第一話
「……ん?」
ヘリのローター音が、無機質な屋内に鈍く響いている。
どうやら、この喧しさだというのに眠ってしまっていたらしい。和明は固い長椅子から身を起こし、伸びをした。
「んんっ……ふぁぁ」
「起きられましたか、篠原様」
大きなあくびをすると、反対側の長椅子に座っていた菊代が何処からか水筒を取り出し、カップに冷えた緑茶を注ぐと手渡してきた。飲めばキンとした冷たさが体の中に流れ込んでくる。
「ふぅ……おはようございます、菊代さん」
「もう少しでご到着です。ふふ、よく眠っておられました」
そう言いつつ菊代は優しく微笑む。その様は昨晩、和明としほ、まほの三人の激しい交わりを眺めていた時のものと変わっていない。
「……お疲れ様でした。私が思っていた以上に篠原様は頑張って下さいました」
「いえ、そんな……その、俺も、疲れはしましたが……いい思いをさせてもらったと、言うか……」
丁寧に頭を下げてくる彼女に、照れを見せつつ和明は答えた。
菊代が部屋を退出した後も、あの部屋で嬌声と喘ぎが途切れる事はなかった。
和明はそれこそ起き上がれなくなるまで精力を絞り出し、しほとまほの膣内に交互に肉棒を突き入れ、豊満な四つの乳房を揉みしだき、精を放った。
日本戦車道を代表する美しい母娘は疲弊する様子もなくそれに応え、和明の巨根を舐め、擦り、締め付け、精を受けた。
結局そのまま夏の早い夜明け前までそれは続き──申し訳程度の仮眠を取って、今に至る。
「本当に、ありがとうございました」
屋敷を出る時、既に黒森峰のパンツァージャケットに身を包んでいたまほは凛とした姿勢で和明に頭を下げた。その様子から、ほんの数時間前まで潤んだ瞳でキスを何度も求めてきた彼女の姿を想像できる者はいないだろう。
「私もまほと一緒に北海道に向かうわ……世話になったわね」
その横に立つ、やはり皺ひとつ無い黒のスーツ姿のしほは静かに言い、ヘリに乗る和明を見送った。
二人の様子は確かに中に溜まっていた鬱積が無くなったような気配で、それは和明に満足感を覚えさせた。
「………」
和明は菊代の微笑みを眺め、ふと思った事を口にした。
「あの、菊代さん」
「何でしょうか?」
「えっと……ひょっとして菊代さん、今回の事は秘密って言ってましたけど……しほさんが気付いて戻ってくるのも、想定内だったんじゃないんですか?」
「何故、そう思われたのですか?」
微笑みを崩さないまま菊代は問い返す。和明は言った。
「何と言うか、イレギュラーな筈のしほさんの戻りにも当たり前のように対応してましたし……何より俺を横浜から連れ出す時、あそこまで派手にする必要は無かったですよね?」
「………」
本当に秘密の要件で和明を横浜から熊本に連れ出そうとするなら、戦車道ショップの裏手に軍用ヘリを乗り付けるという真似事はしないはずだ。
しほは店長から和明の動向を聞いたようだが、あの場では内密にして店を離れてからヘリに乗せ、店長に行き先を知らさないまま連れてゆく事も出来ただろう。
あくまで推測に過ぎないが──
「……家元は、自分を騙すのが得意な方ですから」
菊代は笑みを収め、そう言った。
「自分を騙す?」
「私は学生の頃から家元とはお付き合いしておりますが、あの方は常に『西住流次期家元』として自分をどう見せればよいか、そしてその為に自分自身をどう抑えればよいか、それに努めておられました」
「学生の頃から……ですか」
自分の中高生の頃を思い出す。年頃の少女ならば遊びたくもあろう、友人と交友を深めたくもあろう。そういったものを切り捨て、次期家元としての姿を求められる。
もし自分が同じ立場だったなら、果たして耐えられただろうか。和明はそう思った。
「私としては……篠原様には家元の滾りだけでなく、只のひとりの女としての心の疲れを癒せる存在になっていただきたいと思っております」
「なれますかね、俺に」
只の大学一年生に随分と荷の重い事を言う。和明の問いかけに菊代が言った。
「それは……」
その時、ヘリが減速を始めた。
「おや、もう近いようで」
菊代の言葉に釣られ、窓の外を見る。朝焼けが照らす横浜港が遠くに見える。この速度ならばあと10分もかかるまい。
「……ん?」
その横浜港にやけに巨大なシルエットが停泊している。全長数kmほどのそれは、学園艦にしてはやけに平べったい。
