──西住しほとの予想外の遭遇の後、和明はどうにかボロを出さずに「武部沙織の彼氏」を演じ切る事ができた。
とはいえ和明自身の意識はそこからは半分飛んでいたため、西住みほの適切なフォローが無ければ怪しかっただろう。
「西住先輩、武部先輩、篠原さん。今日は本当にありがとうございました!」
一通りのショッピングも終えて軽く食事を摂った後に解散となり、後輩の女生徒たちは礼儀正しくお辞儀をして和明らを見送った。彼女らと別れ、帰りのバスに乗ってようやく三人は緊張を解くと一斉に息を吐いた。ほぼ無人のバスの後部座席に三人並んで座る。
「……ふぅ。二人ともお疲れ様。もう、大丈夫だよ」
「はあ~……篠原さん、今日は本当にありがとうございました……」
「いや、こっちこそすまない、割とヤバかった」
今になって浮かんできた冷や汗を拭きつつ和明は沙織に言った。
「でも本当に驚きました。まさかお母さんがあそこに居たなんて……」
「ホントだよねー。悪いことした訳じゃないのに、何だか凄く緊張したよ~」
「……そう、なんだよな」
「へっ?」
「いや、何でもない。俺も緊張したって話」
怪訝な顔の沙織に笑顔を向けてごまかす。
あの時沙織の感じた緊張と、和明やみほが感じた緊張は別のものだ。悪いことはしていない。みほの友人の嘘のフォローの人助け、それだけだ。
だが──しほがそう受け止めていないであろう事は、あの時の反応からも十分に伝わってきた。間違いなく沙織とデートしていたと思われた筈だ。
内心の動揺を努めて表に出さず、和明は言った。
「まあ、とりあえずこれで大丈夫だ。今後OGとして訪問した時に聞かれたら『都合が悪かった』って言って、それで何か月かしたら『色々あって別れた』とでも言えば逆に応援されるさ」
「そう……ですよね」
そう言われ、安心すべきはずの沙織は少し言いよどむと和明に顔を向けた。
「あ、あのっ! 篠原さんっ! 今、彼女っていますか?」
「え!?」
拳を握り、沙織は真剣な表情で尋ねてきた。参ったな、と思いつつ和明は返す言葉を探す。流石に「事情ありとはいえセックス相手が横のみほを含めて五人以上居て、その中でも一番互いに入れ込んでいる相手が人妻の西住しほだ」とは言えない。
「えっと、その、何て言うか……」
「沙織さん、篠原さんは今日の沙織さんを助けるために無理を言って彼氏役をして貰ったんだから、それ以上は……」
「みぽりん……うん、そうだよね」
横のみほが助け舟を出す。返事に困る和明の反応とみほの言葉で「とりあえず無理」という事は察したのだろう。少しがっかりしつつも沙織は素直に引き下がった。
「ごめんなさい、篠原さん。ちょっと、本物の彼氏みたいに思えてきちゃって……今のは忘れてください」
「いや、俺も本物の彼女と錯覚するくらい楽しかった。また機会があれば買い物くらいは付き合うよ。まあ、流石に一緒にミルクティーを飲んで写真を撮るのはちょっとアレだけど」
和明はそう言いつつ、タピオカティーの店で撮った写真を胸ポケットから出して眺めた。和明と沙織がひとつのカップに二本のストローで一緒に飲んでいる写真。これだけを見れば二人をカップルと思わない者は居ないだろう。
そんな会話を交わす内にバスは駅に着いた。
「沙織さん、私はちょっと和明さんに少し話があるから、先に……」
「分かった。本当にありがとう、みぽりん! 篠原さん!」
「ああ、気をつけて!」
手を振り、改札口を抜けてゆく沙織を笑顔で見送る。
そして、完全に彼女が見えなくなったのを確認し──和明は頭を抱えた。
「ハァ……どうしよう」
「し、篠原さん、落ち着いて……」
「いや、でも……しほさん、アレ、絶対に誤解したよな?」
「……それは、間違いないと思います」
頷くみほの表情も硬い。おそらくしほの激情を最も詳しく知っているのは彼女だ。
