喰らいつくして、突き抜ける~ イート・ザ・ワールド~ 作:KeI77777
子供のころに読んだ本のタイトルは何だったろうか。
主人公である勇者が、姫をさらった悪いドラゴンを倒し、
ハッピーエンドっていうよくあるやつ。
・・・・ああ。だめだ。思考がまとまらない。
どうしてこんなどうでもいいことばかりが今際のきわに浮かんでくるのか。
「・・・・あ・・・・だな・・・。」
「・・・な・・・お・・・。」
遠ざかる人の足。
まて、待てよ、と手を伸ばすも届かない。
助けを求めるために出そうとした声は出ない。
代わりにごぽ、と血が口から出てきた。
---横眼で見えたのは、血の海。
自分が倒れる森の中。
突き刺さった鋭利な刃物が領土を占領したはたみたいになっていて、
笑ってしまう。
(・・・・・・死ぬ、のか・・・?俺は・・?)
この血は誰の物か?
そうか、これは俺の血か。
どうりでいい色をしている。
絵具にちょうどいい鮮やかな色だ。
「・・・・たくねぇ。」
言葉が、漏れた。
「・・・たくねぇ。・・・まだ、死に、たく、ねぇ・・・!!」
ずりずり、と血の川を生み出しながら、地面を這いずり回る。
脚がない蛇のように、みっともなく。
赤子よりもへたくそに。
死にたくない。死にたくない。
脳裏に浮かぶ走馬灯。
最近かけられた言葉も併せて浮かんできた。
『---お前は、捨てられたんだよ。』
『この役立たずが!!余計な仕事をさせやがって!!』
『あーあ。マジで最悪ー。』
『・・・・・やれやれ。もういい。せめて邪魔にならないように、
じっとしていてくれ・・・。』
---何がわかる。
(恵まれたお前たちに、何がわかる・・・!!)
ずりずり、と這いずり回り続ける。
あてもなく、どこへ行くこともできず、きっと俺は死ぬのだろう。
徐々に体に力が入らなくなってきた。
這いずるのも疲れてきた。
「・・・あ・・・?」
必死に這いずっていて気が付かなかったが、
どうやら何かを祀っている像が目の前に立っていた。
(・・・・神様にでも祈れって言うのか・・・?)
皮肉が効いている。
本当に、本当に。
死に掛けの人間の前に、神様の像とは。
少し疲れたので背もたれにして寄りかかる。
(・・・・少し休んだら、金をどっかから盗んで、その金で薬草と医療用物資を買い、まずは治療だ。・・・ああ、なんか眠くなってきやがった・・・。)
意識が遠のいていく。
そうだ。血が、血が止まらない。
右手で腹部を抑えているが、そんなものじゃ溢れる血を止めることはできない。
(・・・・死にたくねぇ。・・・俺は、俺は・・・。)
像にしがみつく。懇願する。
神様なんざ糞くらえだ。信じられねぇ。
生涯、信仰なんぞもってたまるか。
・・・けど。
「・・・・本当に、いるんだったら、俺を、
俺を救いやがれ・・・!!」
---都合のいいときだけ神にすがって、
利益にあずかるのが人間だ。
土下座して救ってもらえるんだったら、
どこかに、そんな神様が一人くらいいるんだったら、
いくらでもあがめてやる。
手のひら返しされるのには慣れてる。
だったら、一回くらい手のひらを返したっていいだろうが。
『--------』
何かが聴こえたかと思うと、俺は今度こそ意識を手放した。