同じく窓の景色を見ていた菊代が眉を寄せた。
「あれは……大学戦車道選抜チームの移動演習艦でございます」
「大学演習艦……それって!?」
昨日のまほの話を思い出す。あと数日で北海道にて行われる、大洗女子学園と大学選抜の大規模演習。それに向かう途中で停泊しているという事だろうか。
そして当然、大学選抜という事は──
「篠原様、これを」
菊代は着物の袖を探ると、見覚えのある小瓶を和明に手渡した。
「これって、昨日の……」
「念のため持参して正解でした。篠原様、おそらくあの艦には……」
「ええ、居ますよね」
「彼女らの目的は、私たちが篠原様にされた事と同じと思われます。これをお持ちになってください」
「……ありがとうございます」
どうやら、二日続けてのんびりとは眠れないようだ。
ごくりと喉を鳴らし、和明は素直にそれを受け取った。
やがてヘリは更に速度を落とし、市内に入った。眼下には見慣れた横浜の港町の景色。そしてやはり見慣れた戦車道ショップの上空までたどり着くと、ヘリは下降を始めた。
「くっ……!」
内臓が浮き上がるような感触を覚える。揺れが起き、治まる。
「篠原様、こちらへ」
菊代の先導に従い、ヘリから降りる。
「……あ」
「おや、これは……」
ヘリの昇降口で待ち構えていた人物に、和明と菊代はそれぞれ声を漏らした。
「お久しぶりね、井手上さん」
「………」
ヘリのローター音が響く中だというのに、その声ははっきりと届く。
見慣れた葡萄酒色のドレス姿の島田千代と、大学選抜のパンツァージャケットに身を包んだ小柄な少女、島田愛里寿。
二人は並び、降り立った和明と菊代を出迎えた。
「ご無沙汰しております、千代様。愛里寿様もお元気そうで」
「………」
ぺこりと愛里寿が頭を下げた。礼を返し、菊代は千代に言った。
「こちらに乗船されていたという事は、千代様も北海道に?」
「ええ、大学選抜の演習の指導も兼ねて。それにしても……」
そこで千代は視線を和明に向けた。
「……何か、面白い事をされていたようね?」
「さて、何とも」
腹を探ってくる彼女の言葉を、菊代は涼しい顔で受け流す。
何とも二人の間に割り込みにくい空気が発生している。和明がどう切り出したら良いか分からないでいると、菊代がこちらに顔を向けた。
「それでは篠原様、お帰りも
「……はい」
そう言うと菊代は一礼し、そのままヘリへと戻ってゆく。
改めて和明は島田親子に向き直った。
「ええっと……それで、わざわざ横浜まで何で来られたんです?」
まさか、自分のためだけに横浜港に寄港を?
流石にそれはあるまい、そう和明が思っていると彼女らの後ろから声が飛んできた。
「いやあ篠原君、それなんだけど……」
「店長?」
見慣れた戦車道ショップのエプロン姿の壮年が顔を出す。怪訝な表情を浮かべる和明に店長が言った。
「ちょっと家元から相談を貰ってね。今度の北海道のエキシビジョンマッチで、資材輸送を含めて出店してほしいって言うんだ」
「出店……ですか?」
「試合の決定から開催までが今回急で、地元の戦車道ショップでは賄い切れない砲弾や燃料、それに加えて普段は使わない特殊な車両も
千代がそう補足する。店長は頷き、言葉を続けた。
「ただ、僕ひとりではちょっと荷重でね……ついては、篠原君にも手伝って貰えないかと」
そう言って、店長は和明に書類が挟まったバインダーを差し出した。細かい文字で商品名がびっしりと書かれている。
パーシング用の砲弾、予備装甲、履帯、燃料。同様にセンチュリオンの装備一式。更にその下に視線を移したとき、和明は顔に驚きを浮かべた。
「T-28用砲弾及び燃料一式……自走臼砲用の600mm弾2ダース!? 店長、こんなのウチにも……」
「いや、地下倉庫にあるのはあるんだ。海外からの受注用にね」
「はあ……」
店長の用意の良さに和明は思わず嘆息した。
だが、確かにこれは店長ひとりでは無理だろう。戦車道という女性中心の競技であることもあり、この店の男手は他は和明だけである。
「どうかな、篠原君? 泊りにはなるけど、その分の手当ては乗せるよ」
「勿論、艦の居住区に宿も用意するわ」
店長と千代の言葉を受け、和明はその横の愛里寿に視線を向けた。