「篠原さん……とりあえず、急いでお母さんに連絡を取ろうとはしないでください。下手にすぐに弁明しようとすれば逆に言い訳と取られかねません」
「あ、ああ。分かった」
「おそらく、突然の遭遇だったのでお母さんも少なからず混乱している筈です。一日時間を置いて、落ち着いて話をできる状態で説明しましょう。次に連盟スタッフとして一緒になる機会はありますか?」
顎に指を添え、みほは素早くこの状況の最適解を模索しているようだった。流石は大洗戦車道の隊長として様々な窮地を越えてきただけはある。和明は手帳を取り出し、予定を確認した。
「ええっと……明日、明後日で横浜で戦車道イベントがあるから、そこで会うと思う」
「そこで、少しでいいので話をしてみてください。私は菊代さんに連絡して、今日の事を説明しておきます」
「しほさんに直接、ではなくて?」
「その……あの状態のお母さんに連絡するのは、私も怖くて……」
「……だよな」
素直にみほは答え苦笑する。自分と沙織が密着していた時のしほの表情を思い出すと和明もそれに納得し、そこでみほとは別れた。
そして翌日、イベントの合間の時間に和明はしほを見つけ──
「お、お疲れ様です」
「……ええ、お疲れ様」
──近づき難いオーラを纏っていた彼女に接近できず、長椅子の端に座った。
さて、どう切り出したものか。和明が考えている内に先に口を開いたのはしほの方だった。
「………」
「可愛い子だったわね」
「っ!?」
カップを手にしたまま、流し目でこちらを見ているしほ。和明は胸の動悸を抑えつつ言った。焦りを見せず、落ち着いて。
「……ええ。武部沙織さんっていう、みほさんの友達です」
「知っているわ。みほのチームメイトね。随分と仲が良さそうだったけど」
やはり言葉に棘がある。和明はしほの方を向いて言った。
「そう見えたのなら、上手く出来てたって事ですね……アレは『ふり』をしてたんです」
「ふり?」
「ええ。何日か前、みほさんの相手をしてた時に……」
そこから和明は言い訳がましくならないよう、できるだけ簡潔に説明した。考えてみれば、実娘とのセックスが許されていて他人とのデートに怒られるというのも奇妙なものだ。
「……そう」
説明を聞き終えた後、しほはそれだけ言うと再び沈黙した。
だが、彼女から感じる「圧」が薄まる気配は無い。
「だから、その、怒らないでくださいよ……」
「怒っていないわ。最初から」
そこからはそれの繰り返しになり──結局、しほとの距離を詰められないまま彼女は出て行ってしまった。
自分もそろそろ休憩を切り上げなければならない。二日間に渡るイベントだけに、いちスタッフである和明のやるべき事は多い。
それにしても──どうすれば今回のしほとの行き違いは解消できるのだろう。そもそも、夫に隠れて和明と幾度もセックスをしているしほが、こちらの一度の嘘のデートであそこまで──
「……っとと。何考えてんだ、俺」
どうも良くない方向に考えが行っている。
みほは菊代には連絡すると言っていた。今は彼女を信じて真面目に務めるしかないだろう。
温いコーヒーを飲み干し、紙カップを丁寧に捨てると和明は立ち上がった。
「……お疲れ様でした、奥方様」
「やっぱり、ああいう場でのフリートークは慣れないわね。普段『聞き手を楽しませる』とか考えないもの」
横浜ベイサイドのホテルの一室。横浜支局から帰ってきたしほと菊代はソファに腰かけひと息をついた。イベントには二日間とも来賓として参加するため、熊本に戻らず横浜で一泊する予定だ。
何気ない素振りで寛ぐしほに、菊代は言った。
「奥方様……何故、篠原様にあのような接し方をされたのですか?」
「何故?」
「わたくしが昨晩みほ様から聞いてお伝えした内容と、篠原様のお話は確かに噛み合うものでした。作り話でないことは確かでしょう」
菊代は静かに言葉を続ける。しほは無言で菊代を見た。
