豪奢なロビーを抜け、エレベーターに入る。外周がガラスになっているエレベーターからは残暑の夕日に照らされる横浜のベイサイドの景色が見下ろせる。この街の夜はこれからだ。
やがてエレベーターは最上階付近で止まり、音もなくドアが開く。部屋を探す必要はない。このホテルの宿泊料は全体的に高めだが、その中でも本当のVIP用は一室だけだ。廊下の絨毯さえも下層階のそれより上質なのか、踏み出す足をふわりと受け止める。
「スゥ……ハァ……」
自然と手に汗がにじみ、緊張から鼓動が速くなる。和明は深呼吸を行い、それを少しでも鎮めようとする。
自分の考えは纏まっている。言うべきことも定まっている。あとはそれを、あの二人の女傑を前に言うだけの度胸と行動力、そして決意が自分にあるかどうかだ。
廊下の最奥、他の客室との格の違いを示す花の意匠が施されたドア。息を吐き、ノックする。
「………」
数秒の沈黙。奥から人の気配が近づくのが分かる。鍵の開けられる音。
「すみません、遅くなりました」
「お疲れ様、急がせちゃったわね」
そんな穏やかな声と共に島田千代が顔を覗かせた。流石に室内でベレーは被っていないが、最初に会った時の葡萄酒色のドレス姿。
彼女に導かれるまま室内に入る。個人どころか大家族が使用できそうな程の広さのフロアには映画サイズの大型プロジェクター、シンプルな作りが逆に高級感を醸し出すダブルベッド、見ただけで体が沈み込みそうな程の柔らかさが伺えるソファ、オーク材のテーブル等が視界に入る。
全て和明には見覚えがあった。あの日──しほや千代と初めて会い、そしてこの部屋でしほと初めて交わった。その時のままだ。
「悪いわね、仕事終わりに」
やはり最初に会った時と同じ、黒の男性用スーツに白いワイシャツという化粧気の無い姿。
ソファに腰かけていた西住しほは顔を上げ、和明に言った。
「いえ、こっちこそ……」
挨拶を返そうとした和明はその途中で言葉を途切らせた。
一見、しほはいつものクールな無表情のように見える。しかし──その瞳には強い緊張と決意が籠っていた。
「(こりゃ……本当に腹を括らないとな)」
どうやら彼女らもこの場に何らかの、おそらくは今後の和明に関する提案を用意してきているのだろう。それを理解し、和明は気持ちを引き締める。
そんな場の空気を緩めるように千代が言った。
「和明君、夕食まだよね? ルームサービスを取るから、何か好きなのを言って?」
「え? いえ、特に何がとかは……」
「それじゃあ中華にして、大皿を皆で分けて食べましょうか。ここの中華は本当に美味しいの。しほもそれでいい?」
「……任せるわ」
しほも場に流れる空気を気にしていたのだろう。小さく息を吐き、千代に言う。
「分かったわ。組み合わせはどうしようかしら、肉まん、小籠包、
具体的なオーダーを考えつつ、千代は壁に掛けられた電話機へと向かう。和明はソファに座り、改めてしほと向き合った。考えてみれば彼女と会うのは北海道での西住みほ、西住まほも交えた4Pで気絶して以来だ。
「……北海道では、本当にすまなかったわね」
和明とまっすぐに視線を合わせ、しほはそう言うと頭を深々と下げた。
「い、いいえ! しほさん、頭を上げてください。アレは俺が自己管理できてなかっただけで……」
どうも最近は女性に頭を下げられる事が多い気がする。テーブルに頭を擦りつける勢いのしほに和明は慌てて言った。頭を上げ、しほが言う。
「それでも、娘の事ばかり考えて和明くんの事を考えていなかったのは事実よ。反省してもし足りないわ」
「そう言ってくれるだけで十分ですよ。もう調子だって戻りましたし」
「それなら……良いのだけど」