「………」
無言で和明の視線を受け止める愛里寿。しかし、その瞳には言外のメッセージが込められている。
「……分かりました、引き受けます」
おそらくは単に店の事だけで収まるまい。確信めいた予感と共に和明は頷いた。
倉庫から演習艦への運び込みは、大学選抜メンバーの協力もあり迅速に進んだ。
とはいえ資材の量が量である。一通りの搬入を終え、書類上の手続きも終えた頃には陽は西に傾き始めていた。
「10、11、12……と。店長、数は大丈夫です!」
「お疲れ様。とりあえずこれで積み終えたね」
和明の報告に店長は腰を叩きつつ答えた。
「ご苦労様でした。宿泊施設は用意していますので、北海道まではそこでゆっくりしていって下さいな」
こちらの作業が終わったのに気付いたのか、千代が扇子を扇ぎつつ歩み寄ってきた。店長が深々と頭を下げる。
「いやいや、本当にお世話になります。では、そちらで休ませて頂きます。篠原君も……」
「あ、はい」
「いえ、それなのですけど……篠原君については、少しお借りしても良いかしら?」
スッと視線を店長から和明に移しつつ千代が言った。
「は……はい」
ただ搬入で終わるとは思っていなかったが、やはり改めて言われると緊張を覚える。神妙な顔で答える和明の横で、場の流れを察した店長が言った。
「ええ、大丈夫です。僕の方では到着まで人手は要らないので……じゃあ篠原君、お疲れ様」
「……お疲れ様です」
「お疲れ様」に言外の響きを感じつつ、和明は頷いた。その場を離れてゆく店長の背を見送り、再び千代に向き直る。
「ええと……
「……
和明の言葉に千代は少し笑うと、身を翻した。
「お昼、まだよね? 大学選抜の演習を観戦しながら食事でもどう?」
「え? いや、俺はいいですけど……」
千代の誘いに和明は思わずきょろきょろと周囲を見回した。幸い近くに他人はいなかったが、ここでの千代はVIP中のVIPだ。表向きはあくまで演習艦に便乗しただけの学生バイトに過ぎない和明が一緒に食事などをしていれば不審に思われないだろうか。
そんな和明の反応も予測済みだったのだろう。千代は少し振り返り言った。
「大丈夫よ。この艦の中でも人目に着かない場所だから」
そして彼女は再び歩き始めた。これ以上の説明を千代がしない事を理解し、和明はその後を追う。
「半歩だけ後ろに付いて。それだけでここの子は疑わないわ」
「は、はい……」
言われるままに彼女のやや後ろを歩く。資材置き場を離れて、そのまま屋外へと千代は向かっているようだ。
すれ違う大学選抜メンバーがぴしりと直立し、彼女に深々と礼をする。
「家元、お疲れ様です!」
「お疲れ様。この後の演習も頑張ってね」
その度に千代は一度立ち止まり、労いの言葉をかけると再び歩き出す。頭を上げたメンバーはその後ろの和明にはちらりと視線を向け、軽い会釈を返すだけで不審な様子は見せない。
それが何人か続き、次第に和明にも千代の言葉の意味が分かってきた。
島田千代。島田流戦車道の家元であると同時に大学戦車道連盟理事長でもあり、大学選抜メンバー隊長を務める愛里寿の母でもある彼女はまさしくこの大学選抜演習艦の中においてトップの人物であり支配者だ。そんな千代が戦車道ショップの学生ひとりを連れているからといって、誰がその学生と肉体関係にあると想像するだろうか。流石に並んで談笑でもしていれば不審に思われるだろうが、千代の後ろを半歩遅れてついてゆく和明の姿は「業務的な用事で家元に連れられている学生」でしかないだろう。
「(……そうなんだよな)」
和明は今更ながら、自分の前を優雅に歩くドレス姿の女性が尋常ではない立場の人物である事を理解した。
やがて二人は建物を出た。果たしてその直前には一台の高級車が停まっている。左ハンドルの、ぱっと見でも分かる外国車だ。
千代がポケットからキーを取り出すと、車のライトが点灯して電子ロックが解除された。運転席側のドアを開けつつ、和明に顔を向ける。
「さ、乗って」
「千代さんが運転するんですか?」
「プライベートではね。不安?」
「い、いえ、そんな事はないですけど」
色々と圧倒されつつも和明は反対側から乗り込んだ。シートに身体を預けてみると上質なソファを思わせる柔らかさだ。シートベルトを装着し、慣れた仕草でキーを回す千代の様子を伺う。
