喰らいつくして、突き抜ける~ イート・ザ・ワールド~ 作:KeI77777
「うう・・・。」
「あ・・あ・・・。」
鼻につく死臭に思わず右手で顔を抑える。
ここまでひどいとは予想していなかった。
周りにいる生徒たちも同じ感想だったのか、
顔を青くしたり、胃の中の物を戻してたりする。
兵士に介抱されている生徒もいるぐらいだ。
辺りを見回す。
ハゲタカ、カラスだろうか。
空を飛び回り、こちらの様子をうかがっているみたいだ。
「・・・これが、戦地だ。これが、戦場だ。」
隣にいた兵士がこのありさまを見てつぶやく。
ゲーム感覚で戦いに赴こうとした先ほど生徒たちも、
さすがに答えたのか、鼻をつまみ、目の前の惨状から目をそらしている。
「・・・ひどい・・・なにこれ・・・。」
「・・・・まだ、子供もいるじゃねえか・・。」
巻き添えになったのか、何があったかはわからないが、
エスティリア王国の兵士以外にも、倒れている平民もいた。
近くには村があったという。
あった、ということは戦争に巻き込まれて滅んだのか。
まあ、どちらにせよ、これはひどい。
「・・・君たちは、これからこうした戦場を潜り抜けなければならない。」
「・・・・。」
「・・・・・・・。」
兵士の中でも長、だろうか。
装飾が多くつけられたプレートメイルを身に着けた偉丈夫が、
俺たちに向かってそう告げる。
「勇者はステータスが軒並み高い。そして、成長すれば英雄クラスにさえなれる逸材ばかりだ。」
(俺を除いて、だけれどもな。)
彼の言葉に一斉に俺に向けて視線が集まるが、
どこ吹く風といった様子で、受け流す。
哀れむな。アホどもが。
彼の言葉が続いて、みんなが注目を集めている隙に、
あらかじめメイドに頼んで用意させた袋に、
売れそうなものを詰め込んでいく。
(・・・・少しでも、金になりそうなものを集めないとな。)
力もない、魔力もない、後ろ盾も、いや、文字通り何もない。
仲間もいないのだから、自分一人でどうにかするしかない。
聞いた話だと、奴隷制度があるらしいが、買いに行けば、
城のやつらや、他のクラスメイト達に咎められるかもしれない。
一通り漁り切り、重荷にならない程度に詰め込んだ袋をこっそりと
学ランを脱いでその中にくるみ、隠す。
「・・・今回はこんなものだが、今後は君たちにも魔物相手に戦ってもらう。
生き残るために。死なないために。」
--兵士長が告げた言葉に、他のクラスメイト達は静かにうなずくのだった。
◆
「・・・して、首尾はどうだ?」
「・・・・はっ。順調かと。」
「・・・ふむ。」
部下の報告を受け、顎に手をやり、考え事をする王。
エスティリア王国13代目国王、ガドロフ・ランス。
ひげを豊かに蓄え、髪とひげは白髪に。
しかし、猛禽類のような鋭いまなざしは、
王たる風格を身にまとっていた。
彼は今、自分たちが異世界から呼び出した少年たちの様子について、
部下に報告させていた。
その誰もが高いステータスを持ち、スキルも豊富。
希少属性の魔法を扱える人間さえいるほど。
すでに何人かはメイド、もしくは男の兵士と関係を持ち、
沼にはまっているとも。
「・・・まず、まずだな。だが、これではまだ足りん。」
「・・・・おっしゃる通りかと。」
とん、とん、と王の間に設置された玉座に座り、
ひざ掛けを指で叩きながらガドロフは考える。
才能は確かにある。だが、それでも育成する時間、
更に戻れないほど取り込むには今しばらく待つ必要がある。
かといって、反乱を起こされたら困る。
ひとまずは、女や、男をあてがって忠誠心を刷り込ませているが、
まだまだ足りない、というのが彼の本音である。
とはいえ、現段階においては順調、と言わざるを得ない成果だった。
「---ところで、あの者は?」
ガドロフが差す人物について、すぐに部下は思い当たった。
異世界から召喚されたが、ステータスは子供並、
スキルは特になし。容姿も優れているわけでもなく、
広告塔としても使えない、無能。
ただし、無能ゆえに神輿として敵対勢力にかつがれたらこれ以上なく面倒な存在。
アキレス腱の少年、早瀬涼真のことを。
「・・・一応、レベルアップもしておりますが、
ステータス、スキルにこれといった変化はなく・・。」
「・・・・そうか。では、決まりだな。」
すっと、彼は重々しくその体を持ち上げて、立ち上がり、
部下に命じた。
「-----事故と称して抹殺せよ。無論、他の者が怪しまないようにな。」
「・・・はっ。」
ここに、彼と、彼らの運命が決まるのだった。