「それでも、今の奥方様は篠原様を遠ざけようとされています。まだ、お怒りなのですか?」
「貴女までそう言うのね、菊代」
しほの表情は静かなままだ。そこには怒りも嫉妬も感じられない。
「まあ……あそこで和明くんと会った直後に衝撃を受けたのは確かよ。多分あれは嫉妬か……怒りだったと思う。それは否定しないわ。でも彼の話が嘘でないのも分かる。だから今はもう、本当に怒ってはいないの」
「では何故、それでなお突き離すような態度を?」
菊代にそう聞かれ、しほは僅かの沈黙の後に目を伏せて言った。
「その……和明くんには、やはり若い子がいいのかと思ってしまって」
「……ハァ」
菊代は──彼女のしほに対する態度の中では最も敬意に欠ける行動として──絶句し、ため息をついた。
やや語調を強め、菊代はしほに言った。
「差し出がましいようですが、それは篠原様に対して
「分かってるわ。分かってるのよ」
菊代へと言うよりは、自分に言い聞かせるようにしほは言う。
「ただ……今回の事で、考えてしまったの」
「何を、でございましょうか?」
「彼がただの性欲だけで私と関係を続けてくれている訳で無いのは分かってる。それを私も理解してきたつもり……でも、結局のところ私は彼と外で連れ歩く事も出来なければ、セックス以外の事を一緒に何か出来る訳でもない。彼と武部さんが一緒に居たのを見た時、それを突き付けられたように思えた」
「それは……」
「ええ、当然の事。
「……ハァ」
再度のため息。
何とも頭の痛い話だ。菊代はそう思った。
結局のところ家元として、大人としての立場を崩さないような物言いをしているが彼女は、西住しほは要するに──
四十代に手のかかる、大学生にもなる二人の娘と夫を抱える大人の女性が感じるには余りにも少女めいたセンチメンタリズムである。まあ、そういった年齢を感じさせない、どこか少女めいた所を残しているのも彼女の魅力のひとつなのは確かなのだが。
「ふぅむ……そういう事でしたら……」
菊代は袖からしほの予定帳を取り出し、パラパラと開いた。明日の横浜戦車道イベント二日目にもしほは参加する。そこで何か良いタイミングは──
「──!」
菊代の視線が手帳のある個所で止まる。袖から取り出したペンで何かを書き留め、顔を上げる。
「奥方様……ひとつ、ご提案があるのですが」
「横浜戦車道フェア」と書かれた横断幕の下、大勢の来場者が広場に停められた幾両もの戦車を囲んでいる。
二日間かけるだけはあり、今回のイベントは横浜市などの協賛を得た大規模なものだ。和明の割り当ては支局中心だが、赤レンガ倉庫やランドマークタワーなどでもブースが展開され、スタンプラリーも実施されているらしい。戦車を模した帽子を被った家族連れなども目立つ。
「はぁ……」
そんな和やかな光景の中、どうにも晴れやかな気持ちになれないまま和明はため息をついた。「ため息をひとつする度に幸せはひとつ逃げる」という俗説があるが、それが本当なら今日の和明は相当な幸せを逃していることになるだろう。結局、昨日のあれからしほとも菊代とも会えていない。
時計は昼下がりを示している。夕方からは今日のメインイベント、横浜中華街を舞台にした、戦車道プロリーグの有名選手を中心とした特別チームによる模擬戦が行われる予定だ。
しほも参加するのだろうか。そんな事を考えつつ作業を行っていた和明に、スタッフリーダーの男性が声をかけてきた。
「篠原君、急で悪いんだけど場所の異動をお願いできるかな?」
「はい、いいですけど……何処に異動ですか?」
「あちらの方が人手が欲しいらしいんだ。後は向こうの指示で動いて、終わったらそのまま帰参でいいから」
リーダーが示す先には見慣れた和服姿の女性が立っている。
「……分かりました。お疲れ様です」
「お疲れ様」
和明はリーダーに挨拶をしてから彼女、菊代の許へと向かった。
近づく和明に菊代はいつも通りの丁寧なお辞儀をする。
