生暖かい目で見て下さい。
翌日、俺とフランシスは黄金の鹿号の甲板にいた。
「よし。それじゃあ、船の中の調査を始めるぞ」
俺は紙とペンを持って準備万端。
「あの、ご主人様。何で紙とペンを持っているのでしょうか?」
フランシスが聞いてくる。因みに、今現在、船の上には俺とフランシスしかいない。兄さんは病院に行き、父さんと母さんは家の中で荷物の整理をしている。その為、フランシスは海賊モードから奴隷モードになっているのだ。
「何でって、内部の事をメモする為だから」
「いえ。ですから、何故メモをする必要があるのでしょうか?」
フランシスは、自分がいるのだからそんなもの必要ないと言いたいのだろう。普通ならそうだろう。そう、普通なら。
「お前。自分が昨日言った事を忘れたのか?」
「昨日?」
それは、俺とフランシスが寝起きご奉仕を終えて、連絡が来て家に戻る時の事である。戻る途中こんな事を言っていたのである。
『そう言えば、なんか知らない扉が増えてるね。何でだい?』
と、
「って言ってただろうが。もう忘れたのか?」
「…………ああ!た、確かに言ってました!」
今の間は、本気で忘れてたな。
「自分で言っておいて忘れるなよ。」
「も、申し訳ございません。ご主人様」
「はぁ……。もう良いよ。で、これから移動するのにこの船を使うから、先にどんな状態なのか確認しないと。皆が乗るときに行っては行けない場所とか教えないと、どんな事になるか分からないからね」
「はい。ご主人様」
フランシスも納得してくれたので、早速始めますか。
「先ずは、内部に入ってのすぐ左にあるこの扉。フランシスはこの扉の事、知ってるか?」
「いえ。こんな扉はありませんでした」
「成る程。んじゃあ、一発目からか」
どんな部屋なんだろう。ちょっとドキドキするな。
「さて、どんな部屋かな?」
「ご主人様としては、どんな物があってほしいのですか?」
「俺か?俺としては、トイレとか風呂とか、後は居間にソファとその前にテレビとか、そういう生活に困らない感じの物があれば良いな。まあ、無理だと思うけど」
ハハハハハと、笑いながら扉を開けると、
トイレがあった。
ゆっくりと扉を閉めた。そして一拍置いてもう一回開けてみると、
洋式のトイレがあった。よく見ると、おしり ビデも付いている。
「いや何でだよ!!」
カラン
俺は思わずペンを床に投げた。
「何でトイレがあんの!しかもこれ、現代風の洋式トイレ!まさかこれ、流れるんじゃないだろうな!」
俺は、中に入り、トイレのレバーを回した。
ジャアアア
水が流れた。
「フランシス!」
「は、はい!」
「これはどういう事だ!」
「わ、私にも分かりません!」
俺がフランシスに詰め寄り、問い質してみたが、フランシスはただ首を振っているだけ。その様子から見るに、どうやら本当に知らないようだ。
「ちっ。フランシスが知らないってのは一体どういう事だ?」
「さ、さあ?で、ですが、トイレがあるのは良いことなのでは?」
苛立つ俺にフランシスがそんな事を言ってくる。
確かに、そうだな。冷静に考えてみると、トイレを探す手間とか省けるからいいかな。
「まあ良い。トイレはあって困る物でもないからな。原理は分からないが、水も流れるって事も良いことだ」
本当に原理はどうなっているんだろうか?謎だ。
「よし!それじゃあ次の扉に行くぞ。この扉は……」
「ああ。ここは……」
言いながら扉を開けると、部屋の中には、ベッドが二つ置かれていた。
「仮眠室ですね」
「仮眠室?」
「はい。見張りの交代等で直ぐに寝られるようにとつけました」
おお。なんか普通っぽいな。海賊船の内部とかよく分からないけど。よしよしよし。こういうのもちゃんとあるんだな。
「成る程ね。それじゃあ、次に行きますか」
「はい。あ、でもこの階はこの先ほとんど船員の部屋とか武器庫とかしかありませんから、そこまで警戒する必要はありませんよ」