どうやら相当にしほは北海道で自分を気絶させるまで疲弊させた事を気にしているようだ。彼女の心配を取り払うように和明は肩を回して回復した事を示した。
「こっちこそ、その後の面倒を見てくれて助かりましたよ。菊代さんには食事の世話もしてもらいましたし」
「それだけど、菊代、和明くんに口を開けさせて食べさせようとした?」
「しました。まほさんから聞いたんですけど、そちらで病気になった時には誰にでもやってるとか」
「ええ。どうもあれが好きみたいで、私が病気になった時も困らせられたわ」
「ははっ。それ、筋金入りですね……」
しほに「あーん」をさせようとする菊代と、それを無表情に拒絶するしほの姿が頭に浮かぶ。和明は思わず顔をほころばせて言った。
その後は他愛ない話が続いた。北海道での試合内容、和明の仕事のこと、戦車道連盟が今冬に大規模なトーナメントを予定しており、しほも千代も最近は多忙な事など。
そうしている内にドアがノックされ、ルームサービスのワゴンが運ばれてきた。ラップをかけられた幾つかの大皿に、重ねられた小皿、箸、スプーン等がテーブルに乗せられ、ラップが取られると湯気と共に食欲をそそる香りが立ち昇る。昼から何も食べていなかった和明の腹が思わずぐうと鳴り、見ているだけで唾液が沸いてきた。
「さて、それじゃ食べましょうか」
「は、はい、いただきます!」
「いただきます。和明くん、私たちは軽く食べてるから遠慮せず食べなさい」
向かい合っていた和明としほの横に千代が座り、三人は食事を始めた。
近所に横浜中華街があるとはいえ、学生である和明が知る中華料理の味は庶民的な価格の店の700円のレバニラ定食かホイコーロー定食。あとは精々レトルトの中華惣菜くらいだ。炒飯の具のひとつ取ってもそれらとは違うのが分かる。最初は二人の家元の手前がっつかずに食べようと思っていた和明だったが、空腹と料理の旨さが自然と箸を早めさせる。
「ふふっ、いい食べっぷりね。美味しい?」
「いや、本当に美味しいです! 千代さん、これって何ですか?」
「フカヒレよ、知らない?」
「スープに入ってる、糸みたいなのしか……」
食事の合間の会話も弾み、和やかな夕食が行われる。窓から見える横浜の夕焼けは次第に夜景へと変わり、無数のネオンが眼下で瞬く。
──しかし、その空気の底に一定の緊張感が漂っている事が和明にも感じられた。
言葉少なに箸を進めるしほ、にこやかに微笑みつつ時折話を挟む千代。どちらも
とはいえ、流石に食事中にいきなり話を始める事は二人ともするつもりは無いようだ。とりあえずは目の前の飯を最大限に味わおう。和明はそう決め、エビチリを口に含んだ。甘辛いソースと海老の濃厚な味わいがとても合っている。
「和明くん、お茶のお替りは?」
「あ、いただきます」
やがてしほが最初に箸を置き、続いて千代が食事を終えた。和明は小皿に盛られた惣菜を順に片づけ、デザートの杏仁豆腐──コンビニの杏仁しか知らない和明にとっては衝撃的な味だった──を食べ終えると食後の合掌を行った。
「ご馳走様でした!」
「いい食べっぷりだったわ。器を下げに来て貰うから、ちょっと
そう言うと千代は立ち上がり、再びフロントへの電話に向かう。ソファには和明としほが残された。
「ふぅ……」
「……ねえ、和明くん」
食後の茶を飲んでひと息つく和明に、しほがゆっくりと声をかけてきた。
「はい、何でしょうか?」
「和明くんの通っている大学、後期はいつ頃から始まるの?」
「あと二、三日ってところですね。一年で出来るだけ単位を取らないといけないんで、割と忙しくなりそうです」
「そう、大変ね……」
どこかそわそわとした仕草でしほが言う。やがて、しほは何かを決めたように息を吸うと和明を見た。
