「えっと……これか」
無人の横浜中華街、とある料理店の入り口に置かれた保温ランチボックスを確認し、蓋を開ける。中には肉まんや桃まん、ゴマ団子、揚げ春巻き等の幾つかの点心が箸や皿と一緒に入っていた。ボックスの横には伏せられた湯飲みと魔法瓶が用意されており、中身は冷えたジャスミン茶のようだ。
店内は照明も点けられたままで明るい。和明はそれらを近くのテーブルに置き、後ろのしほに言った。
「それじゃしほさん、軽く食べてから回りましょうか」
「そうね、私も昼は摂れていなかったし」
和明が椅子を引き、そこにしほが座る。和明はその向かいに座った。
「ええと、いただきます」
「……いただきます」
軽く食前の合掌を行い、備え付けの酢醤油を小皿に注いでから春巻きを軽く浸して口に運ぶ。適度に水気を飛ばしてからボックスに入れてあったのか皮はパリパリのままで、揚げたての香ばしさの中から豚肉の濃厚な旨味が現れて口の中に広がる。
続いてジャスミン茶を傾けると、市販品とは別格の豊潤な花の香りが脂の諄さを洗い流してくれる。確かこの店は雑誌などでも幾度も紹介されている高級店。ランチメニューすら学生の和明には二の足を踏む値段だった筈だ。
「(これ、幾らくらいするんだろうなぁ……?)」
何とも小市民的な考えが頭に浮かぶ。
「……ん?」
ふと、しほが箸を進めずに自分を見ている事に気付き、春巻きを呑み込んでから和明は彼女に視線を向けた。
「どうしました、しほさん?」
「あっ……いえ、『美味しそうに食べているな』って思って」
そう答えるしほは何処か嬉しそうだ。彼女は窓の外の景色、無人の中華街を見て言った。
「……正直、こうやって和明くんと隠れずに外食が出来る日が来るとは思ってなかったわ」
「はは、俺もですよ。菊代さんにここに連れて来られた時には何が来るのかと思ってました」
西住流家元の権限を使えば撤収の前倒しの決定などは容易だったろうが、それでも実行するには慌ただしいものだったろう。菊代の陰の尽力に和明は感謝しつつ、今度は肉まんを食べる。
「温かいうちにしほさんも食べた方がいいですよ。これ、どれも美味しいです」
「ええ、そうさせて貰うわ」
和明に促され、しほもゴマ団子を小皿に移す。チャイナドレス姿で髪をかき上げつつ中華料理を堪能する姿が、なんとも様になっている。
緩やかな飲茶の中、和明としほはあれこれと会話を交わした。今回の発端となった沙織との疑似デートについて、大洗女子学園のみほの後輩たちについて、ショッピングモールでの出来事について。
その中でしほが興味をひかれたのは、タピオカティーの店でのカップル撮影の件だった。
「写真撮影?」
「ええ、そういうサービスもやってた店で……」
「……流石にそれは無理そうね」
しほが少し寂しそうに呟く。
なかなか恥ずかしい経験だったが、やってみたいのだろうか。和明はそう思いつつも切り替えるように言った。
「ま、まあ、折角の機会なんですし、それ以外に出来ることをやってゆきましょうよ。この次はどこに行きます?」
「関帝廟あたりはどうかしら?」
「いいですね。それじゃまず関帝廟に行って、そこからはぶらぶら……って感じで」
デートコースの打ち合わせをしつつ過ごす時間。普通のカップルならば当たり前のように交わす言葉だが、それを自分たちは出逢って三年越しに初めてしている。
そして、この次にこんな事が出来る機会がいつ来るかは分からない。ならばこの一秒一秒を大事にしよう。和明はそう考え、点心を食べ切った。
「ふぅ、ご馳走様でした」
「支払いは私のカードでしておくわ。和明くんは先に出ていて」
急に呼ばれたこともあり、和明の財布には当然ながらこんな店で払える金は無い。ここは大人しくしほの言葉に従う。
やがて会計を終え、二人は歩き出した。飲食店の多い印象の中華街だが、直輸入の雑貨を扱う土産店やチャイナドレス等を扱う服飾店、八卦を使った占いの館や、ヌンチャクや棍を売っている武器屋まである。
関帝廟はそれらの中華街の建物の中でも有名な、関聖帝君──いわゆる三国志の武将、関羽を神として祀る一種の寺院だ。赤い鳥居は金の飾りが全体に施され、龍の彫刻が上には乗っている。