フランシスが船内部の補足をしてくれる。だから、入る前に先に言えよ。
「まぁ、良いけど。どんどん行くぞ」
「はい。ご主人様」
●
「何でだよ!」
俺は二回目のペンを床に投げる行為をしていた。
俺達が船の一階をくまなく探してみた結果、見つかった物は、最初に見つけたトイレを除けば、
リビング(テレビやソファ等完備)
調理場(包丁、鍋、炊飯器等器具は一通りある)
風呂場(シャワーや浴槽のお湯もきちんと出るサウナルーム付き)
洗濯場(洗濯機4台すぐ側に)
衣装部屋(普段着の他にも、メイド服やナース服等コスプレもある)
寝室(10部屋、フカフカのベッドが左右二つずつ)
遊技場(ビリヤードやダーツやボードゲームの他にもPS4、Switchの本体、ソフトもある、自動販売機も設置されている)
カラオケルーム(昔の物から今の物まで幅広く入っている)
パソコンルーム(10台、ネットにも繋がる、タブレット端末もある)
トレーニングルーム
拷問部屋
武器庫(オーソドックスな剣、刀、銃の他モーニングスター等マイナーな武器多数)
物置(工具類や農具、何故か木材やコンクリート等もある)
食糧倉庫(備蓄は結構ある、集めた素材もあるがそれでもまだ余裕)
ワインセラー(年代物もある)
と、なんか色々あった。
「もう。何なんだよ……。何でこう普通の船に無い施設があるんだよ。しかも、パソコンルームのパソコンはネットに繋がってるし。電気、水、ガスも問題無く使えるって、どんな船だよ」
俺が施設の事にげんなりしていると、フランシスが後ろから肩を掴んで来て、
「よろしいではないですか。これで旅に出るときに色々楽になるというものです」
「いやそうなんだけどさぁ。何かこう、もやもやするんだよ」
そもそも、何でこの施設共が船の中に存在しているんだよ。いくら宝具化していたとしても、これはあんまりだろ。しかも、部屋の一つ一つを合わせたら、完全に船の面積を超える。船の外と中が別れて異空間になってないか?
「まあいい。これでこの階は終わりだ。後は……」
言いながら、俺はある一点に目を向けた。そこには、下の階に降りる為の階段があった。
「次は何が待ってるんだ?もう余程の事がなけりゃ驚かない自信があるよ」
「下の階は、基本的には物置になっていたのですが、どうなっているのか、私でも想像が付きません」
フランシスも自信無さげに言ってくる。
「兎に角、こうしてただ睨んでいても何も進まない。取り敢えず行くぞ」
「はい。ご主人様」
俺達は、意を決して階段を降りて行った。
●
少し降りると、階段の終わりに一つの扉があった。
「変ですね」
「何がだ?」
「本来、あそこには扉なんて無かったはずなのです」
「へぇ。……じゃあ、何かあることは確定の方向で考えた方がいいな」
フランシスが違和感を話してくれたので、俺は警戒を強めた。
扉の前に来て、ドアノブに手をかけた。
「行くぞ」
「はい」
慎重にドアを開けた。
目の前には、一面の緑があった。
俺はそっと扉を閉じた。そして、二人してこめかみをグリグリした後、もう一度開けた。
そこには、一面の草原が広がっていた。
「何、で、だぁ~~!!」
俺の絶叫が響き渡った。
●
「何なんだよ。もう……」
あれから少し時間が経ち、一通り探索し終えた後、俺は体育座りをしていた。
モオ~~
目の前には、一頭の牛がいる。いや、一頭だけではない。何頭もの牛がいるのだ。
さらに、ここにいるのは牛だけではない。他にも、豚、羊、ヤギ、馬、鶏等家畜が何頭もいるのだ。
「あははははは。空が青いなあ~」
と、空を見上げて現実逃避してしまう。太陽が眩しい。そう、太陽が眩しいのだ。船の中なのに。
「ご主人様!しっかりして下さい!」
フランシスがユサユサ揺らしてくる。
「……は!わ、悪い。ちょっと現実逃避してた」
「いえ。気持ちは分かりますので」
二人して何とも言えない顔になった。
「取り敢えず、メディアさんが帰って来たら相談するか」