「和明くん。それなんだけど……」
「そこまで」
その時、千代の声が二人の間に割って入った。振り返ると、戻ってきていた彼女がもと居たソファへと座る。
「ちょっと焦りすぎよ、しほ。
「……分かってるわ」
窘める千代の言葉に視線を逸らしつつしほが言い返す。
先ほどまでとは打って変わった沈黙の中、和明も何も言えないでいた。暫くするとルームサービスが器の回収に訪れ、場の空気にも表情を変えずワゴンに皿を乗せて退出してゆく。
再び部屋は三人だけになったが、静寂は暫く続いた。
「……和明君、しほはどこまで話をしたの?」
「え? い、いえ。まだ何も……俺の大学の後期が始まるのがいつ頃かって話をしただけで……」
口火を切ったのは千代だった。彼女の問いかけに素直に答える。
千代は頷き、膝を正すと和明に言った。
「そう、それなら良かったわ。和明君自身も分かっていると思うけど、大学が始まれば和明君と私たちは今のように自由には会えなくなる……ただ、私たちとしては貴男との関係をここで終わらせるには惜しいと考えているの」
「……それは、俺も同じです」
和明は素直に答える。その気持ちは嘘ではない。
「そう言ってくれると嬉しいわね。そこで、今日は私たちの『提案』を聞いてもらいたいの」
「提案、ですか?」
「ええ。ただしほと私とでどうにも意見が合わなくてね……和明君に、それを選んで欲しいのよ。もちろん、どちらも断るという選択肢もあるわ」
ちらりと千代はしほを見た。膝に手を置き、しほは呼吸を整えているようだ。彼女の言葉を受け止めようと、和明は彼女に向き直った。
「それがさっき言おうとした事なんですか、しほさん?」
「ええ。和明くん……端的に言うわ。大学を辞めて西住家で働くつもりは無い?」
「!?」
予想していた以上に強引な提案が飛び出してきた。驚く和明の反応を予期していたのか、しほは動揺せず言葉を続ける。
「日本最大の流派として西住流、また西住家に直接雇われている者は多いわ。
「表向き……って事は」
「そう、実際の務めは私やまほの相手。出張先や、あるいは本宅で私たちの欲求不満を解消させるのが貴方の仕事になるわ。場合によっては、一度に二人とも相手して貰う場合も出てくると思う」
「………!」
──もしこれが西住しほとの初対面で今までの彼女との経緯が無ければ、和明は彼女が言葉を言い終える前に頷き、相手の気分が変わる前に九州の西住邸に飛んでいただろう。
要は三食豪邸給料付きで表向きは適当に仕事をして、実質的にしほやまほとセックスし放題、しかも3P付きという環境をしほは与えようとしているのだ。事実上は西住家の女性に「飼われる」形となるため男の尊厳というものを投げ捨てる形にはなるが、捨てるものに見合うだけの待遇である。
「何ていうか……その、しほさんらしい考えだと思います」
何とも強引かつ無茶苦茶な話であったが、それを和明は実に彼女らしいと感じた。「撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心」というのが西住流を示す言葉だそうだが、その言葉に恥じない豪快な突撃を思わせる提案であった。
しほの提案を事前に聞いていたのだろう。彼女が言い終えると千代は呆れ顔で言った。
「私は当然反対したわ。結局それって、和明君を西住家のペットにするような考えだもの」
「……そんなつもりは無いわ」
「
しほの反論に千代は鋭く言葉を返す。どうやら次は千代の提案を聞く番らしい。和明は千代に身体を向けた。
「しほさんの考えは分かりました。それじゃ、千代さんは?」
「私の考えはしほに比べればスマートよ。和明君に大学を辞めてもらう必要も無いし、今の生活を壊すこともない」