「段取りを崩し申し訳ありません、篠原様」
「いいですよ、居なきゃ駄目ってポジションでもありませんでしたし。それより……」
「その事については移動しながらお話を致しましょう。こちらへ」
しほの件での進展が気になる和明であったが、菊代は落ち着いた所作で和明を促し歩き始めた。どうやら時間に余裕が無いようで、彼女にしては速足だ。慌ててその後を追う。
「何処へ行くんですか?」
「そんな遠くではありません、中華街でございます」
戦車道連盟・横浜支局は市役所の近くにある。確かに此処からならば十分ほどで着く距離だ。秋の西日は早く、既に傾いている陽光が二人の影を長く伸ばしている。
「中華街? そっちで人手が足りなくなったんですか?」
「足りない……と申しますか、篠原様が必要と申した方が宜しいでしょう」
「……?」
どうも菊代の話は要領を得ない。
やがて幾つかの信号を渡り、前方に大きな鳥居めいた中華風のゲートが見えてきた。四方に設置された門周辺からが横浜中華街だ。
だが、近づくにつれて和明は違和感を覚えた。平時ならば観光客や近隣の学生などが行きかい、雑踏に店の声かけなどが混ざった喧噪が聞こえてくる筈なのだが──恐ろしく静かだ。
「……あれ? 撤収まであと何時間かありませんでしたっけ?」
戦車道の試合を演習場以外の市街地等で行う場合、自治体の許可を得た上で該当地区の住人には一時的な撤収が行われる。病人や高齢者などには自宅待機以上の十分なケアが与えられ、仮に試合中の流れ弾で家屋が破壊された場合などは新築費用が連盟から全額捻出されるので、試合開催を嫌がる住人というのは少数派だ。むしろ観光地などでは老朽化した店舗の改装費用を浮かせるため積極的に試合会場の招致を行っている所などもある。
「
「はあ……」
人影のないゲートをくぐり、中華街に入る。
普段の賑やかな街並みしか知らない和明にとって、ゴーストタウンと化した中華街は何とも奇妙な光景に思えた。ここで数時間後、戦車が入り乱れて砲撃を交わすと考えると更に奇妙な感覚だ。
しばらく進み、メインストリートへ入ったところで先行していた菊代が振り向いて言った。
「さて……この辺りならば、そろそろお話して宜しいでしょう」
恐ろしく静かな街並みの中、スッと菊代は視線を周囲に巡らせた。第三者に聞かれると不味い内容。ということはいよいよしほの件か。和明の背筋が自然と伸びる。
「結論から申しますと……篠原様、既に奥方様は先日の件についてはご理解しております」
「ご理解……って、本当にもう、怒ってないって事ですが?」
「はい、ただ……」
そこから菊代は昨晩のしほの様子を和明に語った。沙織と一緒に居た自分を見た際に生じた迷い、そしてその迷い故に取ってしまった態度のこと。
「……しほさんが、そんな事を」
それは和明にとって驚きであり、同時にどこか納得できるものであった。
普段の彼女は即断即決、一切の迷い無しに何事も行う女傑である。そんなしほしか知らない者にとって、この迷いは意外そのものだろう。
しかし和明は、しほがその内面で様々な悩みや迷いを抱えている事を知っている。三年前の夏の嵐の夜、アパートにずぶ濡れで転がり込んできた彼女が娘との行き違いの事や和明に対しての自身の感情への困惑、様々な事を語ってくれた事を思い出す。幼少期から戦車道ひと筋で育ってきたしほは、何処か幼さを残しているのだ。
しかし──
「あの、菊代さん。話は分かりましたけど……何故ここに俺を来させたんですか?」
わざわざこの話をするためだけに中華街内の撤収を早めさせた? 確かに他者には聞かせられない話ではあるが、それにしては用心に過ぎる。
そんな和明の困惑に、菊代は微笑みを返した。
「いいえ、まあ……本件を早く解決する為に、
「手っ取り早い?」
和明の顔に疑問符が浮かぶ。
その時、背後から別の声が届いた。
「……和明くん」