「そうですね」
キャスターのあの人なら何か分かりそうだ。そう言って、俺達は扉を閉めて船の外に出た。
●
「はぁ~。ったく、何なんだよこの船の中は……」
「正直言うと、これは私の船なのか自信が失くなって来たのですが……」
甲板を歩きながら、俺達はため息をついていた。
「……なぁ、もう一つ気になってた所があるんだが」
「? 何処でしょう?」
「あそこ」
俺はある場所を指差した。そこは、今の場所から梯子を登った所にある一つの小屋。
「あそこ、何があるんだ?」
「…………」
「どうした?」
「……分かりません」
「は?」
まさかの分からない宣言。
「ですから、分からないのです。あんな所に小屋などありませんでした」
「……え? ちょ、ちょっと待て。最初に召喚した時からあったぞ。気付かなかったのかよ」
「はい。堂々とそこにあったので、逆に気付きませんでした」
「マジかよ……。じゃあ、あそこに何があるのかは行ってみないと分からないのかよ」
「そうですね」
はぁ……。また一つため息が出てしまった。
確認しない訳にはいかないので、俺達は梯子を登って小屋の前に辿り着いた。
「開けるぞ」
「はい」
「まあ、あんなの(異空間の事)を見せられちゃ相当の物じゃないと驚かないよ」
気が緩んだ状態で小屋の扉を開けると、
小屋の中央の台座に置かれた光る杯を見てしまった。
「は?」
俺達二人の時間は、完全に止まった。
●
「……………………は!」
暫くの間放心状態になっていたが、何とか正気を取り戻す事に成功した。
「おい!フランシス!おい!」
隣で未だに放心状態になっているフランシスを揺らした。
「は!も、申し訳ございません」
フランシスがちゃんと正気に戻った事を確認すると、俺達は改めてそれを注視した。
それとは、小屋の中央の台座に置かれている黄金の杯。
それは正に、万能の願望器、聖杯である。
「あれって、聖杯、だよな?」
「はい。おそらく……」
「何で、聖杯がこんな所に。フランシスが手に入れた話なんて聞いた事ない、ぞ……」
言葉の途中で、俺は記憶の中にあるfgoのあるストーリーを思い出してしまった。
「第3特異点、オケアノス!!」
そう。俺のサーヴァント、フランシス・ドレイクがメインで出てくる特異点、オケアノスでの事だ。そこでフランシスは、生前の姿で登場してきた。そして、自力で聖杯を手に入れていた。
「まさか、こっちに来た時に、一緒に来たっていうのか!?」
嘘だろおい!これってどう扱えば良いんだよ!もうキャパシティオーバーなんだけど!
って、ちょっと待て!
「もしかして、今までの船内でのあれって、聖杯があったからなったのか!」
だとしたら説明がつく。確かに俺は生活に必要な物があれば良いなとは言ったが、それが叶ったっていうのか。
でも、下の階のあの状況は、俺は望んでいないぞ。
くそっ。謎が解明されたかと思ったらまだまだ謎が残ってた。
「あのぉ。ご主人様」
「ん!何だ!?」
「これの事も報告しますか?」
これとは、おそらく聖杯の事だろう。
「ふむ……」
そう言われて改めて考える。この状況をどう説明するか。ぶっちゃけ聖杯の事は、極力知られたくない。何が起きるか分からないのだ。最悪、これを巡って戦争が起きかねない。
「取り敢えず、メディアさんにだけだな。これを説明するのは」
あの人なら、何か良い知識をくれるだろう。
「はぁ……。何かもう疲れた。家に戻るぞ」
「そうですね」
俺達は、来たときよりも確実に疲弊した状態で家に帰って行った。
因みに、その気になれば、黄金の鹿号の中で一生引きこもる事も出来ます。信太達はしませんけど。二人共引きこもるよりも外に出たい派なんで。(もちろん、中でゲームも好きです)
これで旅の間の生活面での不安は解消されました。それ以上に厄介な物がありましたが。
絶対に外にもらす訳にはいきませんね。
それでは、次回の投稿も頑張りますので、待っていて下さい。