喰らいつくして、突き抜ける~ イート・ザ・ワールド~ 作:KeI77777
「・・・・待ていっ!!」
「待てやこの無能!!!」
「俺は無能じゃねー!!むさくるしい親父どもが!!!」
後ろから掛けられる罵倒に反応しながらも、
速度は緩めず、必死に足を動かして逃げ続ける。
こちらの方が軽装。向こうは金属製の鎧をつけているので、
重くて仕方がないはずだ。
いくら訓練されている兵士とはいえ、スタミナが切れるのも早いだろう。
「・・・おらぁっ!!」
「うわっと!!?マジか!!?」
なかなか距離が縮まないことにしびれを切らしたのか、
短剣を投げてきやがった、身を地面すれすれまで低くかがめて、
避けたそれは近くにあった木に突き刺さった。
それをすぐに引き抜き、懐にしまってまたすぐに走り出す。
儲けものだ。
このまま走り続けて、近くの村か街に潜伏し、さっさとこの国を出れば俺の勝ちだ。
だが、俺はまだ相手のことを甘く見ていたらしい。
「・・・"ファイアボール"!!」
「ぐおっ!?」
背中に何か熱いものがかすめたかと思うと、
そのまま俺を追い越して前のほうに着弾、いや、着火した。
ごうごうと音を立てて燃え広がる炎に行く手を阻まれる。
背中に痛みが広がる。やけどを負ったのか。
「・・・てこずらせやがって。」
じりじり、と距離を詰めてくる兵士たち。
火を背中に、背水ならぬ、背火の陣でナイフを構え、敵に向き合う。
ふうー、と息を吐き、そして止める。
「・・死ねやああ!!」
両手で持った長剣をぶんと俺の首めがけて振るってくるのに合わせて、
低く入る。
タックルをぶちかました。
「このっ!!」
それに気が付いてすぐに態勢を立て直そうとしてくるが、一手遅い。
「・・・てめぇが死ねっ!!」
---カスン、と、首元にナイフを突き立てる。
「あっ、がああああっ!!!?」
「貴様っ!!」
「ぐっ!!」
続いて二人目が切りかかってきた。
よけきれずに胴体を軽く斬られる。い、いてぇ・・・。
畜生・・。
相手の腕をつかむともみ合いになり、
肘打ちであばらを攻撃されたが、
すぐに金属鎧で防護できていない横腹部分をナイフで突き刺し、
何度も何度も突き刺しては引き抜く。
「ぎっ!!?あああっ!!?」
「死ねっ!!死ねっ!!死ねっ!!死ねっ!!」
確実に死ぬように、敵の背中を抱え込みながら、
ナイフを持った手でさらに突き刺していく。
体から力が抜けたのを確認し、すぐにナイフを引き抜き、
兵士の体を蹴飛ばして転がす。
「はあー・・・。はあー・・・。」
「・・・な、なんだ?なんだこりゃあ!!?
話が違うぞ!!楽な仕事じゃなかったのかよ!!
なんだよ、この化け物!!なんでこんな・・・。」
「・・・あああっ!!!」
「ひっ!!"ファイアボール"!!」
「うぐおっ!!」
こちらも体力を使っていて、余裕がない。
最後の兵士が放った火の玉が目の前に掲げた腕に直撃し、
ごうごうと燃える。
だが、腕が燃え尽きる前に、できることはある。
---俺が火球を受けて倒れなかったのが意外だったのか、
突っ込んでくる俺に対して棒立ちの兵士の顔面に燃えている手を伸ばし、
がっちりとつかむ。
「・・あああああっ!!?あああああああっ!!!」
「うぎいああっ!!!あっ!!ああああああっ!!」
じゅうううう、と脂が焼ける音と匂いが蔓延し、
ばたばた、と俺の腕をはがそうと両腕で抵抗を試みていたが、
絶命したのか、ぷらんと腕を垂れ下げた。
ばたり、と最後の兵士が倒れるのと同時に、俺も倒れこんだ。
(・・・畜生。腕が・・・俺の・・・腕が・・・・。)
いてぇ。焼けて紅く爛れた左腕は見る影もない。
仰向けに倒れ伏し、はあー、はあー、と荒く呼吸をする。
(・・・追手が来るかもしれねぇ。まだだ。安心できねぇ。
・・・早く逃げないと・・・。)
----そう考え、むくりと立ち上がる俺の背中から銀色の槍が刺さった。
首だけ向けて振り返ると、あの兵士長が笑みを浮かべて立っていた。
「・・・ご苦労様。それと、お休み。」
(・・・畜生・・・。まだ、いやがったの、か・・・・。)
---ざしゅりという音とともに槍が引き抜かれ、
体が地面に吸い込まれるように倒れていった。