こんな立派な寺院まで普通に戦車で破壊して大丈夫なのだろうか。関帝廟の前に到着した和明は思わずそんな事を考える。
「ここの内部、及び近隣での戦闘行為は流石に禁止されているわ。流れ弾について大目に見てくれるだけでもお大尽……と言うべきでしょうね」
和明の表情からそんな気持ちを察したのか、しほが説明しつつ先に進む。やはり無人のようだが、入り口に簡素な机が用意され、線香とライターが置かれていた。これも菊代の配慮だろう。
こういった場所の参拝の礼儀などは和明は全く知らなかったが、しほはその辺りも慣れているのか和明に礼拝のタイミングや線香の差し方までレクチャーしてくれた。
「関帝は商売の神として祀られているわ。言ってみれば、この中華街の守り神ってところね」
「不思議なもんですね。武将だったのに神様、それも武の神様でなく商売の神様になったってのは。そういえば今年も伊勢で奉納試合をやりましたけど、戦車道の神様って居るんですか?」
「戦車道は元を辿れば
関帝廟の境内を見回りつつ、そんな事を話す。日はだいぶ西に傾いてきていた。夕焼けが金細工に照り返し、煌びやかな光を放っている。
一通り中を見終え、二人は関帝廟を出た。さて、次はどこに向かうか。
「……ねえ、和明くん」
「はい?」
「いいえ……やっぱり、何でも無いわ」
ふと、しほが何かを言おうとしてそれを止めた。
何だろうと思えば、彼女の視線は和明の腕に向けられている。
「(もしかすると……)」
ある憶測が頭に浮かび、和明はしほに腕を寄せた。
「……どうぞ」
「っ!? い、いいえ、私は大丈夫だから……」
「折角なんです。やれる事は全部やりましょうよ」
「………」
僅かの合間、しほは悩んだようだったが──「おずおず」といった風で和明の腕に自身のしなやかな腕を絡ませ、身を寄せた。
しほの身長は実際高めで、和明と並ぶとほぼ並ぶような感じになる。頭一つほど低かった沙織の時とは些か勝手が違ったが、彼女の温もりがチャイナドレスのきめ細やかな布地越しに伝わってくるのが心地よい。
「歩きにくくない、和明くん?」
「ははっ、気にしすぎですよ。次はどうします?」
「何か買い物でもしましょう。適当なお店でも回って……」
そして和明たちは何店舗かの雑貨屋や服飾店を覗いた。何か買うものを探しているではなく、何となく店を選び、商品について言葉を交わす。
「しほさん、この扇子とか今のドレスと合うんじゃないですか?」
「ドレスの紫にこの色だと、ちょっと派手過ぎないかしら……?」
それは何気ない、世間のカップルや夫婦ならば当然のように交わす言葉。しかし──和明としほにとっては、今まで幾度もセックスをしていながら数年越しで交わせなかった言葉だ。そこに和明は温かさを感じていた。
「ンッ……そろそろ、飲み物でも買いませんか?」
「そうね。菊代はこの辺りでも用意してくれてる筈よ」
ぼちぼち喉が渇いてきた。和明の言葉にしほが先導し、通りを見回す。確かに少し離れたところにタピオカティーの店があるようだ。二人は再び腕を組み、そこへ向かう。
「……あれ?」
確かに無人の店のカウンターにはクーラーボックスが置かれていたが、それ以外のものも設置されていた。三脚に乗ったデジタルカメラだ。
「これは……?」
「和明くん、それ……」
しほが何かに気付く。視線を追ってみるとクーラーボックスに挟まる形で封筒が置かれていた。隅には小さく「菊代」と書かれている。
「菊代さん?」
和明は封筒を取ると口を切った。中には便せんが入っている。それを広げると、美しい書体でこんな文章が書かれていた。
『お二方へ お楽しみいただけているでしょうか? ささやかながら写真サービスを用意致しました。タイマー、連続撮影も可能ですので、記念をお残しください』
更に続きには丁寧なことにカメラの操作法まで書かれている。
「……と、いうことは」
菊代の手紙から何かを察した和明は、クーラーボックスを開ける。
果たしてそこにはバケツサイズのカップに入ったミルクティーと二本のストローが入っていた。
「菊代……」
しほは頬を少し赤くし、額に手をあてた。先ほどはやりたそうな素振りも見せていたが、やはり実際にするとなると恥ずかしいようだ。
ここは自分が先導すべきか。カップを手にすると、和明はしほに言った。