「そんなに遠くはないわ」
千代は流れるような動きでクラッチを外し、ギアを入れる。車内には芳香剤が置かれているのか微かにラベンダーの香りがする。緩やかに車は走り出し、建物が後ろに流れてゆく。
「……悪かったわね、西住さんの処から戻ってきたばかりなのに付き合わせて」
ハンドルを緩やかに操りつつ千代が言った。和明は少し緊張しつつ答える。
「いえ、大丈夫です」
「しほに呼ばれたの?」
「まあ、そんな感じ……ですか」
言葉を濁す。実際にはまほと菊代に招かれたのだが、あまりまほの情報を今の千代に与えるのは良くないことに思えた。
そんな和明の反応に、千代は気を悪くした風もなく言葉を続けた。
「今回の北海道での試合、電波には乗らないものだけど重要な戦いになるわ。かたや素人揃いの初出場校を優勝に導いた“大洗の軍神”西住みほ。かたや13歳にして大学選抜を率いる“天才少女”島田愛里寿。戦車道界隈を賑わせる二人の少女の激突。連盟の中でも非常に注目されている」
「でも……殲滅戦なんですよね。それも30対8の」
「だからといって『楽な勝負』なんてものは戦車道には無いわ。相手が西住みほなら、尚のこと」
和明の問いかけに千代ははっきりと答えつつブレーキを柔らかく踏んだ。カーブを曲がり、身体が外周に引っ張られる。
「私も色々な戦車道の選手を見てきたけど……西住みほとまほ、あの二人は別格ね。正直、状況によってはうちの愛里寿でも勝てないかもしれない」
「………」
一見、彼女にしては謙虚にすら思える言葉。しかしその表情には微笑みが浮かんでいる。
「『状況によっては』……って事は、まともに戦ったなら勝てる?」
「まあね。母親の私が言うと自慢話になってしまうけど、あの子は本当の天才だから」
そうして娘の事を語る千代の横顔はどこか嬉しそうだ。
「……さて、着いたわ」
車の速度が落ちてゆく。和明は窓の外を見た。
「お……おぉ……」
和明の口から驚きの声が漏れる。
装飾が施された鉄柵に囲まれた、『豪奢』という表現しかできないような大きな洋風の屋敷がそびえている。演習艦にも搭乗員や職員のための居住区が用意されているが、その他の建物と比べても明らかに造りが違う。
千代が車を門の前で停止させると、自動で門戸が開かれてゆく。
「そんな驚く程ではないわ。演習艦で指導する時の仮の住まいといったところね」
「『仮』ですか……」
これが仮宅だと言うなら、和明のアパートは仮宅の仮宅の更に仮くらいのものだろうか。
そんな事を思う間にも車は門を越え、屋敷の正面に辿り着いた。使用人と思われる洋装の女性が待機している。
「そのまま降りて。車は使用人が片付けてくれるから」
停車させ、慣れた仕草で千代はシートベルトを外しドアを開けた。和明は慣れない仕草でそれを追う。
「お帰りなさいませ、家元。お二人分の昼食の用意はできております」
「ありがとう。鍵は預けるから、車庫に戻しておいて」
深々と頭を下げる使用人の女性に千代は車のキーを渡すと、そのまま屋内へと入っていった。自分にも頭を下げてくる使用人に会釈を返しつつ、和明もそれに続く。
西住家の純和風の屋敷とはまた対照的な、まるで貴族の住む洋館のような内装を珍し気に見回す。とはいえそこはやはり戦車道の家元としての誇りなのだろうか、額縁に飾られた油絵は戦車が敵の防衛線を超える様子を描いたものだし、ところどころに置かれているのは戦車の石膏像だ。
玄関をくぐった千代はそのまま奥へと向かってゆく。和明はきょろきょろと視線を巡らせながらも彼女を追う。やがて千代は開かれた大扉の前に来るとそこを抜けた。
「さ、座って」
「え? あ、はい……うぉ」
パーティなどに使われるような広間に、白いクロスをかけられた大きな丸テーブルが設置されていた。卓上にはまだ湯気を立てるスープにパンにサラダ、何やら見慣れないソースがかけられたローストビーフにカナッペ、キッシュなどが置かれている。卓の近くの壁には壁一面を覆う程の大きさのモニターが設置されており、どこか威圧的な印象を与えてくる。
とりあえず適当な席に着き、手前にあったナプキンで手を拭いていると千代が和明の向かい側に座った。
「どうぞ食べて頂戴。急な準備だったから、大したものも用意できなかったけど……」