「……?」
「和明君に、うちの愛里寿と婚約して貰うの」
「はい!?」
こっちはこっちで予想を超えた話が飛び出してきた。さらりと口にした千代の提案に和明は思わず尋ねた。
「いやいや、婚約って!? それこそ愛里寿ちゃんを俺の都合だけで勝手に……」
「愛里寿にはこの話は既にしているわ。『和明さんなら喜んで』だそうよ」
「……!」
「むしろうちの娘が嫌がらないって事は、和明君の方が分かっているのではないかしら?」
「うっ……!」
千代の言葉に、演習艦のトイレ内で尻穴を肉棒で抉られ喘ぐ愛里寿の姿が思い起こされる。確かに否定はできない。千代は更に言葉を続けた。
「とはいえ愛里寿もまだ13歳だから、現時点では内々の話になるわね。なので和明君には愛里寿が16歳になるまでは『戦車道ショップで偶然知り合った大学生』を演じて貰うわ。立場も年齢も違う二人が戦車道を通して知り合い、そして愛し合うに至り婚約する。ドラマチックだと思わない?」
「そうは言いますけど、只のバイト学生と島田流の次期家元じゃあ釣り合わないんじゃ……」
「……そこだけは、ちょっと和明君に頑張って貰うことになるわね。島田流の影響下の企業を紹介はできるけど、其処で相応の働きはしてもらう事になる」
しほの提案より不利な部分も隠さず千代は言う。内心では緊張もあるのかもしれないが、それを表に出さないのは流石は宣伝力や渉外力では西住流に勝る島田流家元の貫禄というところか。
「そしてその中で愛里寿の、また私の相手もして貰いたいと思ってる。これが私の提案」
そこまで言うと千代は口を閉じ、和明の反応を待った。
こちらも実に魅力的な提案であった。島田流後継者の夫としての立場が就職と共に転がり込んてくる上に愛里寿と千代の美人母娘を今後も相手にすることが出来ると言うのだ。あくまで浮気であるしほや千代と異なり、将来の妻として愛里寿と公に交際できるのも大きい。こちらも搦め手から攻めてくる、忍者戦法と呼ばれる島田流らしい提案だと和明は思った。
「(……参ったなァ)」
正直、心が揺れた。
和明がこの場で言おうとしていた考えより両者の提案は遥かに魅力的で、得るものがあり、蠱惑的だった。話を聞いただけで今まで和明が経験してきた彼女らの痴態が思い浮かび、股間が疼く。
対して和明の提案と言えば傍から見れば自己満足の枠を出ない、手前勝手な話だ。
「(でも……な)」
再び心を引き締める。しほの案でも、また千代の案でも彼女らと
和明は自分に向けられる二人の視線を受けながら口を開いた。
「……お二人の話は分かりました。どちらも魅力的で、俺なんかには勿体ない話だと思います」
「………」
「………」
しほ、千代、二人とも無言で和明の話を聞いている。
「それで、俺の答えなんですけど……すみません、どっちも遠慮させてください」
「……!?」
「ここで関係を終わらせる。そういう解釈で良いのかしら?」
しほの膝に置かれた手に力が籠る。一方の千代は形良い顎に指をあて、和明の真意を探るように尋ねる。
全てを見通すような千代の瞳を正面から見据え、和明は言った。
「俺は……しほさんや千代さんと出会って、今までの人生で一番濃い夏を送れました。その中でお二人だけじゃなく、まほさんやみほさん、愛里寿ちゃん……何人もの女性を知り、戦車道の世界で二人がどれだけ大きい存在なのかも知る事が出来ました」
「和明くん、だったら……!」
食い下がろうとするしほの言葉を待たず、和明は言葉を続けた。
「そして……自分がまだ只の学生で、貴女達と比べて余りに小さい存在だって事を知りました」
「……つまり?」
千代が静かに聞く。