「やりましょう、しほさん」
「……ちょっと待っていて。タイマーをかけるから」
少し悩んでいたが、どうやら「やってみたい」という気持ちが勝ったようだ。自らカメラを弄り、タイマーを操作する。
「向きは……そこの壁でいいかしら? 和明くん、そこに立ってもらっていい?」
「分かりました。ストローは差しておきますね」
指示に合わせて和明はレンズの先に立つ。しほは位置を微調整するとタイマーをセットした。電子音が鳴り始め、しほが素早く和明の横に来る。
「……?」
黒い粒が入ったミルクティーを前に、戸惑うようにしほは和明を見た。
数秒の間の後、あることを推測する。
「しほさん……もしかして、こういうの飲むの初めてですか?」
「ええ……和明くん、これはどう飲むの?」
「別に特別な飲み方がある訳じゃ……俺がこっちのストローで吸いますから、しほさんはそっちから吸いながらカメラを見てください」
「分かったわ……んっ……」
しほは慣れない仕草でカップの反対側に手を添え、ストローを咥えた。カメラに送る流し目が何とも艶っぽい。
タイマーを示す電子音の間隔が短くなってきた。シャッターが切れる前兆だ。和明もストローを咥え、しほに顔を寄せてカメラを見る。
直後、電子音が止まりシャッター音が響いた。
「……ふぅ、もう大丈夫ですよ」
「っぱ……ありがとう、和明くん」
「いいえ。俺も嬉しいです……このまま、温くなる前に飲みましょうか」
感謝を口にするしほに和明は答え、再びストローを咥えた。しほも同時にミルクティーを飲み始める。
「………」
「………」
何と言うか、こうして顔が当たる程の距離でしほと同じものを飲むというのは不思議な興奮を生むものだ。和明は思った。
しほの薄化粧の映える顔立ちも、切れ長の瞳も、不慣れな感じでタピオカを吸う仕草も何とも愛らしく、それこそ母子ほどに離れた年齢の女性でありながら──可愛いと素直に思う。
「ふぅ……ちょっと、一度置いていい?」
「ンッ……ええ」
一旦口を離し、しほがカウンターにカップを置く。
その時、初めて和明はチャイナドレス姿のしほの背後を見た。整った背中から腰にかけての綺麗なライン。そして──
「……!?」
尻に視線が届いた時、和明の瞳が見開かれた。
しほの肉感的な尻がチャイナドレス越しに浮かび上がっているのだが、それは下着の形でなく、くっきりと尻肉の谷間まで形作られている。
びくんと和明の肉棒がズボンの中で跳ねた。しほが振り返るのを待たず、カウンターに立つしほに近づく。
「本当に今日はありがとう、和明くん。お陰で……んっ?」
「……しほさん」
礼を言おうとしたしほに背後から寄り添うように和明は密着した。
それは「今の彼女」を人目から隠したいという衝動と、急激に湧き上がってきた欲情の両方がさせた行動だった。
「ど、どうしたの、和明くん?」
「しほさん、今、ひょっとして……ノーパンですか?」
「……!」
しほの息を呑む気配が伝わってくる。それだけで和明は自分の推測が当たっている事に気付いた。
和明に尻を向けたままの彼女の腰にするすると指を下ろし、チャイナドレスのスリットからしほの下腹部へと侵入する。
果たして和明の指は下着を経ること無くしほの陰毛の感触へと辿り着いた。指先に熱い湿気が伝わってくる。
頬を赤く染めつつ、しほは答えた。
「え、ええ……履いてないわ。上も、下も……」
「……!」
今度は胸に触れてみる。確かに布地越しに感じるのは拘束されていないしほの生の乳房の弾力だ。
「あんっ……!」
「な、何で……?」
「こ、こういうドレスは着るのは初めてだったのだけど、菊代から『見た目のラインが崩れるのは、下着は着けない方が良い』と教えられて……それと、貴方がこちらの方が悦ぶからって」
喘ぎつつしほが言う。どうやら菊代は只のデートで終わらせるつもりは無かったようだ。
衝動のままに右手でしほの乳房を揉み、左手で秘所を弄る。
「んあっ、ああっ!」
びくんとしほの肢体が跳ねる。ただ、和明の手の動きにはまだ迷いが残っていた。それはこんな場所で始めて良いのかという理性的な判断と、しほとのデートを結局セックスで終わらせてしまって良いのかという男性としての迷いだ。
