喰らいつくして、突き抜ける~ イート・ザ・ワールド~ 作:KeI77777
「さあ、皆さん!!どうぞ遠慮なさらずに堪能していってください!!」
---金や銀、その他の宝石がちりばめられた礼服を着た、
頭が禿げ上がっている人物がそういう。
俺たちの目の前にはテーブルの上に置かれた、
多種多様な食事。
洋食がほとんどだが、どれも食欲をそそるいいにおいを放っている。
何人かはおなかが空いていたのか、すぐにナイフやフォークでありつき、
食べ始めていた。
(・・・・どうしてこうなった?)
スプーンで近くにあった冷製のスープを口に運んで、入れる。
甘みと、辛さが舌の上に残り、何とも言えない味わいが広がっていく。
かちゃかちゃ、とナイフとフォークで肉を切り取りながら当たりの様子をうかがう。
(・・・・どいつもこいつも。すっかり浮かれちまいやがって・・・。)
結論から言うと、俺たちはライトノベルでよくある異世界召喚ってやつをされたらしい。
らしいというのは、いまだ実感がわかないからだ。
この国の姫だと名乗る、金髪ロングヘアーの美少女からそうした説明を受け、
傍に控えていた大臣から補足を受けた。
『---わが国では、度重なる人間同士での戦争によって疲弊し、
そこを魔軍につけこまれ、国力低下、ひいては消滅の危機にあえいでおります。』
『---魔軍を率いるは、世界の支配をもくろむ魔王。--その絶大なる力と、魔力によって、"魔物"を生み出し人類を抹殺しようとしているのです。』
---だから、助けてー、と。
けれども、こうして異世界に召喚されてしまってわかったことがある。
(・・・・そんな博打に頼り始めた時点で、もう終わってね?)
そうだ。頭が湯だってなければ、こんなとんちきな方法に頼るわけがない。
国の将来を想うのであれば、富国強兵を掲げ、戦力の強化をまず最初にすべきであろう。
その国策を通してしまった国王、大臣、官僚、そして国民たちは、本当に異世界から召喚した人間たちが魔王を倒して世界を救う勇者なのだと思っているのだろうか?
現状に疑問と不安が湧いてきた。
鳥肌が立ち、思わず身震いする。
(・・・やっべ。周りのやつらは・・ああ、警戒なんぞ全くしてねぇ・・・。)
女子の近くにはイケメンの兵士や、給仕が。
男子の近くには美女、もしくは美少女のメイドが話し相手を兼ねて、
付いている。
「・・・勇者様?」
「・・・。」
声をかけられ、はっとなる。
その声の主を探すと、自分の横にいつの間にか14歳くらいの銀髪、ショートカットの少女が、近くまで来ていることに気が付いた。
どうやらこの子に声をかけられたらしい。
「あの、料理、お気に召しませんでしたか?」
「・・・いんや、上手いさ。・・・おかわり、もらえますか?」
「は、はい。」
ぱたぱた、とみつあみにまとめられた髪を尻尾のように揺らしながら、
彼女は料理を取りに行く。
(・・・・やばいな。俺たちを取り込む気満々じゃねーか・・・。
あーくそ。クラスのまとめ役的なあいつらは・・・・ファック!!
デレデレしてんじゃねーよ。)
頼みの綱である、クラスの中心人物たちのほうを見るも、
美女、イケメンたちに囲まれ、鼻の下を伸ばしていやがる。
まずいまずいまずい。
このまま懐柔されるのはまずい。
そうだ。とりあえずトイレだと言って、ここから離れよう。
だが、それは少しばかり遅かった。
「----皆さん。お食事中失礼いたします。」
件のお姫様、アイーシャとかいう少女が声を静かに張り上げ、
淡々と告げだす。
「---お食事がすまれましたら、皆様の健康状態を診断するために、
大広間へ移動していただきます。・・・どうぞ、お気を楽に・・・。」
右手で額を抑える。
ステータスを見て、使えるか、使えないか判断するつもりか・・・。
自分だけ浮いたことをすることもできずに、
結局のところその他大勢と同じく、大広間に向かうのだった。