っ掛かり」があった。迷いを顔に浮かべながらも、千代に向き合う。
「話は分かりました。でも……すみません、その話は、俺には無理です」
「倫理的な話?」
「いいえ、そういうんじゃなくて、物理的な話って言うか……その、これは見栄とかじゃなくって……」
皿に残った最後のサンドイッチを食べ終えると、和明は千代に説明した。
「───」
「───!」
千代の目が大きく開かれた。
「だから……俺、適役じゃないと思うんです」
「……それは、逆に興味があるわね」
千代は静かに言った。彼女の纏う空気が、僅かに変わったようにも思える。
「篠原くん、もう食事はいいかしら?」
「え? は、はい」
「それじゃ、ちょっと椅子から立って貰っていい?」
千代の意図が読めないまま、和明は素直に立ち上がった。千代も同様にガウン姿のまま立ち上がり、こちらに歩み寄る。
「し、島田さん?」
「失礼するわね」
「うっ……!?」
おもむろに千代はその手を和明の股間に伸ばし、ジーンズの上から撫でてきた。下から上に撫でるような動きに腰がびくりと反応する。
「何を……!」
「痛くはしないわ。力を抜いて……」
「そんな事、言われても……うぅっ!」
千代の指がジッパーを引き下ろす。そのまま流れるように彼女の指はジーンズの中に入り込んできた。厚手の布地越しだった千代の指の感触がトランクスの薄い布地越しに代わり、より直接的な快感を和明の肉棒へと与えてくる。
「ま、待って……ください。本当に……」
「まだよ、もう少し……」
むくむくと海綿体に血液が滾り、千代の指の中でそれは肥大化してゆく。
「……そろそろ、かしらね」
「そろそろって……島田さん! それは……」
「『千代』でいいわ」
和明の股間を弄っていた指がするすると戻り、ガウン姿の千代は腰を落とすと和明の前に腰を落とした。
ちょうど跪くような姿勢で和明のジーンズの留め具を外すと、亀頭が引っかかっていたトランクスの個所も外し、一緒に引き下ろす。
「……!?」
「あぁ……」
跳ねるように、缶コーラの500ml缶を思わせるサイズの肉棒が千代の顔を叩かんとする勢いで露わになる。
思わず息を呑む千代の気配と視線を感じつつ、観念したように和明は言った。
「……これが、俺が彼女に振られた原因です。先週、彼女と初めてしようとした時、彼女が怖がって泣き出して……それで」
「まあ……確かに、初めてでこの大きさは怯えても仕方ないわね……」
「………」
実際、彼女を抱く寸前だった。「裂ける!」と彼女が本気で怯えてしまったのだ。正直、アレでよくEDにならなかったものだと和明自身も思う。
そして──それから数日、お互いの気まずさを解消する事もできず、彼女から別れを切り出された。ショックではあったが、仕方ないと諦めている自分もいた。
「大は小を兼ねる」と言うように男性器は大きい方が良いという考えが男性間では主流だが、その使う相手が居なければ何の意味も無いのだ。
「だから……その、俺が西住さんの相手をするのは、出来ないと思います」
千代の視線に反応してビクビクと跳ねる肉棒に苦渋の視線を送りつつ、和明は言った。全く、自分の体の一部と言うのに呑気なものだ。
和明の言葉を受け、千代は顔を俯かせ──
「……フフッ、フフフッ」
──笑った。
「し、島田さん?」
「……『千代』と言ってもらっていいかしら?」
「え? えっと……千代、さん……?」
「フフッ、笑うのは失礼だったわね……確かに驚いたわ。篠原くんが思った以上の『掘り出し物』だった事にね」
「『掘り出し物』? 千代さん、それって……うあっ!?」
亀頭に暖かく、柔らかい感触がいきなり押し当てられた。
「ちゅっ……んっ……はぁっ……」
「ちっ、千代さんっ!? んんっ!」
何が起きたのかはすぐに分かった。千代が亀頭にキスをしたかと思うと、舌を這わせてきたのだ。
彼女との初めてのセックスでは互いにいっぱいいっぱいで、前戯もロクにできないままの挿入であった。無論、フェラチオをされるのも初めてだ。
まだ湿り気の残る亜麻色の髪をかき上げ、千代は和明の反応を楽しむように亀頭に唇を押し当て、カリ首に舌を絡め、太い肉棒の竿の部分に細い指を絡めてくる。
「こんなに凶悪なのを持っているのに、反応は初々しいのね……何だか、楽しくなってくるわ……はむっ」
「ああっ!?」
和明は背を反らし悶えた。千代がその口を一杯まで広げたかと思うと、赤黒くひくつく亀頭を口に含んだのだ。