乳房を揉む和明の動きにその迷いを感じ取ったのだろうか。しほは抵抗を見せず、切なそうに和明に振り向くと言った。
「か、和明くん……残り時間って、あと、どれ位だったかしら……?」
「ええと……あと、一時間くらいです」
「お願い、和明くん。ここで……して。誰も、いないから……」
そう言いつつ、しほは豊かな尻を和明の股間へと擦り付ける。窮屈そうにズボンの中で暴れる肉棒はその刺激で更に脈動する。
「くうっ、い、いいん、ですか……?」
「昨日から我慢していて、凄く、切ないのっ……ここでする事も、思い出にしたいから……!」
「……分かり、ました!」
「ンンッ!」
和明は自身の衝動を抑える事を止め、欲情に任せるままにしほの乳房を揉みつつ首筋にキスをした。しほの口からは嬉しそうな嬌声が漏れ、身体から立ち上るフェロモンめいた香りが強まったように思える。
カウンターに手をついた状態だったしほだが、彼女の手が和明の股間に伸びてきた。ズボンの上から肉棒を愛おしそうに撫で、流れるようにジッパーを下ろしてくる。
「あぁ、し、しほさん、堪らないっ……!」
「和明くんの、指もっ……ああっ!」
片手で器用にジッパーを下ろし、留め具を外す。和明はしほの股間を弄っていた指を離すと腰を揺すりながらズボンを半分下ろした。しほの指がトランクスの淵にかかり、ずり下ろすと共に肉棒を開放させる。跳ねるように肉棒が露わになり、店内の空気に生臭い淫臭が混じる。
平時ならば観光客や学生などで賑わう無人の店舗で、チャイナドレス姿のしほを犯す。それは堪らない背徳感を和明に覚えさせた。
しほの指が肉棒の竿を包むように握り、扱き始める。次第に亀頭からは先走りが滲み、しほの手の動きをより滑らかにしてゆく。
「しほさんっ……しほさんっ……!」
「んあっ、ああんっ!」
彼女の名を呼びつつ重い乳房を揉みしだき、濡れ始めた秘唇を指でなぞり、孔に丁寧に一本挿入する。艶やかな黒髪を振り乱し悶えるしほの反応が何とも愛らしい。挿入した指を包む熱い締め付けが、彼女の興奮を教えてくれる。
同時にしほのしなやかな指が与えてくる刺激に、和明の肉棒も強い興奮を示していた。血管を浮かび上がらせ膨れ上がった肉棒はしほの手の中で暴れ、更なる快感を求めて反り返る。
「か、和明くんっ……そろそろ、挿れて……!」
「ええ、俺も……限界です……」
もどかしそうに腰を揺するしほから一歩離れ、彼女のチャイナドレスの裾を捲り上げる。太ももまでを黒いストッキングに包んだ美しい脚の間にある張りのある尻はひくつく薄茶色の窄みまでが丸見えで、和明の欲情を更に高めてくる。
和明は秘所を弄る指を抜き、自身の肉棒に添えた。暴れる肉棒の角度を下げ、しほの秘所へと押し当てる。
「それじゃ、いきます……ぐぅっ!」
「は、早く、きてっ……んあぁっ!」
ズブズブとしほの膣内に肉棒を突き入れてゆく。その締め付けはいつもより強い。無人の街と分かっていても露出プレイに近いこの状況に彼女も興奮しているのだ。その中は十分に潤み、和明の巨根を嬉々として呑み込んでいる。
これなら遠慮は不要か。和明は息を吸い、大きく腰を引くと一気に奥まで突き入れた。
「んっ、ひいっ!」
「しほ、さんっ……いつもより、強いっ……!」
大きいストロークでの抽送を続けつつ、次第にその速度を上げてゆく。腰を止めないまま和明はしほの胸も激しく揉む。カウンターに手をつき腰を突き出す格好になった事でしほの乳房は更に重みを増し、チャイナドレスの布地越しでも乳首が突起しているのが分かる程だ。
覆いかぶさるように和明は上体を下げつつ腰を振り、夢中でしほの膣内を堪能する。一方のしほも自ら腰をくねらせ、和明の肉棒から更なる快感を貪ろうとする。
「ぐっ、ううっ! 締まるっ! しほさんっ! あぁっ、しほ、さんっ!」
「あっあんっああっ! もっと、もっときて、和明、くんっ! 和明くんの、ちんぽっ、もっと感じさせ、てぇっ!」
激しい動きにカウンターが揺れ、カップに残ったタピオカミルクティーが波を立てる。ぱんぱんと互いの肉が打ち合う音と喘ぎが店内に響き、おそらく通りまで聞こえているだろう。
和明は動きを変え、ストロークを弱めつつ細かく腰を動かす。強い射精感が腰の奥からこみ上げてくるのを感じる。
「ぐっ、く、あぁっ! しほさんっ! そろ、そろっ……!」