「俺は……しほさん、千代さん、貴女達と並んで立てる男になりたい、そう思います。コレがデカいだけの『子供』でなく、貴女たちと対等に浮気できる『大人』に」
自分の股間を指さし、和明は答えた。
千代は小さくため息をつくと和明に更に尋ねた。
「目標としては立派だけど、具体的な行動が伴わなければそれは只の願望に過ぎないわ。戦車道連盟は通常、男性の新卒採用はしていない。何か考えはあるの?」
「はい、知ってます。それなんですけど……ウチの店長が戦車道連盟の職員さんと繋がりがあって、関東圏で行われる試合のボランティアスタッフとして一年生の内から参加させてもらう事になってます」
「………」
「戦車道連盟の男性職員の多くは整備士や現場スタッフなどの、それまで戦車道に深く関わってきていた方が推薦で採用されています。まずそこから就職して……上を目指します」
「何年で?」
「……大学卒業して二年、そこまでに何らかの役職を得ます。それで駄目なら俺の事は忘れて貰って構いませんし、俺よりもっと良い相手が出てきたなら、それはそれで忘れてください」
既に行動は起こしている。この秋冬は本当に忙しくなるだろう。千代の短い問いかけに和明は答えた。
数秒、和明の瞳を見つめていた千代はその表情を緩め、笑った。
「……ふふっ」
「千代?」
「私たちの負けね。しほ、私も貴女も和明君の事を助けが必要な『子供』だと思って提案をした……でも、彼は独りの男性として『大人』になろうとしている。それを止める権利は私たちには無いわ」
「………」
しほの顔に僅かの寂しさが浮かぶ。和明はしほに言った。
「すみません、しほさん……少しだけ、待っていてください」
「和明くん……」
彼女と激しく交わった夏の嵐の一夜を思い出す。西住しほ、彼女は世間が持つイメージほど強い女性ではない。娘の事で悩み、時として戸惑い、温もりを求める一人の女性なのだ。
だが、今の和明には世間的にも能力的にも彼女を支えるだけの強さは無い。
だからこそ、今は少しだけ別れるのだ。次に会う時に、本当の意味で彼女に相応しい男になるために。
和明の言葉にしほは瞳を閉じ──少しだけ上に顔を向け──再び目を開けた。
「私がお婆さんになる前に、上がってきてくれる?」
「絶対に、間に合わせます」
根拠は無い。不安もある。しかし和明は断言する。
しほはそこでようやく口元に笑みを見せた。
「……分かったわ。暫くのお別れね」
「寂しくなるけど、仕方ないわね……さて、それじゃあしほ、机のそっちを持ってくれる?」
しほが納得するのを待っていたのだろう。千代が軽く手を叩き彼女に指示を出した。しほは千代の意図を察したのか机の端を持ち、千代と共にテーブルを少し動かした。
「え?」
机が和明の側から離れ、手前に広いスペースが出来る。和明がその意味を理解する間もなく、しほと千代はこちらに歩み寄ると膝をついた。
「ち、千代さん?」
「あのね、これもしほと話をしていたんだけど……どちらかの提案を受けたなら、勝った方が和明君を好きにしていいって約束だったの」
「は、はあ……」
「ただ、和明君はどちらも受けずに自分の道を行く事に決めた。だから……」
「うっ……!」
するすると千代の手がジーンズの留め具に伸びると慣れた手つきでそれを外す。ほぼ同時にしほの手がジーンズを引き下げ、和明の下半身を露わにしてゆく。
「だから……これは私たちからの
「そ、それは分かりましたけど、せめてシャワーを浴びさせてください。仕事終わりにそのまま来たから汗臭い……ふおっ!?」
「あむっ、ンッ、んはっ、和明くんっ……!」