「いやいや、こんな豪華なの、俺食べたこと無いですよ! えっと、いただきます」
こういった席にはマナーなどが本来はあるのだろうが、和明にとっては多少見聞きした程度だ。とりあえず手を拭い、パンを手にとって手元の小さなボウルに入ったオリーブ油に付けて口に入れる。
和明が食事をとり始めるのを待っていたのか、千代はテーブルに置かれていたリモコンを取るとそれを操作した。モニターが点き、間もなく戦車の砲声が室内に響く。次いで画面が鮮明になると、四分割された戦車戦の様子が映し出される。何両かのパーシング重戦車が白旗を上げており、別モニターに映るセンチュリオンからは愛里寿が小さな身体を乗り出し、指揮を行っているようだ。
「食事の合間に、あの子の演習を見てあげて」
「これ、リアルタイムなんですか?」
「演習用のために造られた艦だから、こうして会食中に観戦できるようになっているの」
そう言いつつ、千代は切り分けたローストビーフを口に含んだ。音も無く優雅にナイフとフォークを操る姿が何とも様になっている。
「大したもんですよね。まだ13歳なのに」
砲弾の飛び交う中でああして生身を晒しているだけでも到底真似できない。一回り年下の愛里寿に、和明は心から感心しつつ言った。汗を流しつつも冷静に指揮を飛ばす姿は確かに大人顔負けだ。
「そうね。だからこそ……
「……!」
千代は静かに答える。和明は千代の纏う空気が変わったのを察しつつ尋ねた。
「愛里寿ちゃん……やっぱり、あれからも?」
「安心して。他の男性に愛里寿を抱かせたりはしていないわ。何とか自分で済ませてる」
「そう……ですか」
「でも……やっぱりそれだと完全には、ね。だからこうして、和明くんにも無理を言って来てもらった」
やはり、戦車道ショップの出店というのはあくまでついでで、本命は自分だったか。
とはいえ、頼られる事そのものは悪い気はしない。まあ──相手が未成年の処女だという点において問題は無くはないのだが。和明は千代に言った。
「って事は、この後、愛里寿ちゃんとですか。前と同じような感じで、いいんでしょうか?」
「……ちょっと、違ってくるわね」
予想に反し、千代は言葉を濁してきた。ちょっと意外に感じつつも更に尋ねる。
「と言うと?」
「あの子、前回の時に和明くんのが挿入できなかったのが悔しかったみたいなのよ。貴方を完全には気持ちよくさせられなかったのが、きっと不満だったのね」
「いや、そうは言っても……俺のが愛里寿ちゃんのに無理なのは、千代さんも分かってますよね?」
南の島で抱いた時の愛里寿の華奢な身体を思い出す。コーラ缶並みのサイズの和明の肉棒を受け入れるには彼女の身体は余りに小さかった。だから和明も愛里寿には擦るだけにしたのだ。
それを傍らに居て全て見ていた筈の千代はカップの紅茶を飲むと言った。
「確かにそうね。少なくとも愛里寿の膣は和明君のの挿入には耐えられない。でも……『後ろ』なら可能性はあった」
「『後ろ』って……その」
「ええ、お尻」
何だか自分の尻穴までむず痒くなってきた錯覚を覚え、無意識に和明はジーンズの上から尻に手をやった。その反応が面白かったのか、千代はクスクスと笑いつつ言葉を続けた。
「二、三週間での急ピッチの拡張だったけど……あの子、そっちの方の吸収も早かったわ。何とか間に合ってくれた」
「いや、間に合ってくれたと言われても……」
今まで様々なプレイをしてきた和明ではあるが、アナルセックスとなると初めてである。戸惑いつつ返事をする和明の視線を千代は受け止め、モニターに視線を移した。
「……ねえ、和明くん。ローターって知ってる?」
「へ? え、ええっと、アレですよね。小さい玉子みたいな奴で、震える……それが、どうかしたんですか?」
「愛里寿、それをお尻に挿れたまま演習しているのよ」
「ッ!?」
危うく飲みかけのスープを吹き出しそうになり、和明はどうにか堪える。
視線を再びモニターに移す。先ほどまで戦場で凛とした姿で指揮しているように見えていた愛里寿の姿が、それを知ってしまうとまるで別の姿に見える。
紅潮した頬も、浮かぶ汗も、おそらくは演習の緊張によるものでなく──
「……楽しみにしていて頂戴」
千代はそう言うと、肉汁したたるローストビーフを口に含んだ。