「ああんっ! き、来てっ! 和明くんっ、全部、膣内にっ……射精、してぇっ!」
犬のように舌を出し射精をせがむしほ、その淫らな姿に和明はとどめとばかりに腰を突き込み、一番奥で我慢を解き放った。
「おっ、おぉっ……!」
「んあっ、あ、ひあぁっ!」
どくどくと濃厚な精液が彼女の膣内へと流れ込んでゆく。背を反らし悶えるしほの顔に自身の唇を寄せ、挿入したまま和明はしほと熱いキスを交わす。
「んっ、ちゅ……しほ、さんっ……」
「かずあき、くんっ、ンッ、ちゅっ……」
唇を重ねたまま、射精が終わるまで二人は繋がっていた。どくんと腰が震える度に精液が流し込まれ、結合部から溢れた白濁液が床に落ちる。
たっぷり数十秒の間の射精を経て、ようやく和明は肉棒を抜いた。しほは荒い吐息で崩れそうになる身体をカウンターに任せている。
「……あ」
そこで和明は、今になって事後処理の事を考えていなかった事に気付いた。店には悪いが、ペーパータオル等を借りられるだろうか。
「んっ……和明くん、そのままでいて」
「しほさん?」
ふと、気怠げにしほが身を起こすと和明の前に跪いた。
「はぁっ……ん、あむっ……」
「うおっ……!」
そのまま口を大きく開け、しほは愛液と精液に塗れた肉棒を咥え込んだ。息苦しそうな気配も見せず、しほは舌で亀頭から丁寧に淫液を舐め取ってゆく。
「んぶっ……ふうっ、ンンッ……」
「あ、くっ、あぁ……」
しほの汗に濡れた髪に触れつつ、和明は喘ぐ。半勃起だった肉棒は再び充血し、彼女の口腔内を押し広げてゆく。
「し、しほさん……そのままだと、またっ……!」
「じゅるっ、っぱ……い、いいわ、出して。下だけじゃなくて、上にも、飲ませて……ちゅ、ちゅうぅ……」
「ああっ、しほ、さんっ!」
一旦肉棒から口を離し、愛おしそうに竿に頬ずりすると再び口淫を再開する。射精直後に刺激を与えられたこともあり、次の射精感は和明の予想以上に早くこみ上げてきた。
「ぐうっ! し、しほさんっ、出るぅっ!」
「ふぁ、あ、んむぅっ!」
二度目の射精とは思えない量がしほの口腔内に放たれる。
「ンッ……こくっ、こくっ……」
「しほ、さんっ……!」
生臭い精液を躊躇することなく嚥下してゆくしほ。
それらを完全に舐め取られるまで、和明の肉棒はしほの唇と舌に拘束され続けた。
自分たちに許された時間が終わったのは、それから数分後の事だった。
迎えに来た菊代が用意したスーツにしほは素早く着替え、この後参加する戦車道イベントへ向かっていった。
「ありがとう、和明くん。楽しかったわ」
そう言い残したしほの表情は晴れやかで、一方的に気持ち良くしてもらっただけに思えていた和明に満足感を覚えさせた。
スタッフとしての仕事は終わってしまったので、和明はその後のイベントを観客として楽しんだ。
中華街でチャイナドレス姿で砲撃を繰り広げる戦車道の選手たちの姿は美しく、その中でもしほの姿は華やかにイベントを彩っていた。
──ただし、この一件は後に別の弊害を生むことになった。
熊本県、西住家邸宅。
比較的暖かい熊本の地でも風は次第に冷たさを増し、冬の訪れを感じさせる。
「奥方様、お飲み物をお持ちしました」
しほが書斎を兼ねている和室。菊代は湯飲みと急須を盆に置き、障子戸の前で声をかける。
「ありがとう、入りなさい」
「失礼致しま……?」
音もなく戸を開けた菊代は、怪訝な顔で室内を見た。机だけでなく、畳にまで幾つもの冊子や本が広げられている。
「……奥方様、確か今のお時間は『次の流派内の試合会場について選定』をされていたかと思うのですが?」
「ええ、そうよ」
しほの表情は静かなままだ。菊代は手近な本を手に取った。
「これで安心、彼氏と行くデート名所百選」「最高のキスができる! 思い出作りスポットセレクション」「絶対に失敗しないデートコース選び」──
「奥方様?」
「案外よい場所というのは見つからないものね。菊代、貴女はどう思うかしら?」
「はぁ……とりあえず、浦安のテーマパークを貸切るのは止めた方がよろしいかと」
ひょっとすると自分は、妙な知恵を彼女に与えてしまったのではないだろうか。
菊代はそう思い、深くため息をついた。
【俺と家元(かのじょ)と中華街 終わり】