臭いを理由に中断を求めた和明だったが、突如として股間を襲った快感に思わず声をあげた。視線を下ろしてみればジーンズは既に下着ごと脱がされ、露出した肉棒にしほの唇が押し当てられている。蛇のようにしほの舌は竿に絡みつき、既に半勃起状態だった肉棒を急激に充血させてゆく。
「あぁ……いいわ、和明くん、の、生臭くて、汗臭くて……れろっ、頭が痺れそうっ……!」
「あらあら……しほ、ずっと我慢してたからってがっつき過ぎよ?」
「そ、そうですよ、しほさんっ! 千代さんだって……」
「独り占めせず、
「へ? あ、うぅっ!」
「ンンッ。ちゅ、じゅるっ……本当ね、頭が痺れる程に臭くて、素敵……!」
肉棒に絡みつく舌が二本に増えた。
かたや葡萄酒色の瀟洒なドレス、かたや黒いジャケットに白いワイシャツ姿。公の場に出る時と同じ姿で二人の家元が和明の肉棒を舐めしゃぶる。北海道以来ここ数日はセックスどころかオナニーもしていなかったこともあり、和明の肉棒はたちまち500ml缶コーラほどの大きさにまで膨れ上がり、しほと千代の顔の間に柱のようにそそり立った。
「ンッ、ちゅ、ちゅうぅ……」
「くうっ! し、しほさんっ、それっ!」
「あむっ……んむぅ、ふぃほふぁはふん、ほぅ?」
「うあぁっ! ち、千代さんっ! 袋を口に含んだまま喋らないでっ、ちょっと、強いっ……!」
しほが唇を亀頭に押し当て柔らかく吸う。同時に千代は下側に移動すると和明の玉袋を口に含み、口腔内で撫でるように舌を這わせつつ和明を見上げる。
「ンッ、んぶっ、ンンッ!」
そのまましほは口を広げ、和明の亀頭を呑み込んだ。唇をすぼめて締め付けつつ、熱い口腔内全体で肉棒を愛撫してくる。
「最初の濃いのはしほに譲るわ。私はこっちを責めるから、任せるわね」
しほが肉棒から口を離さないと察した千代は少し身体を引き、和明の足に手を添えた。
「え? 千代さ……ふあっ!?」
くすぐったさを伴う快感が足先から伝わり、和明は背を反らした。いつの間にか靴下が脱がされ、そのつま先を千代が舐めている。
「ぺちゃ……あふっ、どう、和明君? こういうのは?」
「ど、どうって……ふおぉっ! し、しほ、さんっ!」
「んぶっ、ん、ンンッ!」
しほの動きが早くなってゆく。不意打ちだった事もあり、和明の奥から早くも射精感が湧き上がってくる。
「くうっ、も、もう、出るっ!」
「んはっ……い、いいわ、和明くん。思い切り、んんっ、だ、出してっ! 私の中も、外も、和明くんの匂いを、忘れないように、染み付けてっ……あむっ、んぶぅ!」
和明が射精を訴えるとしほは口を一度離して懇願し、再び肉棒を咥え込んだ。日頃の厳格な家元としての姿を捨て去ったしほの姿は雌のそれで、和明の中の劣情を更に湧き上がらせた。
「はあっ……れろっ、んふっ……」
一方で千代はドレス姿のまま和明の足を一本一本舐めてゆく。まるで奴隷が主人に奉仕するような姿は、やはり和明に堪らない支配感を覚えさせる。
「ぐっ、しほ、さんっ! う、うあぁっ!」
「んぐっ……!」
和明は腰を突き上げ、同時に絶頂に達した。精液が肉棒を駆け登り、しほの口腔内に容赦なく放出されてゆく。しほは艶やかな黒髪を頬に貼りつかせながらも口を離すことなくそれを受け止めてゆく。
「ンンッ……こくっ、んっ……!」
ごくりとしほの喉が鳴り、精液を嚥下してゆくのが分かる。
数度の腰の震えと共に射精が治まると、しほはようやく唇を離した。精液と先走りと唾液の混ざった粘液が、しほの唇とひくつく亀頭の間に橋をつくる。
大きく息をつく和明に、全ての足の指を舐め終えた千代が立ち上がって言った。
「ゆっくり楽しみましょう、和明君。夜は長いわ」
「……はい、お願いします」
射精の余韻が治まるのを待たず、和明は答える。
この夜を、決して忘れないものにする為に。