腰がビクビクと震え、初めての刺激に次第に射精感がこみ上げてくる。かろうじて残っていた理性で和明は訴えた。
「ち、千代、さん……そんな、汚いです……俺、仕事で、汗をかいたままでっ……!」
「ぷあっ……そうね、凄い匂い……汗臭くって、それに篠原くんの汁の匂いが合わさって……」
口を離した千代の唇と亀頭の間に、唾液と先走りの混じった粘液の橋がかかる。その淫猥さに和明は言いようのない支配感を覚えた。
唇の端を手の甲で拭い、千代はそう言うと──
「……素敵な、
「く、くうっ!」
──再び和明の肉棒を咥えこんだ。
先ほどまで柔らかな微笑みで自分と接していた大人の女性が、自分の前に跪いて肉棒を舐めしゃぶり、熱い吐息を浴びせてくる。
それは和明にとって余りに非現実的であり、そしてそれ故に自分の知る自慰行為などとは比べ物にならない快感を覚えさせた。
「んっ、んんっ……凄い、全然、収まりきらない……んむぅ……」
「ああぁっ、千代、さんっ! それ以上は、ほ、本当にっ!」
「射精しそうなのね? 構わないわ。このまま、我慢せずに射精して……」
吐息混じりの甘い声。
見下ろせば、彼女のガウンの前は完全に緩んでおり、千代の白い肌、揺れる豊かな乳房と朱鷺色の乳首、そして下半身の陰りまでも和明の視界に映る。
まだ初対面から半日ほどというのに、恋人めいた囁きと共に和明の巨根に手を添え、根元から素早く、しかし痛くない程度の柔らかさを添えて扱いてくる。
優しさと淫らさを兼ね備えた愛撫に、何とか彼女の顔への射精は堪えようと思っていた和明の我慢は容易に決壊した。
「うあぁっ、千代さんっ! で、出るっ、出ま、すぅっ!」
「っ……!」
和明の叫びが終わるのを待たず、亀頭から粘りある精液が噴出した。我慢していた分もあり、その強烈な射精は和明の視界が白くなる程の快感を伴った。
「はぁっ……熱い……それに、凄い量……!」
ドロドロとした白濁液の噴水を、千代は恍惚とした表情で嫌がりもせず受け止めた。彼女の綺麗な肌を、整った鼻筋を、形良い唇を、容赦なく和明の精液が汚してゆく。
「あっ……ああっ……!」
腰の震えが止まらない。たっぷり数十秒の射精感を経て、ようやく和明は射精を終えた。ぐったりと傍らのソファに、ジーンズを半脱ぎにした下半身丸出しの状態で倒れこむように腰を落とす。
荒い吐息の中、彼女の名を呼ぶ。
「ち、千代、さん……!」
「……ごめんなさいね。射精までさせるつもりは無かったのだけど……貴方のを見せられて、私も少し興奮してしまったわ」
一方の千代は早くも先ほどまでの、優しく柔らかい口調に戻っていた。ガウンの前を完全に広げて乳房が覗き、精液塗れの顔でこちらに謝ってくるのは何とも奇妙な感覚だった。
まだ射精の余韻が収まらず、言葉が出てこない和明に千代は立ち上がりつつ言った。
「篠原くん……いいえ、ここまでしてしまったら『和明くん』と呼んだ方が良いかもしれないわね。貴方は自分のソレにもっと自信を持っていいわ。確かに初めての子は怯えるでしょうけど、貴方のなら西住さんの相手をするには十分……いいえ、彼女を屈服させる事が出来るかもしれないわね」
「そんな、事は……」
「それに……私も西住さんも、
「………!」
どきり、と和明の心臓が跳ねた。改めて自分の肉棒に奉仕したのが他人の男性の妻であり、子を産んだ事のある女性なのだと否応なく実感させる言葉だった。
千代はテーブルに残っていた紙ナプキンで顔を拭いつつ言った。
「それとも、やっぱり私や西住さんのような、お母さんくらいの年齢の女性の相手は嫌だったかしら?」
「い、いいえ。そんな事は……無いです」
そこだけは和明ははっきりと否定した。本当に千代の行為に嫌悪感を抱いていたなら、行為の最中でも和明は抵抗できたろう。千代が魅力的で、彼女に「してほしい」という気持ちがあったからこそ、和明はそれを受け入れ、射精したのだから。
「……そう」
和明の言葉に千代は微笑んだ。気のせいか、今までの微笑みよりも嬉しそうに見える。
顔の精液を拭き終え、彼女は改めて和明に言った。
「それじゃ、改めて聞くわね」
「………」
「彼女の──西住しほの、セックスの相手になってくれる?」
彼女が何を問いかけてくるかは分かっていた。そして、それに自分がどう答えるのかも。
「……はい」
萎みかけていた和明の肉棒が、ぴくりと反応を示した。