「しほさん?」
聞き慣れた彼女の声に和明は振り向き──息を呑んだ。
「今回の中華街での模擬戦にはある趣向を頼まれていたわ。『車長はチャイナドレス着用』……何とも在りがちな企画よね」
長身を紫のチャイナドレスに包んだ西住しほは、薄く笑いつつ和明に言った。
チャイナドレスが本当に似合う女性というのは存外少ないものだ。体のラインが如実に浮かび、スリットが深ければ脚線美も要求される。豊かさと引き締まり、その両方が備わっていなければ完璧な着こなしというのは難しい。
そして今のしほは、その「完璧な着こなし」を成立させていた。紫の上質な布地には金糸で龍の刺繍が施され、足元から胸元にかけて煌びやかな輝きを放っている。スリットは両側に腰近くまで深く切り込まれ、黒いストッキングに包まれたしなやかな美脚が覗く。
布地越しに浮かぶ肉付き良い尻から引き締まった腰回り、更にそこから大きな盛り上がりを見せる乳房へと続くラインはこの上なく艶やかで、ノースリーブから伸びる両の腕には余分な肉も、シミのひとつも無かった。
息を呑む和明に菊代が言った。
「試合の準備の為に他の方々が来られるまで、あと三時間ほどございます。それまではこの街はお二人だけのもの……ただ、何も無いのは寂しいので買い物などはクレジットでのセルフで行えるようにしておりますし、ランチボックス等でお食事やお飲み物もご用意しております」
「菊代さん……これって、まさか」
「はい、
そう言うと一礼し、菊代は身を翻すとゲートへと戻ってゆく。
菊代の足音が消え、メインストリートには和明としほが残された。
「えっと……その、しほさん、ごめん。何か余計な心配をさせちゃったみたいで」
「いいえ、謝るのは私の方……今までの事も含めて、私の身勝手に付き合わせていた」
改めて彼女に近づき、頭を掻きつつ言う。一方のしほも申し訳なさそうに目を伏せる。
これ以上しほに気負いさせたくはない。和明はそう思い、はっきりと言った。
「好きな人に振り回されるなら、望むところですよ」
「……!」
しほの顔が上がる。
「しほさんが夫が居て、まほさんやみほさんが居て、俺よりずっと上の世界の人でも……俺は、しほさんの事が好きだと言い切れっ……!?」
「ンッ、ふぅっ、ンンッ……!」
言い終える前に和明の唇が熱く柔らかい感触に塞がれる。しほは熱い吐息と共に舌を差し出し、和明の歯茎をくすぐる。
「んっ、ふぅっ……しほ、さん……!」
「和明くん、ちゅっ、かずあき、くんっ……!」
焼けそうな程に情熱的なキスに和明も応える。分け入って侵入してきたしほの肉厚の舌先に自身の舌を絡ませ、互いの唾液を交換する。
「ンッ、ふぁ、あふっ……ちゅうぅ」
「しほ、さん……ハアッ、あむっ……!」
様々な豪奢な装飾が施された店舗が並ぶ中華街のメインストリートの真ん中で、チャイナドレス姿の美しき人妻と貪欲なキスを交わす。
大洗で沙織とカップルのように振舞ったのは確かに新鮮な経験だったが、これはそれ以上に新鮮であり、同時に強い開放感を和明は感じていた。今まで常に人目を避けていたしほとの関係をこうして外で人目を
「ちゅ、んぷっ、じゅるっ……か、和明、くんっ……!」
「ふぅっ……あ、はぁっ……!」
しほが和明の舌を吸う。和明はその流れに合わせて彼女の口腔内を舐めまわす。互いの唇の間で粘りある水音が鳴る。
まだキスだけだというのに、和明の股間は既に反応して激しく勃起していた。
「んっ……ぷはっ」
「んはっ……和明くん?」
一旦、唇を離して仕切り直す。
正直、ここでこのまま彼女を犯したいという気持ちもあった。
しかし──せっかく菊代が用意してくれた舞台だ。ただセックスするだけでは
「行きましょうか、しほさん。俺たちの初デートに」
微笑み、手を彼女に差し伸べる。
「……ええ、エスコートは頼むわ」
その手を柔らかく握り、しほは嬉しそうに笑った。